サブスクとは、サブスクリプション(subscription)の略で、一般的に「定額制の使い放題サービス」を意味する言葉です。動画を見たり食べ物を買ったりなど、あらゆるサービスがサブスク(サブスクリプション)化する時代になりました。
サブスクの存在はすっかりメジャーになりましたが、
- サブスクとは厳密に何を意味するのか
- どんなサブスクがあるのか
- なぜサブスクは人気なのか
- サブスクにはどんなメリット・デメリットがあるのか
- 仕事や勉強に役立つサブスクはあるのか
など、知らないこともあるのでは? この記事を読めば、サブスクとは何かがすっかりわかりますよ。
サブスクとは
サブスクとはそもそもなんなのでしょうか? 『日本大百科全書』(小学館)によると、サブスクリプションとは「一定料金を払えば、一定期間内なら商品やサービスを何度も自由に利用できるビジネスモデル」です。
つまりは、定額制の使い放題サービス。次のものが有名ですね。
- Netflix:動画見放題(月990円)
- Apple Music:音楽聴き放題(月980円)
- Amazonプライム:動画見放題、音楽聴き放題など(月500円)
- メチャカリ:ファッションアイテム借り放題(月6,380円)
(※税込、基本的なプラン。以下同)
「定額制」「使い放題」というふたつの条件を満たすサービスが、一般的にサブスクと呼ばれています。その意味では、スポーツジムや英会話教室もサブスクです。
しかし、日本語の「サブスク」は、subscriptionという英単語から意味がズレています。subscriptionを分解すると、「sub(下に)+scription(書く)」。「書類の下にサインを書く」から転じて「雑誌などの定期購読」や「会費」を意味するようになりました。サインして申し込むようなサービスは、なんでもsubscriptionなのです。
日本では、新聞の定期購読をサブスクとは呼びませんよね。しかし、英語の意味を考えれば新聞もサブスクです。「新聞をとる」はsubscribe to the newspaperと表現します。
一方で、新聞の定期購読と同じビジネスモデルなのに「サブスク」と呼ばれるサービスも。
- 毎月1回、お肉が届く(「お肉のサブスク」など)
- 毎月1回、化粧品の詰め合わせが届く(「BLOOMBOX」など)
「○○し放題」という要素がなく、新聞と同じ「定期購入」です。それにもかかわらず、これらはサブスク(サブスクリプション・ボックス)と呼ばれています。
つまり、近年現れた定額サービスは「サブスク」を名乗ることが多いのです。「定額制」よりキャッチーに聞こえるためでしょう。
まとめると、「サブスク」の定義は次の3つ。
- 狭義のサブスク(辞書的):定額かつ使い放題のサービス
【例】Netflix - 広義のサブスク(慣用的):定額サービスのうち新しいもの
【例】Netflix、食品の定期購入 - さらに広義のサブスク(英語):定額サービスすべて
【例】Netflix、食品の定期購入、新聞の定期購読
3つの「サブスク」が混在しているのが現状なのです。
サブスクの類義語・対義語
サブスクという概念について理解を深めるため、サブスクの類義語・対義語も確認しておきましょう。
類義語
サブスクに似た言葉には、次のようなものがあります。
定額制
『デジタル大辞泉』(小学館)は、定額制を「一定の料金を払うことで、期間中に何度でもサービスが受けられる形態のこと。(中略)サブスク」と説明しており、サブスクの同義語としています。ただし、定額制には「使い放題」の要素がないため、『日本大百科全書』の説明とは少しズレています。
会員制
会員制は、契約を結ぶという点でサブスクに近い言葉です。ただし、「無料で会員になれる場合もある」「会員になったうえで別料金がかかることが多い」という点で、サブスクとは異なるものです。たとえば、TSUTAYAでは会員になったうえでレンタル料金が別途かかるため、会員制ですがサブスクではありません。
レンタル
商品を貸し出して対価を得るビジネスモデルが「レンタル」。「定額で服を借り放題」などレンタル要素を含むサブスクは多いものの、すべてのサブスクがレンタル形式ではありません。物件や機材を長期間貸す場合、レンタルではなく「リース」と呼ばれます。
リカーリング
馴染みが薄いかもしれませんが、「リカーリング」という言葉もあります。英語で「循環」という意味です。
『デジタル大辞泉』によると、リカーリングとは「製品・サービスを一度売って終わるのではなく(中略)顧客から継続して収益を得ること」。たとえば、電気や水道です。
