「自分の意見をもてない人」に決定的に足りないもの。“これ” がなければ意見とは言えない

狩野みき先生インタビュー「自分の意見をもつには根拠が必要」01

日本人の国民性として、「同調圧力に弱い」「周囲に流されやすい」というふうに、「自分の意見をもつことが苦手」といったことが指摘されます。ただ、ビジネスの場では自分の意見を求められることも多いもの。ではどうすれば自分の意見をもつことができるようになるのでしょうか。

慶應義塾大学や東京藝術大学の講師であり、著書『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』(PHP研究所)で注目される狩野(かの)みき先生にアドバイスをお願いしました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

ハーバード大のプロジェクトをベースとした「考え抜くための3つのステップ」

私が提唱している「考え抜くための3つのステップ」は、ハーバード大学のあるプロジェクトがベースとなっています。そのプロジェクトでは、小さい子どもから大人に至るまで幅広い年齢層の人に対して「考えるということをどのように指導すればいいか」というテーマを扱っています。それらをヒントに私なりにまとめたのが、「考え抜くための3つのステップ」なのです。そのステップとは、次のようになります。

考え抜くための3つのステップ

  1. あることについて自分がどれだけ理解しているのかを確認する
  2. あることについて理解できていないことを把握し、それを解決するために調べる
  3. 自分の意見をもつ

このステップを踏めば、しっかりと考え抜くことができ、考えを深めることができるでしょう。ただ、これらは多くの日本人にとって簡単なことではありません。まずステップ1からつまずきます。なぜなら、日本語や日本文化には、自分が理解できているか、あるいは相手が理解できているかを確認しづらいという特性があるからです。

言語文化の視点から「発信者責任」とされる言語である英語圏の人たちの場合、自分が言いたいことを発信者が相手にきちんと理解させる必要があります。そのため、「ちゃんと理解してる?」というふうに頻繁に相手に確認をします。一方の日本語は「受信者責任」といわれる言語。発信者が言わんとしていることを聞き手が読み取らなければならないのです。たとえ相手が曖昧な表現で何かを言っても、聞き手がその意図を汲み取る必要があるというわけです。

特に、会社の上司などが相手の場合、たとえ上司が言っていることがよくわからなかったとしても、「どういう意味ですか?」とは聞きにくいですよね? そういう文化のなかで生きているため、日本人は「確認する」ことが苦手なのです。

ステップ1の「自分がどれだけ理解できているのかを確認する」ことができていないのですから、もちろんステップ2の「理解できていないことを解決するために調べる」ことなどできるわけもありません。

狩野みき先生インタビュー「自分の意見をもつには根拠が必要」02

日本人の多くが「自分の意見をもつ」ことが苦手

そして、日本人が最も苦手としているのがステップ3の「自分の意見をもつ」ことです。極端な表現をすれば、日本では自分の意見をもつことを許されないまま大人になった人が多いのです。

たとえば、大学入試科目の小論文にもその傾向が見てとれます。論文というからには、受験生もそれこそ自分の意見を書いていそうなものです。でも、残念ながら実態はそうではありません。学生に聞いたところでは、小論文で高評価を得られるかどうかは、課題のテーマについてどれだけはっきりした対立するふたつの立場を探してこられるかにかかっているのだそう。そのため、「自分自身はどう思うか」ということを掘り下げない癖がついてしまうのでしょう。

その素地には、大学受験以前の教育があります。いまでこそ変わりつつあるように思いますが、「正解主義」が根強く残っているのが日本の教育です。そのため、自分なりの考えを述べるという、正解などまったく求められない場であっても、どうしても無意識のうちに「正解の意見」を求めてしまい、自分の意見をもてないようです。

もちろん、その国民性も悪いことばかりではありません。コロナ禍のなか、アメリカでは「マスクをすることには反対だ! なぜなら、我々にはマスクをしない自由があるからだ!」なんて主張をしている人もいるようですが、いまはそんなことを言っている状況ではありませんよね。

一方、日本人の大半は政府や自治体の呼びかけに素直に従ってマスクをしています。「日本人は同調圧力に弱い」なんて言うと、悪いことのように感じられますが、いまのコロナ禍のなかでは、自分の意見をもつことが苦手だという国民性がいい方向に働いている面もあるかと思います。

狩野みき先生インタビュー「自分の意見をもつには根拠が必要」03

日常的に「根拠」を言語化し、自分なりの視座をもつ

ただ、そうはいってもやはり自分の意見をしっかりもつことが大切となる場面もあります。それこそビジネスパーソンならそういう場面も多いでしょう。斬新な企画を求められているような場で誰もが同じような意見を出してもなんの意味もありません。

そこで、しっかりと自分の意見をもつことができるようになるため、「根拠」を意識してみてください。「なんとなく、こう思う」「とにかく、こう思う」というような、根拠がない意見は意見とは言えません

「いやいや、さすがに企画会議やプレゼンの場ではちゃんと根拠を示すよ」と思った人もいるかもしれません。でも、普段から根拠を意識していない人が、そういった大事な場面で根拠を示せますか? おそらく難しいはずです。

では、どうすればしっかりとした根拠をともなう意見をもてるようになるのでしょうか。私からは、日常的に根拠を言語化することをおすすめします。それこそ、どんな場面であってもそうするのです。

たとえば、「今日のお昼にはハンバーガーを食べたい」と思ったとします。そこで「なんとなく食べたいから」で終わらせてはいけません。もっと掘り下げてみる。たとえば、「ハンバーガーのクーポンがあるから」「半年間、ハンバーガーを食べていないから」といった具合です。

もちろん、言語化といってもそれらの根拠を口にする必要はなく、自分の心のなかで言語化するだけで構いません。そうしてあらゆることについて、「なぜ自分はこう思うのか」「その根拠は何か」と考える癖をつけるのです。

そうすることで、自分の「視座」がはっきりし、そのうち他人とは異なる自分なりの視座をもつことにつながります。そうして自分なりの視座を増やしていけば、いずれは他人にはもてない自分だけの意見をもてるようになっていくと思います。

狩野みき先生インタビュー「自分の意見をもつには根拠が必要」04

【狩野みき先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
「いい意見」の2つの条件。満たすためには、自分の主張に○○してみて
社会人が「なんかおかしい、ちょっと違う……」という感覚を、絶対にスルーしてはいけない理由

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【プロフィール】
狩野みき(かの・みき)
慶應義塾大学、東京藝術大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。「自分で考える力」イニシアティブ、THINK-AID主宰、子どもの考える力教育推進委員会代表。慶應義塾大学大学院博士課程修了。20年以上にわたって大学等で考える力・伝える力、英語を教える。『ハーバード・スタンフォード流 子どもの「自分で考える力」を引き出す練習帳』(PHP研究所)、『ハーバード・スタンフォード流「自分で考える力」が身につく へんな問題』(SBクリエイティブ)、『超一流の「自信思考」 世界のエリートにも負けない自分のつくり方』(大和書房)、『「自分で考える力」が身につく親子の対話術』(朝日新聞出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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