やりたいことも、やらなければならないこともたくさんあるけど、いろいろありすぎて何から始めていいのかわからない……。
それなら、仕分ける・要約するなどして書き出す、シンプルな方法で頭のなかをスッキリさせませんか? さまざまな根拠をふまえて紹介しましょう。
カオス化した頭の整理は「書き出す」ことから
株式会社「脳の学校」代表・加藤プラチナクリニック院長の加藤俊徳氏によると、頭のなかの整理が苦手な人は、思考系と理解系の脳番地※が未熟なのだそうです。しかし、頭のなかの情報を書き出すことにより、目で見てそれらを処理できるので、未熟な脳番地のサポーター役として “視覚系” 脳番地を迎えられるのだとか。
たとえ普段は頭の整理ができている人でも、過度に忙しくなったり、ストレスが続いたりすると、頭のなかは徐々に混沌としてくるはず。いつもはよく働いてくれる思考系脳番地や理解系脳番地が、うまく働いてくれない状況だって考えられるわけです。頭の整理整頓における情報のアウトプットは、誰の脳にとっても有益だと言えるでしょう。
(※加藤氏が提唱した脳の分類法)
書き出すことが頭の整理にいい根拠
情報のアウトプットが頭のなかの整理を助ける証拠として、明治大学教授の堀田秀吾氏が自身の著書(※)で紹介している研究を、ふたつ挙げましょう。
(※堀田氏著『世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣』を東洋経済オンラインが一部抜粋・再構成したものを参考)
不安やプレッシャーを整理・処分してくれる
ひとつはシカゴ大学のラミレス氏とベイロック氏が行なった研究です。この研究では、被験者の大学生が以下のとおり「テスト前の10分間で行なうこと」別に分けられ、テストを受けたそう。
- グループ1:何もせず静かに座って過ごす
- グループ2:テストについての自分の感情や考えを書き出す
- グループ3:いまの気持ちとは関係ないことを書き出す
このテストを受けるにあたり、大学生たちは不安やプレッシャーを感じる仕掛けを施されていたとのこと。「テストの難度が高い」「テストの様子を撮影し、それをあとで観る」といったことです。
その結果、グループ1とグループ3の正答率は7%下がりましたが、自分の感情や考えを書き出したグループ2の正答率は4%上がったそうです。この結果を見るかぎり、集中の妨げになる不安やプレッシャーなどが、書き出すことで整理・処分されたと考えられるはずです。
「ワーキングメモリ」が改善する
もうひとつの研究は、ノースカロライナ州立大学のクライン氏と北テキサス大学のボールズ氏らのものです。この研究では、被験者の大学生に毎日20分間、2週間にわたって次を書き続けてもらったそう。
- Aグループ:大学に入った感想や心情を書く
- Bグループ:大学とは関係のないトピックを書く
するとその7週間後、大学に入った感想や心情を書いたAグループは、大学には関係ないことを書いたBグループよりも、ワーキングメモリと精神的な部分の改善が見られたそうです。
ワーキングメモリは “脳のメモ帳” とも呼ばれる脳機能のこと。会話や読書、計算など、仕事や日常生活におけるあらゆる作業や動作に必要な情報を、一時的に記憶し、処理します。
ワーキングメモリに詳しいプロパズル作家の北村良子氏によれば、このワーキングメモリを鍛えると、頭のなかで常に整理整頓ができている状態になるそうです。これらをふまえると、いまの悩みや関心事について書き出すことがワーキングメモリにいい影響を与え、頭のなかの整理整頓を助けてくれると考えらえます。
頭のゴチャゴチャを片づけるコツ
しかし、どんなに書くことが脳にいいとはいえ、ただ漠然と頭のなかのゴチャゴチャを書き出してしまうと、それらを目にして余計に混乱してしまうかもしれません。だからこそ、思考の整理家である鈴木進介氏が提唱する、次の単純明快な頭のなかの片づけ方がおすすめです。
MY基準で仕分ける
MY基準(自分基準)による仕分けとは、自分が(その対象に)こだわるか、こだわらないかの違いで仕分けるシンプルな方法です。ここで大切にするべきは、自分にとって大事な情報だけを頭に入れておくことなのだとか。
これを参考に、レポート用紙の中央に線を引き、左右それぞれに「こだわる」「こだわらない」と書いて、頭のなかを書き出す作業をやってみました。すると――
“視覚系” 脳番地がサポーターになってくれたからでしょうか、少し書き出しただけなのに、頭のなかで「こだわる」「こだわらない」とそれぞれ判断していたものが、実際にはあべこべだったと気づきました。
また、「こだわる」の一番上に書いた “予約した料理の変更” は、後日行なおうと思っていた作業ですが、無意識のうち真っ先に書いたことから “自分にとっては大きな関心事なのだ” と気づき、すぐ行動してみたら、予想以上に頭のなかがスッキリしました。
そのスッキリ感は、気がかりなことがひとつ減ったからというだけでなく、ほかの案件もひとつひとつ解決していけそうな気がしたから生じたと言えます。
「要するに~?」と自問
また、鈴木氏は、相手に何かをひとことで伝えようとする行為は、相手が理解しやすくなるだけでなく、何が大事かを自分自身で認識することにもなるので、頭の整理になると述べます。同氏いわく、効果的なひとことを生み出すコツは、いったん頭のなかで「要するにどういうこと?」と自分に問いかけることなのだとか。
これを、頭のなかの情報をアウトプットする作業に置き換えて、「要するにどういうこと?」という自問に、答えるかたちで箇条書きしてみました。ちなみにテーマは、この作業を行なう時点で頭を覆っていた、「近日の食事会にいったい何を着て行けばいいのか?」です。
すると、答えているうちに、意外とあっさり問題が解決していきました。具体的な流れはこうです。
私はいま「近日の食事会にいったい何を着て行けばいいのか?」とモヤモヤしている。そこで、
→「そのモヤモヤとは、要するにどういうこと?」と自問。すると、
→「気温に対する~」「カジュアルばかりで~」などの答えが出てきた。そこで、
→「じゃあ、要するにどうしたいの?」とさらにグイグイ攻めてみたら、
→いくつかのアイデアが絞り出されたあとで……、
→「そうか、しまってあった(存在を忘れていた)服を活用すればいいわけだ!」と気がついた。
この段階を経て、頭のなかがスッキリしたのは言うまでもありません。
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今回紹介した「仕分ける・要約するなどして書き出すシンプルな頭の整理整頓術」は、頭のなかの不要な情報を処分したり、優先順位をつけたり、保留にしたり、問題解決のアイデアを与えてくれたりと、マルチな効果を与えてくれます。ぜひお試しくださいね。
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脳の学校|第245号 脳の整理整頓~頭のゴチャゴチャを整理しよう~
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STUDY HACKER 編集部
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