すぐ誘惑に負けるのは “前頭前皮質” が弱っているから!? 「自制心」を取りもどす3つの方法

スキルアップのための勉強やレポートの作成などで、集中して机に向かわなければならないとき。「今来ない?」という友人から誘いにのってしまったり、ついスマートフォンでゲームをしてしまったりと、誘惑に負けてしまうことはありませんか? この記事では、そんな意志の弱い方々のために、誘惑に負けない強い自制心を身につける方法をご紹介します。

誘惑に負けてしまうときの脳の働き

一般的に、小さな子どもに比べ大人の方が強い自制心を持っているもの。ですが、いくら大人であっても、耐えることのできない誘惑は人それぞれあるのではないでしょうか。暑い夏の日のアイスクリームや、金曜日の夕方のビール、友人からの遊びの誘い。全て一時的な楽しみをもたらすだけの誘いであることは分かっていても、我慢しがたいものですよね。

アメリカの心理学者、ウォルター・ミシェル氏(1930-2018)は、人が我慢するときの脳の反応を調べるために、幼稚園児を対象に「マシュマロ・テスト」と呼ばれる実験を行ない、幼児の自制心を測りました。その実験の内容とは、子どもの目の前にマシュマロを置き、「我慢するように」と伝えた後で子どもを部屋に一人にさせた状態で、どれほどの時間子どもがマシュマロを我慢できるのか計測したというものです。

その実験により、人は誘惑に直面したときに脳の2つの部分を使用していることがわかりました。それは、大脳辺縁系前頭前皮質という部分です。

人は誘惑を目にしたとき、まず大脳辺縁系でその刺激に反応し、その誘惑に反応するか拒否するか決めます。このときの意思決定は、ちょっとしたお菓子の誘惑に反応するかどうかだけでなく、恐れや怒りから食欲、性欲まで、生存に不可欠な基本的な行動全てを決める、とても強いもの。暑い夏の日にアイスクリームを渡されて、食べないで我慢できる人は少ないように、この意思決定はとても抗えるものではありません。

一方、前頭前皮質は、誘惑を目の前に出されたときに思慮深く、ゆっくりと誘惑に対処する機能を持っています。その働きは大脳辺縁系と相反するものです。しかしながら、前頭前皮質はストレスにとても弱く、少しでもストレスがかかると意思決定の機能を大脳辺縁系に受け渡してしまうのだそう。あまりに暑くてイライラするのは、まさにこの状況にあるとき。そんな状態でアイスクリームを渡されたら、思慮深く判断することなどできないのです。

これを私たちの勉強に置き換えて説明します。大事な試験のために難しい勉強をしているときに、友人から遊びの誘いを受けたとしましょう。冷静に考えれば、大事な勉強をしているわけですから誘いを断るべきですよね。ですが、難しい勉強で前頭前皮質にはストレスがかかっています。そのため、前頭前皮質は意思決定の機能を大脳辺縁系にパス。大脳辺縁系が強く働いているときの意思決定は思慮深さには欠けるものなので、勉強から逃げて誘いを受け入れるという行動を選んでしまうのです。

誘惑から一時的に逃れる方法

上で説明したような脳の働きを踏まえると、

・前頭前皮質は、大脳辺縁系が強く働いているときはその働きを失ってしまう。 ・しかし、どれだけ強い誘惑だったとしても、少しでも落ち着くことができれば、前頭前皮質を使って損得を考えることができる。

ということになります。つまり、一時的にでもいいから誘惑から逃れられれば、冷静な判断をすることができるはずなのです。

友人からの誘いのように急にくる誘惑に対処するうえで有効な方法について、ミシェル氏は著書の中で次のように述べています。

誘惑に対処するときに、“ホットシステムから一時的に逃れるには、他の人ならどう行動するだろうか”と想像するというのも一つの手だ。

(引用元:ウォルター・ミシェル著,柴田裕之訳(2015),『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』,早川書房.)

“ホットシステム”とは、脳が魅力的な誘惑に負けてしまうことを指した表現です。人は自分自身が誘惑に直面すると、正しい選択を取ることが難しくなります。しかしながら、「他の人が同じ場面に遭遇したらどう対処するか」を考えることで大脳辺縁系の働きを少し弱めることができるのです。

勉強中に友人からの誘いが来たとき、「勉強をやめて遊びに行こう」と本能のまま決めてしまう前に、「ライバルのあいつなら、この場面でどうするだろうか?」と考えてみてください。ほんの少しの間考えをめぐらすことによって、正しい判断を下す余裕が生まれるでしょう。

