「やらなければならないことがあるのに、すぐにサボってしまう」
「目標を決めても達成できず、途中で諦めることが多い」
「自分はネガティブで、意志が弱くてダメな人間だ」
このように悩んでいる人は、自分の不甲斐なさに絶望し、自信を失っているかもしれません。しかし、じつは、サボったり挫折したりしてしまうのは、人間にとって自然なことなのです。
今回は、目標を達成できず「自分はダメな人間だ……」と悩む人のために、少しの工夫によって意志の弱さをカバーする方法をご紹介します。
日本人は遺伝子的にネガティブ
そもそも、日本人は、もともとネガティブな国民性だということをご存知でしょうか。ウェルズリー大学の心理学者ジュリー・K・ノレム博士によると、人間は、持っている遺伝子によって、性格がポジティブかネガティブかに分かれるそう。
S型と呼ばれる不安遺伝子を持つ人は、「防衛的ペシミスト」と呼ばれ、たとえそれまで成功していても「次は失敗するかも」と考えてしまうのだとか。逆に、あまり不安を感じないL型と呼ばれる遺伝子を持つ人は、「戦略的オプティミスト」と呼ばれ、根拠はなくとも「次も大丈夫でしょ」と考えられるタイプ。そして、日本人は、S型の遺伝子を持つ人が圧倒的に多く、98%は「防衛的ペシミスト」に該当すると言われています。
「自分はダメな人間だ」と卑下してしまうのは、本当にダメだからではなく、「ちょっとした失敗に対してクヨクヨしてしまう性質を、生まれたときから持っているから」だと認識することが大切です。そして、ネガティブだからこそ、自信過剰にならずに努力をできるのだと考え、自信を持ちましょう。自分の性質や置かれている状況を冷静に把握することが、成果を出す近道になるのです。
サボってしまう理由は男女で異なる
「仕事がまだ残っているのに、飲み会の誘いにのってしまった……」
「勉強したいのに、ついダラダラSNSを見てしまう……」
このように、誘惑に負けて、目の前の重要な仕事や勉強から逃げてしまった経験は、誰にでもあるのではないでしょうか? 脳科学者の中野信子氏によると、誘惑に負けてしまうのは心が弱いからではなく、脳の性質が原因だそう。脳は、莫大なエネルギーを消費する臓器であるため、基本的に楽なものを選択するようにできているのだとか。
加えて、目の前の仕事から逃げるプロセスは、男女で異なるようです。中野氏によると、男性のほうが、飲み会などの楽しい誘いに乗ってしまいやすい性質をもっているそう。男性の脳は、女性の脳に比べ、やる気の元として知られる脳内物質「ドーパミン」の感受性が低いのだとか。つまり、男性のほうがドーパミンを多く必要とし、これまでの刺激から得られる報酬に満足しなくなって、より強い刺激を求めやすくなるそう。楽しげなイベントに自制が効きづらくなるのも、このせいだと考えられます。
一方、女性の場合は、誘惑には強いものの、不安に弱い性質をもっているそう。女性は、男性よりも心を安定させる「セロトニン」が少ないため、損害回避傾向が高いのだとか。「失敗したらどうしよう」という不安から逃れるために、重要なことを後回しにし、ほかのことに取りかかってしまうのです。
さらに、私たちは、一度マイナスな行動をしてしまうと投げやりになってしまいやすいという厄介な性質を持っています。次の項で詳しくご説明しましょう。
「どうにでもなれ効果(The What-The-Hell Effect)」
「目標を立てた直後は、意気込んで計画通りの行動ができる」という方は多いのではないでしょうか。しかし、少しだけサボったり、目標に反する行動をとったりした途端に、一気にやる気がなくなってしまった経験がある方も多いかもしれません。
たとえば、「毎日1時間、資格の勉強をする」と決めていたのに、1日サボってしまってからは、翌日以降もズルズルとやらなくなってしまう。あるいは、「ダイエットをする」と意気込んでヘルシーな食事を続けていたのに、クッキーを2、3個食べた途端「もうどうでもいいや!」と惰性で一箱食べ切ってしまう……。誰もが似たような経験をしたことがあるのではないでしょうか。
これらの行動は、「どうにでもなれ効果(The What-The-Hell Effect)」と呼ばれています。この効果が発動すると、人は目標を投げ出してしまうのです。
冷静に考えれば、たとえ1日勉強をサボってしまっても、翌日からまた続ければ問題ありませんし、クッキーを2、3個食べても、そこで止めればダイエットに大きな影響はありません。しかし、人の脳は、「すでに計画から逸れてしまったのだから、もうどうにでもなれ。残りのクッキーも食べてしまえばいい」という方向に考えてしまうのだそう。もともとは、ダイエットに関する研究者らによって定義づけられたものですが、全ての目標に当てはめられることがわかっています。
