「仕事も勉強も頑張っているのに、なかなか成果が出ない……」と悩む人は、そう少なくないはずです。成功している人と自分との違いは何なのか、気になってしまうのではないでしょうか。
じつは、その違いに誠実性が関わっている可能性があります。しかも、その誠実性は後天的に高めることができるのです。
本記事では誠実性を客観的かつシンプルにとらえ、それを高めるちょっとした方法を紹介します。
誠実な人をひとことで言うと?
誠実な人と聞くと、多くが真面目で信頼できる人を思い浮かべるのではないでしょうか。性格心理学の分野で最も支持されている学説のひとつ「ビッグ・ファイブ」においても、Conscientiousness(誠実性)は以下に関わると説明されています。*1
- 感情や行為をコントロールする力
- 良心性
- 達成力の高さ
- 責任感の強さ
- 粘り強さ
しかし、これらを並べても「これだ!」と断定しにくいので、上記の要素を生成AIに伝え、この人物像をひとことで表現してもらいました。
それで返ってきたのが「高い自己規律を持つ人」――いわゆるしっかりと自分をコントロールできる人です。
これを受け今回は、誠実性が高い人を「しっかりと自分をコントロールできる人」と解釈し、話を進めていきます。
誠実な人の成果が伸びるワケ
しっかりと自分をコントロールできる誠実性の高さは、仕事や勉強で大きな成果を生む要因となることは想像に難くありません。
「パーソナリティ分析で世界一の企業になる」とのビジョンに向け、クラウドサービスを提供する株式会社ロジック・ブレイン運営のメディアには、誠実特性が高い人は、成功を信じて苦手なことにも努力を惜しまないので、あらゆる場で活躍が期待できるとあります。*2
ちなみに同社は、前出のビッグ・ファイブ分析と独自のデータベースの双方向から分析を行ない、サービスを提供することで知られた会社です。
また、2012年のアメリカの研究では、誠実性の高い学生が、努力する戦略を通じて成績が向上すると示されました。 *3
同年に発表されたベルギーの研究では、誠実性が勉強への意欲に影響を与え、それが成績向上に関連すると示唆されています。*4
そして、2018年のドイツの研究では、誠実性とやり抜く力が密接に関連していることが示唆されました。*5
誠実性は「感謝」と「運動」で後天的に伸ばす
誠実さを「自分をコントロールできること」と置けば、それが仕事の成果につながるのは当然と言えば当然です。
一方で、その特性を持っていない。つまり、「自分をコントロールするのが苦手だ」と思う人はどうすればよいのでしょうか。
前出のロジック・ブレイン運営のメディアは「誠実特性は年齢性別を問わず伸ばせる」として、誠実性が低い社員向けに「計画の作り方や運用の仕方を学べるような研修」を行なうよう企業にすすめています。*2
つまり、誠実性は後天的に高めることができるわけです。これは朗報ですね。
そこで筆者も、個人で即実践可能な方法はないかと探してみました。そのとき目に留まったのが、プロスポーツメンタルコーチ・一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事の鈴木颯人氏がすすめる感謝日記です。*6
鈴木氏は、感謝の記録が気分の上昇や、ストレス緩和、自尊心の改善、幸福度の上昇、対人関係の改善などにいい影響を与えるとした、いくつかの研究を挙げ――感謝の気持ちを育むことで自制心の弱点を補えること、それが誠実性の高まりにもつながることを示唆しています。*6
これなら筆者にもできそうだと考え、さっそく実践。
感謝の習慣が、他者に対する配慮や思いやりの気持ちを養い、それが自分の責任感や秩序性を高めることにつながったのでしょうか。感謝日記を続けることで、自己管理しやすくなった気がしました。
ちなみに――
かねてより運動不足の人は誠実性が低下する傾向が示されていましたが、仏モンペリエ大学にいる心理学者(2018年当時)らが、アメリカによるふたつの大規模調査研究のデータを統合したところ、運動と誠実性の関連が確認されたうえ、それが20年近く持続すると示されたそうです。*7
運動を取り入れることは、健康や脳の働きのみならず、性格にも好影響を及ぼすのです。しかもその性格が、仕事と勉強の成果を伸ばす誠実性。取り入れない手はありません……!
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誠実さ、つまり自分をコントロールする能力は、生まれ持ったもので変わらないというものではありません。取り組みによって、伸ばすことができるのです。自分をコントロールできれば成功が近づくのは、もはや自明に近いことだと感じます。ぜひ「誠実性」を高める取り組みをしてみてください。
*1: マイナビキャリアリサーチLab|「仕事の成果に影響する非認知能力」とは~先行研究の紹介~
*2: LB MEDIA|ビッグファイブ理論の特性5因子の誠実特性とは?概要や特徴についてまとめて解説
*3: PubMed|Conscientiousness in the classroom: a process explanation
*4: ScienceDirect|Unraveling the impact of the Big Five personality traits on academic performance: The moderating and mediating effects of self-efficacy and academic motivation
*5: Sage Journals|Same Same, but Different? Relations between Facets of Conscientiousness and Grit
*6: スポーツメンタルコーチ・鈴木颯人|感情をコントロールする「感謝の気持ち」がパフォーマンスを高める
*7: 日経サイエンス|運動不足と性格の変化〜日経サイエンス2018年8月号より
Shinya
大学では経済学を専攻。集中力があり、長時間、長期間にわたって勉強し続けることが得意。現在は、資格試験に向けて効率的な勉強法の情報を収集中。心理学にも関心があり、コミュニケーション力の向上を目指してさまざまなメソッドを学び、実践している。