「物事が続かない」原因は意外とシンプル。習慣化成功のカギは “近接目標” が握っている。

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早起きや勉強に読書など、自らを成長させていくために習慣化したいことがあるというビジネスパーソンは少なくないはずです。

ところが、それらを習慣として定着させることはそう簡単ではありません。つい、「今日は疲れているから」「今週は忙しいから」と自分に言い訳して、気づいたときには三日坊主……そんなことも多いでしょう。

どうすればうまく習慣化できるのか、心理学者の植木理恵(うえき・りえ)先生が行動心理学の観点から教えてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

成果を「見える化」して意図的にフィードバックを得る

なにか続けたいことがあるのに三日坊主になってしまう要因としては、その続けたいものが「フィードバックが遅い」ものだということが考えられます。たとえば、早起きにしろ勉強にしろ読書にしろ、わかりやすい成果がそうあるものではありません。

そうであるなら、意図的にフィードバックをつくってしまえばいいのです。早起きならスマホのアプリに起床時間を記録するとか、読者や勉強なら本や参考書にしおりを挟んだり付箋を貼ったりして「ここまでやった!」というふうに「見える化」するわけです。

これらは、給料が上がるというようなはっきりした成果ではないかもしれません。でも、自分がやるべきことをやれているという成果を感じることにはつながりますから、間違いなく習慣化には効果的であるはずです。

成果を見える化するという意味では、最終的な遠隔目標と同時に、それをより小刻みにした「近接目標」を立てることも大切です。いきなり「フルマラソンを走ろう」と思っても、そう簡単にできるものではありませんよね。マラソンランナーたちは、「とりあえずあの角まで走ろう」「あの電柱まで走ろう」というふうに考えながら、自分を鼓舞しています。それと同じように考えて、小さな近接目標を立てるのです。

行動心理学の観点から考える「習慣化」の決定的手法を植木理恵先生が語る02

「自分へのご褒美」も大切な近接目標のひとつ

この近接目標の大切さは、マウスを使った実験でもはっきりと示されています。その実験は、マウスを3つのグループに分けて、ある課題に取り組ませるというものでした。

3つのグループのひとつ目は、課題をクリアしたらすぐに餌をもらえるグループ、ふたつ目は、課題を8回クリアしたら餌をもらえるグループ、最後は課題をクリアしても餌をもらえないグループです。

そうすると、マウスのストレスの感じ方にはグループによって大きな違いが生まれました。ストレスを最も感じないのは、当然、課題をクリアすればすぐに餌をもらえるグループです。では、最もストレスを感じたグループはどれだと思いますか? 多くの人が課題をクリアしても餌をもらえないグループだと思うはずです。心理学者たちの想定もそうでした。

ところが、実際には課題を8回クリアしたら餌をもらえるグループだったのです。そのマウスたちを解剖すると胃潰瘍だらけ……。それだけ、大きな目標をいきなり与えられることが強いストレスになっていたというわけです。

また、近接目標を取り入れるということでいえば、いわゆる「自分へのご褒美」である自己報酬も効果的です。わたしの場合も早朝から原稿を執筆するときにはケーキなどを用意しておいて「10時になったら食べられる」というふうに考えながら仕事をします。ちょっと寂しいですけどね……(苦笑)。

「自分へのご褒美」といういい方だと、女性がすることのようなイメージを持つかもしれません。でも、男性だって自分を高めるために大いにやってもいいはずです。それこそ、わたしのケーキではありませんが、「この仕事が終わったらいつもの発泡酒じゃなくちょっと贅沢をしていいビールを飲もう」ということでも、十分に自分を奮い立たせることになるのではないでしょうか。

行動心理学の観点から考える「習慣化」の決定的手法を植木理恵先生が語る03

一緒に目標に向かって頑張るペースメーカーを見つける

それから、誰か一緒に頑張る人を見つけることも、近接目標的な心理として大切でしょう

マラソンランナーも、自分の前に誰も走っていないと、すごくつらいものだそうです。でも、誰かが前を走っていると、「あいつを追い抜くぞ!」「あいつに引き離されないぞ!」という心理が働き、自分を鼓舞できます。

それに近いこととして、上司の鉄則のひとつに「部下を孤独にしてはいけない」というものがあります。部下をチームではなくひとりにすると、先のマラソンランナーのような心理が働かず、仕事の効率が一気に下がってしまうからです。

その鉄則を自らにあてはめるというわけです。自分にとってのペースメーカーになる人を見つけて一緒に努力してみてはどうでしょうか

その際、一緒に頑張る人と、お互いに具体的な数字で「○日までに参考書の○ページまでをやる」というふうに近接目標を出し合ってもいいかもしれませんね。薬物依存症患者に断薬をさせる場合、医師は「これから10日間は薬を半分にする」というふうに具体的な数字を示して徐々に薬を減らしていきます。

これは、他人から指示されたからできることでもあります。自分で目標を立てる場合、どうしてもちょっと甘くなってしまうものです。でも、一緒に頑張ると決めたペースメーカーの人が「○日までに参考書の○ページまでやる」といったら、ちょっと無理してでも「よし、自分も頑張ろう!」と思えますよね

そして、その目標を実際に声に出して周囲に宣言してしまいましょう。これは「宣言の自己成就化」と呼ばれる心理を生かす手法です。いったん宣言したなら、やらざるを得ない。宣言によって自分にプレッシャーをかけることになり、実際に力が湧き上がるということがわかっているのです。

行動心理学の観点から考える「習慣化」の決定的手法を植木理恵先生が語る04

【植木理恵先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
植木理恵さん「いちど “運のせいにする” 人ほど成功する」――いつも努力頼みだとメンタルが危うい。
【植木理恵さんが教えてくれた!】「ついていきたい上司」「味方につけたい部下」と距離を縮める意外な方法

賢い子になる子育ての心理学

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【プロフィール】
植木理恵(うえき・りえ)
1975年生まれ、大分県出身。心理学者。お茶の水女子大学生活科学部卒業、東京大学大学院教育学研究教育心理学コース博士課程修了。2004年から2007年にかけて文部科学省特別研究員を務める。日本教育心理学会から2000年に城戸奨励賞、2005年に優秀論文賞を授与される。現在は都内総合病院のカウンセラー及び慶應義塾大学理工学部非常勤講師を務めながら、テレビ等メディア出演も精力的にこなしてる。『人間関係の困った!が100%解決する行動心理学』(宝島社)、『「やる気」を育てる! 科学的に正しい好奇心、モチベーションの高め方』(日本実業出版社)、『幸運を引き寄せる行動心理学入門』(宝島社)、『マンガでわかる! すぐに使える行動心理学』(宝島社)、『植木理恵の人間関係がすっきりする行動心理学』(宝島社)、『図解 使える心理学』(KADOKAWA)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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