夢をかなえるといっても、人生はいいことばかりが続くわけではありません。ネガティブなこととのつき合いも不可欠です。では、夢をかなえるためにネガティブ要素とどのようにつき合っていけばいのでしょうか?
著書『言葉の力を高めると、夢はかなう』(サンマーク出版)が話題となっている経営コンサルタントの渡邊康弘(わたなべ・やすひろ)さんが、ネガティブな口ぐせ、事象、思考とのつき合い方を教えてくれました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子
ネガティブな事象より先にポジティブな事象に触れる
夢をかなえることを考えたとき、注意してほしいのがネガティブな事象との接し方です。その接し方次第で、普段の日々がいい日にも悪い日にも感じるのです。もちろん、「今日はいい日だった!」と思える日が多いほうが、ポジティブに人生を進んでいけるのですから、夢の実現に近づけることになります。
では、ネガティブな事象とどのように接すればいいのでしょうか? その答えは、ネガティブな事象より先に、ポジティブな事象に触れるということです。これは、ポジティブ心理学を専門とするショーン・エイカーとオンラインメディア「ハフポスト」の創業者である、アリアナ・ハフィントンが行なった研究をベースとしています。
ふたりの研究では、「朝に3分間、ネガティブなニュースを見聞きした人は、1日を振り返ったとき、ネガティブなニュースを見聞きしなかった人と比べて『あまりいい1日ではなかった』と答えた割合が27%も多かった」ことがわかりました。つまり、1日の始まりである朝にネガティブなニュースを見聞きしたことで、1日の感情全体が影響を受けたのです。
また、実際のコンサルティングの現場では、逆の事例が見られます。職場環境を変えて、社員たちがポジティブに仕事に臨めるようにする方法は割と簡単だとされます。朝礼の時間に、社員それぞれが24時間以内にあった「よかったことやうれしかったこと」を発表してシェアするのです。そうすることで、1日が「よかったことやうれしかったこと」にフォーカスされます。
もちろん、朝礼ではネガティブな情報を社員に伝えなければならないこともあります。でも、先に社員たちはそれぞれの「よかったことやうれしかったこと」をシェアしてポジティブなことにフォーカスしているために、ネガティブな情報も、ポジティブな視点で受け止められるのです。大きな問題が発生しているというネガティブな情報に触れても、「こうすれば問題を解決できるのではないか」とポジティブな視点から考えられます。
ポジティブな口ぐせに置き換えて「負け口ぐせ」を減らす「言葉のマネジメント」
そう考えると、夢をかなえるには、普段から自分の口ぐせに注意する必要が出てきます。みなさん自身やその周囲の人のなかには、「どうせできない」「どうせうまくいかない」「自信がない」といった、「負け口ぐせ」を持っている人もいるはずです。そういった言葉を自分自身に投げかけ続けていれば、ポジティブに物事に取り組んで、夢を実現できるはずもありません。
しかしながら、口ぐせというのは幼少期から長い時間をかけてできあがったものですから、いきなり変えるのは簡単ではありません。ですから、気長に考えて徐々に変えていきましょう。そのときに意識してほしいのは、負け口ぐせの代わりにポジティブな言葉を口ぐせにするということ。負け口ぐせをポジティブな口ぐせに置き換えるのです。
たとえばそれは、「うれしい」「ハッピー」「ワクワク」「楽しい」など、自分がピンとくる言葉でかまいません。私の場合なら、「ありがとう」です。簡単に「すいません」とか「どうも」で済ませられるような場面でも「ありがとう」。普通なら感謝をし忘れてしまうような些細な場面でも「ありがとう」と言います。その積み重ねの結果、負け口ぐせが減っていきます。
このことは、「言葉のマネジメント」ということにもつながります。夢を実現させるには、未来の自分をなるべく具体的にイメージすることが大切です(インタビュー第1回『言葉にして手書きすると夢はかなう――「MUSEの法則」とはなにか?』参照)。でも、そのイメージから言葉遣いが抜け落ちているということが多いのです。