事前準備によって誘惑に抗う方法

「他の人ならどう行動するか」を考えるというのは急な誘惑への対処でしたが、誘惑への対処法を事前に設定しておくと、より強く誘惑に抗うことができます

その方法とは、あらかじめ「もし~すれば、そのときは~をする」という台本を自分の中で作っておくというもの。この方法では、「もし(if)」「そのときは(then)」を組み合わせるので、「イフ・ゼン」プランと呼ばれています。台本を先に作ってしまえば、台本を無視して誘惑に向かうことに脳がストレスを感じます。すると、大脳辺縁系由来の強い感情で「そのときは~をする」というアクションを実行することができるのです。

「誘惑にのる」という大脳辺縁系の強い意思決定に打ち勝つことは非常に難しいものですが、実はこの部分は、魚の脳にもある比較的単純な構造だそう。その働きを騙してしまおうというのが、このやり方です。

「イフ・ゼン」実行プランと呼ばれるこれらのプランは、しきりに誘惑するものや気をそらそうとするもののただなかで、学生が勉強するのを助けたり、ダイエット中の人が好物のスナックを我慢しやすくしたり、注意欠陥障害の子どもたちがやらずもがなの衝動的反応を抑制するのを可能にしたりしてきた。

(引用元:ウォルター・ミシェル著,柴田裕之訳(2015),『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』,早川書房.)

「if-then プランニング」の実践例として、事前に「もし友人から飲み会の誘いがあっても、金曜日の夜は行かない」と設定してみましょう。そうすれば、金曜日の夜は自分のスキルアップの勉強のために時間を使うことができますね。

2つの方法を組み合わせれば、どんな誘惑にも勝てる

上の2つの方法を比較した場合、「イフ・ゼン」プランの方が効果的なように聞こえるのではないでしょうか。事前に行動を決定しておいた方が、どんな誘惑がきてもスムーズに対処できるような気がしますよね。

「イフ・ゼン」プランとは、本質的にはクレーム対応マニュアルと同じようなものです。起こりそうな誘惑と対処法を事前に設定しておけば、誘惑に適切に対処することができます。しかしながら、現実のクレーム対応と同様に、予期せぬ誘惑が起こった場合はどうでしょうか? 「イフ・ゼン」プランに設定されていない誘惑が起きたとき、人はその場で行動決定をしなければいけない状況に陥ります。

そこで、「イフ・ゼン」プランを基本としつつも、急な誘惑には「あの人ならばどうするか」を考えて行動することをお勧めします。2つの方法を組み合わせ常に前頭前皮質を働かせ続けることが、強い自制心を保つための方法なのです。

逆に誘惑を“支配する”ことも可能

ここまで説明してきた方法は、誘惑への対処法として効果的なものですが、全く別のアプローチで誘惑をコントロールしてみてもいいでしょう。

誘惑とはつまり、報酬のこと。目の前の仕事や勉強から逃れ、誘惑という報酬に飛びつきたくなることへの対策として、医学博士で作家の米山公啓先生は報酬をもらえるまでの期間の長さを調整することを提案しています。

「『この仕事をコツコツ頑張れば、1年後にこういう成果が出て年収も上がるはず』という報酬は、頭でいくらそれが大事なことだと理解していても、動機づけとして弱い。極端にいうと、人間の脳は明日の2万円より今日の1万円を求めるようにできています。報酬は、遠すぎてはダメ。途中で細かくゴールを設定して、その都度、自分に何か楽しみを与えてあげたほうがいい」

(引用元:PRESIDENT Online|サボり癖、飲みの誘い……甘い誘惑に負けるのは心が弱いせいなのか

これを勉強に当てはめると、「来月の資格試験が終わるまで、友人と飲みには行かない」ではなく、「1週間勉強を頑張ったら、1回だけ友人の誘いにのる」と考えると良いでしょう。ついスマートフォンでゲームをしてしまう人なら、「試験が終わるまでゲーム禁止!」とするのではなく「2時間勉強したら、10分だけゲームしてもよい」としたほうがいいですね。

このように、誘惑(報酬)を自分でコントロールできる場合は、それを細かく刻んで自分に提供し続けましょう。誘惑に「負けない」どころか「支配」してしまえば、よりいっそう勉強に打ち込めるようになるのです。

*** 誘惑に負けない仕組みをつくって強い自制心を身につけてください。きっと、意志の弱さを克服することができるはずですよ。

(参考) ウォルター・ミシェル著,柴田裕之訳(2015),『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』,早川書房. StudyHacker|目標達成確率が3倍に!? 『if-then プランニング』こそが最強の行動計画である。 PRESIDENT Online|サボり癖、飲みの誘い……甘い誘惑に負けるのは心が弱いせいなのか

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