勉強中のイヤホンはOK?NG?

勉強時のイヤホン1

自分の家や自習室、カフェなどでの勉強中、イヤホンで音楽を聞いている人は多いはず。BGMを流すと、気分が乗って勉強がはかどるように感じる一方、「歌詞が気になってしまう」「集中力が落ちてしまっているかも」と心配になったことはありませんか?

そこで今回は、イヤホンで音楽を聞く勉強法のメリット/デメリットを解説しつつ、勉強の効率を上げるおすすめBGMをご紹介します。

イヤホンをつけて勉強するメリット

イヤホンをつけて音楽を聞きながら勉強するメリットとしては、以下が挙げられます。

やる気を感じられる

最もシンプルなメリットは、音楽を聞くとテンションが上がり、気分よく勉強に取り組めることです。好きな音楽を聞きながらであれば、退屈な勉強も頑張れる、という方は多いのではないでしょうか。

音楽で気分がよくなるのは、「ドーパミン」のおかげです。ドーパミンは、俗に「快感ホルモン」とも呼ばれ、やる気や快感をつかさどっている神経伝達物質。目標を達成したときや、達成できそうだと期待しているときなどに分泌され、快感をもたらします。

マギル大学(カナダ)の研究によれば、好きな音楽を聞いているときにもドーパミンが分泌されるそう。勉強する気が起きないときは、とりあえず好きな音楽を流して手を動かし始めれば、ドーパミンによってしだいに調子が出てくるでしょう。

精神が安定する

神経学者のダニエル・レヴィティン氏によると、音楽を聞いているときは「セロトニン」の分泌も活発になるのだそう。セロトニンは、俗に「幸せホルモン」とも呼ばれ、精神を安定させたりストレスを解消したりする神経伝達物質です。

セロトニンが増加すると、精神的に満たされるような幸福感が得られ、ストレスが軽減するため、リラックスした状態で勉強に臨めます。セロトニンは、記憶・学習能力にも深く関わっているので、学習効果を高める作用も期待できますよ。

雑音を遮断できる

音響心理学の専門家・辻村壮平氏によると、無音の空間では意識が周囲に向きやすくなるのだそう。たとえば、静かな図書館だと、ほかの人がキーボードを打つ音や咳払いといった些細な音まで響きやすいため、ちょっとした音で勉強への集中が乱れてしまう恐れがあります。

しかし、イヤホンをつけて音楽を流していれば、周囲の物音はほとんど気にならなくなります。そのため、目の前のことに意識を向けられ、勉強に集中しやすくなるのです。

このように、イヤホンを装着して勉強することにはいくつものメリットがあります。図書館や自習室で、イヤホンをつけて勉強している人が多いのにも、うなずけますね。

勉強時のイヤホン2

イヤホンをつけて勉強するデメリット

一方で、イヤホンをつけて音楽を聞きながら勉強するデメリットや注意点としては、以下が考えられます。

勉強内容によっては集中できない

音楽を流すことで勉強のパフォーマンスが上がるか下がるかは、勉強の内容次第です。精神科医の樺沢紫苑氏によると、一般的に、手順が決まっている単純作業では効率が上がりやすいものの、深い思考を要する場合は効率が下がってしまう場合もあるそう。

たとえば、単純な練習問題を解くときだと、音楽のおかげで効率が上がるかもしれない一方、テキストの文章を読み込まないといけない場合は、BGMを邪魔に感じるかもしれません。音楽を聞きながら勉強に集中できるのはどんなときで、集中できないのはどんなときなのか、自分の傾向を把握しておきましょう。

効果は個人差が大きい

音楽によって勉強の効率が上がるかどうかには、個人差があります。これまでの研究では、個人の特性によって、BGMがパフォーマンスに及ぼす効果が変わることが報告されているのです。

たとえば、ストックホルム大学のゴラン・B・W・セーデルルンド氏らによる2010年の研究によると、集中力の低い人がホワイトノイズ(後述)を聞くと作業効率が上がったものの、もとから集中力が高い人にとっては逆効果だったそう。ほかにも、「内向的な人には音楽が邪魔になりやすい」「ワーキングメモリー(一時的に情報を記憶する能力)の小さい人にはBGMが邪魔になりやすい」などの研究結果が報告されています。

つまり、BGMによって勉強のパフォーマンスが上がるかどうかは、各人のさまざまな性質によって左右されると考えられます。さらに、同じ人でも、その日の体調などによって効果は変わってくるかもしれません。

勉強中にイヤホンをつけるときは、BGMのせいで集中が妨げられていないか、十分注意しましょう。

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勉強中にイヤホンで聞くおすすめのBGM

参考までに、勉強中にイヤホンで流すのにおすすめのBGMを、いくつかご紹介します。

ボーカルなしの音楽

ストラスブール大学(フランス)による1989年の研究では、ボーカル入りの曲は楽器のみの曲より脳を混乱させやすく、認知パフォーマンスを下げる傾向があると示されました。みなさんも、勉強中にボーカル入りの曲を流し、歌詞の内容に気をとられてしまった経験があるのではないでしょうか。

そのため、勉強中に音楽を聞くなら、歌詞つきの曲はなるべく避け、ジャズやクラシックをはじめとする楽器のみの音楽を選びましょう。

環境音

勉強中のBGMには、環境音もおすすめです。川のせせらぎや、木々が風で揺れる音、カフェなの雑踏で聞こえる音など、自然や街中で録音されたものを指します。

特に自然環境の音は、「1/fゆらぎ」という不規則生を含んでおり、精神をリラックスさせると言われています。脳科学者の武者利光氏によると、1/fゆらぎとは、「パワーが周波数(f)に反比例する」こと。生物の心拍や水晶時計など、自然界にあまねく存在するそうです。

環境音は、YouTubeをはじめとする動画投稿サイトや、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスで無数に見つかるので、ぜひ活用してみましょう。環境音についてより詳しく知りたい方は、「波の音で勉強に集中できるってホント?」も参考にしてみてください。

◆YouTubeで聞けるおすすめの環境音

ホワイトノイズ

人工的につくられた「ノイズ」もBGMとしておすすめです。ノイズと聞くとよくないイメージを抱くかもしれませんが、「ホワイトノイズ」という特殊なノイズには、集中力を高める作用があるとされています。

ホワイトノイズとは、すべての周波数の音を等しく含む音。テレビの砂嵐に似た「ザー」というものです。上でも言及しましたが、ストックホルム大学の研究では、集中力の低い子どもにホワイトノイズを聞かせたところ、学習パフォーマンスが向上したそう。ホワイトノイズには、勉強中のBGMとして効果が期待できるのです。

ホワイトノイズは、YouTubeなどで見つかります。音楽や環境音では集中しづらいという人も、ホワイトノイズなら快適に感じるかもしれません。周囲が騒がしいと感じるときや、特に集中したいとき、ぜひ活用してみてください。

◆YouTubeで聞けるホワイトノイズ

イヤホンをつけて勉強をする習慣がある方は、いつもの音楽だけでなく、ご紹介したBGMも試してみてください。

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個人差があるとはいえ、イヤホンでBGMを聞きながらの勉強には、一定の効果が期待できます。やる気を高めたいとき、落ち着いて勉強したいとき、周囲の物音が気になるときなどは、本記事を参考に、BGMをうまく利用してみてくださいね。

【ライタープロフィール】
佐藤舜

大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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