【2024年最新】従業員満足度とエンゲージメント調査の効果とは?最新研究から見る組織パフォーマンス向上のヒント

チーム

多くの企業が従業員満足度やエンゲージメントを重視し、各種サーベイを導入していますが、それは本当に従業員のパフォーマンス向上に寄与しているのでしょうか?

毎年決まった時期になると調査が行なわれ、これが組織の状態や状況をよくするために効果があるのか疑問に思いながら回答している方も多いかもしれません。

この記事では、従業員満足度とエンゲージメントの観点から最新の調査や研究をもとに、これらをどのように高めていくのかのヒントを提示します。

 

従業員満足度を高めることで、パフォーマンスは上がるのか?

従業員満足度の向上とパフォーマンスへの影響の相関は小さい

はじめに従業員満足度 Employee Satisfaction(以下、ES)の観点からみていきましょう。

従業員満足度を上げると、社員のパフォーマンスが上がるのか? という問いに関しては、アイオワ大学のティモシー・ジャッジらがおこなった300以上の論文と、5万人以上のデータを分析した結果、従業員満足度とパフォーマンスの相関は弱いということがわかっています。*1

つまり、

  • ESが高まる→パフォーマンスが高まる

という因果関係ではなく、

  • ESが高まる→パフォーマンスが高まることも考えられるが、
  • パフォーマンスが高まる→ESが高まると考えることもできる

ということです。

従業員満足度が高まりすぎる懸念点

リクルートマネジメントソリューションズの古野庸一氏、今城志保氏、武藤久美子氏による共著『組織変革の教科書』には、従業員満足度が高まりすぎる注意点について記載されています。

仕事や職場の満足度が高まると、その状態に安住して、懸命に働かず、結果、パフォーマンスが高まらないことも十分に考えられるということである。*2

職場の居心地が良すぎると、かえってパフォーマンスが下がる可能性もあるということですね。こうした点を含めて、従業員満足度とパフォーマンスは、弱い相関にとどまるのだそうです。

成功するチーム

相関関係が低いのであれば、従業員満足度は無視してもよいのか?

従業員満足度がパフォーマンスとの相関関係が低いのであれば、従業員満足度は無視してもいいのでは? と思われた方もいるかもしれません。

この点について、前述の『組織変革の教科書』では3つの観点からNOと記されています。

  1. 従業員のA&R(採用と離職防止)
  2. 研究の限界(長期の影響を検討できていない)
  3. ESが高いことが組織の目標の1つになりえる *2

1つめの従業員のA&R(Attraction and Retention、採用と離職防止)については、不満が多く、満足度が低い会社では採用面での苦戦や離職の多さが課題になってくる可能性があります。今後、人材不足が予測されている状態では、ESが大きな課題となりえます。

2つめの研究の限界については、あくまで従業員満足度は「点」での調査となっていることが懸念点として挙げられています。単年での従業員満足度を調査しても、長いスパンで見たときにパフォーマンスの高さにつながる可能性が捨てきれません

3つめについては、格差や資本主義の問題点が近年指摘されていることから、今後従業員満足度を高めることが企業の目標になりえると指摘されています。

2つめ、3つめに関しては留保が必要なものの、1つめの採用と離職防止の観点から従業員満足度は追っていく必要のある指標と言えるでしょう。

従業員満足度は上司の影響が大きい!?

それでは、具体的に従業員満足度を高めるためには何に注目すべきでしょうか。

先述の『組織変革の教科書』には、より改善点が考えやすいように「仕事」「職場」「上司」「会社」を統合した調査も紹介されています。その調査では「仕事」の特性そのものと満足度の相関関係は低いなか、相対的に上司との課題形成、課題遂行、コミュニーション面での相関関係が高いことがわかっています。

上司との関係性が、従業員満足度と相関関係が高いのは納得できる点も多いのではないでしょうか。組織の責任者や管理者が従業員満足度に関与できるということを示唆しています。

「仕事」「職場」「上司」「会社」を統合した調査の結果

『組織変革の教科書』p40 『ES「総合満足度」との諸要素の相関係数』の表を簡略化した

エンゲージメントが高い会社はパフォーマンスがよくなる!?

続いて、エンゲージメントの観点からも見ていきましょう。

エンゲージメントとは?

エンゲージメントとは、近年提唱された概念のひとつで、ユトレヒト大学のウィルマー・シャウウェリらは、

「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。(中略)仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」と定義しています。*2

従業員満足度が、基本的な職場環境に対する感情的な満足度に焦点を当てているのに対し、エンゲージメントは、従業員が積極的に貢献したいと考えているかどうかに焦点を当てています。前者は比較的受動的な指標であり、後者のエンゲージメントはより能動的で組織への関与度が強い指標です。

日本のワークエンゲージメントの実態

リクルートマネジメントソリューションズが行なった調査によると、約4割が1週間に1回以上の頻度で「仕事に熱心である」と回答しているものの、「活力がみなぎるように感じる」と回答したのは約2割だったそう。*3

前述の調査を、9項目で平均したスコアは2.62で他国に比べて極めて低いことが判明しています。ユトレヒト・ワークエンゲージメント国際比較によると、平均スコアが3を切っているのは日本のみ。他国が軒並み3.5以上あるなか、オーストラリア、イタリア、ドイツ、フランスはスコア4を超えており、日本のワークエンゲージメントがいかに低いかを示しています。*4

ワーク・エンゲージメント・スコア測定の質問項目

ワーク・エンゲージメント・スコアの国際比較

エンゲージメントを上げる効果

エンゲージメントが上がるとどのような効果があるかについては、前述の古野氏、今城氏、武藤氏は下記のようにまとめています。

エンゲージメントが高いほど、幸福感、適応感が高まり、離職意向は抑えられることがわかる。*2

エンゲージメントが高ければ組織のパフォーマンスが上がっていると言えると結論づけています。ただし、組織のパフォーマンスが上がっているから、エンゲージメントが上がっていることも否定はできず、パフォーマンスとエンゲージメントは相互に相関して合っているとも指摘しています。

エンゲージメントを上げるには?