リカーリングは、定額制以外の課金形態もとるため、必ずしもサブスクではありません。たとえば、電気は従量課金制ですよね。リカーリングはサブスクの一部と言えます。
対義語
サブスクとほぼ反対の概念を表す言葉には、以下のものがあります。
買いきり
サブスクの対義語をしいて挙げるなら「買いきり」でしょう。商品を普通に買うことです。
CDショップでCDを買ったり、本屋で本を買ったりして自分のものにするのが「買いきり」。サブスクでは商品の利用権を購入する一方、買いきりでは所有権を購入します。
従量課金制
「いくら使っても定額」がサブスクなら、使えば使うほどお金がかかる「従量課金制」が対義語とも言えます。一定の利用量を超えると従量制になる「定額従量制」、従量課金の上限を超えると定額制に切り替わる「キャップ制」なども、サブスクとは大きく異なるモデルです。
サブスクが広まった背景
サブスクは、なぜ日本で人気になったのでしょうか? 背景を見てみましょう。
2012年、画像編集ソフト「Photoshop」などを開発するAdobeは、ソフトの販売方式を買いきりからサブスクリプションに切り換えました。パッケージ版は高価なため、消費者が手を出しづらかったのです。しかし、サブスクなら1回の支払い額が安いため、購入のハードルが低くなります。
サブスクのメリットに注目が集まると、同様のビジネスモデルが日本で広まっていきました。「定額制」や「使い放題」という概念は以前からあるものの、次のような要因でサブスクが人気を博したのです。
- コンピューターソフト業界での成功により、「定額使い放題」の強みが再発見された
- データを高速かつ無制限に送受信できるインフラが整った
- リーマンショック後の節約志向により、安価なサービスへの需要が高まった
動画配信・音楽配信サービスの成功を経て、さまざまな業界にサブスクが広がっています。矢野経済研究所の調査によると、2020年度のサブスク市場は8,759億6,000万円で、前年度比28.3%増と急成長。
2019年、「サブスク(サブスクリプション)」はユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされました。サブスクは現代のトレンドなのです。
サブスクの例
サブスクについて十分にわかったところで、実際にどんなサブスクがあるのか、具体例をご紹介します。価格は税込で、基本的なプランです。
エンターテインメント
- Netflix:動画見放題(月990円)
- Amazonプライム・ビデオ:動画見放題(月500円)
- Apple Music:音楽聴き放題(月980円)
- Spotify:音楽聴き放題(月980円)
書籍
- Kindle Unlimited:電子書籍読み放題(月980円)
- dマガジン:電子雑誌読み放題(月440円)
- shelff:本が3冊ずつ届く(月2,750円)
パソコンソフト
- Microsoft 365 Personal:Word、Excel、PowerPointなど使い放題(月1,284円)
- Adobe Creative Cloud:Photoshop、Illustratorなど使い放題(月6,248円)
- ウイルスバスター クラウド 月額版:デバイス3台まで保護(月462円)
ワーキングスペース
- OFFICE PASS:400以上のシェアオフィス使い放題(月26,400円)
- BIZcomfort:100以上のシェアオフィス使い放題(月19,800円)
- リージャス:世界3,400以上のシェアオフィス使い放題(月17,490円)
ゲーム
- PlayStation Now:PS4・PS3の対象ソフト遊び放題(月1,180円)
- Nintendo Switch Online:SFC・FCの対象ソフト遊び放題(月306円)
- Apple Arcade:200以上のモバイルゲーム遊び放題(月600円)
ファッション・化粧品
- メチャカリ:洋服借り放題(月3,278円)
- ワイクリン:ワイシャツ20枚をレンタル&クリーニング(月14,080円)
- カリトケ:腕時計のレンタル(月7,480円)
- スパークルボックス:アクセサリー借り放題(月3,300円)
- BLOOMBOX:化粧品の詰め合わせ(月1,650円)
家具・家電
飲食店
- coffee mafia:コーヒーなど一日2杯(月4,800円)
- Provision:4名まで何度でも飲食可能(月33,000円)
- Eats パス:Uber Eatsの対象店舗で1,200円以上の注文が配送料無料(月498円)
食料・飲料
- お肉のサブスク:厳選された高品質の肉(月10,800円)
