いろいろなことが気になって目の前の仕事に集中できない、つい他人の顔色をうかがって思い切ったチャレンジができない……。「もっと鈍感になれたら」と考えている人に向けて、著書『スルースキル “あえて鈍感”になって人生をラクにする方法』(ワニブックス)が注目されている、心理カウンセラー・大嶋信頼(おおしま・のぶより)さんがアドバイスをしてくれました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人
「過敏」な人は免疫機能が暴走している
「鈍感力」を手に入れる前提として、まずは「敏感」とはどんな状態なのかを考えてみましょう。ただの敏感ならまだしも、「過敏」な状態については、わたしは「花粉症」と同じだと思っています。
花粉症の人は、その季節がくると花粉に過敏に反応して体調が悪くなりますよね。鈍感力がない人は、それと同じです。他人の行為や表情などあらゆることに過敏に反応する。そういうものに思考が支配されて、本来やるべき仕事など重要なことに集中できなくなってしまうのです。花粉症の症状でいえば、くしゃみを連発して鼻水をずるずると垂らしているのと同じような状態になっていると考えられます。
そもそも花粉症というのは免疫機能が暴走している状態です。免疫機能は、本来なら外敵から自分を守るためのもの。それなのに、その機能に自分が攻撃されているわけです。なぜそういうことが起きるかというと、環境から「汚いもの」がどんどん排除されてしまったから。環境が綺麗になりすぎた結果、ちょっとした「汚いもの」、花粉といったちょっとした異物に、人間は過敏に反応してしまうようになってしまったのです。
また、アトピー性皮膚炎も花粉症と同じく免疫機能が暴走している状態です。この症状が増えたのも、環境が綺麗になってからのこと。日本の環境がもっと汚かった時代には、大きな問題にはなっていませんでした。
そのアトピー性皮膚炎に長年悩まされていたのに、あることをはじめた途端に治ったという人がいます。そのあることとは、サーフィン。これは、海水がアトピー性皮膚炎の治療に効果的だったということではありません。サーフィンをしていれば、けっこう海水を飲みますよね。海水に含まれる大腸菌など、さまざまな「汚いもの」を摂取したからアトピー性皮膚炎が治ったのだとわたしは考えています。
つまり、綺麗すぎる環境にいてアトピー性皮膚炎を発症したこの患者は、サーフィンをしてさまざまな菌を摂取したことで、免疫機能が正常な状態、本当に危ない外敵だけを攻撃する状態に戻ったということなのです。
「飲み会」で鈍感力を手に入れる
鈍感力がない人、過敏な人が、花粉症やアトピー性皮膚炎と同じように免疫機能が暴走している状態にあると考えれば、「綺麗に生きようとしない」ことが重要になるでしょう。鈍感力がない人の多くはとても真面目な性格です。真面目であるがゆえに、「綺麗じゃないといけない!」と思ってしまう。でも、そうではなくて、鈍感力を手に入れたいのなら、海に行って菌を摂取すればいいんですよ。
いま、過敏な人は、おそらく「なぜ海に行くのか」と思ったことでしょう。「鈍感力という精神的なものを手に入れるのに、体に大腸菌を取り込んでも意味がない」なんて考えたのではないでしょうか。そういう自分でつくった「常識」で、自分を縛ってしまっているのです。常識に縛られた人は、肉体と精神をわけて考えがちです。でも、それらは大いに連動しているもの。肉体は精神に大きな影響を与えます。肉体を変えることが、精神を変えることにもなるのです。
海に行くのではなくとも、人と握手をしたり、飲み会に行ったりしてもいい。飲み会なんて、大勢が大きな声でしゃべるわけじゃないですか。当然、料理には他人の唾液が付着します。極端にいえば、それを食べれば他人の菌を摂取することになる。冬なら鍋なんて最高ですね。この際、じか箸でいっちゃいましょう!(笑)。そうして綺麗じゃないものに触れることで体が鈍感になれば、自然に精神も鈍感になっていくのです。
面倒くさい人をスルーする「ジョーカーの笑顔」
最後に、それでもまだ鈍感になり切れていない人に、会社におけるスルーテクニックをご紹介します。会社に勤めている敏感な人にとってやっかいな存在が、いわゆる「面倒くさい人」でしょう。ちょっとしたことで絡んでくる上司や先輩の顔が浮かぶのではないですか?
そういう人の面倒くささというのは、嫉妬の発作によるもの。嫉妬というのは、心理学的には、「自分が持っているものを奪われるかもしれない」「孤立してしまうかもしれない」という恐怖心が招く発作です。であれば、それらを否定してあげればいい。どうすればいいかというと、「笑顔」をつくるのです(笑)。笑顔で「わたしはなにも奪わないし、あなたを孤立させませんよ」と伝えてあげるわけですね。
ただ、笑顔をつくるにも注意が必要。こういう面倒くさい人は、だいたいにおいてアルコール好きが多いもの。そして、アルコールが好きな人は脳の表情認識機能が低下しています。だから、こっちが「面倒くさい人がきたから、真面目な顔でスルーしなきゃ」なんて思っていると、その顔を見て「こいつは俺を馬鹿にしている」「俺を見くびっている」と思ってしまう。そのために絡んでくるというわけです。
それを避けるためには、極端な笑顔をつくればいいのです。わたしは「ジョーカーの笑顔」と呼んでいます。いわゆるピエロのような、思いっ切り口角を上げた笑顔をつくる。そうじゃないと、面倒くさい人には笑顔が笑顔だと認識できないのです。
とはいえ、本当に鈍感になることができれば、こんなテクニックも必要ありません。鈍感な人は、「面倒くさい人がきたから、真面目な顔でスルーしなきゃ」なんて考えないわけですから。まずは、鈍感な肉体を手に入れられるよう、頑張ってみてください。
【大嶋信頼さん ほかのインタビュー記事はこちら】 「やる気が出ない」ことを誰かに相談してはいけない。バレた途端に “悪循環” にはまる。 なぜ日本人の自己肯定感は低いのか? “謙虚すぎる” と人生は損だらけ。
【プロフィール】 大嶋信頼(おおしま・のぶより) 心理カウンセラー。米国アズベリー大学心理学部心理学科卒業。アルコール依存症専門病院・周愛利田クリニックに勤務する傍ら東京都精神医学総合研究所の研修生として、また嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室非常勤職員として依存症に関する対応を学ぶ。嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長、株式会社アイエフエフ代表取締役を経て、株式会社インサイト・カウンセリングを立ち上げる。現在、同社代表取締役。短期療法であるFAP療法(Free from Anxiety Program)を開発し、トラウマのみならず多くの症例を治療している。著書に『「やる気が出ない」が一瞬で消える方法』(幻冬舎)、『スルースキル “あえて鈍感”になって人生をラクにする方法』(ワニブックス)、『「断れなくて損している」を簡単になくせる本』(宝島社)など多数。
【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。