スタンフォード大学の教授であり、心理学者のケリー・マクゴニガル氏によると、私たちは、悪い行動によって生じた嫌悪感を、慰める行動をとってしまうのだとか。つまり、ダイエット中にクッキーを食べてしまった嫌悪感を癒すために、さらに食べてしまうということです。
では、どうすれば、このような無意識の行動を防ぐことができるのでしょうか。オススメの方法は、失敗や挫折をあらかじめ計画に入れておくことです。「コーピングイマジナリー」という計画法をご紹介しましょう。
ネガティブな人にオススメの計画方法
前述した通り、日本人は遺伝子的にネガティブな性質を持っており「防衛的ペシミスト」と呼ばれます。これを提唱した心理学者ジュリー・K・ノレム博士いわく、防衛的ペシミストには、「コーピングイマジナリー」という計画方法が適しているのだそう。これは、不安を持っているからこそ、計画に失敗や挫折をあらかじめ組み込めるというメソッドです。
ノレム博士は、防衛的ペシミストを対象に、ダーツを使った実験を行ないました。実験は、被験者がダーツを投げる際に「真ん中に当たる!」というポジティブなイメージを持った場合と、「ダーツ盤の外側に刺さるかもしれない」というネガティブなイメージを持った場合で結果を比較するというもの。すると、後者のほうが、30%も的中率が上がったのだとか。しかも、ネガティブなイメージが具体的であるほど、成功確率が上がったそう。
同博士によると、想定される最悪なケースを想像する「コーピングイマジナリー」というメソッドを実践することで、防衛的ペシミストたちの成功率が上がるようです。ポイントは最悪の状況を思い浮かべ、そうならないための対策を立てておくこと。たとえば、大事な試験を控えている人は、次のような考え方ができます。
最悪なケースは、試験に落ちること
↓
考えられる原因は勉強時間が適切に取れないことなので、試験日から逆算して勉強スケジュールを決めよう
↓
1日1時間、帰宅後に勉強しよう
↓
残業や飲み会で、勉強ができない日があるかもしれない
↓
その場合は、翌日と翌々日に30分ずつ勉強時間を延長して補おう
このように、最悪なケースを具体的に考え、対処法を事前に決めておくことで、安心感が生まれますし、投げ出さずにリカバリーできるでしょう。
ネガティブな人こそ、成功しやすい計画方法なのです。
実際にコーピングイマジナリーを使って計画を立ててみた
筆者が、実際にコーピングイマジナリーを利用して計画を立ててみました。
「4ヶ月で体重を3キロ落とす」という目標を掲げ、以下の順番で、最悪のケースとそれを防ぐためにとる行動を書き出しました。
- 予想しうる最悪なケースを書き出します
- 1で記入した「最悪なケース」が発生してしまう要因を書き出します
- 1で記入した「最悪のケース」を防ぐための計画を書き出します
- 3で記入した計画を阻む要因を書き出します
- 4で記入した「計画を阻む要素」を防ぐための計画を記入します
これで、「4ヶ月で体重を3キロ落とす」ための計画が出来上がりました。
この計画通りに1週間過ごしてみましたが、4ヶ月で3キロ体重を落とすための行動を着実に実行できていると感じます。
数年前から「いつかダイエットを始めよう」と頭の中にはありましたが、具体的な行動には移していませんでした。しかし、自分でとるべき行動を考え、それが失敗しそうな場合はどうするか、という計画を書き出したことで、確実に実践することができています。この1週間でジムに入会し、ヘルシーな食事を作り置きしました。この計画通りの行動を続けていけば、春までに体重を減らしていくことができそうです。また、このように計画が書き出されていることで迷いがなくなり、目の前の仕事や、やるべきことにも集中できました。
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そもそも、日本人の大半は生まれながらネガティブなのです。さらに、私たちは少しのことで挫折して、やるべきことを放り出してしまう性質も持っています。ネガティブだからこそ、「失敗」を前提に計画を立てることが有効です。そして物事がうまく進まなかったり、ついサボってしまったりしたときこそ、落ち込んでいる自分に「大丈夫、誰にでもあることだから」などと安心できる言葉をかけてあげましょう。一見遠回りに感じるかもしれませんが、こうした心がけと行動こそ、成果を出す近道なのです。
(参考)
President Online|サボり癖、飲みの誘い……甘い誘惑に負けるのは心が弱いせいなのか
Psychology Today|How The What-The-Hell Effect Impacts Your Willpower
Nippon.com|リスクを好まない国、日本!: 脳のブレーキが生む「おもてなし」精神
DaiGo(2018),『倒れない計画術』, 河出書房新社.
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。