「解釈」ができない人は、代替可能な人にしかなれない。自分の存在価値はこうして高める

北野唯我さんインタビュー「解釈のスキルの磨き方」01

「仕事において重要なこと」というと、みなさんはなにをイメージしますか? コミュニケーション力、論理的思考力、協調性、責任感、生産性、意欲……など、人によって挙げるものは千差万別でしょう。

そんな多様な要素のなかで、仕事において重要なこととして「解釈」を挙げるのが、株式会社ワンキャリア取締役の北野唯我(きたの・ゆいが)さんです。解釈の重要性とはどんなところにあるのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「解釈」とは、「事実」をどうとらえてどう考えるか

私が言う「解釈」を説明するには、「事実」とセットで考えてもらうのがいいと思います。事実とは、「実際に起こった、あるいは存在する事柄」のことですから、仕事においては数字で確認できるデータといった「誰が見ても相違がないもの」を指します。

ある営業担当者の1か月の売上目標が100万円で、その月の実績が150万円であり、目標達成率は150%だったとします。これらの数字は、誰が見ても相違がない、まさに事実です。

一方、解釈とはなにかというと、そういった事実を「自分なりにどうとらえてどう考えるのか」ということです。

この例であれば、目標達成率が150%だったその要因を分析するとき、たとえば「その1か月に試した工夫が好結果を生んだから」ととらえるのか、「これまで地道に積み重ねてきた努力が実を結んだから」、あるいは「たまたまクライアントの予算が余っていたから」ととらえるのか、解釈は人によってさまざまです。

では、なぜこの解釈が大切なのでしょうか? その理由は、「自分なりの解釈ができない人は、代替可能な人にしかなれない」という点にあります。

なんらかの仕事上の課題を解決しようとするとき、課題に関する数字といった事実をどう解釈し、どんな解決法を導き出すのか。それが誰もが思いつきそうなありきたりのものだったら、その人はまさに代替可能な人です。でも、逆に誰もが驚くようなものを導き出せる人なら、ビジネスの場で重宝されることは言うまでもないでしょう。

北野唯我さんインタビュー「解釈のスキルの磨き方」02

シンプルな解釈の基準となりうる「GBNの法則」とは?

でも、解釈が重要だとはいっても、実際に解釈することはそう簡単なことではありません。そこで、解釈をしやすくなるひとつの基準をお伝えしましょう。それは、私が「GBNの法則」と呼んでいる、「事実に対してシンプルに解釈するための基準」となりうるものです。

「GBN」とは、「Good」「Bad」「Not Sure, Not Clear」の頭文字をとったもので、それぞれ「よい」「悪い」「よいか悪いか、まだわからない」という意味です。

なにかの事実に対して、これらのどれにあてはまるのかを考えることで、シンプルながらも自分なりの解釈をすることができます。

取引先でのミーティングのアポイントをとっている人が、予定していた電車に乗ろうとしたところ、電車が遅延していたとします。この出来事は、誰が見ても相違がない事実ですね。では、この事実を「GBN」にあてはめて解釈してみましょう。

ふつうに考えたら、これは「Bad(よくない)」ことでしょう。そう解釈した人なら、たとえば「こういうこともあるから、事前に遅延情報を確認しよう」「今後は10分でも20分でも余裕をもって出かけよう」というふうに改善策を考えられるかもしれません。

これはあくまでも簡単な例ですが、「どう解釈したらいいかわからない」事実に対してなんらかの解釈をするために「GBN」は役立ってくれますし、日常的に「GBN」を使うことは、解釈に不慣れな人が自分なりに解釈をできるようになるためのトレーニングにもなるでしょう。

北野唯我さんインタビュー「解釈のスキルの磨き方」03

解釈には正解はなく、修正してもいい

とはいえ、解釈に不慣れな人の場合、「この解釈では間違っているのではないか……」「まわりの解釈とちがっていたらどうしよう……」など、解釈をすることにいくらかの恐怖や不安を感じることもあるかもしれません。

そういう人にお伝えしたいのは、「解釈には正解などない」ということです。

冒頭に触れたように、解釈とは「自分なりにどうとらえてどう考えるのか」であり、「解釈は人によってさまざま」ということが大前提としてあります。

さらに、「自分なりの解釈ができない人は、代替可能な人にしかなれない」のですから、「この解釈では間違っているのではないか……」「まわりの解釈とちがっていたらどうしよう……」と不安に感じる必要などなく、むしろまわりと違う「自分なりの解釈」を磨いて周囲と差別化し、ビジネスパーソンとしての自分の存在価値を高めていくことこそが肝要なのです。

そして、もっと柔軟性をもって考えることも意識してみましょう。解釈とは、「一度そう解釈したら変えてはいけない」ようなものではありません。周囲の解釈を聞くなどした結果、自分の解釈を修正してもいいのです。たとえば先の例のように、仕事上の課題を解決しようというときなら、よりよい解決策を見つけられるのであれば最初の解釈にこだわる必要などありませんよね。

解釈には正解などありませんし、修正してもいい——。そう考えると、解釈をすることの不安はなくなるのではないでしょうか。

北野唯我さんインタビュー「解釈のスキルの磨き方」04

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【プロフィール】
北野唯我(きたの・ゆいが)
1987年8年21月生まれ、兵庫県出身。神戸大学経営学部卒業。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、採用DXサービスを提供する「ワンキャリア」に参画。現在、株式会社ワンキャリアの取締役として、人事領域、戦略領域、広報クリエイティブ領域を統括。また、テレビ番組や新聞、ビジネス誌など各種メディアに「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。「すべてのプロセスにいる、いま挑戦しようとしている人に捧げる本」をモットーに作家としても活動。主な著書に『これからの生き方。』(世界文化社)、『転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『OPENNESS(オープネス)』(ダイヤモンド社)『分断を生むエジソン』(講談社)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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