いま、スマートフォンにはニュースアプリやSNSなどからひっきりなしに新着通知が届きます。メディアに携わる者だけでなく、ありとあらゆる個人が発信者となれる情報過多時代にあって、どのように情報収集すればいいのでしょうか

新商品・新規事業開発から地域活性化まで広くカバーするコンセプトクリエイターであり、さまざまなジャンルのライフハックを生み出す小山龍介(こやま・りゅうすけ)さんにアドバイスをしてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子

「なぜ?」と思い「根っこ」をたどるルーツ情報収集術

これだけ多くの情報があふれていると、どうしても目の前の新しいニュースを追ってしまいがちです。しかし、新しい情報を追うばかりでは知識は増えません。僕も、翌日にはすぐ忘れてしまったりします。なぜかというと、多様な情報の表面だけをさらって「ストックできていない」からです

必要なときに使える知識として情報を定着させるにはどうしたらいいのか――。いちばんの近道が、「ルーツをたどる」ことです。そうすると、情報の「根っこ」が見えてくるんです。根っこを調べると、いろんな情報につながっていき、ものごとの体系が見えてきます。逆にいえば、情報にあふれる現代の情報収集は、「根無し草」になってしまっているんです。すべてのものごとにはルーツがあります。それをたどることで、知識として血肉化できるんですね。

ひとつ、例を出しましょう。いま、ブリグジットと呼ばれるイギリスのEU脱退に関する問題がいろいろと取りざたされていますよね。そのルーツをたどれば、17〜18世紀における思想的な違いに行き着くのです。

イギリスの思想のベースにあるのは、経験論です。理念や理想なんてものは絶対ではなく、上書き更新されていくものだと考える思想。一方、フランスやドイツの思想は大陸合理論で、理想を掲げてそれを追求していこうという思想です。EUは理念主導型の取り組みであり、もともとイギリス人の思想には合わない。いわば、両者は水と油の関係というわけです。それが移民問題で表面化した。そういう思想的背景、つまり問題のルーツがわかれば、いま目の前で飛び交う情報もすっきりと整理されることになり、知識として格段にストックしやすくなるのです

いまの時代、ルーツをさかのぼるのはそれほど難しくありません。まずは軽くWikipediaで調べるだけでも十分です。まずはなにかの情報を手にしたときに、「なぜ?」と思うこと、そしてそのルーツをたどることを心がけてみてください。知識量は格段に増えていき、それがしっかり自分のスキルとして活用できることを実感するはずです。

情報のルーツをたどることには、知識として情報をストックできるようになること以外にもメリットがあります。「本質」を追求するので、時代の流行に流されることなく、いざというときに正しい判断をできるということ。当然、他の人と「差別化」できることにもなるのです。

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より豊かな情報収集ができる秘密、「スキーマ」とは?

今後は、その「差別化」がより重要となってきます。誰もがインターネットであらゆる情報を手に入れられるいま、情報量を競い合う時代は終わりました。となると、「情報の見方」こそが勝負を分けることとなる。同じ情報を目にしても、より深い豊かな情報を拾い上げる力が必要なのです

そのために必要なものが、「スキーマ」です。スキーマとは認知心理学の用語で、ものごとを認知するときの「思考の枠組み」です。同じものを見ても、人によって感じ方は違います。

例を挙げて説明しましょう。「虹の色の数は何色ですか?」と聞かれたら、みなさんは「7色」と答えるはずです。でも、アメリカ人は「6色」と答える。文化の違いといってもいいですが、これこそ「スキーマの違い」です。

また、日本語には「雨」を表す言葉が400以上もあるそうです。僕たちが日常的に使うものでも、霧雨、土砂降り、夕立ち、天気雨などなどいくらでも挙げられます。温暖湿潤気候にある日本では、多様な雨を表す言葉が必要だったわけです。でも、海外の雨が少ない地域の人にとっては、雨は雨でしかない。日本人は雨に関するスキーマが豊かで、いろいろな側面から雨を見られるということなのです。

