勉強日記とは、学習内容や科目、勉強時間、使った問題集といった情報を手帳などに毎日記録する勉強法。できたことやできなかったこと、今後やるべきことなどが明確になるので、勉強効率の改善やモチベーションの維持につながります。反対に、勉強の記録をまったく残さなければ、自分の現状を客観的に認識できず、成長が滞ってしまうかもしれません。
今回は、勉強日記のメリットややり方、勉強日記をつけるのに役立つアプリケーションをご紹介します。
勉強日記のメリット
勉強日記をつける主なメリットは、以下の3つです。
モチベーションが湧く
勉強日記をつけることは、モチベーションの維持・向上につながります。習慣化コンサルタントの古川武士氏によると、私たちのモチベーションは、「目標と現状の差」が認識できたときにかき立てられるそう。
- テストで80点とることを目標にしたのに、60点しかとれなかった
→「この20点を埋めたい!」 - 100ページある参考書のうち、40ページしか終わっていない
→「残り60ページを早く終わらせたい!」
勉強のモチベーションを維持するには、目標と現状を明確に認識することが重要なのです。勉強日記を習慣にすると、目標と現状の差を毎日認識するので、「このままではいけない」「自分はまだまだだ」という悔しさと常に向き合うことになります。そのため、学習意欲を維持しやすいのです。
勉強の効率を改善できる
勉強日記をつけるメリットには、勉強効率の改善も挙げられます。勉強の記録をこまめにつけておくと、自分のペースや実力を客観的に把握できるためです。
たとえば、いつもは1時間に10問の問題を解けるのに、8問しか解けなかった日があれば、なんらかの原因で時間をロスしたのだと判断できます。なぜ8問止まりだったのか原因を突き止めれば、解決策が見つかるでしょう。しかし、勉強の記録を残さなければ、普段のペースがそもそもわからないため、その日の進み具合は順調だったのかどうかもわからないのです。
また、普段は1時間に10問のペースなら、11問、12問……と少しずつハードルを上げることで、実力がついていくでしょう。このように、勉強日記をつければ、勉強の進捗を量的に把握し、パフォーマンスの管理をしやすくなるのです。
フィギュアスケートの羽生結弦選手、サッカーの本田圭佑選手など、多くのトップアスリートも日記を活用しています。羽生選手の場合、練習中に気になったことや思いついたこと、よかった点や悪かった点をノートに書き、課題を洗い出しているそうです。
自信がもてる
勉強日記は、ダメだった点を反省するだけでなく、よかった点を発見して自信を高めるうえでも有効です。
精神科医の樺沢紫苑氏によれば、よかったことを日記に書いたり、イヤなことを吐き出したりすると、自己受容感(自分自身を認められる感覚)が高まるそう。「今日は勉強のノルマを終えられなくて悔しい」「でも、新しい問題が解けるようになって嬉しい」など率直な感情を日記に書くと、気持ちがスッキリするだけでなく、自分の感情を客観視できます。
樺沢氏によると、ダメだった点1つに対し、よかった点を3つほど書くのが、自己受容感を高めるのに効果的だそう。勉強日記にはポジティブな内容も書くよう意識してみてください。
自律神経が整う
日記を手書きすることには、自律神経を整える効果が期待できます。 自律神経とは、内臓の働きやホルモンバランスの調整など、人体を全般的にコントロールしている神経。自律神経の乱れは、イライラした気分になる、血流が滞るなど、心身のさまざまな不調につながる恐れがあります。
医師の小林弘幸氏によると、「手書き」には呼吸を安定させる作用があるため、日記を手で書くと自律神経を整えやすいのだとか。パソコンやスマートフォンで日記を書いている方も多いかもしれませんが、心を落ち着けたいときは、ノートなどに丁寧に文字を書く時間を設けましょう。
勉強日記は、心や身体のコンディションを整えるうえでも有意義なのです。
勉強日記のやり方1:DCAP
勉強日記をつける方法の一例として、『偏差値30でもケンブリッジ卒の人生を変える勉強』(あさ出版、2014年)などを著した塚本亮氏が推奨するやり方をご紹介しましょう。
塚本氏流の勉強日記では、その日やったことを記録して振り返り、その反省をもとに翌日以降の計画を立てます。具体的な記入の順番は以下のとおりです。
- Do(今日何をしたか?)