- Coke ON Pass:自販機で一日1本(月2,700円)
- キリン ホームタップ:ビールサーバーのレンタル&ビール4L(月8,250円)
- ステラ:カリフォルニアのプレミアムワイン(月11,000円)
乗り物
その他
- ブルーミー:毎週/隔週で季節ごとの花が届く(1回1,265円)
- ドクターズミー:医師や薬剤師に相談し放題(月324円)
- ADDress:全国の対象物件に住み放題(月44,000円)
- Casie:アートの月額レンタル(月3,300円)
- Mystery for You:オリジナルの謎解きグッズ(月1,700円)
- OKOLIFE:毎月お香が届く(3か月8,800円)
ありとあらゆる商品・サービスがサブスク化されていることがわかりますね。
サブスクを利用するメリット
サブスクがこれだけ人気なのは、利用者に多くのメリットをもたらしてくれるからです。主に6つのメリットが挙げられます。
利用のハードルが下がる
サブスクの場合、対価を月額などで少しずつ払います。1回の支払い額が小さいため、手を出しやすいのがメリットです。1度にまとめて3万円払うより、毎月1,000円ずつ料金を支払うほうが気楽ですよね。
多くの商品に触れられる
商品をひとつひとつ買うのに比べ、サブスクなら多くの商品・コンテンツに触れることができます。
DVDをお店でレンタルする場合、ひとつ借りるたびに料金がかかるため、本当に見たい作品を厳選しますよね。一方のサブスクは見放題のため、「そこまで興味があるわけでもないけど、見てみるか」ということができます。サブスクがなければ視聴しなかっただろう作品も多いはずです。
利用が楽
サブスクだと購入の手続きが最小限なので、簡単に利用することができるのもメリットです。
サブスク以外の方法で映画を見る場合、わざわざ店舗に行ったり、データを毎回購入したりしないといけません。一方のサブスクなら、アプリやブラウザを立ち上げて再生ボタンを押し、デジタルコンテンツを楽しむだけ。
この手軽さも、サブスクならではのメリットです。
物が増えない
物を「買う」のではなく「利用する」のが、サブスクの基本。定期購入型のサブスクは別ですが、多くのサブスクには「物を所有する」という煩わしさがありません。収納スペースを心配することなく、本や服など、さまざまな商品を契約期間内に楽しめるのです。
気軽に契約・解約できる
例外もありますが、短期間で解約しても違約金が発生せず、好きなときだけ利用できるのもサブスクのメリット。「とりあえず1か月だけ」と登録できるため、新しい商品やサービスを気軽に試せます。
サービスが改善され続ける
上に述べたとおり、気に入らないサブスクは簡単に解約できます。そのため、技術支援やコンサルティングを手がけるTably株式会社代表取締役の及川卓也氏によると、提供者側は顧客離れを防ぐため、サービスを常に改善し続けなければならないそう。
Netflixがオリジナルコンテンツを製作し続けているのも、ユーザーを飽きさせないためでしょう。サブスクは、利用者にとってメリットの多いビジネスモデルなのです。
サブスクを利用するデメリット
メリットの多いサブスクですが、もちろんデメリットもあります。
定期的な出費が続く
利用の有無にかかわらず月額課金を続けないといけないのが、サブスクの難点。使わないまま契約を続けると、とてももったいないことになります。
サブスクを利用する機会が減ったものの、解約が面倒なのでそのまま……というのは、よくあること。使い放題のサブスクは、「いつでも使える」という安心感から使用頻度が下がりがちなため、注意しましょう。
「もったいない精神」で手放せなくなる
サブスクは、手軽に解約できるのがメリット。とはいえ、「せっかく契約したんだから、まだ解約したくない」と考えてしまうのが人間です。
「サンクコスト効果」をご存じですか? それまで費やした時間やお金をもったいなく感じ、やめにくくなってしまう心理のこと。ギャンブルで負けているのに「せっかく大金を注ぎ込んだのだから、ここでやめるわけにはいかない」と泥沼にハマっていくような状況です。
サブスクの場合も、「せっかく登録したんだから」「せっかく続けてきたんだから」という心理が働き、解約を先延ばしにしてしまうことが考えられます。
物が残らない
「物が手元に残らない」というメリットがデメリットになることも。
映像配信系のサブスクだと、視聴した作品が手元に残らないのはもちろん、解約すると「視聴履歴」や「お気に入りリスト」などのデータさえ閲覧できなくなってしまいます。物を所有しないゆえの不便さ・さみしさを感じることもあるでしょう。
