【チェックリストつき】マルチタスクで「失う注意力」はなんと37%…! 失った4割を取り戻す『3つのシンプルテクニック』

ノートパソコンを見るビジネスパーソン

「今日も会議中にメールチェック、資料作成しながら電話対応…」

あなたの大切な集中力は、マルチタスクによって日々奪われているかもしれません。

カーネギーメロン大学の研究では、複数の作業を同時にこなすことで注意力が37%も低下することが判明。*1 さらに衝撃的なのは、Qatalogとコーネル大学の共同調査で、アプリケーションの切り替え後、生産的なワークフローに戻るまでに平均9分30秒もの時間を要することが明らかになっています。*2

つまり、1日10回のツール切り替えだけでも、95分(約1時間半)の集中力回復時間が必要となる計算です。

では、なぜマルチタスクはこれほど私たちの集中力を奪うのでしょうか? そして、避けられないマルチタスクにどう対処すべきなのでしょうか?

本記事では、以下の3点を、最新の研究結果とともに解説します。

✓ マルチタスクが脳に与える具体的な影響とそのメカニズム
✓ コンテキストスイッチによる時間的損失を防ぐ「タスク管理術」
✓ 今日から実践できる対策法

仕事のパフォーマンスが下がっている理由

作業をしながらメールをチェックしたり、自分のタスクをこなしながら後輩のフォローをしたり……複数のタスクを同時にこなすことを当たり前に求められる場面が多いでしょう。

しかし、次から次へとタスクを切り替えると脳に大きな負担がかかり、パフォーマンスが低下してしまいます。

「あるタスクを行いつつ、別のタスクを行うとき、脳は一度停止し、情報を再編成し、新しいタスクや思考のために回路を切り替えることを余儀なくされるため、結局は時間がかかり、疲れてしまう」と語るのは、明治大学教授で言語学博士の堀田秀吾氏。*1

このタスクや思考の切り替えを「コンテキストスイッチ」と言います。コンテキストスイッチが与える負の影響について、Qatalogとコーネル大学Idea Labの下記のような共同レポートがあります。*2

使用中のアプリケーションを他に切り替えた後、人間の脳が生産的なワークフローの状態になるまでには平均9分30秒もの時間を要する。

45%の人がコンテキストスイッチによって自分の生産性が下がると答えている。

コンテキストスイッチによる疲労は、「記憶」に関する人間の脳の限界に起因している可能性がある。

デスクにて、めがねを外して疲れた様子を見せるビジネスパーソン

つまり、次のタスクに取りかかって再び波に乗るまでに時間がかかること、生産性が低下すること、マルチタスクをしていると脳への負担が人間の脳の限界を超えてしまうことがわかったのです。

どのタスクも中途半端になって結局時間がかかってしまったり、物忘れやうっかりミスが増えてきたりしているのなら、マルチタスクによる弊害が生じているのかもしれません。

マルチタスクで「失う注意力」は37%

マルチタスクのせいで注意力が散漫になりパフォーマンスが低下することは、カーネギーメロン大学のジャスト氏らの研究でも明らかになっています。

「運転しながら誰かが話しているのを聞いているドライバーの、脳のMRIを撮ったところ、注意力が37%も低下していることがわかった」のです。*1

また、作業が中断されるとミスにつながることも明らかになっています。

ミシガン州立大学のアルトマン氏らの研究で、パソコンの「ポップアップによって作業が2.8秒中断されると、ミスの発生率が2倍になり、4.4秒中断されると、ミスの発生率が4倍になることがわかった」のです。*1

つまり、作業が中断され意識をほかに向けなければならないとなると、脳はマルチタスクをこなしている状態となり、その結果ミスが増えてしまうのです。

それでもマルチタスクをしなくてはならない場合のポイント① タイムボクシング

まず、新しいタスクが発生したとき、本当に今取り組むべきものかを判断する必要があります。以下のフローチャートを使って、タスクの優先順位を整理してみましょう。

新しいタスクの発生
緊急性の判断
24時間以内に着手が必要?
Yes →
即時対応タスク
現在の作業を中断して対応
No →
重要性の判断
目標達成に直結する?
Yes ↓
重要タスク
今日か明日のタイムボックスに組み込む
No ↓
通常タスク
今週のタイムボックスに組み込む
判断のポイント
  • デッドラインは設定されているか
  • 他のメンバーの作業に影響するか
  • 放置するとリスクが高まるか
  • 代替案や後回しの選択肢はあるか

このように優先順位を整理したら、時間を区切り、その時間内はシングルタスクに集中して取り組む「タイムボクシング」がおすすめです。*3 

結局は、マルチタスクもシングルタスクの集合体。それらを同時にこなすのではなく、順番にこなすことでパフォーマンスの低下を防ぎます。

やり方は下記の通り。

筆者が書き出した「タイムボクシング」のやり方

画像は筆者が作成した

よくある一日のタスクを例に考えてみましょう。メールチェック・来週が期限の書類作成・締め切り間近の申請書のチェック・午前中にある打ち合わせ・データ入力。これらにかかる時間を見積もってみます。

  • メールチェック(15分)
  • 書類作成(6時間半)
  • 申請書のチェック(1時間)
  • 打ち合わせ(1時間)
  • データ入力(1時間)

ここで見積もった時間を「タイムボックス」と呼びます。*3

さらに、時間のかかるタスクは細分化したうえで、それぞれをひとつのタスクとして考えます。6時間半と見積もった書類作成を細分化し、それぞれに時間を充てました。

  • 書類作成(6時間半)