従業員のエンゲージメントが重要であることがわかったところで、私たちはどのようにしてエンゲージメントを上げていくことができるでしょうか。

職場全体の心理的安全性を高める

心理的安全性とは、職場やチームの中でメンバーが安心して意見を出したり、質問や失敗をしたりできる状態を指します。他者からの批判や否定を恐れず、率直なコミュニケーションができる環境で、生産性の向上に寄与する重要な要素とされています。

リクルートマネジメントソリューションズの今城志保氏、藤村直子氏の共同研究「職場の心理的安全性が個人に及ぼす効果を検証する」によると、「職場の心理的安全性が高い場合、個人の心理的安全性の適応感への影響は抑制されることが示され」ることがわかったそうです。*5

つまり、職場が安全でオープンな環境であると、個人が自分の心理的安全性を低く感じていても、仕事に対するポジティブな態度を保ちやすくなるということです。

また、上記の研究では、

職場の心理的安全性の高低にかかわらず、上司とのコミュニケーションが多いと、職場における相対的心理的安全性認知は高まり、そのいずれもが適応感にポジティブな影響を及ぼすことが確認された。*5

とも指摘されており、上司とのコミュニケーション頻度がエンゲージメントに影響があることが示唆されています。

学習・成長機会の提供:大手通信会社の事例

企業がエンゲージメントを高める方法として、学習・成長機会の提供も重要な要素のひとつです。

株式会社スタディーハッカーが提供している英語研修「ENGLISH COMPANY for biz」ではグループコースを用意しています。

ENGLISH COMPANY for biz の英語研修を導入した大手通信会社では、英語研修を導入したことで以下の従業員の変化を担当者が確認できたそうです。

ほかのメンバーが頑張っている様子も見られるから、互いに良い刺激を受けて英語学習に取り組めた。

クラスごとや受講者全員のグループLINEやSlackチャンネルが自発的に作成され、英語学習で困っていることやうまくいっていることなどのシェアがなされ、組織全体で「英語を頑張っていこう」というムードが醸成された。

これはグループでの英語研修を提供することで、感情的エンゲージメントが高まったことが要因とみられます。

感情的エンゲージメントとは、学習や活動に対して個人が抱く感情的な反応を指し、興味や楽しさ、充実感などのポジティブな感情を伴う関与の状態を意味しています。

奈良教育大学の解良優基氏(現在は南山大学准教授)、出口拓彦氏の論文によると、個人がグループ活動において興味や楽しさを感じると、学習成果の向上やグループでの交流の質が高まるということが示されています。*6

ENGLISH COMPANY for bizの英語研修で従業員のエンゲージメントを向上

スタディーハッカーが提供する英語研修 ENGLISH COMPANY for biz では、パーソナルコースだけではなく、少人数制のグループコースも提供しています。グループコースでは、ほかの従業員と学ぶことで、協力と競争が生まれ、組織のエンゲージメント向上につながります。

実際、手あげ制で ENGLISH COMPANY for biz を導入した家電メーカーでは「(従業員の)エンゲージメント向上につながった」とのお声をいただいています。

グループ学習は学習の孤独感を減らし、発言や積極的な参加が促進される効果があります。

 

ENGLISH COMPANY for biz の、法人グループ研修の受講生様からは「新しいスキル(英語)を習得することでパフォーマンス向上や自己効力感の増加につながった」そうです。

***
この記事では、従業員満足度とエンゲージメントの観点から、どのようにして両者を上げて組織を強くしていくかについて解説しました。

従業員満足度については、満足度を上げるすぎることによる懸念点について触れ、ES、エンゲージメントについては上司が果たす役割がある程度大きいことも明らかになっています。

エンゲージメントを高めるためには、従業員に学習・育成の機会を提供すること大切です。

ENGLISH COMPANY for biz では、英語力を上げながら社員のエンゲージメント向上につながるグループコースを多数ご用意しています。

ENGLISH COMPANY for biz では英語研修の導入から最適なプランまで英語のプロフェッショナルがそれぞれの企業に合わせた最適なプランをご提案します。お気軽にお問い合わせください。

あなたの組織でも英語コーチングを導入し、従業員のエンゲージメント向上を目指してみませんか?

(参考)

*1 Judge, T. A., C. J. , J. E. Bono, and G. K. Patton (2001) "The Job Satisfaction-job performance Relationship: A Qualitative and Quantitative Review." Psychological Bulletin 127(3): 376-407.
*2 古野庸一、今城志保、武藤久美子『組織変革の教科書』(2024)
*3  リクルートマネジメントソリューションズ|一般社員624名に聞く、ワーク・エンゲージメントの実態
*4 厚生労働省|令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-
*5 今城志保、藤村直子「職場の心理的安全性が個人に及ぼす効果を検証する」(2019)
*6 解良優基、出口拓彦「自分とメンバーの感情的エンゲージメントがグループ学習への態度に及ぼす影響」(2017)

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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