- Check(それはどうだったか?)
- Action(どうすれば改善できるか?)
- Plan(次はどうするか?)
有名な「PDCAサイクル」がありますが、勉強日記の場合は、計画(Plan)ではなく実績(Do)を起点にします。スタートは異なりますが、その他の流れは同じです。では、それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
Do
まず、その日の勉強内容を具体的に記録します。「何を」「どのくらい」勉強したかはもちろん、「所要時間」や「点数」など、なるべく細かく書きましょう。
◆Doの例
2015年のTOEFL過去問(Reading)を解答&自己採点した。
所要時間/120分(10:00~12:00)
点数/23点(30点満点)
Check
次に、勉強してみてどうだったか振り返りましょう。以下のように、当初の目標や計画と照らし合わせると、反省点が見つかりやすいはずです。
- 所要時間は予定通りだったか?
- 計画通り進んだか?
- 目標の点数に届いたか?
また、自信をつけるために、できなかったことだけでなく、うまくできたことも合わせて書きましょう。
◆Checkの例
制限時間内に解き終われなかった。点数も、目標としていた28点には届かなかった。自己採点も少しダラダラやってしまったので、余計に時間がかかった気がする。ただ、前回よりも点数が上がったので嬉しい。
Action
反省点をふまえ、どうすれば改善できるか考えましょう。同じ失敗を繰り返さないためにはどうすればいいか、より効率を上げるにはどうすればいいか、「Check」をもとに対策を練ります。
◆Actionの例
制限時間内に解き終わるため、時間配分をあらかじめシビアに決めておくことにする。また、英文を読む量を増やして読解速度を上げる。演習の量を増やし、問題の解き方に慣れる必要もある。
Plan
最後に、「Action」で挙げた改善点を、翌日以降の勉強にどう活かすか考えます。「Action」の方針を具体的な行動に落とし込みましょう。「英文を読むトレーニングが必要」と反省したなら、「1日1ページずつ英文を訳す」などです。
◆Planの例
解答速度を上げるため、次回から「1分考えてわからなければ、飛ばして次の問題に行く」というルールを設ける。また、読むスピードを上げるため、1日1ページずつ英文を訳す。問題演習は、毎日最低5問はやる。
以上の「Do→Check→Action→Plan」の流れで勉強日記をつけると、昨日よりも今日、今日よりも明後日と、日増しに成長していけるのです。
「4行日記」でもOK
勉強日記を毎日つけるなんて面倒だ、と感じる方もいるかもしれませんね。そんな人におすすめなのが、「4行日記」。1日たった4行で日記を書く方法です。
要領は、先述の勉強日記とまったく同じ。「Do→Check→Action→Plan」の流れで、各項目を1行で簡潔に書きましょう。たった4行なので、5分もあれば書き終わるはず。これなら、面倒くさがりな人でも継続しやすいのではないでしょうか?
◆4行日記の例
【Do】TOEFL過去問(2015年、Reading)、120分(10:00~12:00)、23点。
【Check】制限時間をオーバーしたうえ、28点に届かなかった。
【Action】英文読解のトレーニング量を増やす。
【Plan】1日1ページずつ、英文を訳すことにする。
これから勉強日記に挑戦する方は、まずは手軽な “4行” から始めてはいかがでしょうか。
勉強日記のやり方2:塗り絵勉強法
さらに手軽な勉強日記としてご紹介したいのが、「塗り絵勉強法」です。
塗り絵勉強法とは、勉強した時間に応じて方眼紙を塗り潰し、勉強実績を記録していく方法。方眼紙の1マスを15分とみなし、端のマスから塗っていきます。
- 英語を1時間勉強した!
→赤で4マス塗る - 経済学を2時間15分勉強した!
