全然勉強しない社会人の末路。AIでもできる仕事を低賃金で請け負うことしかできなくなる……。

石川和男さん「社会人にとっての勉強の重要性と、成功のための鍵」01

なかば強制的にやらされていた子どもの頃の勉強と違って、大人が勉強をするかどうかは本人の気持ち次第です。「社会人になってまったく勉強しなくなった」とまではいかなくとも、「勉強しないといけないと思いつつ、つい怠けてしまう……」という人は少なくないでしょう。

そもそも、なぜ私たちは勉強する必要があるのでしょうか。その理由について、建設会社の総務経理担当部長を務めながら、税理士、ビジネス書作家、大学講師、専門学校講師などさまざまな顔をもつ石川和男(いしかわ・かずお)さんは、「勉強しない社会人は淘汰される」と語ります。大人にとっての勉強の重要性、その勉強を成功させる方法を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

AI時代に「全然勉強しない社会人」は淘汰される

みなさんは普段、勉強をしていますか? もしこれからの時代にビジネスパーソンとして生き残りたければ、勉強し続ける必要があると私は考えています。なぜなら、AIの台頭によって今後は仕事そのものがどんどん減っていくからです。

私が携わる建設業界を例にとると、現場の測量士の数が減っています。専門外の人でも、街なかで測量をしている測量士の姿を見たことがあるはずです。これまではふたり1組で測量を行なっていたのですが、いまは技術の進化によってひとりでも測量ができるようになってきたのです。しかも、危険がともなう場所などの場合には、AIを活用したラジコンのようなもので測量をすることもあります。これはほんの一例ですが、あらゆる業界において同じように人が行なう仕事が減ってきています。

そんな時代において、いっさい勉強をしなかったらどうなるでしょう? 簡単に言うと、そういう人は淘汰されます。人が行なう仕事のパイが確実に小さくなるなか、そのパイにありつけなくなることは明白です。変化する時代に対応するために勉強しなければ、AIに任せられるような仕事を安い賃金で請け負うことしかできなくなるかもしれません。

ただ、勉強をするといってもその中身が肝心です。勉強というと、どうしても子どもの頃の勉強をイメージして、「算数も理科も歴史も、大人になって役に立っているような気がしないけどなあ……」なんて言う人もいます。ただ、それはたまたまあなたが算数や理科、歴史に関係のない仕事をしているだけのこと。それらの勉強をしたことが、いまの仕事につながっている人もたくさんいます。

何が言いたいかというと、子どもの頃の勉強とは、広く浅く学ぶことで自分に向いていることを探すための旅のようなものだということです。さまざまな分野を知ることで「自分にはこういうことが向いていそうだ」「将来、このことに関わる仕事をしたい」といった具合に、大人になったあとの人生のスタート地点を見つけるための勉強なのです。

それに対して、大人にとっての勉強とはどういうものでしょうか? それは、よりよい人生のゴールへ向かうための旅です。よりよい人生のゴールへ向かうためのものなのですから、まったく勉強しなかったとしたら、その先にいいゴールが待っているわけもありませんよね。

石川和男さん「社会人にとっての勉強の重要性と、成功のための鍵」02

勉強の成功に欠かせない「目的」「期限」「具体的な数字」

そう考えると、まずはゴールである「目的」を設定することが重要となります。大人になってからも子どもの頃のように、なんのためになるのかわからない勉強をしても、それこそなんのためにもならないかもしれませんし、勉強を続ける気力もあっという間に失ってしまいます。

たとえば、「税理士資格をとりたい」ならどうでしょうか? 悪くはないかもしれませんが、それではただの目標に過ぎません。目的とは最終的なゴールであり、目標とは目的に到達するまでの過程に立てられるものです。このケースなら、「いまの会社の経営状況がよくないから、税理士資格をとって自分の専門的能力を養い、この先を生き残りたい」というようなより具体的な内容でなければ目的とは言えません。

