自分は話すのが得意じゃないから、仕事で成功をつかめるはずがない……。そう思っている人、ちょっと待ってください。どちらかと言うと寡黙で口数が少ないタイプなのに、なぜか周囲から絶大な信頼を得ている――そんな人が身近にいないでしょうか。
他人に評価されるための要素は「言葉数」だけではありません。今回は、口数が少ないのに信頼されている人がしている3つの工夫をご紹介しましょう。
【1】口数が少ないのに信頼される人は「キャリブレーション」をしている
相手の心理状態を、表情や動き、声のトーンなど “言葉以外” のサインで把握することを、心理学用語で「キャリブレーション」と呼びます。
たとえば人は、いらだっていると表情がどこか殺気立ちますし、焦っていると話すスピードが速くなりますよね。心理状態によるこのような変化は、本人は気づいていない場合がほとんど。しかし、信頼される人は、相手の変化を敏感に察知します。キャリブレーション能力に長けており、いわば “空気を読んだ振る舞い” ができるのです。
たとえば上記のような状況で、普段は口数がそれほど多くない人から「大丈夫ですか?」「何かお手伝いできることはありますか?」などと声をかけられたらどうでしょう。「この人はまわりがよく見えている」「気遣いができる人だ」と評価したくなりますよね。
以下に、表情やしぐさと心理状態の関係性をいくつか列挙するので、キャリブレーションをする際の参考にしてみてください。
唇や爪をかんでいる→緊張している
身に着けている小物をいじっている→不安やストレスを抱えている
頬を触っている→確信のなさや気がかりを抱えている
唇や爪をかんでいる→緊張している
大汗をかいている→極度のストレスに直面している
【2】口数が少ないのに信頼される人は「相手の話を真剣に聞いている」
営業コンサルタントの菊原智明氏によれば、トップ営業マンほど接客時間が長いとのこと。しかしそれは、商品について事細かに説明しているからではありません。菊原氏は「話を聞く側にまわっているから」と説明します。
もちろん、相手が商品の詳細について知りたがっている場合は説明してもよいでしょう。問題は、相手が求めているかどうか。相手の気持ちなどお構いなしに独りよがりのトークを続けては、相手は辟易してしまいます。「この人は自分勝手な人だ」という印象を与えてしまいかねません。
一方で、それほど口数が多くないのに評価される人は、相手に話をさせます。そうやって会話を続けながら相手の悩みや問題点を深く探り、信頼感を醸成していくのです。
『相手が思わず心を開く “聞く技術”』著者の菊本裕三氏は、聞き上手になる第一歩として「相手に興味・関心をもつ」ことを挙げています。相手に意識を集中させて「どうして、そうなったのかな?」「なぜそう思ったのだろう?」と思いをめぐらせることで、真剣に話を聞いているという姿勢が相手にも伝わります。
また、「相手のすべてをありのままに受け止める」のも大切とのこと。「否定する」「遮る」「反論する」「要点をまとめようとする」「安易なアドバイスをする」のは、自分軸で話を進めることになってしまうためNGだそうですよ。
話すのが得意ではなくても、聞き方の改善は意識次第でできそうですよね。相手が心地よく話をしたくなるのは、信頼されている証拠です。
【3】口数が少ないのに信頼される人は「要件をひとことで伝えられる」
誰かに何かを伝えなければいけないシーンは仕事でたくさんあります。そんなとき、話すのが得意でなく口数が少ない人は、どうやって評価を得ているのでしょうか。そのカギとなるのが「要約力」。彼らは1から10まで事細かに話そうとはしません。内容を絞って端的に伝える能力に長けているのです。
ビジネスコンサルタントで『地頭力を鍛える』などの著書をもつ細谷功氏は、ひとことで要約できる人になるポイントとして「『要するに何なのか?』をシンプルに考えておく」ことを挙げています。
たとえば、今月ここまでの営業進捗について上司から問われた場合。「じつは月初は、電話がつながらなかったり相手からメールの返信が来なかったりして不安でした。なので先輩に相談して、訪問件数を増やすことにしたんです。そうしたら状況も回復してきまして、売上目標には到達する見込みです」などと報告したところで、結局何が言いたいのかは伝わりづらいはず。
ここで最も重要なのは「売上目標には到達する見込み」という情報であり、上司もそれが聞きたかったはず。口数が少ないのに信頼される人は、さまざまな情報をもっているなかで、最も重要だと思われるものを瞬時に特定したうえで、それを相手へ伝えているのです。
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口数が少ないのに信頼される人がしている3つの工夫をお伝えしました。話すのが苦手でも評価を勝ち取ることは可能です。日頃からぜひ心がけてみてください。
(参考)
日本NLP協会|キャリブレーション
ITmedia|相手に合わせて信頼関係を作る4つのステップ
働く人の心ラボ|不安の表す7つのシグナルを知っていますか?
ジョー・ナヴァロ 著, マーヴィン・カーリンズ 著, 西田美緒子 翻訳,『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』, 河出書房新社.
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【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEBで活用することを目標としている。