「予備校に通う人に比べて、独学の自分は不利。でも必ず勝ち取りたい試験がある!」
「現状は成績がよくないけど、いつか大逆転したい……!」
目標と現実には差があるものの逆転成功を願っているなら、逆境を乗り越えて勉強で成功した人のやり方を参考にするといいかもしれません。
今回の記事では、「勉強で大逆転成功を成しえた人たち」がしてきた勉強法を4つお伝えします。どれも、手軽にできるので試してみる価値はありそうですよ。
本山勝寛さんは「7回反復」していた
独学で東大受験を突破し、そのあとハーバード大学にも合格した ”独学のスペシャリスト” 本山勝寛氏。家庭が極貧状態にあった高校時代、アルバイトで自活しながら自力で勉強せざるをえなかったという不利な状況下でも成功できたのは、本山氏が編み出した勉強法――”7回反復” 暗記術があったから。
そもそも、人間の脳は「忘れやすい」という性質をもっています。マギル大学で記憶と忘却について研究するオリバー・ハート氏いわく、「忘れなければ、記憶することはできない」。日常生活の出来事すべてを記憶していたら、脳は余分な記憶で占められてしまい、新しい情報を覚えられません。それゆえ、必要な情報以外、脳は積極的に忘れようとするのです。
本山氏はこの脳の性質から、”忘れることを前提とした暗記計画を立てる” 重要性を説きます。
たとえば、新しい言語を学んでいて、半年で4,000単語覚えるとしましょう。最初の暗記作業は3か月で終わらせ、次の2か月で2回めの暗記、そして、次の1か月で3回め……。このように計画を立て、「覚えて忘れて覚えて……」を繰り返すのです。
ポイントは、反復により脳に重要な記憶だと教え込ませ、長期記憶として残すこと。本山氏の経験によれば、反復は「7回」を目安に行なえば確実に覚えられるのだとか。
なお、本山氏いわく、“薄く塗り重ねる” イメージで反復することが重要なのだそう。最初の暗記作業では、まだ完璧に覚える必要はありません。回数を重ねながら、徐々に記憶を確実なものにしていくことが秘訣です。
布施川天馬さんは「独り言」を言っていた
『東大式節約勉強法』の著者で、現役東大生ライターの布施川天馬氏も、家庭の経済状況から予備校に通わずして東大受験を突破したひとりです。環境に恵まれないなか、布施川氏が東大合格を成しえたのは、”独り言” の習慣があったから。
「独り言を話しながら勉強しなさい」と言われても、ちょっとためらう人もいるかもしれません。しかし、布施川氏いわく「独り言を言うと、思考効率が上がる」。その理由は、声に出すことで見えないものが具体的になるからだそう。
たとえば、本を読んでいるとしましょう。「この考えはおもしろい」「意外な発見だ」と気づきを得ても、頭のなかに収めておけば抽象的な考えのまま。無言で読んでいると、浮かんだ考えは具体的なかたちにならないまま、次第に思考の外へ流れて出ていってしまいます。
ところが、頭に浮かんだことを独り言としてつどアウトプットし、録音していけば、音声というかたちにして残すことができるのです。布施川氏自身、スマートフォンの音声入力機能を使いながら、独り言を記録しているそう。周囲の目が気になる……という問題も、スマートフォンに録音すれば、周囲からは通話しているように見えるため、解消できると言います。
布施川氏いわく、独り言で重要なのは、「自分が何を何のために考えているのか」を明確にすること。独り言を言いながら暗記したり、勉強した内容を独り言で要約したりするほか、疑問に思っていることや、わからない問題についての自分なりの考えなども、音声入力でメモしておくといいかもしれませんね。
西岡壱誠さんは「能動的読書」をしていた
『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』をはじめ、数々のベストセラーを生み出した西岡壱誠氏もまた、偏差値35からの東大合格という逆転成功を収めた人物。その要因は、“本の読み方” にあるようです。
じつは逆転成功の前、東大受験に2度失敗していた西岡氏。2浪が決まったとき、東大が求めているのは「知識の量」ではなく「知識の運用力」つまり自分で考える力だと気づいたと言います。それから西岡氏は、教科書や参考書をただ素直に読むという勉強法から、「能動的に読む」という方法に変えたのだそう。
