糖分の摂取は勉強を助けてくれるのでしょうか、それとも妨げてしまうのでしょうか。勉強への集中力を高めてくれる糖分補給のコツがあったら、ぜひ知りたいところですよね。
今回は、「糖分」「糖質」「ブドウ糖」といったキーワードの意味を解説しつつ、勉強中におすすめの糖分摂取法を紹介します。
勉強と糖分の関係
勉強と糖分の関係を正しく理解するために、関連する言葉の意味を確認しておきましょう。
まずは「糖分」。『大辞林 第三版』(三省堂)によると、糖分とは「糖類の成分」もしくは「甘み」のこと。そして、糖類とは「炭素と水との化合物として表される物質」であり、「広義には炭水化物を指す」のだそう。
さらに、『日本大百科全書』(小学館)によると、糖類は「広義には糖質と同じ意味」とのこと。「デジタル大辞泉」(小学館)には、糖質について「炭水化物のこと。穀物・砂糖・芋類などに含まれ、エネルギー源となる」と書かれています。つまり、広い意味において、糖分=糖類=糖質=炭水化物と考えてよさそうです。
もちろん、それぞれの用語が指すものは、厳密には異なります。たとえば、厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」において、炭水化物は以下のように説明されています。
炭素と水素の化合物で、たんぱく質、脂質と並ぶエネルギー産生栄養素のひとつです。食物として体内に取り入れられエネルギー源となる糖質と、体内の消化酵素では消化できない食物繊維があり、糖質は単糖類、少糖類、多糖類に分類されます。
(引用元:e-ヘルスネット|炭水化物/糖質)
つまり、糖質とは炭水化物の一部であり、栄養学的にはイコールで結べるものではないのです。しかし、この記事ではシンプルなわかりやすさを優先し、糖分・糖類・糖質・炭水化物をおおむね同じものとして扱うことにします。
糖分摂取のメリット
「糖分」という言葉の意味がなんとなくわかったところで、糖分は勉強にどのようなメリットをもたらすのでしょう? 結論から言うと、糖分は脳を活性化させてくれるのです。
「e-ヘルスネット」によると、食事によって摂取された糖質は、体内で分解されて「ブドウ糖」になります。ブドウ糖は「脳がエネルギーとして利用できる唯一の物質」なのだそう。つまり、糖質を摂取しなければ脳は機能しないのです。脳が働かなければ、勉強できるはずもありません。
脳がブドウ糖をエネルギー源としている以上、勉強やデスクワークで脳が酷使されるにつれ、ブドウ糖はどんどん消費されていきます。精神的な疲れを感じると甘いものが食べたくなる人は多いはず。その理由を、農畜産業振興機構のWebサイトは以下のように説明しています。
砂糖だけでなく、ご飯、パン、麺といった炭水化物(糖質)に多く含まれるでんぷんも体内で分解されてブドウ糖に変わりますが、砂糖はでんぷんに比べてブドウ糖に分解されやすく、速やかにエネルギー源として取り込むことができる良さがあります。疲れたときやイライラした時に甘いものが欲しくなるのは、脳が早急にエネルギーを必要としている場合が多いので、理にかなっているのです。
(引用元:農畜産業振興機構|「優れた砂糖の効果を知って、食生活を豊かに!」 ※太字による強調は編集部が施した)
お菓子だけでなく、米やパンにも甘みを感じますよね。つまり、我々は主食に含まれる糖質からブドウ糖をつくり、脳を働かせているのです。しかし、農畜産業振興機構によると、主食よりも砂糖を口にしたほうが早くエネルギーを得られるとのこと。砂糖が使われた甘いお菓子は、脳にすばやくエネルギーを送り込んでくれるようです。
糖分摂取のデメリット
しかし、糖分摂取は勉強にとってデメリットを引き起こすことも。デメリットにも、やはりブドウ糖が関係しています。
糖分を摂取して体内でブドウ糖がつくられると、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が上昇。すると、上がった血糖値をもとに戻すため、「インスリン」というホルモンが分泌されます。
「糖分摂取→ブドウ糖生成→血糖値上昇→インスリン分泌→血糖値下降」という流れ自体はごく正常なのですが、このプロセスが速く・激しくなると問題です。砂糖はすばやく分解され、ブドウ糖になりやすいのでしたね。速くブドウ糖になるということは、血糖値が急激に上昇するということ。すると、インスリンが大量に分泌され、血糖値が急降下します。
血糖値が急降下すると、正常値を通り越し、血糖値が低すぎる「低血糖」という状態に。つまり、脳が機能するのに必要なエネルギーが不足してしまいます。国立研究開発法人・国立国際医療研究センター内の糖尿病情報センターによれば、低血糖になると以下をはじめとした症状が表れるのだそう。
- 不安な気持ちになる
- 頭が痛くなる
- 集中力が低下する
- 生あくびが出る
これでは、とても勉強に集中できませんね。糖分を摂取しすぎると、勉強に悪影響が出てしまうのです。
勉強に効果的な糖分のとり方
糖分は、勉強にメリットもデメリットももたらしうることがわかりました。では、どうすればメリットだけを享受できるのでしょうか?
意識すべきなのは、「血糖値を急激に上げない」ことです。勉強していて「疲れたな。甘いものが食べたい……」と感じるのは、脳を使ってブドウ糖が消費されたから。砂糖がたっぷり使われたお菓子を食べると、たしかにブドウ糖が大量に生成されるものの、待っているのは血糖値の乱高下による集中力不足。砂糖は避け、血糖値をゆっくり上昇させてくれるものを口にすることで、減ったブドウ糖を補うべきなのです。
血糖値をゆっくりと上昇させる食べ物は「低GI食品」と呼ばれています。GIとはGlycemic Index(血糖指数)の略です。大塚製薬株式会社のWebサイトによると、低GI食品のおやつとしては以下のようなものが挙げられます。
- バナナ
- いもようかん
- 大豆の焼き菓子
上記のおやつに共通している特徴は、食物繊維を多く含んでいること。食物繊維には、食後の血糖値の上昇をゆるやかにする働きがあります。上記のおやつなら、脳にエネルギーを補給できるだけでなく、甘みを感じられるため精神的な満足感も得ることができますね。糖分摂取のメリットを大いに享受しつつ、デメリットを排除できるというわけです。
そして、大塚製薬によると、「低GI食品は腹持ちがいい」ため、食べすぎを防げるのだそう。摂取エネルギー量(カロリー)が過多になりにくいため、肥満の防止にも役立ちますね。低GIのおやつは、集中して勉強するのに役立つだけでなく、「太らないおやつ」でもあるというわけです。
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勉強していると、脳はどんどんエネルギーを消費していくため、糖分を摂取する必要があります。しかし、砂糖たっぷりのお菓子に手を伸ばすのは待ってください。低GI食品には、勉強にも健康維持にも役立つうえ、おいしいおやつがたくさんあります。必要な糖分は、低GI食品で摂取してみましょう。
(参考)
e-ヘルスネット|炭水化物/糖質
e-ヘルスネット|ブドウ糖
e-ヘルスネット|インスリン
e-ヘルスネット|食物繊維の必要性と健康
農畜産業振興機構|「優れた砂糖の効果を知って、食生活を豊かに!」
糖尿病情報センター|低血糖
オオツカ・プラスワン|話題の「低GI食品」とは!?
コトバンク|糖分
コトバンク|糖類
コトバンク|糖質
VOCE|「肥満」につながる「血糖値スパイク」って?
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