情報収集にあたっても、これと同じことがいえます。さまざまなジャンルのスキーマをいかに広げられるか。より豊かな情報を拾い上げられるかどうかはそれにかかっています。

スキーマを格段に広げるための3つのアクション

では、どうすればスキーマを広げられるのでしょうか。そこに必要なのは「アハ! 体験」、要はびっくりするということです

びっくりするのは、「自分の持つスキーマと現実との間にギャップが生まれたとき」。たとえば、プロ野球選手の大谷翔平が投手と野手の両方をやる「二刀流」に挑戦するというとき、プロ野球関係者の予想は多くが「絶対に成功しない」というものでした。ところが、ふたを開ければ大成功。いまや海を渡ってメジャーをも席巻しています。いままでのスキーマでは認識できない出来事が起こったのです。

これこそまさに、「自分の持つスキーマと現実との間にギャップが生まれたとき」でしょう。専門的には「認知的不協和」と呼びます。そして、認知と現実が合わなくなったこの瞬間、じつはスキーマがバージョンアップしている。自分の考えと違ったという経験が、スキーマを豊かにするためには重要なのです。こういう経験を「アハ! 体験」と呼びます。

この「アハ! 体験」を起こすために必要なアクションが3つあります。ひとつは、「アウトプット」。自分のものの見方を表明しないことには、現実とのギャップが生まれるはずもありませんよね。「二刀流は無理」と発言しておくと、その後でその事実がひっくり返ったときに、反省が生まれてスキーマが豊かになります。

ふたつ目は、いいものをたくさん見るということ。センスを磨くには、自分のアウトプットと、他の優れたアウトプットとを比較する必要がある。そうして、「いかに自分にセンスがないか」と実感するのです。つらいことですが、ギャップを感じれば感じるほど、スキーマが増えると思って、ぜひ受け入れてください(笑)。

3つ目のアクションは、興味のない情報にも触れるということ。広告代理店に勤めていた時代には、「女性誌を読め」といわれました。自分の常識の枠外にある情報に触れるとスキーマが増えます

いま、テレビなど従来のメディアに加え、インターネットを介して数えきれないほどのメディアがニュースを提供しています。だからこそ、ニュースの入手先をやみくもに増やすのではなく、ひとつの情報を深く掘り下げることが重要です。たとえば「Yahoo!ニュース」でも十分にいろいろなことを知ることができます。時事ネタから芸能ニュースまであらゆるジャンルを網羅していますし、僕もいちばん使っているものです。重要なのは、誰もが目にできるそれらの情報をどう読み解くのかということ。ルーツをたどり、スキーマを広げることで情報の見方を変えてみてください。

【小山龍介さん ほかのインタビュー記事はこちら】
行動力がない人に足りないのは「アドリブ」のスキルだった。
微妙な “15分の空き時間” をどう使うかで仕事の生産性は決まる。

『仕事のスピードを上げながら質を高める 最強のライフハック100』

小山龍介 著

SBクリエイティブ(2018)

【プロフィール】
小山龍介(こやま・りゅうすけ)
1975年5月2日生まれ、福岡県出身。コンセプトクリエイター、フォトグラファー。名古屋商科大学大学院マネジメント研究科准教授。1998年、京都大学文学部哲学科美学美術史卒業後、東急エージェンシーに入社。2002年、サンダーバード国際経営大学院に入学し、2004年にMBAを取得。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、代表取締役に就任。「ビジネスモデルイノベーション」「21世紀の仕事術ライフハック」「アート思考とデザイン思考」をテーマに、広告プロデューサーとしての枠を超えて新規事業、新商品等の企画立案に携わりながら、『今日から行動力を一気に高める本 自分を効率的に動かす「やる気」マネジメント』(三笠書房)、『片づけHACKS! がんばらないで成果が上がる「場を整える」コツと習慣』(東洋経済新報社)など、数多くの著書を手がける。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。