勉強熱心な人こそ陥りがち。「資格取得の達成感」に酔いしれることの大きすぎる問題点

石川和男さん「資格を取得した先のことをイメージすることの重要性」01

「先行きが見えない」だとか「時代の変化のスピードが増している」と言われるいま、将来のために資格勉強に励んでいるビジネスパーソンもいます。ただ、「資格取得をゴールにすることには要注意」と言うのは、建設会社の総務経理担当部長を務めながら、ビジネス書作家、大学講師、専門学校講師などさまざまな顔をもつ税理士の石川和男(いしかわ・かずお)さん

税理士のほか、宅地建物取引業主任者、建設業経理事務士1級、日商簿記2級など多くの資格をもつ石川さんが、「資格を取得したその先をイメージする」ことの重要性、そして資格勉強を成功させるためのコツを解説してくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

資格取得をゴールにすると、宝のもち腐れになる

勉強熱心な人のなかには、いわば資格マニアというような人もたくさんいます。私も多くの資格をもっているのでわかりますが、資格をとること自体、達成感を感じられて楽しいものですよね。もちろん、本業と切り離して資格取得を趣味にしている人なら、それはそれでなんの問題もありません。

ですが、「仕事に活かすために」「収入を上げるために」といった気持ちがあるのであれば、資格を取得することばかりに意識を向けるのはもったいないことです。なぜなら、資格を取得したあとの動きが鈍くなるから。いわゆる燃え尽き症候群に陥るということです。

たとえば税理士資格の取得をゴールにしてしまうと、資格をとった時点で満足してしまい、いつまでたっても開業しないようなことが起きがちです。それではまさに宝のもち腐れ。そうではなく、資格取得を目指して勉強しているあいだにも、資格を取得した先のこともイメージしておきましょう

資格とは、取得したら勝手にお金を生んでくれるものではありません。収入につなげるには、同じ資格を取得した人のなかから多くの顧客に選ばれる必要があります。そのためにどうすべきか、どのように実績を挙げてアピールするのか、そういったこともイメージしておく必要があるのです。

石川和男さん「資格を取得した先のことをイメージすることの重要性」02

自分の欲からでも勉強に向かう大きなエネルギーを得られる

そのイメージは、仕事そのものに関わることだけでなくてもいいでしょう。私の場合、税理士資格取得を目指して勉強していたときにいろいろと妄想をしていました。税理士になって稼げるようになったら、実家の庭を駐車場にしてベンツとBMWとジャガーを置こう。家の地下にはプールバーをつくってお客さまを呼ぼう……といった具合です(笑)。

もちろん叶わなかったこともありますが、大半の夢を叶えることができました。夢は具体的に思い描くほど叶う可能性が高まるもの。また、そうして夢を思い描いていると、「絶対に叶えたい!」と勉強にもより身が入りますので、一石二鳥なわけです。

世のなかには、私の例のように「自己中心的な欲をもつことはよくない」という風潮があります。でも、そうして欲をもつことで勉強に向かう大きなエネルギーを得られるのであれば、まったく悪いことではありませんし、どんどん欲をもつべきだと思うのです。

そもそも、自分が幸せではない状況にあるのに他人の幸せのために行動できるわけもありません。まずは自分の、または家族など自分の大切な人の幸せを追求する。そうして、成功を収めることができたなら、寄付などのかたちで社会に貢献すればいいのです。

あるいは、寄付などしなくとも成功を収めた時点ですでに社会貢献しているとも言えます。たくさんの収入を得るということは、それだけ多額の税金を収めるということです。それは紛れもなく大きな社会貢献ですよね。

石川和男さん「資格を取得した先のことをイメージすることの重要性」03

最速で最強の勉強法は、「まねをする」こと

では、資格取得を成功させるにはどうすればいいのでしょう? 勉強法に関する著書も出していることもあって私にはたくさんのメソッドがあるのですが、ここではまねをするということをお伝えしたいと思います。

資格取得を目指している人には、その資格を先に取得した先輩と言える人が大勢います。資格を仕事に活かしたい場合、これまで誰もとったことがないまったく新しい資格の取得を目指している人はまずいないでしょう。資格取得者には必ず先輩がいるのです。

そうであるなら、合格するための勉強法を一から考える必要などありません。先輩たちのまねをすればいいだけのことです。特に、みなさんがいま携わっている仕事に関わる資格であれば、まさに職場の先輩が先に資格を取得した先輩ということもありますよね。そのような人をメンターとして、失敗談といった経験も含めて勉強法を教えてもらう。それこそが、最速で最強の資格勉強法です。

もし、現在の仕事とまったく別分野の資格取得を目指している場合でも心配ありません。ネット社会のいまは、あらゆる情報を手に入れることができます。みなさんが取得を目指している資格の名称とともに、「合格体験記」とか「合格者の声」と入力して検索してみてください。いくらでもまねるべき勉強法を見つけることができるはずです。

そして、最後にお伝えしたいのは、やはり「資格取得がゴールではない」ということ。これは、冒頭に述べたように資格を宝のもち腐れにしないことのほか、常に勉強し続けなければならないということです。

簡単な例ですが、税理士の場合なら税制は毎年改正されます。そうであるにもかかわらず、資格を取得した時点で勉強をやめてしまったとしたら、時代に置いていかれてしまいます。資格を取得したあとも常に勉強を続け、自分をアップデートしていくことを忘れないでください。

石川和男さん「資格を取得した先のことをイメージすることの重要性」04

【石川和男さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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【プロフィール】
石川和男(いしかわ・かずお)
1968年3月12日生まれ、北海道出身。建設会社の総務経理担当部長を務めながら、税理士、大学講師、専門学校講師、ビジネス書作家、時間管理コンサルタントなど多くの顔を持つ。独学、通信、通学などさまざまな学習方法で資格試験勉強をした経験、資格試験講師を務めた経験から独自の勉強法を確立し、そのノウハウをまとめた『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』(CCCメディアハウス)がベストセラーとなる。他に、『今日、会社がなくなっても食えるビジネスパーソンになる!』(明日香出版社)、『一流の人は知っている テレワーク時代の新ビジネスマナー』(WAVE出版)、『仕事が速い人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)、『Outlook最強の仕事術 仕事が速い人は「5秒」で決める!』(SBクリエイティブ)、『部長の心得』(総合法令出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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