「また話が噛み合わなかった……」
部下との1on1面談で、なんとなく気まずい雰囲気のまま終わってしまう。チーム会議では、メンバーの表情が硬く、活発な意見が出ない。家に帰れば、家族との会話も次第に短くなっている——。
職場や家庭で、こんな経験はありませんか? 多くの人は「もっとうまく説明しなければ」「話し方を変えるべきかな」と悩みます。しかし、じつは人間関係をよくするカギは、「聞く力」にあるのです。
心理学者のカール・ロジャーズが提唱する自己開示理論によれば、相手の話に真摯に耳を傾けることで、確かな信頼関係が築かれていきます。聞き上手になることは、ビジネスコミュニケーションの基本であり、職場の人間関係改善に直結するスキルです。上司と部下のコミュニケーションでも、適切な話の聞き方のコツを実践するだけで、相手は安心して本音を話せるようになります。
では、あなたはどのような「聞き方(聴き方)」をしているでしょうか? まずは以下の簡単な診断テストで、自分の聴き方の特徴を確認してみましょう。その後、それぞれの得意タイプに合わせた「傾聴技術」の実践方法をご紹介します。あなたの得意な「聞き方(聴き方)」をさらに伸ばせるはずです!
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なぜ聞き上手が人間関係をよくするのか
話を聞くことで生まれる安心感と信頼
心理学の研究では、自己開示を受け入れられることで、話し手は「この人は自分を理解してくれる」と感じると言われています。これは、心理的安全性を生む重要な要素であり、聞き上手になりたいと考える多くのビジネスパーソンが最初に意識すべきポイントです。
たとえば、プロジェクトで問題が発生したとき、「話を聞いてもらえないかも」「否定されるかも」という不安から報告をためらった経験はないでしょうか。しかし、傾聴技術に長けた上司がいるチームでは、状況が大きく異なります。
「この案件、このままだと少し心配なんですが……」という発言に、上司が「具体的にどんな点が気がかりなの?」と問いかける。このような対話を重ねることで、問題の早期発見・解決が可能になり、強い信頼関係が築かれていくのです。
職場での効果:生産性向上のカギとなる聞き上手
ビジネスコミュニケーションにおいて、聞き上手な人がいるチームでは、以下のような効果が生まれます:
1. 会議での建設的な議論の活性化
- 発言を遮らない姿勢により、メンバーが意見を出しやすい雰囲気が生まれる
- 「こんなことを言っても……」という躊躇が減り、革新的なアイデアが共有されやすくなる
2. 日常的な情報共有の促進
- 「この人なら相談しても大丈夫」という安心感から、小さな気づきも共有されるようになる
- チーム全体のコミュニケーション方法が改善され、報告・連絡・相談がスムーズになる
3. 問題解決の効率化
- 誤解や認識のズレが早期に発見できる
- チームメンバー全員の知見を活かした解決策の立案が可能になる
プライベートな人間関係での効果
人間関係改善の効果は、家庭や友人関係にも広がります。たとえば、帰宅した家族に「今日はどうだった?」と声をかけるとき。単なるあいさつではなく、相手の表情を見ながら、本当に話を聞く姿勢で接することで、会話は大きく変わります。
「なんか疲れてるみたいだけど、大変なことがあったの?」
「うん、じつは今日ね……」
このようななにげない会話の積み重ねが、家族間の信頼関係を深めていきます。友人関係でも同様です。相手の様子に関心を持って耳を傾ける傾聴の技術が、より深い絆づくりの基礎となるのです。
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1. 対話促進型:オープンクエスチョンを使う
聞き上手になるためには、「はい/いいえ」で終わる質問ではなく、相手が自由に答えられるオープンクエスチョンを使うことが効果的です。これにより、相手の考えや感情を深掘りしやすくなります。
ビジネスコミュニケーションの現場では、特に以下のような場面で効果を発揮します:
- 1on1面談:「最近の業務はどうですか?」ではなく「いまの業務で特に充実感を感じる部分を教えてください」
- 企画会議:「この案でいいですか?」ではなく「このプロジェクトをよりよくするためのアイデアはありますか?」
- 問題解決時:「納期は間に合いそうですか?」ではなく「現在の進捗状況と課題を詳しく教えていただけますか?」
このような質問をすることで、相手は自分の考えを整理しやすくなり、より深い対話が生まれます。また、職場の人間関係改善にもつながります。相手が本音で話せる雰囲気づくりは、信頼関係構築の第一歩となるのです。
2. 理解共感型:相手の言葉を繰り返す
相手の発言を要約して繰り返すことで、「この人は自分の話をしっかり聞いている」と感じてもらえます。心理学で「アクティブリスニング(能動的傾聴)」と呼ばれるこの手法は、話の聞き方の基本として広く認められています。
具体的な活用例を見てみましょう:
プロジェクトでの会話
部下:「この案件、スケジュールがタイトで、品質面も気になっています」
上司:「スケジュールと品質の両方に懸念があるということですね。具体的にどのような点が心配ですか?」
日常的な報告場面
部下:「最近、仕事が忙しくて残業続きなんです」
上司:「残業が多くて大変な状況なんですね。具体的にどの業務に時間がかかっているんでしょうか?」
このように、相手の言葉を受け止めて言い換えることで、「理解していますよ」というメッセージを伝えられます。さらに、適切な質問を組み合わせることで、より深い対話へと発展させることができます。
3. 信頼構築型:非言語コミュニケーションを活用する
心理学では、コミュニケーションの多くが非言語的な要素に依存していることが知られています(Mehrabian, 1971)。傾聴技術を高めるには、言葉だけでなく、以下の要素も意識的に活用することが重要です:
アイコンタクト
- 基本:相手の目を適度に見つめる(3~5秒程度)
- オンライン会議:カメラを見て話すことで、同じ効果を生む
- 注意点:見つめすぎると圧迫感を与えるため、ときどき視線を外す
うなずきと体の向き
- 相手の話の区切りに合わせて自然にうなずく
- 体を相手に向け、前傾姿勢で話を聞く
- 腕を組まないなど、開かれた姿勢を保つ
相槌と表情
- 「なるほど」「そうですね」などのタイミングを工夫
- 相手の話の内容に合わせて表情を変える
- 笑顔を適度に見せることで、話しやすい雰囲気をつくる
これらの非言語コミュニケーションを意識的に取り入れることで、相手により強い安心感を与えることができます。特に初対面の相手や、緊張感のある場面では、この非言語的な要素が信頼関係構築の重要なカギとなります。
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聞き上手になることは、信頼関係を築くための強力なツールです。オープンクエスチョン、相手の言葉の繰り返し、非言語コミュニケーションという3つの方法を意識するだけで、人間関係は大きく変わります。
これらの聞き方は難しいスキルではなく、今日から実践できるものばかりです。ぜひ、この記事を参考に、自分の聞き方を見直し、人間関係をよりよいものにしてみてください。
Albert Mehrabian (1971), "Nonverbal communication." Nebraska Symposium on Motivation, Vol.19, pp.107–161.
STUDY HACKER 編集部
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