勉強に集中できないとき試してほしい11の方法

勉強に集中できないとき1

勉強にどうしても集中できない」
「すぐにやる気がなくなってしまい、思うように進まない」

そんなときは、集中力の続かない原因が「心理」「環境」「身体」のどこにあるかハッキリさせ、対策を講じましょう。勉強に集中できないときの対処方法を、3種類のアプローチでご紹介します。

勉強に集中できない原因

勉強に集中できない原因は、以下の3種類に分けられます。

心理要因

1つめは、精神が不安定だったり、何をしていいかわからなかったりするため、集中できないケースです。

  • 勉強計画が曖昧
  • 目標や締切が曖昧
  • 心配事がある
  • なんとなく気が散っている

環境要因

集中できない原因は、勉強に使っている場所かもしれません。部屋が不快な状態だったり、勉強に適さない環境だったりすれば、集中が乱れるのは当然です。

  • 散らかっている
  • マンガやゲームなど、誘惑されるものが多い
  • 照明が勉強向きでない
  • インテリアや小物の色が勉強向きでない
  • 室温が高すぎる/低すぎる
  • 湿度が高すぎる/低すぎる
  • CO2濃度が高い

身体要因

最後は、身体的な要因。身体のコンディションが悪いせいで集中力が下がっているケースです。風邪や花粉症で体調が悪いときはもちろん、

  • 運動不足で血行が悪い
  • 睡眠不足
  • 疲労
  • 空腹

などのときも、勉強に集中できないでしょう。

勉強に集中できないとき2

勉強に集中できないときの対処法~心理的アプローチ~

勉強に集中できないと感じたときは、まず「心理的アプローチ」をとってみてください。

こまめに休憩を入れる

臨床心理士・羽田野健氏によると、作業時間は15~30分を目安に区切るのがよいそう。人間が集中できる時間は長くて40~45分程度なので、集中力が切れる前に休憩し、集中力を回復させるほうが効率的とのことです。

大脳生理学を専門とする池谷裕二氏とベネッセは、2017年、集中力に関する実験を行ないました。中学1年生29名を以下の3グループに分け、英単語を覚える学習の前後にテストを受けさせたのです。

  • 60分連続で学習する
  • 45分連続で学習する
  • 15分ずつ3回学習し、あいだに7.5分の休憩を2回挟む

学習前と学習直後の成績差を比べると、差が大きい順(成績が伸びた順)に【60分連続】→【15分ずつ】→【45分連続】。1週間後にもテストをしたところ、学習前との差は、【15分ずつ】→【60分連続】→【45分連続】の順に大きくなりました。つまり、休憩しつつ短時間勉強したほうが、休憩せず長時間勉強するよりも、学習内容が記憶に定着しやすかったのです。

また、集中力に関係しているという脳の「ガンマ波パワー」を測定したところ、【60分連続】では開始から40分後に急低下した一方、【15分ずつ】では休憩を挟むごとに回復していったそう。つまり、集中力を維持したいなら、こまめに休憩することが有効なのです。

そのため、なかなか集中できないと感じているなら、「1時間で4ページ進めよう」ではなく「15分で1ページ進めよう」と決めて取り組んでみましょう。

タイマーをセットする

精神科医の樺沢紫苑氏によれば、タイマーをセットして時間制限を意識することも、集中力を高めるのに効果的だそう。

「火事場の馬鹿力」という言葉があるように、人は危機的な状況に追い込まれると集中力を発揮するもの。宿題の締切や仕事の納期が迫り、猛烈な集中力で作業にのめり込んだ経験は、誰にでもあるはずです。

「火事場の馬鹿力」を生むのは、ノルアドレナリンという神経伝達物質。樺沢氏によると、危機に追い込まれたときに分泌され、集中力や脳機能を高める作用があります。

勉強中は、キッチンタイマーなどを使い、自分に緊張感を与えましょう。ノルアドレナリンの効果により、自然と集中力が高まるはずです。

フォーカル・ポイント

気が散ってしまったときにおすすめなのが、前出の羽田野氏がすすめている「フォーカル・ポイント」。どこか一点をじっと見つめるだけ、という簡単なテクニックです。

見つめる対象は、ブレずに凝視できるくらい小さなものなら、なんでもOK。

  • 手のホクロ
  • 消しゴムのカス
  • テキストに書かれた「・」の記号
  • ノートに書かれた「あ」の文字

など、目の前にある小さなものをじーっと見つめつつ、頭のなかで「集中、集中、集中」と繰り返したり「1、2、3、4、5」とカウントしたりしてみてください。心が落ち着き、集中力の回復を実感できるはずです。