みなさんにとってのメンターと言えるような、「こんな人になりたい!」と思える人を思い浮かべてみてください。そういう人の多くは、独特のくせ、ファッション、考え方といったものだけでなく、「独特の言葉」を持っていませんか? ポジティブな言葉を口ぐせにすることで負け口ぐせを減らすことに加え、未来の自分が使っているであろう言葉遣いを具体的にイメージしてつくり上げていくことも大切なことです。
ポジティブとネガティブの波のある計画が夢をかなえる
最後にお伝えしたいのは、ネガティブ思考に対する意識です。ここまでの話で、「やっぱりネガティブ思考はよくないものだ」と思った人も多いはずです。でも、そう強く考えることは危険です。
よくあるパターンが、「ネガティブ思考はよくないものだ」「ネガティブに考えてはいけない」と自分を縛ってしまうというものです。そうすると、ネガティブ思考に陥るたびに、「またネガティブに考えてしまった……」と、ますますネガティブ思考を強化することになってしまいます。
ロンドン大学でビジネス心理学を教えるトマス・チャモロ-プリミュージク教授によれば、悲観主義者と野心家が組むことによって、目覚ましい業績をあげることが多いとのこと。ネガティブで悲観的な視点があることで、業務の精度を上げることにつながるのです。
また、多くの人は、目標設定をするときに「右肩上がりの計画」をイメージします。でも、人生には波があって当然。自分に都合のいいことばかりが起きるはずもありません。周囲から成功者に見える人も、大きな波や障害を乗り越えてきてこそ、いまがあるのです。そうであるなら、「必ずネガティブなことも起きる」「ネガティブ思考に陥ることもある」と考えるべきです。
ポジティブ思考をベースとしながらも、ネガティブな思考や事象ともうまくつき合っていく――。そうしてバランスを取ることができれば、夢の実現に近づけると思います。
【渡邊康弘さん ほかのインタビュー記事はこちら】
言葉にして手書きすると夢はかなう――「MUSEの法則」とはなにか?
夢の実現には「感謝」が不可欠! 「ありがとうロード」「ありがとうノート」とはなに?
【プロフィール】
渡邊康弘(わたなべ・やすひろ)
人生実現コンサルタント。日本トップレベルの「読書家」。神奈川県横浜市出身。青山学院大学経済学部卒。幼少期より、読書が大の苦手だったこともあり、2度大学受験に失敗する。20歳のときに神田昌典氏の本に出会い本が読めるようになり、人生が激変。ベンチャー企業の立ち上げに関わり、ゼロから8億の売上をつくる(のちにマザース上場)。独立後、最新の脳科学、行動経済学、認知心理学を基にした独自の読書法「レゾナンスリーディング」を生み出す。この読書法は、10歳から91歳まで全国3500人以上が実践している。年間の読書数は、(洋書含め)ビジネス書で2000冊、文芸書、実用書含め年間3000冊以上。「日本トップ5」に間違いなく入るほどの読書家。この膨大な読書量によりビジネス、歴史、科学、芸術、スピリチュアルに関するさまざまな知識をもつ。「読書」というスキルを通して、その専門知識を実務レベルで実践。その結果、短期間で、驚くほどスキルレベルが向上する「研修プログラム」や個人の「自己実現のプログラム」などを次々と開発。そのコンテンツは高い評価を受けており、上場企業やベンチャー企業、地方の有力企業での講演多数。企業コンサルタントも務める。読書の苦手な人をなくし、読書を通じて夢をかなえる人を増やすべく、書評などの読書情報の発信や読書イベント、海外著者との交流会を催すなど、読書文化を広げる活動を行っている。著書に『1冊20分、読まずに「わかる!」すごい読書術』(サンマーク出版)、翻訳協力に『ビジネスモデルYOU』(翔泳社)、『イルミネート:道を照らせ。』(ビー・エヌ・エヌ新社)がある。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。