→青で9マス塗る
科目と色の対応は、自由に決めてOKです。
(画像引用元:STUDY HACKER|勉強嫌いの私が1年で3000時間勉強して京大に合格した「ぬり絵勉強法」)
マスに日付を書いておくと、「いつ」「何を」「どのくらい」勉強したかひとめで把握できます。たとえば、上図だと、5月17日のぶんは2マスしか塗られていないので、パッと見ただけで「この日はサボってしまったんだな」とわかるのです。
また、色のバランスを見れば、勉強時間の偏りも把握できます。「この科目はほとんど勉強していない」「得意だからといって、この科目ばかり勉強している」とひとめでわかるのです。このような一覧性・可視性は、通常の勉強日記にはない特性でしょう。
塗り絵勉強法には、モチベーションにつなげやすいというメリットもあります。勉強した日にはたくさん色を塗れるので、やればやるほど方眼紙が色で埋め尽くされていくのです。こうしたワクワク感も、文章の勉強日記にはない魅力と言えます。
塗り絵勉強法は、一般的な勉強日記とはまるで異なりますが、とても手軽なので、面倒くさがりな方でも継続できるはずです。
◆ぬり絵勉強法のやり方
- 方眼ノートまたはルーズリーフと、蛍光ペンを用意する
- 勉強時間に応じてマスを塗り潰す(1マス15分)
- その日塗った最初のマスに日付を記入する
◆ぬり絵勉強法のメリット
- 勉強実績をひとめで把握できる
- 勉強バランスの偏りをチェックできる
- 楽しんで続けられる
塗り絵勉強法に慣れてきたら、できれば前章でご紹介した勉強日記を併用し、詳しい振り返りも行なうとさらに効果的です。
勉強日記をつけられるアプリ
最近では、勉強日記に使えるスマートフォン向けアプリケーションが数多く登場しています。5つご紹介しましょう。
学習記録帳
「学習記録帳」(iOS/Android)は、勉強した時間や内容を詳細に記録したい方に最適なアプリケーションです。
「英語を12時~14時45分まで勉強した」と入力したい場合、科目一覧から「英語」を選択して、勉強の開始時間と終了時間を入力。すると、24時間のタイムスケジュールを表すグラフの「12時~14時45分」に対応するエリアが塗り潰されます。
英語は赤、経済学は青など、自由に色を設定可能。どの科目をどれくらい勉強したか、視覚的に見分けられます。「英文読解は赤」「英単語の記憶は青」と、ジャンルを細かく分けるのもいいですね。
勉強時間を日ごと・月ごとなどに自動でまとめてくれる「サマリーレポート」や、テストの成績を折れ線グラフ化する機能もあるので、これまでの成果を振り返るのにも非常に便利です。
◆特徴
- 日ごと・月ごとに成果を振り返れる
- 累計の勉強時間のレポートが見られる
- データをグラフで見られる
勉強時間管理
「勉強時間管理」(Android)も、勉強時間を記録・集計してくれるアプリケーション。ストップウォッチ機能で勉強時間を記録できるのが便利です。ストップウォッチを起動して勉強を始め、勉強を終了したらストップボタンを押すことで、勉強時間を秒単位で測れます。
あらかじめ勉強予定時間をセットしてカウントダウンする「タイマー」や、手動で打ち込む「数値入力」でも、勉強時間を記録可能。それぞれの方法で記録された勉強時間は、日・週・月ごとに自動で集計されます。よりシビアに時間を管理したい方や、手軽に勉強時間を記録したい方には、「勉強時間管理」が適しているはずです。
◆特徴
- ストップウォッチやタイマーで勉強時間を記録できる
- 累計の勉強時間をレポートで振り返れる
コソ勉
このメディア「STUDY HACKER」から生まれたアプリケーションが「コソ勉」(iOS)。上で説明した「塗り絵勉強法」をスマートフォン内で可能にします。
「コソ勉」では、16×22の方眼を塗り潰していくことで勉強時間を記録します。使える色は12種類。科目に応じて色分けすることで、どの科目をどのくらい勉強しているか、視覚的に把握できます。
- 英語を1時間勉強した!
→赤色で4マス塗る - 経済学を105分勉強した!