その具体的なやり方として、西岡氏が重要視するのは以下の5つ。
1. 表紙を読む
表紙や帯を先に読むこと。その本が最も伝えたい内容が書かれているからです。西岡氏によれば、本格的に読む前にこの準備をするだけでも、本への理解度が変わってくるのだとか。
2.「読者」にならない
本の内容を素直に受け入れず、取材記者のように疑問をぶつけること。たとえば、「ここが意見が分かれるところだ」という文章があったら、「なぜ意見が分かれるのか?」「ほかの意見とは?」などと質問をしながら読むと、考える力を伸ばすことにつながるのだそう。
3. ひとことでまとめる
本を読んだあとで内容を要約すること。西岡氏によれば、「あとで内容をまとめよう」と意識しながら読み進めると、理解が深くなるのだとか。本の内容を忘れないための記録としても、読書の質を上げるためにも効果的。
4. 1冊だけにしない
「ある主張をしている本」と「真逆の主張をしている本」を並行して読むこと。たとえば、「勉強の継続には動機づけが重要」と述べる本を読んだあと、「勉強の習慣化はモチベーションに頼らないことが鍵」と主張する本を読み、両者を比較しながら思考を深めるのです。これにより、ひとつの考えに偏らない客観的な思考力を得られるのだそう。
5. 本と議論する
インプットした内容を自分の言葉でかみ砕き、アウトプットすること。本の感想を誰かに伝えたり、SNSなどにレビューを書き込んだりする過程で、理解力と考える力が高まるとのこと。
以上の5ポイントは、「参考書や教科書を読んでも、“へぇ” と思うだけで、頭に入らない」といった人に特におすすめ。ぜひ「能動的読書」を始めてみてはいかがでしょうか。
杉山奈津子さんは「書きなぐり記憶法」をしていた
数学の偏差値29という底辺から巻き返して東大合格を達成した、東大薬学部卒の心理カウンセラーである杉山奈津子氏。飛躍的に成績を伸ばせたのは、“効率的な勉強法を確立した” からなのだそう。
杉山氏は、美しいノートや整った単語帳をつくることはいっさいしなかったと言います。なぜなら、その作業をしただけで、「勉強した」という達成感から満足してしまいかねないため。
かわりに杉山氏が実践したのが、「書きなぐり記憶法」というものです。
問題集に、「理解できていて復習する必要のないもの」には〇を、「解答できたが復習する必要があるもの」には△、「答えがまったくわからないもの」には×をつけます。それから、×をつけた「わからないもの」の解答を、裏紙やノートに書きなぐります。こうして、つまずく箇所だけを重点的に復習するという勉強法です。
杉山氏によると、この方法のポイントは、書くと同時に発声して、視覚・聴覚・触覚を使うこと。美しいノートをたった1回つくって満足したり、そのノートをただ見返したりするだけよりも、五感をフル活用しながら復習するほうが、脳を刺激でき、学習内容を強く印象に残すことができるというわけです。
書く、見る、聞く。わからない問題は五感を使い、しっかりと脳に覚えさせることから始めましょう。
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環境や成績がよくなくても成功を収めた人たちがいるように、勉強法さえ確立すれば、逆境を乗り越えることは可能です。この記事を参考にして、諦めずに大逆転を目指してくださいね。
(参考)
STUDY HACKER|1ヶ月で4,000単語を覚えた男の「最強の暗記術」がすごかった。
STUDY HACKER|“極貧” から東大とハーバードに合格した男の「最強の独学術」
Quanta magazine|To Remember, the Brain Must Actively Forget
日刊SPA!|東大生が「ひとり言」を繰り返すワケ…不審に思われても絶対にやめない
STUDY HACKER|偏差値35から “読書で” 東大合格! 最強の『東大読書』の真髄を探る。
プレジデントオンライン|偏差値29から東大へ「頭のよさとは要領のよさ」
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。