“すべき思考” にとらわれてない? 「まあいいか」の “オーウェル思考” で心がすっと楽になる。

少し楽になる思考1

出社したら真っ先にメールチェック。すぐに営業先を訪問したあとは、期日の迫った企画に頭を悩ませ、新人のトレーニングや後輩のフォローもしなければ……。こんなふうに、「あれもやらなきゃ」「これもやらなきゃ」と日々ストイックに動き回っていると、なんだか疲れてしまいますよね。

では、その疲れは身体だけ? 心にも疲れがたまってはいないでしょうか。身体の疲れと違って、心の疲れはなかなか認識しにくいもの。いつのまにか蓄積され、気づかぬうちに集中力を削ぎ、仕事に影響を及ぼしかねません。気分の落ち込みやイライラを感じる人は、一度立ち止まってみるべきです。

今回は、ちょっとだけ心を楽にし、すっきり仕事に向かえるようになる3つの方法をご紹介します。

1. オーウェル思考

人材育成やコミュニケーション関連のベストセラー書籍を多数出版する、コミュニケーションデザイナーの吉田幸弘氏は、仕事における心の疲弊を減らす思考法として「オーウェル思考」をすすめています。

「オーウェル」とは、英語の「Oh well(まあいいか)」のこと。そのため、直訳すると「まあいいか思考」になります。

心の疲弊やイライラは「~すべき」という「マスト思考」からきているというのが、吉田氏の分析です。本当に自分の思う「~すべき」は、相手にとっても「~すべき」なのか疑ったほうがいいと、吉田氏は考えています。「マスト思考」は、個人的な思い込みの場合が多いもの。強く持っていると、周囲に対してイライラしがちになり、心の疲弊を招きます。

「マスト思考」による疲弊を防ぐために、この「べき」を「まあいいか」と置き換えることで心を楽にするのが「オーウェル思考」です。以下、3つの「マスト思考」を「オーウェル思考」に置き換えてみましょう。

  • 「マスト思考」:集合場所には必ず上司や先輩より先に着いているべき
     ↓
     「オーウェル思考」:集合時間に合えばいいか
  • 「マスト思考」:電話は1コールでとるべき
     ↓
     「オーウェル思考」:1コールでとれなかったら、3コールまででいいか
  • 「マスト思考」:提出物は期限の前日には提出すべき
     ↓
     「オーウェル思考」:期限に間に合えば、当日でもいいか

もちろん、すべてのことに「まあいいか」と思う必要はなく、明らかなルール違反やマナー違反があれば相手にしっかり伝えるべきだと、吉田氏は述べています。大切なのは、自分と相手の価値観の違いを認識すること。「オーウェル思考」とは、言い換えれば「マスト思考」への偏りをなくす思考のメンテナンスなのです。

少し楽になる思考2

2. メタ認知

職場やプライベートでの対人関係で心が疲弊している人におすすめしたいのが、脳科学者の中野信子氏が紹介する「メタ認知」です。

「メタ認知」とは、自分の行動や考えを客観的に把握し、認知すること。たとえば、「今日は疲れたなぁ」とぼんやり感じたときに、「今日疲れているのは、昨日夜遅くまで働いたからだ」と客観的に自分をとらえるのが「メタ認知」です。

中野氏は、上から目線の説教をする人との対処法として、「メタ認知」を応用するのが有効だと言います。説教を正面から受け止めるのではなく、相手を客観的に分析してみるのです。「この上司はすぐに『いまの若いやつは……』って嘆くけど、新しいことが嫌いなタイプなのかな」「険しい表情をしているけど、ストレスがたまっているのかな」という具合に。

苦手だと思うタイプの人や、どうしても気の合わない人とも、仕事で時間を共にしなければならないときもあります。そして、ストイックな人ほど、「我慢してちゃんと対応しよう」と思ってストレスをためてしまいがち。そんなとき、「客観的に見てみよう」「観察して楽しんでみよう」と考えてみるだけでも、心が楽になりますよ。

少し楽になる思考3

3. ABCDE理論

上司に叱られたり仕事でミスをしたりして落ち込んでいると、なかなか集中するモードに切り替えづらいものですよね。そんなときにおすすめしたいのが「ABCDE理論」です。

ABCDE理論は、アメリカの臨床心理学者であるアルバート・エリス博士が提唱した認知療法のひとつ。「ABCDE」は、下記の英語の頭文字と内容を表しています。

  • Acrivating event:実際におきた出来事、すなわち、事実
  • Belief(最重要)事実の受け止め方、すなわち、解釈
  • Consequence:解釈の結果生まれた感情
  • Dispute:解釈に対する反論
  • Effect:解釈の反論によって得られる効果

ABCDE理論のポイントは、「B」の受け止め方にあります。出来事そのものは変えることはできませんが、受け止め方は変えられる。つまり感情は出来事そのものではなく出来事の受け止め方によって決まるので、受け止め方が変わればストレスやつらさを軽減できます。これこそがABCDE理論の根幹なのです。

それでは、「仕事でミスをしたら上司に叱られた」というシチュエーションで、ABCDEを順番に見ていきしょう。

  • 事実(A):上司にこっぴどく叱られた。
  • 解釈(B):「私は能力も評価も低いのではないか」という、ストレスを生みやすい思考をした。
  • 解釈して生じる感情(C):結果、やる気がなくなり、イライラしてしまう。
  • 解釈に対する反論(D):上司も人間だ。虫の居所やタイミングが悪かっただけかもしれない。仕事を評価する人間は、上司ひとりではない。
  • 解釈の反論で得られる効果(E):より前向きな解釈に変換することで、必要以上に自己嫌悪しなくなる。受け止め方が変わったため、感情も変化した。

また、もうひとつの大切なポイントとして挙げたいのが、ABCDE理論は「ネガティブな受け止め方をすべてポジティブな受け止め方に変えよう」というわけでは決してないということ。どんなに頑張ってもポジティブに考えられない……そんなときもありますよね。

帝京平成大学現代ライフ学部教授の渡部卓氏によれば、ABCDE理論はあくまで「事実を客観的に観察し、一面的にしかとらえられなかった出来事を多面的にとらえて、心をちょっとだけ楽にする」という理論とのこと。無理やりポジティブに考えて、逆につらくなってしまっては本末転倒ですよね。「別の受け止め方を考えてみる」という楽な気持ちで、試してみてください。

***
少し思考を変えるだけで、気持ちは楽になるもの。もし楽になった自分を見つけたら、ぜひ自分をたくさん褒めてあげてくださいね。

(参考)
マネー現代|仕事が早く終わる人の特徴、「オーウェル思考」とは何か?
STUDY HACKER|毎日聞くのが苦痛な自慢や説教――。そんな困った人から「自分を守る方法」とは【中野信子『カリスマの言葉』第9回】
NIKKEI STYLE|気付けばネガティブ思考 脱却に役立つABCDE理論って
counselor web|ABC理論とは

【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト