「休日は仕事のメールは絶対見ない」「チャットはすぐに返信」――こんな「常識」を大切にしてきた方も多いのではないでしょうか。確かに、これらの習慣は以前なら正しい仕事術として評価されていました。
ところが、ここ数年でリモートワークが当たり前になり、状況は大きく変わっています。働く場所や時間が多様化する中で、従来の常識をそのまま続けることで、かえってストレスや生産性の低下を招いているケースが増えているのです。
たとえば、休日にメールを見ないようにしているのに、「重要な連絡を見落としているかも」と気が気でない。Slackの通知音が鳴るたびに作業の手を止めて返信しているうちに、肝心の仕事が進まない——。こんな経験はありませんか?
本記事では、いま見直すべき3つの「古い常識」を、具体的な代替案とともにご紹介します。働き方が大きく変わる中で、どうすれば自分らしく、効率的に仕事を進められるのか。実践的なヒントを見つけていただければと思います。
1.「休日は仕事のメールを見ない」をやめる
まずは、以下のチェックリストで自分の状況を確認してみましょう。当てはまる項目がある方は、休日のメール習慣を見直すタイミングかもしれません。
□ 月曜の朝、メールの処理に1時間以上かかることがある
□ 休日中、重要な連絡を見逃していないか不安になる
□ 休日なのに仕事のことが頭から離れない
「休日は仕事のメールを見ないようにして、オンオフをしっかり分けよう」
よく耳にする話ですよね。この意見を参考に、休日はメールを見ないように心がけているという方もいるのではないでしょうか。しかし、逆にそのことがストレスにつながっているということもあるのです。
休日に別のことをしていても「なにか重要なメールが届いていたらどうしよう」と不安や焦りを感じたり、日曜の夕方に「明日はメールを大量に処理しなければいけないんだろうな……」と憂鬱になったりしたことはありませんか? ストレスを感じないために「休日は仕事のメールを見ない」というルールをつくったのに、結局メールが気になってストレスを感じているのでは逆効果。
早稲田大学教授で精神科医の西多昌規氏も、以前は休日にメールを見ないことをすすめていたそうですが、現在は「たとえば休日の朝にメールチェックして、不要なメールは削除したり、簡単に返信しておいたほうがいいメールには返信してメールボックスをスッキリさせて、それから休日を楽しむというやり方も悪くない」と語っています。*1
必ずしも休日に仕事のメールを一切見ないようにする必要はないのです。大切なのは、オフの時間に仕事のストレスを感じないようにするということ。もし自分が、休日もメールが気になってしまうタイプだという自覚があるなら、休日でも時間を決めてメールのチェック・整理を行ない、ストレスが軽減するか試してみてください。
「これがいいやり方だと言われているから」と、常識にとらわれず、自分が心地よくいられる方法を選ぶことが大切です。
2.「チャットには即レスする」をやめる
次の項目をチェックしてみてください。これらの習慣が日常化していると、知らず知らずのうちに業務効率を下げている可能性があります。
□ チャットの通知を切ると不安を感じる
□ 緊急性の低いメッセージにも即座に反応してしまう
□ 重要なチャンネルと雑談用チャンネルの区別をしていない
メールに代わり、Slackなどのチャットツールを導入する企業も増えてきました。「チャットはすぐ反応しなければ、忘れてしまうから……」と、通知が来たら業務を中断して対応している方も多いのではないでしょうか。
しかし、そのようなマルチタスクの仕事のやり方では、集中力が下がってしまいます。仕事の効率化を考えるなら、チャットツールとの付き合い方を工夫する必要があります。
SlackのCTOカル・ヘンダーソン氏は、「重要度でチャンネルをランク分けし、一部のチャンネルのみ通知を受け取る」ことを提案しています。*2
たとえば、現在メインで参加しているプロジェクトのチャンネルは重要度が高いものとして扱います。そのチャンネルはサイドバーの一番上に移動させ、通知が来るように設定します。それ以外のチャンネルは、サイドバーの下のほうに移動させ、通知を切り、定期的にチェックする時間を設けるようにします。このように、あらかじめSlackのチャンネルを整理しておくことで、なんでもかんでも即レスし、そのたびに集中力が切れるという状況を脱することができるのです。
「すぐに返信しないと失礼になるのでは」と不安になる方も多いでしょう。しかし、頻繁な中断による業務効率の低下こそが、会社にとって大きな損失となります。実際のところ、本当に「即レス」が必要な場面がどれくらいあるか、自分の1週間のチャットのやり取りを振り返ってみてください。ほとんどのメッセージは、集中して作業を終えてから返信しても問題ないはずです。
3.「参加している雰囲気を出す」のをやめる
従来の働き方では、「とにかく会議に出席する」「無遅刻無欠席で働く」など、その場に参加するということが評価の対象になっていました。しかし、リモートワークが浸透したことによって、その場にいるということの価値が薄れ、オンライン上でもわかりやすいかたちで成果を出すことが求められるようになってきています。
人事ジャーナリストの溝上憲文氏は、「日本企業の一般的な人事評価は、営業数字など定量化された『成果評価』と、チームワークやコミュニケーションなどの『行動評価(プロセス評価)』の2つの総合評価で決まる」が、「『在宅勤務や時差通勤で部下の行動が見えなくなり、人事評価が難しくなった』との調査もある」と述べています。*3
もし、リモートワークで働いているのであれば、会社に出勤していた頃と同じような心持ちでいては、評価されにくくなるわけです。
リモートワークでは、周囲の目が届きにくい分、「自分の仕事ぶり」を数字や実績で伝えていく必要があります。今日の業務で何を達成したのか、プロジェクトにどのように貢献したのかを、具体的に示していきましょう。単にオンラインミーティングに顔を出したり、勤怠管理システムで打刻をしたりするだけでは、「本当に仕事をしているのだろうか」という疑念を持たれかねません。
では、具体的に自分の仕事ぶりが適切にアピールできているか、以下のポイントでチェックしてみましょう。
□ 日報に具体的な数値や成果を記載している
□ オンラインミーティングで最低1回は発言している
□ 自分の業務の進捗状況を定期的に共有している
□ 業務上の成果を可視化する工夫をしている
チェックが付かない項目があれば、まずはそこから改善を始めてみましょう。小さな工夫の積み重ねが、リモートワークでの適切な評価につながります。
オンラインミーティングでは必ず自分の意見を述べる、日報を出す制度があるなら、勤務中に行なった業務や成果を、できるだけ具体的に書くことを心がけましょう。
また、従来大切にされてきた「報告・連絡・相談」は、リモートワークでも行ないましょう。こまめにコミュニケーションをとることで、現在どんな業務を行なっているのかがまわりに伝わりやすくなりますし、円滑に業務を進めることができます。
顔の見えないリモートワークでは、「自分はこれだけ会社に貢献している」ということを積極的にアピールすることが大切なのです。
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どれもちょっとしたことですが、見直しておくことでいまの時代に沿った働き方が可能になります。ぜひ参考にしてみてください。
※引用の太字は編集部が施した
*1 プレジデントオンライン|「休日はメールをチェックしない」はじつは逆効果…"休んでもなぜか疲れる人"がやっている悪習慣
*2 TECH INSIDER|スラックに支配されないための3つのルール…スラックCTOが伝授
*3 LIFE INSIDER|テレワークで進む「成果主義のワナ」から目を背けてはいけない
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。