メラトニンとは? 効果&増やす方法まとめ

メラトニンとは1

メラトニン(Melatonin)とは、脳の「松果体」という部分で分泌されるホルモン。体内時計に作用し、概日リズムを調節する効果があります。つまり、夜に眠気を感じさせることで、適切に睡眠がとれるようにしてくれているのです。

このメラトニンの分泌量やリズムが狂ってしまうと、寝つきが悪くなったり睡眠の質が下がったりと、日常生活に支障が出る恐れがあります。良質で規則正しい睡眠を確保するために、メラトニンの仕組みや機能、増やす方法を詳しく学んでおきましょう。

メラトニンとは

メラトニンとは、脳の松果体で生成され、体温や血圧を下げることで、私たちを睡眠へ導く働きをするホルモン。睡眠薬の成分としても活用されており、日本では認可されていないものの、アメリカなどでは市販されています。

メラトニンは、日中だとほとんど分泌されませんが、夜になると数十倍に増加します。具体的に言うと、覚醒からおよそ15時間後です。

7時に起きたとすると、22時頃に眠くなり始めるということになります。遅く起きた日、夜になってもなかなか眠くならないのは、この「15時間ルール」が原因なのです。

メラトニン分泌のスイッチとなるのが、光による刺激。網膜で受け取った光刺激が、神経を伝わって松果体に伝達されることにより、メラトニン分泌の司令が出されます。

そのため、しっかり朝日を浴びなければ、松果体に刺激が届かず、メラトニン分泌のリズムが狂ってしまう恐れがあるのです。朝7時に起き、8時まで遮光カーテンを閉めきっていたとすると、メラトニンは最初に日光を浴びた8時から15時間後に分泌され始めるので、体内時計が1時間分ずれてしまうかもしれないのです。

太陽光は、電灯よりはるかに光量が強いため、光刺激のなかでも特に重要です。メラトニンの分泌に影響を与えるには、2,500ルクス以上の明るさが必要とされています。2,500ルクスとは、晴天における日の出くらいの明るさ。電灯は、せいぜい1,000ルクス程度です。

メラトニンには、「明るいと分泌が抑えられ、暗いと分泌が活発になる」という性質もあります。そのため、夜寝る前に部屋の明かりを煌々とつけていたり、スマートフォンの明るい液晶画面を眺めたりしていると、メラトニンが分泌されづらくなり、睡眠に悪影響を及ぼすのです。

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メラトニンの効果

メラトニンの主な役割として、以下の3つが挙げられます。

睡眠をコントロールする

最も重要なのは、睡眠をコントロールする働き。メラトニンは、朝日を浴びたあとおよそ15時間後から活発に分泌され、体温を低下させるなどして、眠気をもたらすのです。

起床の15時間後にメラトニンが分泌されて眠くなる」という仕組みによって、体内時計が調整されています。本来、体内時計(概日リズム)は25時間でひとまわりするため、1日1時間のズレが発生するはず。しかし、メラトニンのおかげで体内時計が毎日リセットされるため、地球の自転に合わせて生活できているのです。

メラトニンは睡眠に関与しているため、メラトニン不足は重大な悪影響をもたらします。医師の井手下久登氏によると、以下のような睡眠障害の症状(不眠症)が起こりうるそうです。

  • 入眠障害(寝つきが悪くなる)
  • 中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)
  • 早朝覚醒(朝早く目が覚める)
  • 熟眠障害(睡眠の質が下がる)

学習・記憶能力を維持する

メラトニンは、学習・記憶能力とも関連しています。生物学者・服部淳彦氏の2017年の論文によると、アルツハイマー型認知症の人は、同年齢の人に比べてメラトニン濃度が低いそう。また、軽度認知障害の患者がメラトニンを3mg~9mg飲み続けたところ、9~18箇月後には学習・記憶テストの成績が向上したという研究もあるとのことです。

健康を維持する

メラトニンは、脳の健康だけでなく、身体全体の健康にとっても重要。前出の服部氏、医学研究者の西田滋氏らの解説によれば、メラトニンが不足すると以下のような健康リスクが高まる可能性があるそうです。

  • 肥満
  • 糖尿病
  • 細胞の酸化・損傷
  • 高血圧
  • 心疾患
  • がん
  • 骨粗しょう症

ほかにも多くの役割があります。メラトニンは、健康を維持するうえで重要なホルモンなのです。

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メラトニンとセロトニンの関係

メラトニンには、「セロトニン」という神経伝達物質が大きく関わっています。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、精神的な安らぎや幸福感をつかさどるものです。セロトニンが正常に分泌されていると、心が満ち足りるような幸福を感じながら、活き活きと生活できます。

セロトニンには、覚醒作用もあります。脳を目覚めさせ、身体を活動状態にするのです。

朝日を浴びると、光刺激によってセロトニンの分泌が活発化します。つまり、朝日を浴びることには、2つの意味があるのです。

  • セロトニンの分泌を促し、身体を覚醒する
  • メラトニンの “15時間タイマー” をセットし、夜の入眠をスムーズにする

起床から15時間後、メラトニンの分泌場所・松果体において、日中に分泌されたセロトニンが材料に使われます。つまり、セロトニンが少ないと、合成できるメラトニンの量も減ってしまい、うまく入眠できない可能性があるのです。

