学習の質を上げたい……! そう思うなら「マインドマップ」を勉強に取り入れてみませんか?
今回は、学習に活用しないともったいないマインドマップの効果をご紹介しましょう。実際にマインドマップを使って勉強をしてみましたので、正直な感想もお伝えします!
マインドマップとは
マインドマップとは、イギリスの著述家で教育コンサルタントのトニー・ブザン氏が発明したノート術です。マインドマップの特徴は、その独特な見た目。
ノートといえば、黒や青のペンで「箇条書き」することが主流ですよね。しかし、マインドマップでは、多様な色を自由に使い、箇条書きの代わりに「曲線」でキーワードをつないでいきます。
さらに、文字だけでなく絵を散りばめることも大切と考えられています。ブザン氏によると、その理由は「脳は単調さを嫌う」から。地味な色で直線を書くだけだと、脳は退屈し、記憶力や理解力、アイデア力を下げてしまうそう。逆に、色やイラストを多用すれば、脳が活性化し、より働くようになるのです。
そんな、いかにも学習の役に立ちそうなマインドマップ。実際にはどのような効果を勉強にもたらしてくれるのでしょうか?
マインドマップが学習に役立つ3つの理由
【学習に役立つ理由1】1ページで全体が見えるから
「ひとめで全体像が見える」のが特徴のマインドマップをつくることは、「洞察学習」につながります。洞察学習とは、ゲシュタルト心理学者のヴォルフガング・ケーラー氏が提唱した概念で、「一瞬のひらめきによる問題解決」のこと。
ケーラー氏が洞察学習を発見する前は、人は答えにたどり着くまでに試行錯誤する必要がある、という「試行錯誤説」が主流だったそう。しかし、ケーラー氏の行なった実験により、「全体を俯瞰すると、ひらめきによって一気に解決への見通しが立つことがある」とわかったのです。
つまり、問題に直面したとき、試行錯誤をせずとも、問題を離れた場所から見ることで、突然ヒントが得られたり、解決法が思い浮かんだりするということ。
1ページで全体を眺めることができるマインドマップは、まさに脳の「ひらめく力」を引き出してくれるのです。
【学習に役立つ理由2】「イメージ」と「関連づけ」で学習がはかどるから
「イラストを描く」「曲線でつなげる」というマインドマップ特有のテクニックも、学習の質を高めてくれます。
そもそも、マインドマップの強みは、脳の自然な働きであるImagination(イメージ)とAssociation(関連づけ)をふまえて開発されたことにあります。
たとえば、私たちは「みかん」という言葉を聞けば、その色や形を一瞬でイメージできますよね。さらには、重さや味、みかんにまつわる思い出など、関連するさまざまな物事を瞬時に連想するでしょう。「み・か・ん」「丸・い」といった文字が頭に浮かぶのではなく、必ず絵としてのイメージが湧くはず。こういった脳の機能を、マインドマップでは活かしているのです。
脳がイメージした内容は、「イラストを描く」ことでより明確になり、記憶として定着しやすくなります。カナダのウォータールー大学で行なわれた研究によれば、絵を描くことは、年齢にかかわらず記憶力を向上させると明らかになったそう。
加えて「曲線でつなげる」ことで、何が何と関連づいているのかが視覚化され、いつ見直しても全体の関連性を瞬時に理解することができます。ここで「直線」ではなく「曲線」を用いるのには理由が。ブザン氏は、自然界に直線は存在せず、曲線がより自然なかたちであると主張しています。また、曲線には変化があるため、脳を退屈させずにすむのだとか。
イラストと曲線のダブル使いによって、学習がはかどるというわけです。
【学習に役立つ理由3】アイデア力が増す
「枝を広げていく」ようにマインドマップを書くことで、アイデア力が劇的に向上します。それがよくわかるのが、ブザン氏による次の実験です。
まず、ある子どもにペーパークリップを与えて、10分間で、ペーパークリップの使い道をできるだけたくさん挙げるよう指示しました。マインドマップを知らないその子どもが箇条書きでアイデアを書き出したところ、思いついたアイデアの数は4個。ところが、同じ子どもにマインドマップの書き方を教えたところ、今度はなんと22個ものアイデアを出すことができたのだとか。
マインドマップには、思考の幅をぐんと広げて創造性をアップさせる効果もあるのです。
マインドマップのつくり方
トニー・ブザン氏公認マスターインストラクターの塚原美樹氏を代表とし、マインドマップに関する情報を提供する「マインドマップの学校」によると、マインドマップのつくり方には6つのポイントがあるそうです。
- 無地の用紙を横長に置く
- 曲線でメインブランチ・サブブランチを書く
- ブランチの上に短いキーワードを書く
- イメージ(イラスト)を入れる
- 色を使う
- 構造をもたせる
といっても、実物を見ないとわかりにくいと思いますので、筆者がマインドマップを使って勉強をしてみた様子をご紹介します!
