仕事中気持ちがモヤモヤしていると、ケアレスミスをしてしまいがち。なんとなく嫌な気分のとき、ストレスでつい他人にキツいことを言ってしまう。そんな人はいませんか?
仕事やプライベートがどうもうまくいかないのは、そもそも自分の感情を正確に把握できていないからかもしれません。そこで今回は、自分の感情を言語化する重要性を、筆者の実践例とともにご紹介します。
「感情を言語化すること」はなぜ重要なのか?
「自分の感情くらい、ちゃんとわかっているよ」と考える人は少なくないと思います。たしかに「いい気分」「嫌な気分」といった大雑把な感情把握なら、誰にでもできるもの。
しかし実際には、「うまく言えないけれど、なんか嫌だな」「気分はまあまあ」などと自分の感情を濁していることも多いのではありませんか? じつはそれだと、仕事のパフォーマンスを高めたりプライベートを充実させたりすることは難しいのです。
2012年にミシガン大学の研究チームが、被験者に一定期間、自分の感情の動きを記録することを指示しました。すると、「悲しみ」「不安」「恐怖」「嫉妬」といった自分のネガティブな感情を……
- 明確に区別してとらえるのが得意な人は、ストレスに強い
- 区別するのが苦手な人は、ストレスに弱い
ということがわかったそうです。ストレスに強い人のほうが、仕事や私生活における出来事を、よりうまく運べるのは言うまでもありませんよね。
『感情マネジメント 自分とチームの「気持ち」を知り最高の成果を生みだす』著者であり株式会社アイズプラス代表取締役の池照佳代氏は、自分の感情を言語化してきちんと認識することの重要性について、こう説明しています。
感情は、自分のパフォーマンスに最も大きな影響を与える因子のひとつである。感情がどのようにパフォーマンスへ影響を与えるかを知っていれば、「こういう気分のときは、自分はこういう行動をすべきだ」とパターン化できる。
また自分の感情に着目することが日常化すると、他人の感情も敏感に感じられ、ビジネスへも活かせるようになるとのこと。
たとえば、
「自分は上司の顔をついうかがってしまいがちだから、冷静に距離をとる」
「初めての打ち合わせに参加するとき、自分も相手も緊張して焦っているとわかったら、場を和ませる雰囲気をつくるところから始める」
といった感じです。
グロービス経営大学院経営研究科副研究科長の村尾佳子氏も、感情の言語化をすすめるひとり。モヤモヤと「ただ悩む」しかない状態から、「解決策を考える」状態へ移行できる、というメリットがあるそうですよ。
感情の言語化には「ムードメーター」が役に立つ
感情を言葉にしようとしても、「悲しい」「楽しい」のようなアバウトな表現になってしまうもの。そこで活用すると便利なのが「ムードメーター」。
これは、前出の池照氏が紹介しているもので、イェール大学の感情知性センターという研究機関が開発した、いまの気分を認識するのに役立つツールです。
感情の良し悪しを表す「フィーリングレベル」と身体の「エネルギーレベル」のふたつをバロメーターとして、それぞれ点数化。両者の交わるマスを見れば、いまの気分を「100の感情」のなかから言語化できるのです。点数化は、自分の主観でかまいません。以下の日本語版は、池照氏の株式会社アイズプラスによって作成されました。
(画像引用元:STUDY HACKER|いまの状態を「100の感情」から選び言語化する習慣で、パフォーマンスが最大化する理由)
池照氏は、人それぞれで気分が異なることはもちろん、同じ人であっても、時間やちょっとしたきっかけでまったく別の感情状態になっていることもあると指摘します。ムードメーターを活用すれば、自分の感情が揺れ動く様子を察知したり、モヤモヤした感情に名前をつけてきちんと認識したりすることができるようになるはずです。
2週間、自分の感情を言語化し続けてみた
今回、筆者も実際に「ムードメーター」を2週間フル活用して、自分の感情を言語化してみました。リモートワークであることや昨今の情勢から自宅にいる場面が多く、日々の生活に変化をつけられずストレスを感じることもあったため、この際よい機会だととらえて実践することにしました。
手順は簡単。朝・昼・晩のエネルギーレベルとフィーリングレベルそれぞれをムードメーターに当てはめ、自分の感情を確認して記録するだけです。一連の作業を2週間毎日続けた結果がこちら。
その日に印象的だった出来事なども簡単にメモしておき、なぜその感情に至ったのかをあとから振り返ることができるようにしました。たとえば、記録をつけ始めた日の朝のメモはこうです。
- エネルギーレベル「7」
- フィーリングレベル「9」
- 感情は「Proud(誇りに思う)」
- メモ「誕生日」
その日は筆者の誕生日であり、実感としては「嬉しい」くらいだったので、新たな感情表現について理解し、ただの「嬉しい」とは違うのだと知ることができました。
さらにその日の晩の記録はこちら。
- エネルギーレベル「2」
- フィーリングレベル「7」
- 感情は「Thoughtful(思いにふける)」
仕事を終えて疲れていたため気分はあまりよくなかったのですが、ムードメーターで感情を把握したことで、単に「疲れた」で1日を終わらせずにすみました。仕事やプライベートにおいて、ひとつ年齢を重ねたうえで今後どのように成長していくべきか冷静に考える時間をとることができたのです。
自分の感情を言語化したら、行動にメリハリが生まれた!
気づいたことや、提案したいことを3つにまとめます。
自分の感情は、想像以上に豊かだった
自分の感情を2週間言語化し続けてみたところ、自分の感情が思っていたよりも多様であることに気づきました。これまで「なんとなく不安だ」「わりと楽しい」程度にしか把握していなかったのが、ムードメーターを用いるとたった2週間で29通りの感情を言語化できたからです。
時には、自分自身が認識している感情とムードメーターで確認した感情に差があったことも。そんなときは、どちらかが正しい感情だと判断するのではなく、「もしかしたら物事を大げさに感じすぎているのかな」「自分の感情を無視してしまっているのかもしれない」と考えるようにしました。
ネガティブ感情からの切り替えが上手になった
また、仕事のパフォーマンスにもよい影響がありました。以前は、ネガティブな気持ちになっても「仕方がないや」と放置しがちだったのですが、池照氏や村尾氏が説いていたように、「こういう気分だからこう行動しよう」と考えて実際に行動へ移すことができたのです。
たとえば、仕事が行き詰まったときであれば、「イライラしてきたから、ちょっと席を立とう」といった具合。そうすると、集中力が戻り、仕事にまた取り組みやすくなりました。
初めての人は休日からやってみるのがおすすめ
平日・休日を両方含む2週間実践してみた結果、特に休日だと、自分の感情をふまえて行動をコントロールする練習がしやすいと感じました。みなさんも、まずは休日など余裕があるときに感情の言語化をやってみてはどうでしょうか。自分の行動をコントロールできるようになってきたら平日にもやってみる、というように段階を経るときっとうまく実践できますよ。
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感情を表す言葉が自分では思いつかなくても、ムードメーターを活用すれば、100もの感情から選ぶだけで簡単に言語化でき、仕事や生活にもよい影響がもたらされます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
(※記事中の人物の肩書は記事公開当時のものです)
(参考)
ダ・ヴィンチニュース|『超ストレス解消法 イライラが一瞬で消える』「ネガティブ感情ラベリング」/連載第3回
STUDY HACKER|いまの状態を「100の感情」から選び言語化する習慣で、パフォーマンスが最大化する理由
EQ+LAB.|EQって何?-感情に名前を付けてみようー
GLOBIS CAREER NOTE|「伝わらない」から脱却!言語化能力を鍛えるためのポイント
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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