意思決定は「論理 or 直観」どちらが優れているのか? 経営脳科学者の意外な答え

影山徹哉先生インタビュー「意思決定は論理or直観のどちらが優れているのか」01

ビジネスの場では、「ロジカル・シンキングこそが大事だ」というふうに、論理的思考の重要性がよく説かれます。その一方、直観でズバッと即断即決するような一流の経営者がいることも事実です。

ビジネスにおいて論理と直観はどちらが優れているのか――。そんな疑問を、経営脳科学者であり京都芸術大学客員教授の影山徹哉(かげやま・てつや)先生にぶつけてみたところ、意外な答えが返ってきました。先生は「『第3の思考』である『無意識思考』の重要性が今後は増していく」と言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

直観、論理的思考とは異なる「第3の思考」

「思考」とひとことで言ってもいくつかの種類があります。従来から研究されてきたのは、「速い思考」と「遅い思考」の2つ。前者はいわゆる「直観」であり、後者は「論理的思考」です。それらがどんなものかはなんとなくイメージできると思いますが、具体的な場面で説明してみましょう。

たとえば、パン屋さんでパンを選ぶ場面。店頭に並ぶパンを見て、「あ、これおいしそう!」という具合に即座に選ぶときに働いているのは直観です。一方の論理的思考は、「昨日はちょっとカロリーが高めの食事をしたし、今日はヘルシーなものにしよう」とじっくり考えて買うべきものを選ぶようなときに働いています。

ご存じの人もいるかもしれませんが、それら2つの思考を研究してノーベル賞を受賞したのが、アメリカの心理学者であり行動経済学者であるダニエル・カーネマンです。でもじつは、思考はその2つだけではありません。3つ目の思考が、私が提唱している無意識思考です。「第3の思考」なので「Third Thinking」という呼び方もしています。

私たち人間が生命活動を営むうえでは、とても多くのことを無意識にやっています。心臓の拍動、呼吸のリズムの調整といったものをわざわざ考えてやっている人はいませんよね。それと同じように、思考にも無意識のうちに行なわれるものがあるのです。

影山徹哉先生インタビュー「意思決定は論理or直観のどちらが優れているのか」02

無意識思考とは「一度寝かせる思考」

その無意識思考とはどんなものかを簡単に言うと、一度寝かせる思考ということになります。今度は、休日にパソコンを購入するために家電量販店に出かけた場面で考えてみましょう。

店頭でいくつかのパソコンをざっと眺めて、「これにしよう!」とパッと決めるのは直観によるものです。それとは対照的に、いくつもあるパソコンのブランドやデザイン、スペック、サイズなどさまざまな情報をインプットしたうえでじっくりと考え、「これがよさそうだ」と決めるときに働いているのが論理的思考です。

では、無意識思考とはどういうものか? 途中までのプロセスは論理的思考と同じです。ブランドやデザインなどさまざまな情報をインプットする。でも、そういうときって、情報が多すぎるために「もうどれがいいのかよくわからなくなってきた……」と頭がパンクしそうになることはありませんか?

そこで、結局その日はパソコンを購入せずに帰宅し、散歩をしたり料理をしたり友だちと飲みに行ったりする。あくる日に出勤して仕事をし、お昼ごはんを食べているようなときに、突然「あ、あのパソコンがいいな!」と思い浮かぶ。これが無意識思考です。

散歩をしたり料理をしたり友だちと飲んだりしているあいだ、脳はなにもしていないわけではありません。先にインプットしたさまざまなパソコンの情報の処理をゆっくりゆっくりしてくれています。そして、「買うべきパソコンはこれだ!」という結論を導き出したのです。

影山徹哉先生インタビュー「意思決定は論理or直観のどちらが優れているのか」03

無意識思考がこれからの時代に求められる理由

この無意識思考が、これからの時代にはとても重要なものになってくると私は考えています。無意識思考が得意とすることには多くのものがありますが、ここではふたつのことを紹介しましょう。ひとつは、複雑な選択です。先に挙げた、多くのパソコンのなかから買うべきパソコンを選ぶといった場面がそれにあたります。

ビジネスの場で言えば、特に経営者やチームのリーダーなど、重要な選択や判断を迫られる立場にある人にとっては、正しい選択・判断をする力は必須のものです。数多くの情報や選択肢があるような複雑な選択や判断をする場面では、それこそ頭がパンクしそうになるものでしょう。そういう場面で無意識思考が大いに力を発揮してくれるのです。

いまは情報化社会です。今後は情報化がさらに進んでいくでしょう。かつてとは比較にならないほど多くの情報に囲まれるなかで、正しい選択・判断をしていかなければならない。だからこそ、「複雑な選択」を得意とする無意識思考が大きな武器になるのです。

また、無意識思考は創造性を高めることも得意としています。論理的思考は、「こうだからこうだ」と論理を積み重ねるという特性上、導き出される答えはどうしても「ありきたり」のものに落ち着きがちです。一方で、無意識思考は斬新なアイデアを生成できることが近年の研究によってわかってきています。

「日本のビジネスパーソンには創造性が足りない」とも言われます。さらに、「従来からの単純作業はAIに任せる時代の流れ」はすでにどんどん進んでいる。そういう時代に人間がなにをすべきかというと、AIにはできない「創造性の発揮」です。だからこそ、「創造性を高める」ことを得意とする無意識思考の必要性が、これからの時代にはぐっと増してくるのです。

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【プロフィール】
影山徹哉(かげやま・てつや)
1982年9月19日、福島県生まれ。京都芸術大学客員教授。経営脳科学者。博士(医学)。東北大学経済学部、同大学院経済学研究科博士課程前期修了。米国パデュー大学留学後、中小企業支援機関に経営コンサルタントとして勤務中に、福島市にて東日本大震災に被災。身近な人も含め、多くの死を目のあたりにしたことで、人生観が劇的に変化。後悔のない生き方をしたいと、以前より興味のあった脳科学研究を志す。その後、東北大学大学院医学系研究科博士課程(脳科学専攻)に進学し、脳機能イメージング研究の第一人者・川島隆太教授、杉浦元亮教授に指導を受ける。博士課程在学時には、東北大学学際高等研究教育院の博士研究教育院生に選抜され、文系、理系の枠を超えた世界最先端の文理融合研究に携わった。東北大学加齢医学研究所人間脳科学研究分野研究員を経て、現職。専門領域は、脳科学、コーチング心理学、経営心理学。大学教員を務める傍ら、高校生向けの講義、一般向けの各種講演、個人コーチング、法人向けコンサルティングを行うなど幅広く活動している。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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