「考えても考えても答えが出ない」事態を防ぐシンプルな方法。「考えすぎ」は脳に有害だった

考えすぎない方法としての「頭のなか書き出し」実践ノート

よく考えずに行動するのは危険ですが、逆に考えすぎると脳に有害なのだとか。意思決定にも影響が及ぶそうです。 筆者には大いに思い当たる節があるので、「考えすぎないための方法」を探ってみることにしました。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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考えすぎると “うまみ成分” が脳で有害になる?

考え抜いて執筆したのに変な文章になっていたり、何日も考えて選んだ服が似合っていなかったり――よく考えたわりには失敗した経験が、筆者には多々あります。これは “うまみ成分” で知られるグルタミン酸のせいかもしれません。

脳科学の産業応用を目指す株式会社NeUの取締役 CTO、東北大学加齢医学研究所 所長の川島隆太氏によると、通常グルタミン酸は脳に必要な物質として働きますが、濃度が高くなりすぎると毒性を発揮するそうです。 川島氏いわく、「グルタミン酸が過剰になった脳は健全に働けなくなって、判断力や注意力といった認知能力を低下させてしまう」とのこと。

そして、グルタミン酸が過剰になるのは考えすぎて疲れたときなのだとか。この説明の際に、川島氏はパリ脳研究所の発見を紹介しています(ここまで、参考およびカギカッコ内引用元:Active Brain CLUB|考え過ぎが“脳の毒”になる科学的な根拠とは?)。

概要はこうです。

  • Cognitive fatigue is explored with magnetic resonance spectroscopy during a workday
    (勤務中の認知疲労を、磁気共鳴分光法を使って調査した)
  • Hard cognitive work leads to glutamate accumulation in the lateral prefrontal cortex
    (困難な認知作業によって、脳の前頭前野にグルタミン酸が蓄積する)
  • The need for glutamate regulation reduces the control exerted over decision-making
    (グルタミン酸の調整が必要になると、意思決定に対するコントロール力が低下)
  • Reduced control favors the choice of low-effort actions with short-term rewards
    (このコントロール力が低下すると、すぐ報酬を得られる、労力の少ない行動を選ぶ傾向が強まる)

(引用元:Current Biology|A neuro-metabolic account of why daylong cognitive work alters the control of economic decisions ※カッコ内の訳は筆者が補った)

つまり、考えすぎて疲れたときは、脳にグルタミン酸が蓄積しており、脳がその対処に追われると、安易な選択・決断をしがちになるわけです。筆者の失敗体験は、まさに “それ” かもしれません。ならば、考えすぎないようにしてしまいましょう。

パソコンの前で眉間にしわを寄せている女性。考えすぎて脳にグルタミン酸が蓄積している。

考えすぎないための方法

そこで、いろいろ探してみたところ、ビジネスとメンタル面で共通の「考えすぎ対処法」が見つかりました。それは、制限時間を決めるというもの。

たとえばニューヨーク市立大学ハンター校の人間行動学教授で、エグゼクティブコーチのメロディ・ワイルディング氏は、“時間があるだけ仕事量も膨張する” と説いたパーキンソンの法則を挙げ、考えすぎも同じだと主張します(⇒時間があるだけ考え続けてしまう)。

だからこそ、決断する日時をカレンダーに記入したり、リマインダーを設定したりなど、考える時間に制限を設けるといいのだとか。

(参考元:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|何を決めるにも「考えすぎる」習慣を断ち切ろう

一方、あらたまこころのクリニック院長の加藤正氏(日本うつ病学会2019年度下田光造賞を受賞)監修の、考えすぎで不安を抱える人々に向けた記事では、〇分間だけ、〇〇のあいだだけなど、時間を決めて考えることに集中し、時間になったら行動を切り替える方法を紹介しています。ビジネスでもメンタル面でも、時間の制約は考えすぎに有効性を発揮するのですね。

ちなみに同クリニックの記事によれば、考えすぎると混乱してしまう(よくわからなくなってしまう)ので、そうならずに解決しやすくなるよう、頭のなかを書き出すのもいいそうです。(参考元:あらたまこころのクリニック|考えすぎてしまうのはなぜ?考えすぎてしまう人の特徴や対処法を解説

これらをふまえ、以下にチャレンジしてみることにしました。

  1. 思考作業にハマり始めたらタイマーセット
  2. タイマーをスタートさせたら同時に考えていることを書き出す

考えすぎないための方法をやってみた

考えすぎないための方法として、タイマーを設定したあと、考え中の頭のなかを書き出したノート

そしてある日、執筆の仕事をするにあたり「考えすぎ」が発生しました。状況はこうです。

リサーチで得た情報と、主張とをつなげる証拠が見つからない。「つながりは明らかだし、有用な実験データが山ほどそろっているのだから、すぐ証拠は出るはずだ」と思えば思うほど、なぜか見つからない。そうして「考えすぎ」の深みにハマっていたら、疲れてしまい、推測を無理やりくっつけて、安易なかたちで切り上げようとしてしまった……。

そこで、はたと我に返り、15分間のタイマーをセット(時間は適当に選んだ)して、情報を確認しながら考えを書き出してみたら――思わず拍子抜けしてしまいました。基本的なメカニズムだけで、証拠を示せるとわかったからです。

大事にキープしていた多くの複雑な情報が、頭のなかで邪魔をしていたのですね。時間制限を設けたことで、不要な情報をあっさり手放すことができました。

考えすぎない方法として頭のなかを書き出したノート。寄せたアングルなので、ノートの中身がよく見える

15分間のタイマーをセットして、そろえていた情報を確認しながら、
考えていることを書き出してみたノート。

(ノートの中身を含め、実践内容に関係した記事:STUDY HACKER|飽きっぽい私でも集中力が続いた! “青くて○○なノート” を使ったら思わず書く手が止まらなくなった話

ちなみに今回の「考えすぎ」~「考えすぎ打破」の流れはこうでした。

リサーチによって「手書きで脳活動がアップ、五感を通じて空間的な手がかりを得られる」とわかった。これについて「手書きが脳に刺激を与えるからだ」と言いたいが、資料に明示されていない。

たくさんの資料を前に頭のなかが混乱。「どの資料をもとにどう言えばいいのか?」と「考えすぎ」が発生。

そこで、時間制限を設けて考えを書き出したら、「五感を網羅する感覚のメカニズムだけで、アッサリ根拠を示せる」と気づいた。

「そもそも外部刺激がなければ感覚は生まれないので、五感を通じているなら刺激はあったと言える」と結論。

また、汚い字でも書き出したものがあれば、あとで文章にするのも断然ラクです。あー早くやっておけばよかった。

***
たしかに「考えすぎ」は脳に有害でした。ほどよく考え、適度に切り上げましょう!

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