よく考えずに行動するのは危険ですが、逆に考えすぎると脳に有害なのだとか。意思決定にも影響が及ぶそうです。 筆者には大いに思い当たる節があるので、「考えすぎないための方法」を探ってみることにしました。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
Active Brain CLUB|考え過ぎが“脳の毒”になる科学的な根拠とは?
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|何を決めるにも「考えすぎる」習慣を断ち切ろう
あらたまこころのクリニック|考えすぎてしまうのはなぜ?考えすぎてしまう人の特徴や対処法を解説
Current Biology|A neuro-metabolic account of why daylong cognitive work alters the control of economic decisions
STUDY HACKER|飽きっぽい私でも集中力が続いた! “青くて○○なノート” を使ったら思わず書く手が止まらなくなった話
考えすぎると “うまみ成分” が脳で有害になる?
考え抜いて執筆したのに変な文章になっていたり、何日も考えて選んだ服が似合っていなかったり――よく考えたわりには失敗した経験が、筆者には多々あります。これは “うまみ成分” で知られるグルタミン酸のせいかもしれません。
脳科学の産業応用を目指す株式会社NeUの取締役 CTO、東北大学加齢医学研究所 所長の川島隆太氏によると、通常グルタミン酸は脳に必要な物質として働きますが、濃度が高くなりすぎると毒性を発揮するそうです。 川島氏いわく、「グルタミン酸が過剰になった脳は健全に働けなくなって、判断力や注意力といった認知能力を低下させてしまう」とのこと。
そして、グルタミン酸が過剰になるのは考えすぎて疲れたときなのだとか。この説明の際に、川島氏はパリ脳研究所の発見を紹介しています(ここまで、参考およびカギカッコ内引用元:Active Brain CLUB|考え過ぎが“脳の毒”になる科学的な根拠とは?)。
概要はこうです。
- Cognitive fatigue is explored with magnetic resonance spectroscopy during a workday
(勤務中の認知疲労を、磁気共鳴分光法を使って調査した)- Hard cognitive work leads to glutamate accumulation in the lateral prefrontal cortex
(困難な認知作業によって、脳の前頭前野にグルタミン酸が蓄積する)- The need for glutamate regulation reduces the control exerted over decision-making
(グルタミン酸の調整が必要になると、意思決定に対するコントロール力が低下)- Reduced control favors the choice of low-effort actions with short-term rewards
(このコントロール力が低下すると、すぐ報酬を得られる、労力の少ない行動を選ぶ傾向が強まる)
(引用元:Current Biology|A neuro-metabolic account of why daylong cognitive work alters the control of economic decisions ※カッコ内の訳は筆者が補った)
つまり、考えすぎて疲れたときは、脳にグルタミン酸が蓄積しており、脳がその対処に追われると、安易な選択・決断をしがちになるわけです。筆者の失敗体験は、まさに “それ” かもしれません。ならば、考えすぎないようにしてしまいましょう。
考えすぎないための方法
そこで、いろいろ探してみたところ、ビジネスとメンタル面で共通の「考えすぎ対処法」が見つかりました。それは、制限時間を決めるというもの。
たとえばニューヨーク市立大学ハンター校の人間行動学教授で、エグゼクティブコーチのメロディ・ワイルディング氏は、“時間があるだけ仕事量も膨張する” と説いたパーキンソンの法則を挙げ、考えすぎも同じだと主張します(⇒時間があるだけ考え続けてしまう)。
だからこそ、決断する日時をカレンダーに記入したり、リマインダーを設定したりなど、考える時間に制限を設けるといいのだとか。
(参考元:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|何を決めるにも「考えすぎる」習慣を断ち切ろう)
一方、あらたまこころのクリニック院長の加藤正氏(日本うつ病学会2019年度下田光造賞を受賞)監修の、考えすぎで不安を抱える人々に向けた記事では、〇分間だけ、〇〇のあいだだけなど、時間を決めて考えることに集中し、時間になったら行動を切り替える方法を紹介しています。ビジネスでもメンタル面でも、時間の制約は考えすぎに有効性を発揮するのですね。
ちなみに同クリニックの記事によれば、考えすぎると混乱してしまう(よくわからなくなってしまう)ので、そうならずに解決しやすくなるよう、頭のなかを書き出すのもいいそうです。(参考元:あらたまこころのクリニック|考えすぎてしまうのはなぜ?考えすぎてしまう人の特徴や対処法を解説)
これらをふまえ、以下にチャレンジしてみることにしました。
- 思考作業にハマり始めたらタイマーセット
- タイマーをスタートさせたら同時に考えていることを書き出す
考えすぎないための方法をやってみた
そしてある日、執筆の仕事をするにあたり「考えすぎ」が発生しました。状況はこうです。
リサーチで得た情報と、主張とをつなげる証拠が見つからない。「つながりは明らかだし、有用な実験データが山ほどそろっているのだから、すぐ証拠は出るはずだ」と思えば思うほど、なぜか見つからない。そうして「考えすぎ」の深みにハマっていたら、疲れてしまい、推測を無理やりくっつけて、安易なかたちで切り上げようとしてしまった……。
そこで、はたと我に返り、15分間のタイマーをセット(時間は適当に選んだ)して、情報を確認しながら考えを書き出してみたら――思わず拍子抜けしてしまいました。基本的なメカニズムだけで、証拠を示せるとわかったからです。
大事にキープしていた多くの複雑な情報が、頭のなかで邪魔をしていたのですね。時間制限を設けたことで、不要な情報をあっさり手放すことができました。
(ノートの中身を含め、実践内容に関係した記事:STUDY HACKER|飽きっぽい私でも集中力が続いた! “青くて○○なノート” を使ったら思わず書く手が止まらなくなった話)
ちなみに今回の「考えすぎ」~「考えすぎ打破」の流れはこうでした。
リサーチによって「手書きで脳活動がアップ、五感を通じて空間的な手がかりを得られる」とわかった。これについて「手書きが脳に刺激を与えるからだ」と言いたいが、資料に明示されていない。
↓
たくさんの資料を前に頭のなかが混乱。「どの資料をもとにどう言えばいいのか?」と「考えすぎ」が発生。
↓
そこで、時間制限を設けて考えを書き出したら、「五感を網羅する感覚のメカニズムだけで、アッサリ根拠を示せる」と気づいた。
↓
「そもそも外部刺激がなければ感覚は生まれないので、五感を通じているなら刺激はあったと言える」と結論。
また、汚い字でも書き出したものがあれば、あとで文章にするのも断然ラクです。あー早くやっておけばよかった。
***
たしかに「考えすぎ」は脳に有害でした。ほどよく考え、適度に切り上げましょう!