世の仕事のほとんどは、さまざまな人と関わりながら進めなければなりません。そのため、人との関わりが得意ではない内向的な人のなかには、「いまの仕事ではあまり活躍できていない気がする……」「この先、成功できるか不安だ……」といった悩みを抱えている人もいることでしょう。
そこで、「内向型コンサルタント」の堤ゆかりさんに、内向型の人が抱えがちな仕事上の悩みとその解決策を教えてもらいました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹
事前準備で苦手な会議での発言もできるようになる
過去にコンサルタントとして関わった内向型の人たちや私自身の経験から、内向型の人が抱えがちな悩みには主に次の3つがあると考えます(インタビュー第1回『「内向的」でも「デキる人」になれる。間違いなく仕事で生かせる“内向型の4つの強み”』参照)。
【内向型の人が抱えがちな仕事の悩み】
- 会議の場などで発言するのが苦手
- オフィスでの電話の音や他人の気配が気になって集中できない
- 急な仕事を頼まれてタスクが増えると混乱しやすい
では、それぞれ解決していきましょう。1つめの悩みは「会議の場などで発言するのが苦手」というもの。なぜこういう悩みを抱えてしまうかというと、内向型の人には、情報の処理速度が遅い、他人と関わることが苦手といった特徴があるからです。
情報処理速度が遅いために、その場で考えながら発言することが苦手なのですから、その対処法は「事前に考えて準備しておく」ということになります。会議の種類や内容にもよると思いますが、事前に議題が決まっていて資料が配布されるような会議の場合なら、しっかりと資料に目を通して自分が発言したい内容をメモしておく。こういった具合に準備をするのです。
また、他人と関わることが苦手だという特徴を少しでも抑えるために、できることもあります。それは、会議の出席者のなかで比較的話しやすい人や顔見知りの人にお願いして、簡単でいいので事前にディスカッションや相談をしておくということ。アウトプットの練習になるだけでなく、自分の意見を聞いてくれた人がいるというだけで会議の場の「ホーム感」が増し、落ち着いて発言ができるようになります。
自分なりの「精神統一の儀式」でオフィスでも集中できる
2つめの悩みは、「オフィスでの電話の音や他人の気配が気になって集中できない」というもの。オフィスの環境そのものを変えることは難しいですよね? でも、そのなかでもできる工夫があります。1つは、どんな環境にいても自分の内面に向けて集中できるようになるための「精神統一の儀式」のようなものをつくるということ。
たとえば、水を飲む、目をつぶる、深呼吸といったアクションをその儀式にしてみましょう。もちろん、これには練習が必要です。「自分ひとりの空間をつくる」イメージをもちながらその儀式を行ない、「このアクションをしたら集中できるんだ!」と自分に刷り込んでいくのです。
もう1つの対処法は、生活全体の刺激をなるべく減らすこと。なぜ他人の電話や気配が気になるかというと、内向型の人には周囲の刺激に対して敏感という特徴があるからです。ただ、やはりオフィスの環境そのものを変えることはできませんから、そのほかの場での刺激を減らしていくしかありません。
たとえば、なるべく電車が混まない時間に通勤時間を変える、通勤電車のなかではイヤホンをするといったことです。また、自宅から駅まで、あるいは駅から会社までの道もなるべく人通りが少ないルートを選ぶなどすれば、受け取る刺激のトータルの量が減り、オフィスでも集中できるようになっていくことでしょう。
3つめの悩みは「急な仕事を頼まれてタスクが増えると混乱しやすい」というものです。この悩みを解決するには、「脳の構造上、内向的であれ外向的であれ、そもそも人間はマルチタスクが苦手」ということをまず理解しましょう(インタビュー第2回『内向型に対する3つの「間違った思い込み」。あの一流経営者もじつは内向的!』参照)。それだけでも、「たくさんのタスクをこなすのが苦手なのは自分だけではない」と感じられ、混乱を軽減することができるはずです。
そのうえで、ビジネス書を読むなどして自分でできることを主体的に考えてみてください。たとえば、期日も含めてタスクを細かく分けて可視化し、客観的にスケジュールを組むという意識も大切でしょう。また、新たなタスクに反射的に手をつけるのではなく、そのつどワンクッションを置いて優先順位やスケジュールを確認したり更新したりすることも1つの対処法です。
転職に副業—―「新たな仕事」で失敗しない方法
また、内向型の人は仕事に関する悩みを抱えがちであるために、転職や副業をするといったように「新たな仕事」を始めるときにも、「失敗したらどうしよう……」と二の足を踏んでしまうことがあります。もちろん、失敗は誰もが避けたいものです。そこで、自分にとってよりよい仕事を新たに始めるためにできることをお伝えします。
まずは、いまの仕事に対する漠然とした不満や不安を整理しましょう。不満や不安を言葉にして書き出すのです。次に、それらの状況がどうなったら理想的なのか、自分が嬉しいと感じるのかということも書き出してみる。すると、現実と理想のあいだにあるギャップが見えてきます。そして、そのギャップを埋めるためには、転職がいいのか副業がいいのかそれともフリーランスになるのがいいのかといったふうに、キャリアプランを考えるのです。
たとえば、「いまの仕事にやりがいを感じない」ことが悩みで、「熱中できる仕事をする」ことが理想だという場合。現実と理想のあいだのギャップを埋める方法として、「副業なら自分のやりたい仕事を選べるから、副業という選択肢はアリだな」と考えるといった具合です。もちろん、この選択肢はいくつあってもいいでしょう。
そして、それらの選択肢のなかから、自分が「これだ!」という可能性を感じるものが見つかれば、その場でできることをまずはやってみましょう。転職サイトに登録するのでもいいし、副業に関するブログを探して読んでみるといったことでもかまいません。そこから情報を収集していけば、より具体的なやるべきことを見つけることができ、その選択肢の実現に近づけるはずです。
【堤ゆかりさん ほかのインタビュー記事はこちら】
「内向的」でも「デキる人」になれる。間違いなく仕事で生かせる“内向型の4つの強み”
内向型に対する3つの「間違った思い込み」。あの一流経営者もじつは内向的!
【プロフィール】
堤ゆかり(つつみ・ゆかり)
1985年、東京都生まれ。内向型コンサルタント、心理カウンセラー。自身が20年間にわたりコンプレックスを感じていた内向性を受け入れられるようになった経験と独自の分析をもとに、InstagramやYouTubeなどで「内向型を直さず生かす生き方」を発信している。内向型向けオンラインサロンの主宰やイベント・講演を行う。年間の個人コンサルティング、SNS相談実績は300件を超え、内向型の人の気持ちに寄り添った提案に定評がある。自分らしいライフスタイルを追求するため、同じく内向型の夫と起業し、2018年12月より夫婦ふたりで東京から福岡に移住。内向型の強みを生かす働き方を体現している。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。