ちなみに、筆箱や消しゴムのようにある程度大きいものは、視点を一点に固定しにくいため、フォーカル・ポイントに向いていません。

不安を書き出す

不安や悩み事が頭を離れず気が散ってしまうときは、感情や思考をありのままに書き出すことをおすすめします。

メンタリストDaiGo氏によれば、心配事があると脳の記憶容量が圧迫され、パフォーマンスが低下してしまうそう。パソコンのメモリが不要なデータでいっぱいになり、処理速度が遅くなっているようなものです。

脳のパンク状態を解消するには、不安を言葉としてアウトプットし、空きメモリーを増やしましょう。シカゴ大学が2011年に発表した研究では、学生が不安感情を書き出してから試験を受けることで成績が上がったと示されています。

心配事だけでなく、「醤油を買いに行かなきゃ」「明日、友だちに会うのが楽しみだなぁ」といった雑念が集中を妨げることも。紙とペンを用意し、思いつくままに言葉を吐き出してしまいましょう。

◆雑念を書き出す例

  • 週明けの商談、うまくいくかなぁ
  • 今日は雨模様で憂うつだなぁ
  • あとで醤油を買いに行かなきゃ
  • 明日、友だちに会うのが楽しみだなぁ

勉強に集中できないときは、以上のテクニックで心理をコントロールし、心を「集中モード」に切り替えましょう。

勉強に集中できないとき3

勉強に集中できないときの対処法~環境的アプローチ~

集中できないときは、勉強部屋やデスクまわりの環境を整えることも大切。環境に問題があると、落ち着いて物事に取り組むのは困難だからです。

ここでは、学習環境を最適化する4つのポイントをご紹介しましょう。

机まわりを片づける

勉強部屋や机まわりはきれいに整理整頓しましょう。部屋や机が散らかっていると、さまざまなものが視界に飛び込み、そちらが気になってしまうためです。

米テキサス大学オースティン校が2017年に発表した研究では、スマートフォンが視界に入っているだけでパフォーマンスが落ちることがわかりました。スマートフォンを机の上に出しておくよう指示された被験者は、別の部屋に置くよう言われた被験者に比べ、認知テストのスコアが大幅に低くなったのです。

もちろん、テスト中にスマートフォンを触ったわけではありません。スマートフォンが視界に入るだけで、課題に集中できなくなってしまったのです。

そのため、スマートフォンだけでなく、勉強に関係ないものは、なるべく視界に入らないようにしましょう。以下のような方法で、部屋や机まわりをシンプルに保ってください。

  • クローゼットや押し入れにしまう
  • 机からは死角になる場所に移動させる
  • 別の部屋に移動させる
  • 布をかける

照明を変える

電球には、以下のようにさまざまな色があります。

  • 昼光色(青白い)
  • 昼白色(白い)
  • 温白色(少し赤っぽい)
  • 電球色(赤っぽい)

認定人間工学専門家の八木佳子氏によると、青白く明るい照明のもとでは集中力が高まりやすいそう。気合いを入れて勉強したいときは、「昼光色」や「昼白色」の照明を使いましょう。

その反面、「昼光色」や「昼白色」のもとでは、緊張によって疲れやすくなるデメリットも。照明を切り替えたり別の部屋へ移動したりして休憩しましょう。 

インテリアや小物の色を変える

文房具やインテリアの色も、集中力に影響する可能性があります。

おすすめなのは、「」と「好きな色」。2005年の『人間環境学研究』に掲載された論文によれば、さまざまな照明のもとで被験者に足し算の課題をさせたところ、緑色の照明では精神的疲労が軽かったそう。被験者の好きな色が照明だったときは、生産性・正確性が高まる傾向も出ています。

逆に、おすすめできないのは「」。米ロチェスター大学・独ミュンヘン大学による2007年の共同研究において、問題冊子の表紙が赤だった被験者は、白や緑の被験者に比べてIQテストでの正解数が約20%も少ないという結果に。赤色がよほど好きなら別ですが、勉強部屋にはなるべく赤いものを置かないほうがいいでしょう。