→青色で7マス塗る
ほかのアプリケーションと異なるのは、「タップで色を塗る」という直感的な操作で記録できること。また、マスをどんどん埋めることで達成感が得られますし、無駄のないシンプルな機能・操作性も特徴です。勉強記録を数字で入力するのが面倒な方や、アプリケーションの複雑な操作を覚えるのがイヤな人には、最も適しているはず。
◆特徴
- 直感的な操作で記録できる
- 勉強時間を俯瞰で振り返れる
- マスを埋めることで達成感が得られ、やる気につながる
aTimeLogger
「aTimeLogger」(Android)は、勉強時間だけでなく、1日の時間の使い方全般を記録できるアプリケーションです。
「Study」「Eat」「Work」「Walk」などのアイコンが用意されており、各行動を始めるときにタップしてストップウォッチを作動させ、時間を計測。こうして計測された1日の過ごし方は、円グラフなどで振り返ることができます。
上で紹介したアプリケーションとは違い、「aTimeLogger」は、勉強内容を細かく記録するのにはあまり向いていません。しかし、「aTimeLogger」を使って1日の過ごし方を見直せば、時間の無駄を省き、勉強時間を確保することにつながるでしょう。
同様の機能をもつアプリケーションに「Toggl Track」(Android)があります。「aTimeLogger」と比べ、デザインがよりスマートな印象。スマートフォン端末内のカレンダーに入力された予定を読み取れたり、同一アカウントに複数端末からアクセスできたりといった点も異なります。
どちらのアプリケーションも、生活習慣を記録・改善したい方におすすめです。
◆特徴
- 1日の時間の使い方を記録し、生活リズムを把握できる
- タップ操作で簡単に記録できる
- 勉強時間を詳しく記録するのには不向き
みんチャレ
「みんチャレ」(iOS/Android)は、その名のとおり「みんなで励まし合いながらチャレンジ」することで、モチベーションの維持を図るアプリケーションです。
「みんチャレ」では、ユーザーが5人1組になって成果を報告し合い、互いに刺激しながら目標達成を目指します。「勉強」「筋トレ」「ダイエット」など30種類以上のジャンルから選び、同じ志をもった4人の仲間とつながれるものです。
「みんチャレ」は、勉強実績を記録(報告)するだけでなく、勉強仲間とのコミュニケーションを主な目的としている点で、ほかのアプリケーションとは一線を画しています。「勉強意欲がすぐになえてしまう」「勉強習慣をどうしても継続できない」という方は、ぜひ「みんチャレ」を使ってみてください。
◆特徴
- 同じ志をもった仲間とオンラインでつながれる
- モチベーションを維持し、三日坊主を防止できる
スマートフォンで勉強日記をつけたい方は、ご紹介した5つのアプリケーションを参考にしてみてくださいね。
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順調に成長していくためには、勉強日記をつける習慣が不可欠です。1日の終わりには必ず勉強日記を書き、その日の反省と翌日の目標を意識することで、成長の「DCAP」サイクルを回せます。記録や反省をせず、漠然と勉強している方は、本記事の内容を参考に、今日から勉強日記を始めてみてはいかがでしょうか。
(参考)
人生を変える習慣化ブログ|記録しフィードバックを受ける
久保田崇(2011),『官僚に学ぶ勉強術』, マイナビ.
WASEDA ONLINE|羽生結弦の強さの秘訣 “発明ノート”とは?~トップアスリートが実践するメンタル・メソッドの効果
東洋経済オンライン|自己肯定感が低すぎてつらい人のための処方箋
マイナビウーマン|日記をつけるだけで美しくなる? 医学部教授が説く自律神経のチカラ
塚本亮(2019),『頭が冴える! 毎日が充実する! スゴい早起き』, すばる舎.
STUDY HACKER|勉強嫌いの私が1年で3000時間勉強して京大に合格した「ぬり絵勉強法」
App Store|学習記録帳
Google Play|勉強時間管理
Google Play|aTimeLogger
Google Play|Toggl Track
Google Play|みんチャレ
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。