社員に英語研修のプログラムを受講させたあとで、以下のような疑問を抱えたことがある企業の研修担当者は少なくないでしょう。
「英語研修の効果は、本当にあったのだろうか?」
「社員は英語学習を継続してくれているだろうか……?」
「学んだことはどれぐらい実務に活かされている?」
研修の効果を一過性のものにせず、その後も社員たちに英語学習を続けてもらうには、研修担当者からの適切なフォローアップが欠かせません。
本記事では、「英語研修のフォローアップの重要性」を探り、研修担当者が行なうべき「社員に英語学習を続けさせる仕組みづくり」についてご紹介します。
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STUDY HACKER 編集部
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英語研修においてなぜフォローアップが必要なのか?
英語研修においては、研修そのもののクオリティだけでなく、研修が終わったあとのフォローアップも非常に重要です。理由は大きく分けて3つ。
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理由1:英語習得に必要な時間は「2,200時間」
日本語ネイティブが英語を習得するまでに、どれくらいの時間が必要かご存じでしょうか。
アメリカ国務省の外交官訓練所 Foreign Service Institute (FSI) of the U.S. Department of Stateによると、英語ネイティブにとって、日本語は極めて習得が難しい言語。英語ネイティブが日本語を習得するのに、88週間(2,200時間)の学習が必要だとされています。(参照:Department of State’s|Foreign Language Training)
英語ネイティブが日本語を習得するのにかかる時間は、日本語ネイティブが英語を習得するのにかかる時間と同じだと考えられるため、一般的に日本人の英語習得にかかる時間は2,200時間と言われているのです。
日本の教育システムでは、中学校と高校を通じて英語を学習する時間が約1,000時間。そのため、一般的な日本人の成人が英語を習得するには、少なくとも1,000時間以上の勉強が必要と言われています。もちろんベースの英語基礎力によって異なりますが、数か月間の英語研修だけでは、習得に必要な時間を満たすことは難しいというのが実情です。
たしかに、質の高い英語研修を通じて短・中期間で英語力を一気に向上させることは可能です。しかし、真に「使える英語」を身につけるためには、継続的な学習が不可欠であることを念頭に置く必要があります。
理由2:英語学習の課題が変化していくため
英語学習を続けていると、時期によって学習者の直面する「課題」が変化していきます。たとえば、「リスニングが苦手」というケースで考えてみましょう。
多くの場合、英語学習に取り組み始めたばかりの人は「音声知覚」という課題を抱えていす。音声知覚とは、英語の音そのものをとらえる力。
音声知覚の課題をクリアしても、次は、聞いた内容を音声のスピードで「意味理解」するという課題に直面することがあります。人によっては、聞いたものを「短期記憶」として覚えておけないという課題を抱える場合もあるでしょう。
そうした課題を解決するには、それぞれに合ったトレーニングが求められます。音声知覚や意味理解に課題を抱える人には、「シャドーイング」というトレーニングが必要。短期記憶について課題を抱えているなら、「リピーティング」のトレーニングが効果的——といった具合に、英語学習が進むにつれ課題が変化すれば、当然取り組むべき学習法も変わってくるのです。
「リスニング力向上にいいから」と、英語研修が終わったあともなお、1日1時間のシャドーイングばかり継続したとしても、本質的な英語力向上にはつながらないケースもあります。シャドーイングはリスニング力向上のために効果的なトレーニングではありますが、そればかりやっていてもどこかで頭打ちになる可能性があるためです。
このように、学習の進行にともなって必要とされる学習方法も変わってきます。そのため、「そのとき必要な学習」を継続的に提供し続けるというフォローアップが不可欠なのです。
理由3:言語習得はインプット時に起こるため
第二言語習得研究と呼ばれる学問では、言語習得は「インプット」された知識が定着したときに起こるといわれています。
インプットとは、「読む」「聞く」の学習を通して英語の知識を得ることです。言語学者には、言語習得におけるインプットの重要性を否定する者はほとんどおらず、継続的にインプットすることが、英語力向上の鍵であると広く認識されています。
