北野唯我さんが教える「仕事が早い人」の2大特徴

北野唯我さんインタビュー「仕事が早い人の2大特徴」01

海外に比べて「日本の働き方は生産性が低い」「効率が悪い」とよく言われます。もちろん、海外との比較などしなくとも、多忙なビジネスパーソンにとって「仕事の早い人」になることは、目指すべきひとつの目標でしょう。

株式会社ワンキャリアの取締役であり、働き方に関する多くの著書を手がけている北野唯我(きたの・ゆいが)さんが、「仕事の早い人」がしていて「仕事の遅い人」ができていないことを教えてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

仕事の「量」でも「質」でもなく「スピード」を重視すべし

仕事に関しては、「量と質のどちらが重要か」といったことがよく議論され、一般的には「若いときは量をこなすべきだ」と言われます。その根拠は、「量は質に転化する」ということ。たくさんの仕事をこなして経験を積んでいけば、仕事の質も上がっていくというロジックです。

でも、はたして本当にそうでしょうか? 私は、このことについては例外も少なくないのではないかと思います。もし、本当に量が質に転化するのであれば、いずれはほぼすべての人が自分の仕事の領域における優れたプロフェッショナルになれるはずです。でも、実際にはそうではないケースもあります。

特に若いときの仕事に関してなにを重視すべきかについては、「スピードを重視して働くべき」というのが私の考えです。なぜなら、スピードは量にも質にも転化できるからです。

スピードを重視して働いていれば、必然的に多くの量の仕事をこなせます。そうすると、若いうちから数多くの経験を積むことができるでしょう。さらに、仕事が早い人があえてスピードを緩めることで、質を追求することもできるのではないでしょうか。そう考えると、スピードを重視して働くことで、「量と質のどちらが重要か」という議論も必要なくなるのです。

北野唯我さんインタビュー「仕事が早い人の2大特徴」02

「仕事が早い」とは「タイミングが早い」こと

ただし、この「スピード」という言葉にも注意が必要です。「仕事が早い」というと、多くの人は「仕事に必要な作業が早い」といったイメージをもつかと思います。もちろん、作業スピードも大切でしょう。

しかし、それ以上に、「タイミングの早さ」という意味でのスピードをより強く意識すべきです。なぜなら、仕事は、自分以外の多くの他人が関わって成り立っているからです。

作業スピードは自分だけの問題ですが、上司に頼まれた企画書、取引先に依頼された見積書などをいつ提出するかといったタイミングは、上司や取引先といった他人が関わる問題です。もし提出期限に間に合わなければ、上司や取引先に迷惑をかけることになりますし、自分に対する評価や印象はよくないものになるでしょう。だからこそ、タイミングの早さこそが重要なのです。

普通の人が3時間かかる書類作成の仕事を30分でこなせる人がいるとします。それはまさに、作業が早い人です。でも、作業に取りかかるタイミングが遅くて、提出が期限ギリギリになったり期限に間に合わなくなったりしてしまっては、なんの意味もありません。

逆に、普通の人が3時間かかる仕事に5時間かかる人であっても、自分なりに工夫して時間を確保し、期限より前倒しして提出できるのであればどうでしょうか? 両者のどちらが評価されるかは明白です。作業スピードを追い求めるだけではなく、着手と提出のタイミングというものを意識してほしいと思います。

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「仕事の早い人」は「仕事を分解して考える」

加えて、「仕事の早い人」になりたいと思うのであれば、「仕事を分解して考える」ことも重要なポイントです。

クライアントへ営業する際の資料の作成を上司に頼まれたとします。この仕事は、「資料作成」というひとつの仕事に思えるかもしれませんが、実際にはそうではありません。ひとつの資料を作成する過程には、いくつものフェーズが存在します。

まずは、その資料をつくる目的やゴールはどういうものかという大前提、そして提出期限を、依頼主である上司に確認しなければなりません。それを終えたら、今度は実際の資料に盛り込む内容の大枠についても、上司の同意を得る必要があるでしょう。それらを終えて、ようやく資料を作成する作業に入ることができます。

もちろん、資料の作成中にも気になることがあったような場合には、そのつど、上司に確認して同意を得るべきでしょう。そのようにいくつものフェーズを経て、ようやく資料は出来上がります。

ひとつにも見える仕事を必要なフェーズに分解して考えることが、「仕事の早い人」になるためには欠かせません。逆に言うと、「仕事が遅い人」は「仕事を分解して考えられない」ということでもあります。

この例であれば、「資料作成」というひとつの仕事としてとらえてしまっているため、その目的も内容の大枠も確認しないままに資料をつくり始めます。いざ提出してみると上司のイメージとはまったく違ったものになっているために、間違いなくダメ出しをされてしまうでしょう。そうして資料をつくり直すことになれば、それまでの労力や時間はまったくの無駄になりますし、もちろん「仕事の早い人」になることなどできません。

みなさんが当たり前のように思っている仕事についても、あらためて「まだ分解できるのではないか」と考えてみてください。いままで気づかなかった無駄も見えてくるかもしれません。

北野唯我さんインタビュー「仕事が早い人の2大特徴」04

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【プロフィール】
北野唯我(きたの・ゆいが)
1987年8年21月生まれ、兵庫県出身。神戸大学経営学部卒業。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、採用DXサービスを提供する「ワンキャリア」に参画。現在、株式会社ワンキャリアの取締役として、人事領域、戦略領域、広報クリエイティブ領域を統括。また、テレビ番組や新聞、ビジネス誌など各種メディアに「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。「すべてのプロセスにいる、いま挑戦しようとしている人に捧げる本」をモットーに作家としても活動。主な著書に『これからの生き方。』(世界文化社)、『転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『OPENNESS(オープネス)』(ダイヤモンド社)『分断を生むエジソン』(講談社)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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