「やる気が出ない」は1枚の紙で解消可能。“9つの過去” を書き出すだけで行動力がみなぎるワケ。

やる気を出すには過去に注目する――。そのメソッドを教えてくれたのは、「目標実現の専門家」である、メンタルコーチの大平信孝(おおひら・のぶたか)さん。現在進行形である目の前のタスクに精力的に取り組むための方法としては少し意外な気もします。いったいどういう仕組みで、過去に注目することがやる気を出すことにつながるのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

意識的に「輝いていた過去」を思い出す

先延ばし癖を解消して目標を達成するためには、自分の枠を飛び越えるような「ぶっ飛んだ目標」を立てることが大切です(『「10秒アクション」が先延ばし癖解消に効く脳科学的根拠。脳をだませば “行動できる人” になれる!』参照)。とはいえ、本当にやる気を失っている人というのは、そもそも未来を描けない、目標を立てられないことも多いのです。

そこで、やる気を取り戻し、目標を立てられるようになるために有効なのが、「輝いていた過去を振り返る」こと。過去というと、失敗経験などネガティブなことをよく覚えてるものです。これは、脳の防衛本能によるもの。誰しもネガティブなことは繰り返したくないですから、強烈な印象とともに記憶に残されるのです。

わたしの場合、小さい頃に犬にかまれたあとはしばらく犬に近づくことができませんでした。火傷をしたことが強い記憶となって、火にかかっている鍋ややかんに極度に気をつけるようになった経験を持つ人もいるでしょう。それらは、生存するための脳の機能です。

その機能に無抵抗に従っていると、悪い記憶ばかりをリプレイしてしまいます。だから、過去に対していいイメージを持っている人はそう多くありません。でも、どんな人にも輝いていた過去が必ずあります。それを意識的に思い出してみましょう。そうすると、やる気を取り戻すことができるのです

どんどん「おめでたい人」になるべき

やる気というのは、車にとってのガソリンのようなものです。日本人の場合は自己肯定感が低い傾向にありますから、ただガソリンが切れているだけなのに、「僕はまともに走れないポンコツの車だ……」と自分にネガティブなレッテルを貼りすぎるように思います。でも本来、ガソリンが切れたのならただ補給してあげればいいだけだとわたしは考えます。そのガソリンが、「自分が輝いていた過去」というわけです。

自己肯定感が高い人、自信家の人は、無意識のうちにも自分が輝いていた過去、名場面を思い出しているのです。つまり、自然にいいサイクルを持っているということ。どこにでも、「おめでたい人」っていますよね? 本来、皮肉を込めた表現ですが……いくら周囲には「おめでたい人」に映っても、本人にやる気や自信がみなぎり仕事でもプライベートでも精力的に行動できるのなら、どんどん「おめでたい人」になったほうがいいと思いませんか?

しかも、「おめでたい人」は、そうでない人と比較すると、同じ仕事や勉強をしても成果が出やすいということもある。想像してみれば簡単なことです。「自分は駄目な人間だ、だから勉強しなきゃいけない、でも自信はないし……」なんて心理状態で勉強をしても、成果が出づらいことはすぐにイメージできますよね。そうではなく、過去にすごく勉強に集中できたときの状態を思い出し、ポジティブな気持ちで取り組む。それだけで成果には雲泥の差が出ます。

「井戸メソッド」で「思い出し筋」を鍛える

でも、輝いていた過去を思い出すといっても、そもそもネガティブな記憶が残りやすいように人間はできているのですから、それこそ「おめでたい人」でなければ、そう簡単なことではありません。そこで、輝いていた過去を思い出すための方法をいくつかお教えしましょう。

ひとつは「時系列で思い出す」ということ。過去を思い出し慣れていない、いわば「思い出し筋」が発達していない人が、いきなり幼い頃のことを思い出そうとしても難しいものです。そこで、「社会人になってから」「大学生時代」「大学受験勉強をしていた頃」というふうに、現在から順を追って過去にさかのぼってみましょう