このことからも、英語研修を単発のイベントに終わらせず、研修後も社員が英語のインプットを継続的に行なえるようなフォローアップや学習支援体制を整えることの大切さおわかりいただけるでしょう。
インプットの重要性については、こちらの記事で詳しく解説しています。
社員の英語学習を続けさせる仕組みづくり
英語は継続的に学習することが大切であるということを、おわかりいただけたと思います。では次に、社員の英語研修のフォローアップをどう実践していくかについて具体的に見ていきましょう。
1:学習を継続する支援の提供
英語研修を受けた社員が確実に英語を身につけるためには、企業が少額でも学習支援を提供することが重要です。
2023年にメルペイが実施した調査によると、「スキルアップを実践したくても実践できない理由」として、「時間に余裕がない」に次いで多かったのが「お金に余裕がない」という回答だったそう。その割合はなんと73.6%。(参照:Schoo|スクーがメルペイと共同でリスキリングを支援する「みんなのリスキリング」を開始)
金銭的な理由で継続的な学習を諦めてしまう社員がいるのは、非常にもったいないこと。企業が学習のための費用を一部負担すれば、社員のスキルアップを促進し、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
2:簡易アンケートの実施
英語研修が完了してから数か月後に、簡易的なアンケートを行なったり、研修で実施した内容を再び周知したりしましょう。これにより、「そういえば最近、英語を勉強していないな」と社員に自覚させることが可能です。
アンケートでは、「研修が実務にどのように役立っているか」「研修後に英語学習を継続しているか」「継続している場合、1日の学習時間はどの程度か」など、具体的な質問をするとよいでしょう。
このアンケートは、研修で得た知識を現場で実践し、継続的な成果につなげる「研修転移」を促進するためにも有効です。「研修転移」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
3:定量的なテストの実施
英語研修実施後は、定期的に研修受講者の英語力をテストし、客観的・定量的なデータを得ることも効果的です。
おすすめは、TOEICやVERSANT Listening & Speaking テスト。テストの実施により、英語学習のきっかけや目標をつくることができます。
4:ピアラーニングの導入
ピアラーニング(Peer Learning)とは、学習者どうしが互いに教え合い、学び合う協力的な学習方法のことです。
たとえば、TOEICスコアの目標があるのであれば、英語研修を受けた社員どうしで学習グループをつくることを促しましょう。「この時間はグループで会議室に集まって学習する」、「オンラインでつないで学習する」などのルールを設けるのがおすすめです。
「文法が得意」「リーディングが得意」などそれぞれの強みを活かし、お互いの疑問点やつまずいている箇所を教え合うのもよいですね。モチベーションを高め合えるのも、グループで学ぶメリットです。
社外の英語フォローアップ研修も有効な手段
「英語研修のフォローアップの重要性」と「社内でできる仕組みづくり」についてご紹介しましたが、「学習は継続している。参加者のモチベーションは高い。なのに英語力が伸びていない……!」という状況もあるかもしれません。そういった場合には専門家の助けを借りることも大切です。
前述のように、英語学習を続けていると英語の「課題」は変化します。その課題を正確に見極めたうえで、適切な学習計画を立てることは、専門的な知見がないと困難なもの。そこで、英語研修後にいっそう効果を高められる「フォローアップ研修」を探してみるとよいでしょう。
フォローアップ研修では、特に「英語コーチング」と呼ばれる英語サービスがおすすめです。スタディーハッカーが運営するENGLISH COMPANYでは、社員のひとりひとりの学習課題を特定し、それに合わせた解決策として効果的な学習メニューを提供しています。サポートも充実しているため、英語フォローアップ研修の一環として最適ですよ。
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今回は、企業における英語研修プログラム完了後の「フォローアップの重要性」と「社内でできる仕組みづくり」についてご紹介しました。研修そのものも重要ですが、確実に英語力を高めるためには「研修後」の施策が欠かせません。研修の効果を最大限に発揮するためにも、ぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
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