布団に入ってもすぐに眠れない……そんなときにあなたはどうしていますか? 眠たくなるまで読書をしたり、延々と考え事をしたりする方が多いのではないでしょうか。特に、翌朝に大事な仕事を控えて不安なときや、日中上司に叱られて落ち込んでいるときなどは、「考えれば考えるほど、ますます眠れない」といった状況になりがちですよね。

実は、そのようにして布団で眠れない時間を過ごすことは、その日の睡眠だけではなく、将来の安眠の妨げにもなっているかもしれません。今回は、なぜこうした行動が良くないのかということと、安眠のためにどのような行動を取れば良いのかということについてご紹介します。

布団と睡眠を結びつける「刺激コントロール法」

脳には、効率的に行動するために、行動と場所を結びつけようとする性質があります。特定の場所・タイミングで無意識のうちに特定の行動を取ろうとするこの性質を、習慣化コンサルタントの古川武士氏は「パターン化」と呼んでいます。食後の歯磨きや帰宅後の入浴などは、この「パターン化された行動」であるといえるでしょう。

この考え方に基づけば、眠れないまま布団にいつづけることが当たり前になると、「布団に入ってもすぐには眠らない」という行動がパターン化され、「布団に入ったらすぐ眠る」という行動が妨げられてしまう危険性があるのです。

しかし、このことを逆に考えれば、「布団は寝る場所である」という行動がパターン化されれば眠りにつきやすくなるということ。このパターン化の手法の一つに、約30年前にアメリカのリチャード・ブーチン氏らによって開発された刺激コントロール法という方法があります。この方法は以下の6つの原則に従うものです。

1. 眠くなるまでは寝床に入らない
2. 寝床を考え事やテレビ鑑賞などの睡眠以外の目的に使わない
3. 眠れなければ、寝室を出て他の部屋に移る
4. 眠れるまで、時間がかかっても3.を繰り返す
5. 睡眠時間にかかわらず、朝決まった時刻に起きる
6. 居眠りや昼寝をしない

1.から4.の原則は、「布団」と「眠り」を結びつけることを目的としています。睡眠専門医として睡眠関連の著書を多く執筆している医師の坪田聡氏によると、健康な人なら通常、布団に入って目を閉じると15分以内に眠り始めるのだそう。15分かかっても眠れなければ、布団を出てリラックスできることをし、眠気が来るのを待つといいでしょう。

また、5.では睡眠と覚醒のリズムを作ること、6.では夜になっても眠くならないという状況を避けることを目的としています。いくら睡眠不足でも、朝になったらちゃんと起床し、昼寝を避けることが、安眠のコツですよ。

単純な原則でありながら、高い効果が実証されている方法だそうですので、ぜひ実践してみてください。

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刺激コントロール法を成功させるコツ

刺激コントロール法の難しいところは、寝床を睡眠以外の目的に使わないことではないでしょうか。何も持たずに布団に入っても、ついついその日の出来事や悩み事、明日の予定などについて考えてしまい、時間を消費してしまう人も多いと思います。

そんな方は、寝る前に以下のことを書き出してみてください。

1. 今考えていることや悩んでいること

以前『感情は紙に書き出すことで浄化される。「書く」という行為について見直してみた。』という記事でご紹介した通り、社会心理学者でバージニア大学教授のティモシー・ウィルソン氏が、『書く』という行為には、ネガティブな考えのサイクルをポジティブな考え方のサイクルへと変化させる力があると述べています。このことは、他の研究者による次のような実験からも明らかになっています。

大学にうまく馴染めないアフリカ系アメリカ人の大学生に「将来の学生のために、大学生に関するエッセイやビデオを作成してほしい」と頼みました。すると、この活動に参加した学生らは数ヶ月後、活動しなかった学生よりも良い成績を残したのです。また、結婚したカップルに生活の悩みを書くように頼むと、悩みを書いた夫婦の方が書かなかった夫婦よりも「幸せだ」と感じる度合いが増加したという結果も出ています。

(引用元:Study Hacker|感情は紙に書き出すことで浄化される。「書く」という行為について見直してみた。

眠れないときについ考えてしまいがちな、仕事や人間関係の悩み。こうした頭の中だけでは悶々と考え込んでしまうようなことも、一度紙に書き出して客観視してみると、あっさりと解決策が見つかるかもしれません。

2. 翌朝にするべきこと

米ベイラー大学睡眠神経科学・認知科学研究所のMichael Scullin氏らが行った実験によると、夜寝る前に、最近成し遂げたことに関する日記を書いたグループと、翌日にするべきことを書き出したグループとでは、後者の方が入眠にかかる時間が短かったそうです。この結果について同氏は

実験の結果からは、TODOリストを作ることによって未来についての心理的な “オフ・ロード(*)” が形成され、安心感を得たことで入眠時間が短縮された可能性が考えられる

(引用元:Lab-On|研究結果: 就寝前に「やることリスト」をつけると眠りやすくなる 引用元資料において、*は行き先案内的な意味とのこと)

と分析しています。

とはいえ、翌日にすべきことがあまりにも多かったり漠然としていたりすると、いくら書き出してもかえって不安が増してしまうかもしれませんよね。理学博士で仕事術に関する著書も多い堀正岳氏は、ToDoリストを作る際のポイントを以下の通り3つ提案しています。

1.「やらなくてはいけないこと」に限定する(「できたらやる」程度のことは書かない)
2.タスクに優先度はつけない(重要度を示すとかえってプレッシャーになる)
3.具体的なリストを書く(「○○の仕事を進める」は曖昧なので×。「電話をかける」などと具体的に書く)

このポイントに沿って簡潔なリストを作れば、寝る前の漠然とした不安を解消することができ、安心して眠りにつくことができるでしょう。詳しくは『明日のToDoは夜に書く。安眠と安心をもたらすための「やることリスト」の作り方。』で紹介されていますので、ぜひ読んでみてください。

***
「布団は寝る場所」という認識が脳に定着するまでは少し期間が必要です。なかなか眠れるようにならなくても、焦らずに今回紹介した「刺激コントロール法」を繰り返してみてください。

(参考)
ダイヤモンド・オンライン|のび太もびっくり!?条件反射的に眠れる「即寝」の技術
古川武士著,みつくイラスト(2016),『マンガで分かる「続ける」習慣』,日本実業出版社.
心理オフィスK|不眠(睡眠障害)のカウンセリング
All About|6つのルールでグッスリ眠る!刺激制御療法
Lab-On|研究結果: 就寝前に「やることリスト」をつけると眠りやすくなる
プレジデントオンライン|“よいToDoリスト”を作る3つのポイント
Study Hacker|感情は紙に書き出すことで浄化される。「書く」という行為について見直してみた。
Study Hacker|明日のToDoは夜に書く。安眠と安心をもたらすための「やることリスト」の作り方。