たくさんのサービスに登録しすぎる
多くのサブスクは、月に数千円程度で使い放題。ひとつひとつは安いからと、たくさんのサービスに登録してしまうかも。
しかし、1日は24時間しかありません。使い放題のサービスも、無限に享受できるわけではないのです。登録したサブスクが増えれば増えるほど「もとをとる」のが難しくなり、かえって損をするかもしれません。
サブスクを仕事・勉強に活かす方法
サブスクを上手に活用すれば、仕事や勉強の効率を上げることもできます。サブスクを活用するアイデアをご紹介しましょう。
仕事・勉強用のスペースを借りる
自宅では仕事や勉強がはかどらない。カフェに長居するのも気が引けるし……。そんな悩みをおもちなら、作業用の空間をサブスクで借りてみては? 気分によって作業場所を変えることができますよ。
日本経済新聞社の「OFFICE PASS」というサービスの場合、新宿駅付近だけで9件のスペースが利用可能。「午後からは西口で仕事しよう」「今日は気分を変えて、別のスペースにしよう」と環境を変え、マンネリを防止できます。
利用者同士の交流を促してくれるシェアオフィスも。仕事や勉強への意識を高めたいなら、いい刺激になるでしょう。
◆サブスクで作業場を借りるメリット
- 自宅より仕事・勉強に集中できる
- 場所を変更できるので、飽きにくい
- ほかの利用者から刺激を受けられる
◆サブスクで作業場を借りる際のチェックポイント
- 個室かオープンスペースか
- フリードリンクやWi-Fi、コンセントなどはあるか
- 会議室はあるか
- 利用者同士の交流があるか
◆ワークスペース系サブスクの例
- OFFICE PASS:400以上のシェアオフィス使い放題(月26,400円)
- BIZcomfort:100以上のシェアオフィス使い放題(月19,800円)
- リージャス:世界3,400以上のシェアオフィス使い放題(月17,490円)
身だしなみを整える
ビジネスパーソンにとって、仕事の実力と同じくらい大事なのが第一印象。仕事がデキる人でも、身だしなみが乱れていれば信頼してもらえません。
そこで役立つのが、ファッションアイテムをレンタルできるサブスクです。「ワイクリン」は、毎月20着のワイシャツを届けてくれます。洗濯せずに返却可能。洗濯やアイロンの時間を節約できるうえ、いつもピカピカのシャツで仕事に臨めますね。
普段着やオフィスカジュアルで働いているなら、「メチャカリ」などのレンタルサービスがいいでしょう。ブランドネクタイをレンタルできる「KASHI KARI」、腕時計をレンタルできる「カリトケ」などもあります。
知識をインプットする
知識をインプットしたいなら、本などが読み放題のサブスクを活用しましょう。本を1冊ずつ買うのと違い、ちょっと気になる程度の本も気軽に読めます。普段は手に取らないジャンルにもチャレンジできるので、見識や興味の幅が広がるでしょう。
最もメジャーなのは、200万冊以上が読み放題になる「Kindle Unlimited」。雑誌をたくさんチェックしたいなら、「dマガジン」など雑誌特化型のサブスクを使いましょう。日本経済新聞を読める「日経電子版」、経済関連のニュースをキュレーションしてくれる「NewsPicks」、本の要約を10分で読める「flier」などもおすすめです。
ビジネススキルを身につける
スキルアップに役立つ情報を動画で配信してくれるサブスクも多くあります。
代表的なのは「GLOBIS 学び放題」。ビジネススクールのグロービスによる、ビジネス・経営に必要な知識を体系的に解説してくれる動画配信サービスです。動画1本は10分程度で、通勤中などスキマ時間に見やすいのもポイント。
ビジネスツールを利用する
パソコンのソフトは何万円もするから手を出しにくい……というのは過去の話。ビジネスまわりのソフトは、多くがサブスクで利用できます。
- Adobe Creative Cloud:PhotoshopやIllustratorを使える
- Microsoft 365:WordやExcelを使える
- Google ドライブ:各種データをクラウドに保存
- OneDrive:各種データをクラウドに保存
- ウイルスバスター クラウド 月額版:ウイルスやランサムウェアを防ぐ
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サブスクとは、利用者にとってメリットの多いものなのです。サブスクと上手に付き合っていくため、この記事をぜひお役立てください。
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