アイデア出しに「方眼ノート」がかなり向いてる理由。コツは “放射状” と “3分割”!

使い勝手のいい方眼ノート

使い勝手のよさが人気の「方眼ノート」は、自律神経を整え、機能的に脳のワーキングメモリを働かせてくれるといいます。そんな効果があるならば、アイデアも出しやすくなるかもしれません。そこで今回は、方眼ノートを使ってアイデアを出してみました。

方眼ノートは神経と脳に効く

まずは、方眼ノートの効能について説明しましょう。

自律神経研究の第一人者で順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、こう述べています。

ここ数年、方眼ノートが流行しているが、これは使い勝手がよいだけでなく、心身のバランスを司るためにも優れている。

(引用元:@DIME アットダイム手帳やノートが乱雑な人は自律神経が乱れ気味?)

字のうまい下手は関係なく、手で丁寧に文字を書いていると心が落ち着いて自律神経が整うそうです。その際に方眼ノートを使うと、マス目に沿って無理なくきれいに書くことができ、レイアウトも組みやすいので、書くストレスが少なくなって、より自律神経が安らぐのだとか。

自律神経は、わたしたちが無意識のうちに内臓や血管などを自動的に調節してくれている神経。活動の交感神経と、休息の副交感神経の2種類があります。

したがって、文字を丁寧に書いて心が落ち着くのは、副交感神経が刺激されるから。それで自律神経が整う理由は、現代人が常に仕事のストレスや、照明・パソコン・スマートフォンの光にさらされ、交感神経が優位になりすぎることで自律神経のバランスが崩れているからです。

せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司氏いわく、「できるビジネスパーソンは、自律神経が整っている」とのこと。自律神経は身体全体を調節してくれている神経ですから、その良し悪しが気分に表れ、仕事にも影響するのは当然だといえます。

人間の神経システムを描いたイラスト

また、脳科学者で公立諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀氏は、方眼ノートなら機能的にワーキングメモリを働かせられると説明します。

ワーキングメモリとは、目の前のタスクを行なう際に働く脳のシステムのこと。会話や読み書き、計算などの基礎となる重要な能力なのだとか。そのワーキングメモリを構成するのは次の3つ。

  • 【言語的短期記憶(音韻ループ)】:数・単語・文章などを扱う
  • 【視空間的短期記憶(視空間スケッチ(メモ)パッド)】:イメージ・絵・位置情報などを扱う
  • 【中央実行系】:コントロールする役割

この構成を見ると、すでにマス目という空間情報が整い、文字・イラスト・グラフ・立体図なども起こしやすい方眼ノートが、必然的にワーキングメモリの「音韻ループ(文章)」と、「視空間スケッチパッド(イメージ)」の両方を働かせる、とわかりますね。

ワーキングメモリをイメージしたカラフルなイラスト

方眼ノートでアイデアを広げるコツ

方眼ノートが、自律神経と脳にいいことがわかりました。では次に、方眼ノートでアイデアを広げるコツを探ってみます。

日本でいちばんノートを売るといわれるコクヨの社員は、方眼ノートでアイデア出しをする際、ノート中央から放射状にアイデアを広げていくとのこと。思考が制限されず、自由自在に考えを膨らますことができるからです。

その形状は、まるでメインテーマを中央に書き、そこから放射状に発想を書き広げていくマインドマップですが……、

マインドマップを描いている画像

何といっても方眼ノートの注目すべき特性は、丸で囲ったり枝葉に沿わせたりしてマインドマップ風に思考を広げている途中でも、箇条書きやグラフなどを挿入できること。マス目にガイドされるので書きやすく、乱雑になりにくいので自由自在にアレンジできます。

ちなみに、学研ステイフルがアートディレクター居山浩二氏と立ち上げた文具ブランド “bnbg” から発売された、「shirusu」シリーズの商品名「mannaka」には、方眼ノートの中央が大きな空白の円になっているタイプがあります。

真ん中に、円の空白が施された方眼ノート

※「mannaka」ノートをイメージした画像です。

このノートにアイデアを放射状に拡散していくと、テーマが中央にあるというより、アイデアの背景にテーマがあるといったイメージなので、論点のズレを防げそうですね。今回は、そのレイアウトを参考にしつつ、放射状に発想を広げていこうと思います。

方眼ノートでアイデアを広げてみた

コクヨ社員によれば、ヨコ型の方眼ノートは思考を広げやすい特徴があるとのこと。筆者の場合は6号(セミB5)5mm方眼罫ノートしか手持ちがなかったので、そちらを見開きにして使います。セミB5見開き=B4サイズです。

書きづらい中央綴じ部分を避け、少し左にずらして円を描きます。テーマを意識しながらアイデアを広げたいので、円は少し大きめに。

のちに黒ペンでアイデアを広げることを前提に、区別するためグリーンの極細ペンで円を描きます。(もちろん青ペンでもいいと思います)