色の効果には個人差がありますが、部屋づくりの参考にしてみてください。

◆色の効果

  • 緑:精神的疲労を軽減する
  • 赤:正確性を低下させる
  • 好きな色:生産性・正確性を高める

空気を最適化する

空気も集中力に対しダイレクトに影響します。気温・湿度・CO2濃度の3つを適度に保ちましょう。

◆勉強に最適な「空気」の条件

  • 温度:22度
  • 湿度:40~70%
  • CO2濃度:低いほどよい

勉強部屋の理想的な温度は、22度です。その根拠は、ヘルシンキ工科大学とローレンス・バークレー国立研究所が2006年に発表した合同研究。オフィスワークの生産性と気温の関係を調査したところ、22度のときに最も生産性が高いと判明しました。

湿度の目安は、建築物衛生法が定める「40%以上70%以下」。これより高いとジメジメして不快に感じ、低いと肌や粘膜が乾燥して風邪をひきやすくなります。

そして、CO2濃度は低いに越したことはありません。空気中のCO2が多いということは、酸素が相対的に少ないということ。酸素を十分に取り込めないと、脳の働きが鈍ってしまいます

ローレンス・バークレー国立研究所による2012年の研究では、部屋のCO2濃度が1,000ppmに達すると、「情報活用能力」「発想の柔軟さ」「積極性」など6つの能力が大きく低下すると示されました。1,000ppmとは、狭い密室に1時間もいれば達しうる値です。

部屋にCO2をためないためには、窓を開けたり換気扇を回したりしておき、空気が入れ替わり続ける状態をつくるのがベスト。難しければ、時間を決めてこまめに換気しましょう。換気設備を専門とする建築学者・倉渕隆氏によると、対角線上に位置する窓やドアをふたつ開ければ、空気の「入口」と「出口」ができるため効率よく換気できるそうです。

適度なタイミングで換気するには、ぜひCO2濃度計を購入してみてください。安いものだと3,000円程度なので、温度計・湿度計とあわせて勉強部屋に設置してはいかがでしょうか?

◆換気の方法

  • 常に換気扇を回しておく
  • 常に窓を開けておく
  • CO2濃度計を置き、濃度が一定値を超えたら換気する
  • 換気のペースを決める

勉強に集中できない日は、環境が不快でないか見直してみましょう。

勉強に集中できないとき4

勉強に集中できないときの対処法~身体的アプローチ~

勉強に集中できないときは、肉体的なコンディションを確認してみましょう。運動・食事・睡眠の観点から対策をご紹介します。

たまには立ち上がる

精神科医の樺沢紫苑氏によれば、座りっぱなしで勉強していると、血流が悪化して脳のパフォーマンスが低下してしまうそう。立ち上がって部屋を歩いたり、筋トレしたりなど、軽い運動を定期的に挟みましょう。

運動するのは、ごく短時間でOKです。スウェーデン・ヨンショーピング大学の研究チームが2020年に発表した論文では、2分以上運動するだけで記憶力や学習能力が向上すると示されました。たった2分なら時間のロスになりませんし、運動が嫌いでも気軽に取り組めるはずです。

◆軽い運動

  • 立ち上がり、家のなかを歩く
  • 筋トレをする
  • 階段の昇り降りをする
  • 散歩する など

糖分を補給する

管理栄養士の平井千里氏によると、集中力を高めたいときは、脳のエネルギー源である糖分をとるのが効果的だそう。チョコレートやクッキーといったお菓子だけでなく、おにぎりなどの炭水化物でもOKです。

ただし、糖分を一度にたくさんとると、血糖値が急上昇したあと急降下し、眠気やだるさに襲われるリスクがあります。勉強中の間食は、量やペースに注意してください。

管理栄養士の岡田明子氏は、血糖値が急上昇しにくいおやつとして以下のものを挙げています。

  • ナッツ
  • フルーツヨーグルト
  • イチゴ
  • かんきつ類 など

目を休ませる

疲労で集中力が落ちてきたら、目を休息させましょう。メンタリストDaiGo氏によると、目の「視神経」「動眼神経」は脳に直接つながっているそう。そのため、目の疲れは脳へダイレクトに伝わるそうです。