それから、「はじめてシリーズ」もおすすめです。誰もが、はじめての経験というのは強烈に覚えているものですよね。はじめてのひとり旅、アルバイト、デート、映画鑑賞……。それこそなんでもいいのです。それらのはじめての体験にまつわるポジティブな記憶を探っていきましょう

そうやって思い出した輝いていた過去は、ノートなどに記録します。わたしが提唱しているのは「井戸メソッド」という方法。「輝いていた過去をくみ上げる」ということに引っ掛けて命名したものです。やり方はとても簡単。「井」という字のような、いわゆる三目並べで使う9分割のマスを書き、そこに輝いていた過去を書き込むのです

最初は9つ書くのも難しいかもしれません。でも、空白があると人間は埋めたくなるものですから、より深く自分の記憶をたどるようになる。そうして、完全に忘れていたような記憶さえ取り戻すことができるわけです。書き込んだら、事あるごとに見返しましょう。それがトリガーとなって、今後はどんどん「思い出し筋」が鍛えられるはずです。

「輝いていた過去」の根底にある価値観に要注目

最後に、思い出す「輝いていた過去」について注意点を挙げておきます。「輝いていた過去」というと、仕事熱心な人の場合であれば「仕事で大きな成果を出した」「難しい資格を取得した」「志望大学に合格した」というような、仕事や勉強絡みのものをイメージしがちです。

でも、わたしがいう「輝いていた過去」とは、そういうものに限りません。わたしがコーチングしたビジネスパーソンを例にしましょう。その人は、会社から命じられてTOEICの試験を受けることになっていました。でも、やらされていると思っているので勉強には身が入らないし、当然ながら点数も上がっていかない。

そこで、自身が輝いていた過去を思い出してもらった。彼はあるアーティストの大ファン。そのライブで音楽に浸って好きなアーティストに声援を送っていたときが、彼の名場面だといいました。要は、なにかの実績を残したということに限らず、自分がすごく気持ちがい状態やハッピーな状態にあるときも、輝いていた過去といえるのです

そして、その根底にはそれぞれの価値観がある。彼の場合、ライブ、臨場感、体感というものに価値を見出し、気持ちのバロメーターが大きく揺れたからこそアーティストのライブが自分の輝いていた過去として記憶された。だとしたら、その価値観を勉強にも生かすべきです。わたしが提案したのは、ライブ感のあるスカイプなどを使うオンライン英会話でした。それによって、彼の英語力はしっかりと伸びていきました。

過去を振り返ることは自己分析をすることでもあります。自分の価値観をあらためて知る。それは、勉強や仕事のやり方を考えるとき、そして今後の自分のキャリアを考えるときにも大切なことだと思います。

【大平信孝さん ほかのインタビュー記事はこちら】 「10秒アクション」が先延ばし癖解消に効く脳科学的根拠。脳をだませば “行動できる人” になれる! 悩みが少ない人に共通する「鈍感力」。イヤなことを “さらっと受け流す” には大事なコツがある。

『たった1枚の紙で「続かない」「やりたくない」「自信がない」がなくなる』

大平信孝 著

大和書房(2018)

【プロフィール】 大平信孝(おおひら・のぶたか) 1975年生まれ、長野県出身。株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役。第一線で活躍するリーダーのためのメンタルコーチ。中央大学卒業。会社員時代、自身が部下育成に悩んだ経験から、脳科学とアドラー心理学を組み合わせた独自の目標実現法「行動イノベーション」を開発。これまで1万人以上のリーダーの部下育成に関する悩みを解決してきた他、アスリート、トップモデル、ベストセラー作家、経営者など各界で活躍する人々の目標実現・行動革新サポートを実施。その功績により、メディアからの注目も増加中。リーダー向けの企業研修やパーソナルコーチングは現在3カ月待ちとなっている。主な著書に『たった1枚の紙で「続かない」「やりたくない」「自信がない」がなくなる』(大和書房)、『今すぐ変わりたい人の行動イノベーション』(秀和システム)、『指示待ち部下が自ら考え動き出す!』(かんき出版)『本気で変わりたい人の行動イノベーション』(だいわ文庫)などがある。

【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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