どんなに忙しくても「幸せに働ける人」の共通点。やっぱり大切なのは “この気持ち” だった

島井哲志さん「忙しくても幸せに働ける人の共通点」01

仕事に追われて「忙しさのあまり心がすり減る人」がいる一方で、なかにはどんなに忙しくても幸せに働ける人もいます。数十年に渡って仕事を続ける社会人である以上、できれば後者のような人間になりたいものです。そうなるための方法を、日本におけるポジティブ心理学研究の第一人者である島井哲志(しまい・さとし)先生が教えてくれます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

幸福感が高まる行為を、習慣に組み込んで「自動化」する

幸福感を高める習慣を身につけるには、その前提として私たちが使っている知的な思考のシステムについて理解しておく必要があります。それは大きくふたつで、私が「じっくりシステム」「直感システム」と呼んでいるものです。その名のとおり、前者はじっくりと熟考すること、そして後者は直感的な感覚に従って思考することを指します。

たとえば、自動車を運転するのなら、「目的地には○時に到着したいから、遅くとも△時には出発しなければならないな」といったことを考えます。そのように意図的に考えて計画を立てるときに使われるのがじっくりシステムです。

でも、いざ出発したなら、いちいち多くのことを考えません。初心者ドライバーならともかく、運転に慣れている人ならその場その場でほかの車との距離だとか信号、道路標識の内容といった情報を得て、ほとんど非意識的に運転します。そのときに使われているのが直感システムです。

そして、幸福感を高めることを考えるのなら、自分の幸福感を高められる習慣を、直感システムで行なうようにしていくことがポイントとなります。なぜなら、直感システムに従って行なう行動は、先に「非意識的」と述べたようにいわば「自動化」されたものだからです。

「私は疲れているときでもコーヒーを飲むと幸福感が高まる」と自覚している人がいるとします。でも、コーヒーを淹れて飲む行為を、「疲れているときはコーヒーを飲まなければ……」「そのためにはまずコーヒー豆をひいて、お湯を沸かして、ドリッパーにペーパーフィルターをセットして……」とそのつどいちいちじっくりと考えてからでないとできないとしたら、どうでしょう?

それこそ疲れているときや幸福感が低下しているときには、せっかくの幸福感が高まる行為をできないことにもなりかねません。そうではなく、自分の幸福感を高められる行為を、自動で行なわれる習慣のなかに組み込むことが大切なのです。

島井哲志さん「忙しくても幸せに働ける人の共通点」02

 

「やらされ感」をもってやるのか、自発的に「やりたい」からやるのか

とはいえ、社会人であれば自分の幸福感を高める行為ばかりしているわけにはいきません。仕事であれば、気が進まないことでもやらなければならない場面も数多くあります。そして、じつはそこにこそ、社会人としての幸福感を高めるための重要なポイントがあるのです。

というのも、専門的には自己決定理論と言いますが、私たちの幸福感と「自発性」のあいだには大きな関連があるからです。同じ仕事をするのでも、「やらされ感」をもってやるのか、そうではなく「これは自分がやるべきことなんだ!」「これをやることで自分は社会に貢献できるんだ!」「だから、これは自分がやりたいことだ!」と自分で決定してやるのかでは、得られる幸福感に大きな違いが生まれます。もちろん、幸福感が高まるのは後者のケースです。

つまり、仕事の内容ではなくその仕事に対する意識の違いが重要だということです。清掃員をしているAさんは、「生きていくために仕方なく仕事をする」人だとします。一方、同じ仕事をしているBさんは、「こんな工夫をすればもっときれいにできるのではないか」「どうすればお客さまやこの施設の利用者に喜んでもらえるだろうか」と常に考えているとします。

Aさんは、完全に「やらされ感」にとらわれている人ですから、仕事から得られる幸福感はほとんどないと言っていいでしょう。一方のBさんは、与えられた仕事のなかにも「自分がやるべきだし、やりたい!」「社会に貢献できる!」と感じることを自ら見つけています。つまり、自分の仕事を、熱意をもってまさに自発的につくり上げているのです。

はたしてみなさんは、AさんとBさんのどちらのタイプでしょう? 仕事には面倒でやりたくないこともあるのが現実ではありますが、そのなかでもBさんのような姿勢で自発的に臨めるものを見つけていってほしいと思います。

島井哲志さん「忙しくても幸せに働ける人の共通点」03

ポジティブな感情をもって、仕事の「入り口」に臨む

そして、そのような自発的に仕事に臨む姿勢をつくるためにも、その「入り口」を大切にしてほしいと思います。私の勤め先である大学には高校も併設されているのですが、特に試験の時期になると、学校に近づくにつれて朝の登校中の高校生たちの足取りが重くなっていることを感じます。試験を受けたくない気持ちが表れているのでしょう。

通勤中のみなさんはどうですか? いまはリモートワークになって通勤していない人もいると思いますが、先の高校生のように会社が近づくにつれて足取りが重くなる人もいるでしょう。それでは、仕事を始める「入り口」から仕事に対する自分の姿勢を「やらされ感」に染めているようなものです。

では、どうすればいいのか? 私は、下を向いて重い足取りで会社に向かうのではなく、家を出る前や通勤中にしっかりと顔を上げて、ポジティブな気持ちになることをしたり見つけたりすることをおすすめします。まずはどんなことでもいいので、ポジティブな気持ちになることから朝をスタートするのが大切です。

それは人それぞれ。朝にコーヒーを飲むことかもしれませんし、好きな音楽を聴きながら通勤すること、あるいは通勤途中の花壇にある花の成長を観察することかもしれません。これは、まさに先にお伝えした「自分の幸福感を高められる行為を、自動で行なわれる習慣のなかに組み込むこと」です。

その行為自体は、仕事とは直接的に関係がないものでもかまいません。自分が幸せを感じられる行為を出勤前に、そして自動的に行なえる習慣を身につけましょう。そうできれば、仕事に臨む姿勢、そこから得られる幸福感はそれまでとは大きく変わってきます。

島井哲志さん「忙しくても幸せに働ける人の共通点」04

【島井哲志先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
幸福感を高めたいなら「理想の自分」よりも「目標の自分」を思い描くべき納得の理由
「職場で幸せになる」ための3つの秘訣。対人関係をよくする “最高の習慣” とは

【プロフィール】
島井哲志(しまい・さとし)
1950年、福岡県生まれ。関西福祉科学大学心理科学部教授。関西福祉科学大学大学院心理臨床学専攻代表。関西学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程を修了。福島県立医科大学にて博士(医学)を取得。指導健康心理士、認定心理士。専門はポジティブ心理学、健康心理学、公衆衛生学。日本に初めてポジティブ心理学を紹介し、主観的幸福感、強み、人生の意味等の尺度の研究などを行ない、日本心理学会や公衆衛生学会でのシンポジウムなどで普及活動を進めている。著書に『科学的に幸福度を高める50の習慣』(明日香出版社)、『看護のためのポジティブ心理学』(医学書院)、『幸福の構造』(有斐閣)、『ポジティブ心理学入門』(星和書店)、『「やめられない」心理学』(集英社)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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