【植木理恵さんが教えてくれた!】「ついていきたい上司」「味方につけたい部下」と距離を縮める意外な方法

「ついていきたい上司」「味方につけたい部下」と距離を縮める方法を植木理恵先生が語る01

ビジネスパーソンとして、個人のスキルを高めていくことはもちろん大切です。しかし一方で、企業という組織に勤める以上、有能な上司や部下を味方にしておくことも重要であるはず。そうするために、味方にしたい「ターゲット」に対してどう振る舞うべきなのでしょうか

行動心理学を専門とする心理学者の植木理恵(うえき・りえ)先生がアドバイスをしてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

心の距離を一気に縮める「カウンセリングポジション」

相手が上司か部下かにかかわらず、ひとつ意識しておくべきこととして「ポジション」が挙げられます

たとえば、人が真正面に立っていたとしたらどう感じますか? やはり圧迫感がありますよね。それは、視線の自由度と心の自由度が正比例するからです。正面に立たれるとその人を見るしかありませんから、気持ちに余裕がなくなるというわけです。

一方、隣に並んで座るとなると、今度は視線の自由度が増しすぎてしまい、心も自由になりすぎてしまう。好きなタレントやスポーツのことなど、たわいもない会話をするのならいいですが、仕事上の深い話をして味方につけるといったことには向かないポジションといえるでしょう。

では、どうすればいいのでしょうか? それは、相手から見て斜め横の位置を取るのです。私たち心理学者は、それを「カウンセリングポジション」と呼んでいます。

味方にしたい上司に書類かなにかを見せつつ、「ちょっとご覧になってもらっていいですか」なんていいながらデスクサイドのポジションを確保するのです。そうすれば、相手にある程度の視線の自由度、心の自由度を感じさせながら心の距離を縮めることができます

このポジションは心理学者なら誰もが知っていますから、大きな心理学会に出たときなどは大変です。少し面倒なタイプの偉い先生がいたら、みんなが斜め横のポジションを取りたがるのです(笑)。

どんな服を着ているか、どんな発言をするか、話す声の大きさといったことは、このポジションと比べればほんのささいなもの。味方につけたい人に対しては、カウンセリングポジションを取ることを心がけてみてください

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聞き上手になり、人づてで褒めて上司を味方にする

また、部下の立場として上司を味方につけたいのなら、やはり「聞き上手」になることが大切でしょう。というのも、たくさんしゃべった人のほうが、そうではない人に比べて「その時間が楽しかった」と思うものだからです。上司にたくさんしゃべらせることができたなら、上司は「こいつは俺と合うな」と思ってくれます。

ですが、質問攻めにするべきだというのではありません。上司を質問攻めにするということは、質問をするために部下自身がたくさんしゃべっているというケースにもなり得るからです。そうではなくて、適度に上手に話題を振って、上司に気持ち良く話させることが大切です。

それから、「褒め方」も重要です。味方につけたいと思っているということは、その上司のことを尊敬しているわけですよね? でも、その気持ちを直接相手に伝えることはあまりおすすめしません。想像してみてください。面と向かってあまりに褒めちぎられると、嬉しさを感じる一方で、「なにか裏があるのかな?」なんて考えてしまいませんか?

そうではなくて、人づてに褒めるのです。先輩に対して、「やっぱり上司の○○さんってすごいですよね」なんていってみる。そのことが先輩を介して上司に伝われば、あなたの上司に対するリスペクトは信憑性をもってしっかりと伝わります

プラベートでも同じでしょう。知り合いから、「そういえば、△△さんがあなたのことをすごく楽しくてすてきな人だっていっていましたよ」なんて聞かされたら、ただ本人から褒められるより、よほど嬉しくなってしまうはずです。

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部下の「自己愛を満たしてくれる人」になる

また、将来伸びていきそうな有望な部下を味方につけておきたいと考える上司のみなさんなら、相手の「自己愛」を満たしてあげることを考えてみてください。これは、カウンセラーの基本態度でもあり、そのベースにはハインツ・コフートという心理学者が唱える「人は自己愛を満たしてくれる人間を探しながら生きていく」という説があります。

その「自己愛を満たしてくれる人」には3つのケースがあります。ひとつは「鏡のような人」。自分がなにかをしたことに対して「いいね」といってくれたり、右に動いたら一緒に右に動いてくれたりと、同じようにリアクションをしてくれる人のことです。

もうひとつは「双子のような人」。たとえば、悩んでいる部下がいたとしたら、「俺も若い頃に同じようなことがあってさ……」というふうに「その気持ち、わかるぞ!」と伝えてくれる上司は、まさにその「双子のような人」といえます。

最後の3つ目は「この人のようになりたい」という野心を満たしてくれるような理想像になり得る人です。この3つ目に関しては、実際には会えない人や亡くなった人というケースもあります。みなさんにも、実際には会えない有名人やすでに亡くなった人に対して憧れを持っているということもあるでしょう。

これら3種類の「自己愛を満たしてくれる人」を、人は探し続けているのです。

なかでも特に、「双子のような人」になることを心がけてみてください。自分が未熟だった頃のことを吐露することに日本人は恥ずかしさや抵抗を感じる傾向にあるのか、欧米人に比べて日本人はそういうことをしないといわれているからです。でも、「君くらいの頃に俺も同じように悩んだよ」と素直に告白してくれる上司がいたら、部下は逆にリスペクトするのではないでしょうか

いずれにせよ、3種類の「自己愛を満たしてくれる人」に上司がなることができれば、それこそ部下はあなたにぞっこんになってくれるでしょう。

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【植木理恵先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
植木理恵さん「いちど “運のせいにする” 人ほど成功する」――いつも努力頼みだとメンタルが危うい。
「物事が続かない」原因は意外とシンプル。習慣化成功のカギは “近接目標” が握っている。

賢い子になる子育ての心理学

賢い子になる子育ての心理学

  • 作者:植木 理恵
  • ダイヤモンド社
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【プロフィール】
植木理恵(うえき・りえ)
1975年生まれ、大分県出身。心理学者。お茶の水女子大学生活科学部卒業、東京大学大学院教育学研究教育心理学コース博士課程修了。2004年から2007年にかけて文部科学省特別研究員を務める。日本教育心理学会から2000年に城戸奨励賞、2005年に優秀論文賞を授与される。現在は都内総合病院のカウンセラー及び慶應義塾大学理工学部非常勤講師を務めながら、テレビ等メディア出演も精力的にこなしてる。『人間関係の困った!が100%解決する行動心理学』(宝島社)、『「やる気」を育てる! 科学的に正しい好奇心、モチベーションの高め方』(日本実業出版社)、『幸運を引き寄せる行動心理学入門』(宝島社)、『マンガでわかる! すぐに使える行動心理学』(宝島社)、『植木理恵の人間関係がすっきりする行動心理学』(宝島社)、『図解 使える心理学』(KADOKAWA)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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