みなさんは、自分が読んだ本をどのように記録していますか。読んだ本について記録する習慣がそもそもまったくないという方から、話のあらすじや自分の感想・意見も丁寧に記録しているという方まで、個人の読書スタイルはさまざまでしょう。
読んだ本を記録する作業には、ただ読んで終わりになってしまっている読書の時間を、より有意義にアップグレードする効果があります。そこで今回は、読んだ本を記録するメリットと、効果的な記録方法についてお伝えしましょう。
読んだ本を記録するメリット
「読んだ本を、わざわざ記録するなんて面倒だ」と考える方も、なかにはいらっしゃるかもしれませんね。では、読んだ本を記録することで、私たちにはいったいどのようなメリットがあるのでしょうか。3点をご紹介します。
自分の「読書生活」を俯瞰できる
メリットの1つめは、読んだ本の記録を通じて、自分の「読書生活」を客観的に振り返れるということです。国語教育研究家であり国語教師を長年務めてきた大村はま氏は、理想的な読書生活について、次のように述べています。
記録のないところには、生活はなかったかもしれない。記録があってこそ、その先への進歩があり、建設がある。書きながら考え、書いて、読んだ自分を発展させることが、望ましい読書生活であろう。
(引用元:谷木由利(2017), 「『読書生活』の『記録』による指導とその効果についての研究」, 読書科学, Vol.58, No.4, pp.198-211.)
読んだ本について記録をつけていれば、自分の読書生活をいつでも振り返ることができます。本をただ読みっぱなしにしているだけでは、読んだことさえきっとそのうち忘れてしまうでしょう。
「読んだ当時は自分が何を考えていたのか」「以前とは考え方がどのように変わったのか」だけでなく、「興味深い内容だったのに、なかなか読み進められなかったのはどうしてなのか」など、読書にひもづく生活を定期的に振り返ってみてください。そうすれば、読んだ本と自分の関係を客観的にとらえ、今後の読書へも活かすことができますよ。
積ん読している本を効率的に解消できる
読みたい本がたくさんあるのに、用事でつい後回しにしたり読書の時間をなかなかとれなかったりして積ん読してしまいがち……という方は、ひとつひとつの本について、読んだあとだけでなく、読む前にも記録をつけるようにしてみてください。
書評家でビジネス書作家の印南敦史氏によれば、1週間分の読書計画を事前に決め、読んだ本のレビューを「書き込み待ち」状態にしておくことで、積ん読している本を解消できるそう。
まず、積ん読している本を、いつ、どの順番で読むのか計画を立てます。そして、本のタイトルと読む予定の日付については読書ノートなどへ先に記録しておくのです。限られた時間のなかで次の予定をつくっておけば、本の読み方やペースについて自然と考えざるを得ませんよね。
そして、本を読んだあとにも感想や意見を記録すれば、計画通りに実行できたという達成感を味わえます。たとえ積ん読している本がたくさんあったとしても、この方法なら読書のモチベーションを無理なく維持できるに違いありません。
語彙力・表現力が身につく
読んだ本の記録の仕方によっては、自分の語彙力や表現力を大幅に向上させることが可能です。
国語講師の吉田裕子氏によれば、自分で文章を書くと、他人の文章技術に気がつきやすくなるそう。「どうしてこのような文体なのか」「どうしてこのような文章構成なのか」など、自分で書いて初めてわかることも多いと伝えています。
読んだ本の記録をつける際、本の内容を要約したり使用されている文体をまねして文章を書いたりしてみましょう。そうすれば、語彙力や表現力を磨くことができますよ。
読んだ本を記録する方法1:「読書ノート」に書く
とはいえ、読んだ本をどのような媒体に記録すればいいのかわからないという方もいらっしゃるでしょう。基本的には、「読書ノート」を使用するのが手軽でオススメです。以下では、「市販の読書ノート」と「手作り読書ノート」について、記録の仕方やメリットをそれぞれご紹介します。
市販の読書ノート
読書ノートを初めて使用する方なら、自分で手作りするのではなく、市販されている読書ノートをまず使ってみてはいかがでしょうか。たとえば、以下に挙げるようなものが、読書ノートとして市販されています。
『ムーミン100冊読書ノート』
100冊分の本について、感想や気に入ったシーンなどを気軽に書き留めておくことができます。読書ノートの大きさは文庫サイズで持ち運びも簡単。通勤・通学中や外出先での読書が多い人にはうってつけです。
『ワナドゥ手帳 読書』
読んだ本について、『ワナドゥ手帳 読書』なら、「感動」「驚き」「学んだ」など、5つの項目をそれぞれ点数化し、チャートにまとめて残しておくことが可能です。それぞれの本について評価の基準を統一したい人は、こちらの読書ノートを使ってみてください。
『EDiT 読書ノート』
本の基本情報や感想だけでなく、行きつけの書店や訪れてみたいブックカフェの情報なども、一覧でまとめて記録しておけます。本の購入に関する支出表も付属しており、読書生活全般の管理が容易に行なえるでしょう。積ん読している本がたまってきているにもかかわらず、さらに本を増やしてしまいがちな人におすすめです。
『MOLESKINE パッションジャーナル - ブック』
ページがアルファベット順に並んでいたり、しおりひもがついていたりして、読んだ本の記録をあとから振り返りやすい仕様になっています。カスタマイズに使えるステッカーも付属しており、読書ノートで自分らしさも表現したい人にはぴったりでしょう。