方眼ノートを見開き、メインテーマのための円を中央から少し左にずらして描く

先に紹介したノート(mannaka)なら、すでに中央に丸い空白があるので、そちらを使用するのもありです。

それから円の真ん中に、【メインテーマ】を書いていきます。

今回筆者がアイデアを出そうとしているのは、「ちょっと珍しい視点のガイドブック」について。その言葉のままグリーンの中太ペンで書き込みます。

方眼ノートでアイデアを広げるために、中央の円のなかにメインテーマを書き込む

ここから、アイデアを広げていこうと思います。

書く前にいったん頭の中だけでシュミレーションしてみると、いくつか浮かぶものがあったので、こちらを【サブテーマ】として中太ペンで書いてみました。

メインテーマから最初に浮かんだアイデアをサブテーマとして書く

あとは何も制限せず、丸や四角で囲ったり、文字のみにしたり、左右上下に移動したり、箇条書きにしたり、階層にしたりしながら、自由にアイデアを広げていきます。

すると、 こんな感じになりました。

セミB5ノートの方眼ノート見開きに、放射状にアイデアを広げたもの

方眼ノートでアイデアをまとめてみた

このままでは収拾がつかないので、次に広げたアイデアをまとめていきます。

まずは単純に、「いいな」「これはいける」と感じたものにグリーンの中太ペンで印をつけて……、

方眼ノートを使って広げたアイデアから、いいなと思うものをピックアップ

写真に写っているグリーンペンは100円ショップで購入可能。極細と中字両方が使えるので便利です。

ここからさらに、まとめていきます。

方眼ノートでまとめていく方法として次に選んだのは、マッキンゼーやアクセンチュアの外資系コンサルタントや東大生も実践しているという3分割のノート術です。

先述のとおり、方眼ノートにはマス目のガイドがあるので、いかようにも書けて、しかも乱雑になりません。マインドマップ風でも、分割ノート術でも、どんな書き方でも「まとまってくれる」のがいいところです。

では、そんな方眼ノートに甘えつつ、さっそく始めます。

ラテ・アートを施した飲み物と便利な方眼ノート

『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』(かんき出版)を著した高橋政史さんによると、このノート術のポイントは、3分割されたフレームに、左から「事実」「解釈」「行動」を書き込んでいくこと。

行動までこぎつけるためには、事実(得た情報)を解釈するプロセスを踏むことが必要であるから、とのこと。たとえばこうです。

  • 「事実」:雪が降り出した
  • 「解釈」:電車が遅れるかも
  • 「行動」:少し早めに出よう

具体的には、方眼ノートの見開き上部に見出し(論点)のスペースを設け、本体は「事実」「解釈」「行動」を書いていくために3分割します。(「事実」は片頁分の幅にする)。下部には「欄外のスペース」を設け、備考やメモに使います。

3分割のノート術のフレーム

高橋さんは「道路のセンターラインがないと車をうまく走らせられない」ことを例に挙げ、「人の思考もフレームに左右される」と説きます。3分割するだけのシンプルなフレームを施すだけでも、思考が整理しやすくなるとのこと。

ただし、今回筆者はアイデアをまとめていく目的でこの3分割法を活用するので、次のようなかたちで書いていこうと思います。

  • 「事実」→先にアイデアを広げて得たワード
  • 「解釈」→理由・気づき・裏づけ
  • 「行動」→どう進めるか

まずは、放射状にアイデアを広げた際のメインテーマを、そのままこちらの見出しにも書き、グリーンの中太ペンで印をつけた言葉を、3分割の1番左に書き込みます。

方眼ノートの3分割ノート術・見出しとアイデア拡散から得た言葉を書き込む

高橋政史さんによると、「どの事実に関して→解釈したことか」、「どの解釈から→導き出した行動か」を明確にするため、それぞれを矢印でつなぎ、矢印の上に「なぜなら」「要するに」といった接続詞を書いておくといい、とのことです。

それにより、ロジックがつながるので、つまりロジックが明確になるので、他者に説明しやすくなるとのこと。

それらを踏まえ、やっていくと、次のようになりました。

方眼ノートを使い、3分割法でアイデアを出してみた

方眼ノートでアイデアを出してみた結果

今回、方眼ノートを使ってアイデアを出すために、次の2つを行いました。

  • メインテーマを置きアイデアを放射状に広げる
  • 3分割して思考を整理し、ロジックを組み立てる

やってみて実感したのは、文具プランナーの福島槙子さんが述べた、「方眼ノートは懐が深い」という言葉です。

放射状のアイデア拡散では、斜めになったり、戻ったり飛び越えたり、箇条書きにしたりしても、マス目に頼ることができたので、不思議なくらい乱雑になりませんでした。

そのストレスの少なさが自律神経をより整えてくれたからこそ、リラックスして感じたことや気づき、アイデアを広げていけた気もします。

3分割法でも、やはりマス目がガイドしてくれるので、フレームを描きやすいのはもちろんのこと、フレーム内での整理のしやすさも感じられました。

先に方眼ノートがワーキングメモリを機能的に働かせると紹介しましたが、ワーキングメモリは思考や創造性を担う脳の最高中枢といわれる、前頭前野と深いかかわりがあるそうです。思考の整理が捗るのも納得ですね。

したがって、方眼ノートでアイデアを出してみた結果、ストレスなくアイデアを広げることができ、脳の最高中枢に助けられ、アイデアを整理できました!

***
ぜひ方眼ノートを使い、この2ステップでアイデアを出してみてくださいね。

(参考)
STUDY HACKER|脳活性化の効果も! やること管理に「方眼ノート」が超絶おすすめなワケ。
@DIME アットダイム|手帳やノートが乱雑な人は自律神経が乱れ気味?
東洋経済オンライン|コクヨ社員に聞く!方眼ノートの最強活用法
&GP|アイデア出しに!頭のなかを整理しやすい全6種類の個性派ノート
THE21オンライン|できる人が「方眼ノート」を使う理由
小林弘幸(2017),『「意識しない」力 うまくいくときは、結局みんな、自然体』, 文響社.
仕事の教科書編集部編(2015),『究極のノート術』, 学研プラス.
久手堅司(2018),『最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方』, クロスメディア・パブリッシング(インプレス).
脳科学辞典|前頭前野

【ライタープロフィール】
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