何かを覚えたいときは、手で紙に書いたり、落書きしたりすると効果的なのだとか。それなら、勉強への苦手意識がなかなか抜けない筆者でも、無理なく楽しく勉強できそうです。今回は、社会人の筆者が “落書きしながら勉強” にチャレンジしてみました。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
東京大学|紙の手帳の脳科学的効用について
東洋経済オンライン|「勉強が苦手な子」と「得意な子」の決定的な差
STUDY HACKER|どんなノートを使えばアイデア出しがはかどるのか? 「文具の専門家お墨つきノート」で確かめてみた
有馬良知著(2012),『図解入門はじめての人のための電気の基本がよ~くわかる本 』, 秀和システム.
記憶の定着には「手書き」がいいらしい
パソコンやスマートフォンに残したメモよりも、紙の手帳やノートに残したメモのほうが、いつ書いたか、どんなふうに書いたかなども含めて、なんとなく記憶に残りやすい気がします。
事実、東京大学のプレスリリース(2021年3月19日掲載)には、こんな発表がありました。研究者らは、実験の参加者に紙の手帳もしくはスマートフォンなどの電子機器に具体的な予定を書いてもらい、のちにその予定を思い出す過程を、MRI装置と課題を用いて調べたそうです。
その結果、紙の手帳を用いたほうが、記憶や言語に関わる脳領野の活動が高まったのだとか。 こうした結果を受け、研究者らは次のように伝えています。
電子機器にはない紙の特性が、五感を通して空間的な手がかりを与えることで、より深い記銘を可能にするという仮説を支持します。
(参考および引用元:東京大学|紙の手帳の脳科学的効用について)
つまり、手書きで得られる感覚が、記憶の定着に役立つということ。紙やペンに触れた感覚、書いたときの感触、ページをめくる際の感覚などが、書く行為をひとつのシーンとしてつくりあげ、印象深い経験にしてくれるのかもしれませんね。
記憶の定着には「落書き」もいいらしい
誰にでも1度や2度は、教科書にこっそり落書きをした経験があるのではないでしょうか。筆者もよく、教科書に載った歴史上の人物の写真に落書きして、「この人だれ?」といった状態にしていました。時には “大作” とも言える作品に仕上がることも……。同級生は喜びましたが、先生に見られたら間違いなく叱られていたことでしょう。
でも、それが覚えるための落書きなら、勉強の場でも歓迎されるかもしれません。落書きは、記憶の定着に貢献するのだとか。2019年4月29日公開の「東洋経済オンライン」記事で、精神科医の樺沢紫苑氏はこんな研究を紹介しています。
イギリスのプリマス大学は、実験の参加者40名に人と場所の名前を聞かせ、のちにそれを書き出してもらったそうです。その際に参加者の半数は、紙に落書きをしながら聞いたのだとか。すると、
「落書きをした」参加者は、「しなかった」参加者より 29%も多くの名前を思い出すことができた
そうです。
樺沢氏はこの研究について述べた際に、「喜怒哀楽が刺激されると記憶が増強される」といった記憶の法則を挙げ、「落書きは感情を刺激するので、記憶に残りやすい」と考えられていることについても触れています。
(参考およびカギカッコ内含む引用元:東洋経済オンライン|「勉強が苦手な子」と「得意な子」の決定的な差)
落書き勉強なら、「学び直しの必要性を感じてはいるが、正直に言うと勉強は苦手……」という人でも、少しくらいは楽しい気分で勉強できるのではないでしょうか。実際に確かめてみましょう。
落書きしながら勉強してみた
今回筆者は落書きしながら勉強するために、図表を描きやすいと評判の、ナカバヤシの「スイング・ロジカルノート」を使うことにしました。
(スイング・ロジカルノートについてはこちらの記事でも紹介しています⇒「どんなノートを使えばアイデア出しがはかどるのか? 「文具の専門家お墨つきノート」で確かめてみた」)
今回の大きなテーマは「楽しく勉強して覚えること」。そこで可能なかぎりストレスを軽減しながら、しっかりと学習活動ができるよう、自分なりに3つのルールを設けてみました。
- 思うまま自由に描く
- 覚えることに意識を向ける
- 人に説明しやすい落書きにする
“こうすべき” を排除して、自由に描けばストレスなくできそうだし、覚えることを意識していれば、目的がブレないし(ただ「楽しんで終わり」を避ける)、あとで人に説明する意識があれば、まず自分が理解しようという気持ちが強くなりそうだからです。
こうして勉強したノートは――なんだか子ども用ドリルみたいになってしまいました。
(ノートの中身参考:有馬良知著(2012),『図解入門はじめての人のための電気の基本がよ~くわかる本 』, 秀和システム.)
でも、だからこそ無理に勉強している感覚がなく、ストレスフリーで楽しく行なえました。それでいて思慮深く、慎重に落書きしていた感覚があります。覚えることに意識を向け、あとで人に説明できるように描いていたからです。
つまり――結局、落書きを描こうとして、自分がわかりやすい図解を描いていたのかもしれませんね。
また、落書き勉強後、しばらくほかのことをして、数時間後に覚えているかどうかテストをしてみたら、記憶を思い出す過程で、最初に登場するのはまず落書き、そのあと文字が浮かんできました。絵というよりは、落書きの配置を、空間という広がりのなかで覚えていたような感じもあります。「五感を通して空間的な手がかりを与える」という、手書きの効果も影響しているのかもしれません(カギカッコ内引用元:前出の「東京大学」プレスリリース)。
短い時間を置いた、簡単な内容のテストなので、長期記憶の証拠にはなりませんが、一応ほとんど覚えられていましたよ。落書きが記憶の定着を助けてくれることは、大いに期待できそうです。
なお、今回の大きな反省点は、情報量に対して、ノートのスペースを使いすぎたことです。つまり、これだと各ページの情報量が少なくなり、膨大な落書きノートがつくられてしまう可能性があるわけです。そうならないよう、たとえば1テーマ1ページといった具合に、範囲を決めてしまうといいかもしれませんね。
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落書きしながら勉強してみたら、ストレスなく勉強できそうな予感が広がりました。勉強に苦手意識のある社会人の方は、ぜひ一度お試しください。