「読書ノート」とひとくちに言っても、特徴はそれぞれ異なります。読んだ本のタイトルや感想を記録しておけるのはもちろん、上記のようにさまざまな種類の読書ノートが市販されているため、自分に合った読書ノートを探してみるというのもおもしろいかもしれませんね。
手作り読書ノート
市販の読書ノートではどこかもの足りないと感じたら、読書ノートを自分で手作りすることもできます。読書ノートをつくる際、特別な筆記具などは必要ありません。普段使っているようなB5サイズのノート1冊にボールペン1本もあれば十分です。読書ノートに決まったつくり方はありませんが、以下の情報は最低限記入しておくとよいでしょう。
【読んだ本の基本情報(タイトル・著者名)】
読んだ本のタイトルを記録しておくのは基本中の基本です。可能なら、著者名も入れてみましょう。記録を続けていれば、自分がよく読む本のジャンルや、いままで気づかなかった嗜好などが見えてくるかもしれませんよ。
【本を読んだ日(期間でも可)】
本を読んだ日あるいは期間を記録し続けていると、自分の読書ペースを把握できるようになります。「これから読む本は〇〇ページあるから、だいたい×日もあれば読めるだろう。来週中には読み終わって、次の本を選びたい」といった感じで、読書計画を具体的に立てられるようになるはずです。
追加で何か書く余裕がある方は、以下の項目についても記録してみてください。読んだ本について、自分の考察をさらに深めることができますよ。
【出版社名】
出版社名を記録していると、「このジャンルに強い出版社はここだ」「この出版社はこういった主張の本を出す傾向にある」など、読む本を探す際の手がかりを見つけやすくなります。同じテーマで異なる出版社から出ている本を読み比べるなどすれば、興味深い体験となるに違いありません。
【発行年月日】
読んだ本の発行年月日を記録することで、その本が、どのような時代背景や情勢のなかで出版に至ったかを想像できます。時代背景や情勢をふまえて本を読むと、特に何も考えずただ読み進めていくよりも、内容をより多層的にとらえられるはずです。
【印象に残った内容や表現】
本の内容や表現で気になった箇所があれば、読書ノートへ記入しておきましょう。なぜ気になったのかを深堀りすることは、自分の思考や感情を理解するきっかけとなります。また、自分で文章を書くことになったとき、気になった表現を読み返すことで、気持ちや考えを文字で表すヒントが得られるかもしれません。
【感想や意見】
読んだ本のなかで印象に残った内容や表現から、「本を読んでどのように感じたか」「著者の主張には賛成か反対か」など、自分の思考や感情を読書ノートへ記入してみてください。書いてみて初めて認識できることも、意外とたくさんあるからです。書いたものを見返した際、思考や感情のクセに気づけるかもしれません。
自分でつくる読書ノートなら市販の読書ノートよりも自由度が高いため、カラーペンで記入したりイラストを描き入れてページをにぎやかにしたりするなど、読んだ本についての記録を継続するための工夫も自分次第です。「読書をもっと楽しむにはどうすればよいか」「本の内容を勉強や仕事へ活かすにはどうすればよいか」といった目的も考えながら、読んだ本について自分なりに記録してみてくださいね。
読んだ本を記録する方法2:アプリケーション・WEBサービスを利用する
読書ノートではなく、アプリケーションやWEBサービスを用いて読んだ本を記録するという手もあります。読書ノートをわざわざ取り出して書くのが面倒という方は、こちらのほうがオススメかもしれません。たとえば、以下のようなものが挙げられるでしょう。
『ブクログ』
『ブクログ』(iOS/Android)では、WEBやアプリ上で「本棚」を作成、好きな本を登録して感想やレビューを書くことができます。著者名やキーワードを登録すれば新刊情報を通知してくれるため、お気に入りの著者やジャンルがある人におすすめです。
『読書メーター』
『読書メーター』(iOS/Android)では、読んだページや冊数といった「読書量」のグラフ化や、本のカテゴリー分けができます。自分の読書生活を視覚的に管理したい人にはぴったりです。
『読書管理ビブリア』
『読書管理ビブリア』(iOS)では、読んだ本のバーコードをスキャンするだけで登録が可能です。読んだ本に対する自分の感想や意見は、アプリ内だけでなく外部のSNSでも共有できます。「ブクログ」「読書メーター」とも連携可能なため、読んだ本の記録を面倒に感じがちな人におすすめです。
『積読ハウマッチ』
『積読ハウマッチ』では、ほかのサービスとは少し異なり、積ん読状態の本を登録すると、総金額(買った本の金額)を表示してくれます。また読了した本についても総金額(自分に投資してきた金額)を表示してくれるため、本にかけたお金を無駄にしたくない人は、こちらを利用すれば積ん読することなく読み進めることができるはずです。
アプリケーションやWEBサービスを利用する場合、読んだ本についての面倒な記録作業を、とても簡単に行なえるというメリットがあります。新刊情報の受け取りなど、紙の読書ノートにはない機能もあるため、読んだ本を記録する際は、紙の読書ノートとアプリを用途によって使い分けてもよいかもしれませんね。
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読んだ本を記録することで、読書時間が有意義になるのみならず、普段の生活でも有用な効果が得られるはずです。みなさんも、この機会に実践してみてください。
谷木由利(2017), 「『読書生活』の『記録』による指導とその効果についての研究」, 読書科学, Vol.58, No.4, pp.198-211.
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