マインドマップをつくってみた
マインドマップの効果は分かったけれど、色を使ったり、絵を描いたりするのはハードルが高い……と思う方も多いかもしれません。そこで今回は
- 「白黒・絵なしパターン」
- 「カラフル・絵ありパターン」
の2パターンでマインドマップを書いてみることにします。
勉強のお題には、TED Talkで気になったスピーチを選びました。テーマは「内向的な人が秘めている力」。アメリカのミリオンセラー作家スーザン・ケイン氏による19分ほどのスピーチです。
最初は「白黒・絵なしパターン」から。A4用紙と黒のボールペンのみを用意し、スピーチのタイトルを真んなかに書き込んでからスタート。
次に、話される順番にカテゴリーを派生させ、さらに、各カテゴリーごとに、関連するキーワードを線でつなぎながら書き入れていきました。順番は気にせず、思いのままにキーワード同士を線でつないでいます。
このようにして書いたのがこちらのマインドマップ。
モノトーンで、全体的にシャープなイメージですよね。実践を通しては、箇条書きと比較して順番を気にしなくてよいためメモをとりやすく、線でつなげるので関連性がわかりやすいと感じました。
次は、「カラフル・絵ありパターン」。同じスピーチをカラーペンでマインドマップ化しました。使ったものはA4用紙と、3色のカラーペン。
手順は先ほどとほとんど同じですが、カテゴリーごとにできるだけ色を変え、さらにスピーチのあとに時間をとり、重要なキーワードをイラストで表してみました。
カラーとイラストのおかげで、カテゴリー分けがわかりやすく、なんとなく内容を想像することができませんか?
2パターン書いてみてわかったのは、やはり「白黒・絵なし」パターンは「カラフル・絵ありパターン」と比べて記憶に残りにくいということ。
「カラフル・絵ありパターン」は、実践から数日経ってもしっかり記憶に残っていました。あとからスピーチの内容を思い出そうとすると、自分の描いたイラストが鮮やかに頭に浮かび、関連するキーワードが蘇ってくる感覚があったのです。脳がカラーとイラストを好む、というのは間違いなさそうですね。
塚原氏は、カラーとイラスト、曲線を使わない限り、本物のマインドマップではないと述べています。マインドマップを書くときは、ぜひカラーペンをそろえましょう。
このように、マインドマップには明らかな学習効果を感じましたが、誰でも簡単につくれるものではない、という印象も受けました。著作家、ビジネスリーダー向けコーチのヘーゼル・ワグナー氏も、マインドマップを習得するには練習が必要だと話しています。
しかし、初心者であっても、効果が得られないわけではないそう。たとえば、ワグナー氏は、苦手な科目に悩む孫娘にマインドマップを教えたところ、その孫娘はなんと翌日の試験で一番高い評価の「A」をとったのだとか。
最初からうまく書けなくてもいいのです。焦らず少しずつ取り入れてみてください。
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そうそう、カラーペンを使うときは、修正液の準備を忘れずに! 間違えても消せると思うとストレスなく書き進められますよ。クリエイティブに楽しく学習していきたいですね。
(参考)
YouTube|The Power of a Mind to Map: Tony Buzan at TEDxSquareMile
マインドマップの学校|マインドマップはなぜ役に立つ?
心理学用語集サイコタム|試行錯誤
Fernandes, Myra A.,Jeffrey D. Wammes and Melissa E. Meade(2018) “The Surprisingly Powerful Influence of Drawing on Memory” SAGE JOURNALS, Vol.27, No.5, pp.302-308.
マインドマップの学校|マインドマップの書き方「6つの法則」
YouTube|Want to learn better? Start mind mapping | TEDxNaperville | Hazel Wagner
【ライタープロフィール】
平野ももこ
大学ではフランス文学を専攻し、物語のなかの人の心を中心に研究。出版社を経営していた祖母の影響もあり、純文学、心理学、ビジネス書など幅広く読む大の読書家である。現在は、メンタルケアやカウンセリングを勉強中。バレットジャーナルの実践を通じ、生活改善に成功し続けている。