目的の確認(10分)

必要な情報を集める(2時間)

└リサーチ作業(1時間)

└収集した情報の整理(30分)

└書類作成で使えるかたちに情報をまとめる(30分)

構成を考える(30分)

ドラフト作成(1.5時間)

フィードバックをもらう(30分)

ブラッシュアップしたものを作成(2時間)

└フィードバックの内容の反映(1時間)

└フォーマットやグラフなどの調整(30分)

└最終確認(30分)

提出

6時間半と見積もった書類作成を細分化すると、これだけの作業が必要なことがわかります。そして、このそれぞれの時間が「タイムボックス」です。

これらのタイムボックスに優先順位をつけて、一日のスケジュールを立ててみたのがこちら。

【午前】
メールチェック(15分)
打ち合わせ(1時間)
(休憩)
申請書のチェック(1時間)
(休憩)
書類作成 目的の確認(10分)
書類作成 リサーチ作業(1時間)

 

【午後】
書類作成 収集した情報の整理(30分)
(休憩)
書類作成 書類作成で使えるかたちに情報をまとめる(30分)
(休憩)
データ入力(1時間)
(休憩)
書類作成 構成を考える(30分)
(休憩)
書類作成 ドラフト作成(1.5時間)
(書類作成の続きは後日)

メールチェックは1日に何度も必要な場合もありますから、各タスクの合間に入れてもいいでしょう。

大切なのは、設定したタイムボックス内では別の作業をしないことと、タイムボックス間で休憩をとることです。

もしタイムボックス内でタスクを完了できなかったとしても、次のタスクにうつります。残ったタスクにはまた別のタイムボックスを作成し、改めて着手しましょう。

忙しさのあまりマルチタスクになりがちな方は、ぜひタイムボクシングを試してみてください。

パソコンの置かれたデスクにて、笑顔をカメラに向けるビジネスパーソン

それでもマルチタスクをしなくてはならない場合のポイント② タスクバッチング

タイムボクシングと並んで効果的なのが、似た性質の作業をまとめて処理する「タスクバッチング」です。これは、タスク切り替え(コンテキストスイッチ)による脳への負担を減らすための手法です。

カリフォルニア大学バークレー校の認知神経科学者Sahar Yousef博士は、

人間の脳は一度に一つのことに集中しているときに最も機能します。人間の認知能力と注意力には限りがあるからです

と説明しています。*4

実際、研究によると一度気が散ると、再び集中するまでに平均23分もかかることがわかっています。さらに、カリフォルニア大学アーバイン校の研究では、継続的な中断が入る環境での作業は、ストレスとフラストレーションを高めることも判明しています。

具体的には、以下のように作業をグループ化して処理します。

【コミュニケーション系タスクのバッチング例】

・メール対応:1日3回(朝・昼・夕)に限定

・Slack等のメッセージ返信:2時間に1回

・電話発信業務:午前中の11時~12時に集中

 

【クリエイティブ系タスクのバッチング例】

・企画立案:午前9時~11時

・資料作成:午後2時~4時

・レポート作成:集中力の高い時間帯に集中

タスクバッチングを効果的に実施するポイントは3つあります。

1つ目は、脳のピークパフォーマンスを活用することです。精神的な労力の大きいタスクは、個人の集中力がピークの時間帯に配置します。集中力のピークは人によって異なるため、自分に合った時間帯を見つけることが重要です。

2つ目は、環境整備で集中力を保護することです。具体的には: ・通知をオフに設定 ・無関係なアプリを閉じる ・スマートフォンはサイレントモード ・SNSからログアウト といった対策を取ります。

3つ目は、チームとの共有です。カレンダーで集中タイムを共有したり、Slackのステータス設定で状態を表示したりすることで、チームメンバーの理解と協力を得やすくなります。また、緊急時の連絡方法も明確にしておくことで、重要な連絡を見逃すリスクも減らせます。

それでもマルチタスクをしなくてはならない場合のポイント③ チェックリストを活用

マルチタスク改善のためのアクションチェックリストを使って、具体的な改善に取り組んでみましょう。

まずは自分の現状を確認してみましょう。以下のチェックリストで、マルチタスクへの依存度を診断できます。

■ マルチタスク診断チェック

□ メールやチャットの通知が来たら、すぐに確認している
□ オンライン会議中に別の作業をすることが多い
□ 1日に3回以上、予定外の割り込み作業が入る
□ 「急ぎです」と言われると、手元の作業を中断してしまう
□ 1日の終わりに「何をしていたんだろう」と感じることが多い

3つ以上当てはまる方は、以下のアクションリストから始めてみましょう。

■ 明日から始められる改善アクション

【環境整備】

□ スマートフォンを机の引き出しにしまう
□ メール・チャットの通知をオフにする
□ ブラウザの不要なタブを閉じる

 

【スケジュール改善】
□ カレンダーに「集中タイム」を設定する
□ メールチェックを1日3回に限定する
□ 会議の間に15分以上の間隔を設ける

 

【コミュニケーション改善】
□ チームに自分の集中タイムを共有する
□ 緊急度の基準をチームで合意する
□ オフラインでの作業時間であることを明示する

 

このチェックリストは、すべてを一度に実施する必要はありません。まずは「明日から始められるアクション」から3つ選んで実践してみましょう。

***
マルチタスクが脳に与える影響と、その対策について紹介しました。本記事が日々のタスク管理の参考になれば幸いです。

※引用部分の太字は筆者が施した

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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