そうして明確な目的をもつことができれば、勉強に対する姿勢は確実に変化していきます。ぼんやりした目標をもっているだけでは、「今日は疲れているから勉強は休もう」と考えたり、友人からの遊びや飲みの誘いに安易に乗ったりしてしまいかねません。でも、目的をしっかりもてていれば、「休んだり遊んだりしている場合じゃないぞ!」としっかり勉強に取り組めます。

また、明確な目的をもつことに加えて、「期限」を設け、「具体的な数字」を使ってやるべきことを掲げることも、大人の勉強を成功させるための鍵です。忙しい日々を送る大人の場合、勉強を先延ばししがちです。でも、「いまのプロジェクトが忙しいから、それが落ち着いてから」「子どもが生まれたばかりだから、子どもが3歳くらいになって少し手が離れてから」などと先延ばしを続けると、いつまでも勉強の成果を挙げることはできません。そうではなく、「来年8月の税理士試験でまずは簿記論に合格する!」といったように期限を設けるのです。そうすれば、先の目的の例と同じように高いモチベーションを保って勉強に取り組めるはずです。

そして、目的と期限を決めたら、やるべきことをきちんと整理しましょう。ただ「頑張る」だけでは目的を叶えられるわけもありません。「本番までに模擬試験を○回受ける」「テキストを×回転やる」「過去問を△回解く」というふうに具体的な数字を使ってやるべきことを整理して初めて、目的到達に向かって歩むべき道が見えてきます。

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自分の強みと弱みを視覚化して、目的を設定する

でも、「自分が何をしたいのか、するべきなのかよくわからない」人もなかにはいるかもしれません。それでは、肝心の目的を設定することができないでしょう。最後に、そういう人に向けて、目的探しのために有用な方法を紹介します。

その方法とは、自分の強みと弱みを書き出すというものです。人間は、自分のことは意外とわかっていないもの。じっくりと自分自身に向き合って強みや弱みを書き出してみることで、「自分にはこういう強みがあったんだ」と気づけることもあるはずです。そうして強みが見つかれば、それを伸ばして仕事に活かす方法を考えることで、おのずと目的も見えてくるのではないでしょうか。

また、このように自分の強みと弱みを視覚化することには別のメリットもあります。それは、第三者から意外な意見を聞ける可能性が生まれるということです。たとえば、自分の強みとはとらえていても、仕事に活かせるとは思えなかった――そんなことも、第三者から見ると「それって仕事になりますよ!」ということもあるかもしれません。あるいは、自分では弱みと思っていた部分ですら、第三者には強みに見える場合もあるでしょう。

私は、小中学生のときに剣道をやっていて、高校では空手、大人になってからは少林寺拳法を習っていました。そのことについて自分では「何をやっても長続きしない」と思っていたのですが、これを知った書籍編集者に「すごいですね、ずっと武術に携わってきたんですね」「武術に学ぶ仕事術みたいな本をつくりましょうか」と提案されたのです。

このように意外な視点からの意見を得るためにも、第三者にもはっきりとわかるように自分の強みと弱みを視覚化することをおすすめします。

石川和男さん「社会人にとっての勉強の重要性と、成功のための鍵」04

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【プロフィール】
石川和男(いしかわ・かずお)
1968年3月12日生まれ、北海道出身。建設会社の総務経理担当部長を務めながら、税理士、大学講師、専門学校講師、ビジネス書作家、時間管理コンサルタントなど多くの顔を持つ。独学、通信、通学などさまざまな学習方法で資格試験勉強をした経験、資格試験講師を務めた経験から独自の勉強法を確立し、そのノウハウをまとめた『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』(CCCメディアハウス)がベストセラーとなる。他に、『今日、会社がなくなっても食えるビジネスパーソンになる!』(明日香出版社)、『一流の人は知っている テレワーク時代の新ビジネスマナー』(WAVE出版)、『仕事が速い人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)、『Outlook最強の仕事術 仕事が速い人は「5秒」で決める!』(SBクリエイティブ)、『部長の心得』(総合法令出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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