勉強の休憩中にスマートフォンをいじったり本を読んだりすると、目を使うため脳を疲れさせてしまいます。息抜きしたいなら、音楽やラジオなど、耳だけで楽しめるものにしましょう。

目や脳を休ませる手段としては、仮眠があります。豪フリンダース大学による2006年の論文では、たった10分間寝るだけで、認知能力の向上や疲労感の軽減など、さまざまな効果が現れると立証されました。目を閉じてじっとしているだけでも、脳を休める効果が期待できます。

心臓血管外科医の末松義弘氏によると、昼寝のポイントは以下のとおり。

  • 13~15時のあいだに行なう
  • 30分以内に留める
  • 寝る前にカフェインをとる
  • ネクタイや腕時計を外す
  • 耳栓やアイマスクを使う

DaiGo氏によれば、目のストレッチをしたり、蒸しタオルで目を温めたりすることも、目の疲れを癒やすのに効果的だそうです。

◆目のストレッチ法(DaiGo氏推奨)

  1. まぶたをギュッと閉じ、パッと大きく開く
  2. 眼球を上下左右に動かす
  3. 眼球を右回りに1回転、左回りに1回転させる

◆目を休ませる方法まとめ

  • 仮眠
  • 目のストレッチ
  • 蒸しタオルを目に5分間あてる
  • スマートフォンや本を避ける

目や脳に疲労を感じ、勉強に集中できない場合は、上記の方法を試してみてください。

***
勉強に集中できないと感じたときは、ご説明した「心理」「環境」「身体」という3つのアプローチをとってみましょう。

(参考)

Yahoo!ニュース|リモートワークで集中力を維持するために 心理学から考える3つの工夫
PR TIMES|学習時間を細かく分けた「45分」で「60分」と同等以上の学習効果を発揮 “長時間学習”よりも短時間集中の“積み上げ型学習”が有効であった
ダイヤモンド・オンライン|締め切りがないと仕事が片付かない、医学的な理由
メンタリストDaiGo(2017), 『図解 自分を操る超集中力』, かんき出版.
University of Chicago News|Writing about worries eases anxiety and improves test performance
Panasonic|在宅ワークや勉強に集中できない…。原因は自室環境にあり!?
Medical Xpress|The mere presence of your smartphone reduces brain power, study shows
Panasonic|LED電球の選び方
スマートジャパン|照明環境を使い分けて仕事の能率を上げる
高橋晋也(2005),「環境色彩の心理学的研究(1)――色照明が単純作業成績に及ぼす効果――」, 人間環境学研究, 3巻, 1号, pp.41-46.
Elliot, Andrew J., Markus A. Maier, Arlen C. Moller, et al. (2007), "Color and psychological functioning: the effect of red on performance attainment," Journal of Experimental Psychology: General, Vol. 136, No. 1, pp.154-168.
Seppänen, Olii, William J. Fisk, and Quanhong Lei-Gomez (2006), "Effect of temperature on task performance in office environment," 5th International Conference on Cold Climate Heating, Ventilating and Air Conditioning.
厚生労働省|建築物環境衛生管理基準について
さいたま市|室内の湿度を適正に保ちましょう
Business Insider Japan|なぜ、カフェでは仕事がはかどるのか?
Berkeley Lab|Elevated Indoor Carbon Dioxide Impairs Decision-Making Performance
YKK AP株式会社|健やかに暮らすための換気のこと
タウンワークマガジン|集中力の限界は90分? 集中できないときに試したい効果的な休憩方法と勉強法
Blomstrand, Peter, and Jan Engvall (2020), "Effects of a single exercise workout on memory and learning functions in young adults—A systematic review," Translational Sports Medicine, Vol. 4, No. 1, pp.115-127.
リクナビNEXTジャーナル|集中力を高めたいとき、気分転換したいとき…ビジネスパーソンへのおススメおやつ
ダイヤモンド・オンライン|ダイエット、食事を減らさず成功も!おすすめ「低GI食品」
Brooks, Amber and Leon Lack (2006), "A brief afternoon nap following nocturnal sleep restriction: which nap duration is most recuperative?," Sleep, Vol. 29, No. 6, pp.831-840.
幻冬舎ゴールドオンライン|寝る前に「カフェイン」を…医師が教える「上手な昼寝」の方法

【ライタープロフィール】
佐藤舜

大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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