このようにメラトニンとセロトニンは密接に関係し、月と太陽のように入れ替わりながら、私たちの覚醒・睡眠をコントロールしています。

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メラトニンを増やす方法

メラトニンを増やす方法を4つご紹介しましょう。

日光を浴びる

繰り返しになりますが、メラトニン分泌のスイッチは、光による刺激です。夜にメラトニンを分泌させるには、朝の日射しをたっぷりと浴びておく必要があります。

光刺激は、メラトニンの材料であるセロトニンを分泌させるうえでも欠かせません。精神科専門医の長谷川大輔氏によると、セロトニンの分泌には、起床後30分以内に15~30分程度の日光浴をするのが効果的なのだそう。

メラトニン・セロトニンの分泌には、2,500ルクス以上の強い光が必要です。部屋の電灯では不十分なので、必ず太陽光を浴びましょう。太陽光なら、雨の日でも1万ルクス以上の光量を確保できます。

【日光浴のポイント】

  • 起床後30分以内に浴びる
  • 15~30分間ほど浴びる

夜間の強い光を避ける

日中に太陽光を浴びる一方、夜間はできるだけ光を避けましょう。メラトニンの分泌は、光を浴びると抑制されるため、夜間に光を浴びすぎると睡眠の質が悪くなってしまうのです。

とはいえ、夜間にまったく照明を使わないのは不可能。そこで、睡眠を専門とする医学博士の宮崎総一郎氏が推奨しているように、部屋の照明を暖色系に変えてみましょう

蛍光灯には、「昼光色」「昼白色」「白色」「温白色」「電球色」など、色のバリエーションがあります。「電球色」などの赤みがかった光は、青みがかった「昼光色」などと比べて刺激が少なく、メラトニンへの影響を最小限に抑えられるそうです。

刺激の強い青い光(ブルーライト)は、スマートフォンの液晶画面からも発せられています。そのため、夜間にスマートフォンを使うなら、ブルーライトカット機能などを用いましょう。iPhoneの場合、「設定アプリ」>「画面表示と明るさ」>「Night Shift」と進むと、ブルーライトカット機能を設定できます。

【夜間の光刺激を避けるコツ】

  • 蛍光灯を暖色のもの(電球色など)に変える
  • 間接照明などを用い、なるべく光量を抑える
  • スマートフォンのブルーライトカット機能を使う

食べ物から摂取する

メラトニンは、バナナやケールといった食べ物にも含まれています。意識的に摂取することで、メラトニン不足を予防できますよ。

また、メラトニンのもととなる神経伝達物質・セロトニンの原料は、アミノ酸の一種「トリプトファン」です。食事を通してトリプトファンの摂取量を増やせば、メラトニンの増加が期待できます。セロトニンは日中に多くつくられるため、特に朝食でトリプトファンを摂取しましょう。

管理栄養士の北村絵梨子氏、前出の宮崎氏が推奨する食品は、以下のとおりです。

【メラトニンを多く含む食品】

  • バナナ
  • ケール
  • とうもろこし
  • しょうが
  • キャベツ

【トリプトファンを多く含む食品】

  • 大豆・大豆加工品
  • 牛乳やヨーグルトなどの乳製品
  • くるみやアーモンドなどのナッツ類
  • 肉類
  • 鶏卵
  • バナナ

リズム運動をする

メラトニンの原料であるセロトニンを増やす方法としては、精神科医・樺沢紫苑氏が推奨する「リズム運動」があります。リズム運動とは、単純な動作を何度も反復する運動。ウォーキング・自転車こぎ・水泳・ゴルフのスイングなどが挙げられます。1日15~30分程度が効果的だそうです。

リズム運動のなかでも、室内で手軽にできるのが「踏み台昇降」。踏み台昇降とは、ふくらはぎ程度の高さの台を昇り降りするだけの、シンプルな運動です。簡単そうに見えますが、若い人にとってもかなりいい運動になります。

【北陸大学紀要】に掲載された2002年の論文「踏み台昇降運動によるセロトニン神経系の賦活」によると、高さ15cmの台を使った15分間の踏み台昇降で、被験者の血中セロトニン濃度が有意に上昇したそう。1平方メートル程度のスペースさえあればできますし、台の代わりに雑誌の束なども使えるので、ぜひ試してみてください。

【リズム運動の例】

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • 踏み台昇降
  • 自転車
  • 水泳
  • ダンス
  • ラジオ体操
  • ゴルフのスイング
  • 野球の素振り
  • 縄跳び

【推奨時間】

1日あたり15~30分

メラトニンのもとであるセロトニンについて詳しく知りたい方は、「セロトニンを増やす方法6選! 効果的な食べ物・活動は?」も参考にしてみてください。

***
メラトニンは、良質な睡眠や健康を確保するうえで欠かせないホルモン。特に、睡眠の質が低い自覚がある方は、今回ご紹介した方法をぜひ試してみてくださいね。

(参考)
宮崎総一郎 (2015),「ぐっすり眠りたければ、朝の食事を変えなさい」, PHP研究所.
新百合ヶ丘総合病院|睡眠について(後編)~良質な睡眠を得るために~
服部淳彦(2017),「メラトニンとエイジング」, 比較生理生化学, 34号1巻, pp.2-11.
NIKKEI STYLE|快眠ホルモン「メラトニン」に注目
医療法人社団いでした内科・神経内科クリニック|健康を損なう大きな原因は睡眠不足だった
東邦大学|幸せホルモン「セロトニン」
Apple サポート|iPhone、iPad、iPod touch で Night Shift を使う
naturise|3月18日は睡眠の日!「快眠ドリンク」で質のよい眠りを!
樺沢紫苑(2018),『いい緊張は能力を2倍にする』, 文響社.
佐野新一・蒲真理子・坂本正裕・鈴木郁子・有田秀穂(2002),「踏み台昇降運動によるセロトニン神経系の賦活」, 北陸大学紀要, 26号, pp.39-48.

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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