成功を引き寄せるマインドセット——“自己効力感”を持っていますか?

「資格勉強を始めても三日坊主で終わってしまう」「新しいチャレンジをしたいのに、どうしても一歩が踏み出せない」——そんな経験はありませんか?

もしかすると、その裏には “self-efficacy(自己効力感)” が深く関係しているかもしれません。 自己効力感とは、自分が「ある行動をうまく遂行できる」という信念や確信のこと。

心理学者のアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)が提唱し、学業や仕事、スポーツなど多くの領域で研究されてきました。なぜそれほど注目されているのか。それは、自己効力感が高い人ほど「行動に踏み出しやすくなる」「挫折せずに続けやすくなる」といった特徴を持っており、結果的に成功体験を積み重ねやすいからです。

この記事では、この自己効力感をどうやって高めていくのか、そしてそれを勉強や仕事にどう応用できるのかを解説していきます。

「やってみたいけれど、できる気がしない」と感じてしまうことが多い人も、ちょっとしたコツを知れば「自分にもできるかも!」と前向きになれるかもしれません。

自己効力感(self-efficacy)とは

自己効力感の定義を端的に言うと、「自分が特定の行動を成功させることができる」という信念です。

たとえば、英語のスピーキング力を伸ばしたい人が「自分は毎日オンライン英会話を継続できるし、話せるようになれるはずだ」と思うかどうか。それが高いと、行動を起こして継続する意欲が強まり、学習成果に結びつきやすいのです。

逆に自己効力感が低いと、「どうせ無理だし、やっても意味ないかも」と考えてしまい、スタートすら切れなかったり途中で投げ出しやすくなったりします。

本人の能力や環境が同じでも、自己効力感の高低で結果が大きく変わる可能性があるため、多くの研究者が注目しているわけです。

バンデューラが語る「4つの源泉」

アルバート・バンデューラによると、自己効力感には主に4つの源泉があります。

成功体験(Mastery Experiences)
実際に行動して成功した経験。小さな成功であっても「自分はできた」という記憶が積み重なることで「次もいけるはずだ」という感覚が高まる。
代理経験(Vicarious Experiences)
自分と似た境遇の人が成功しているのを見ると、「あの人にできるなら自分もできるかもしれない」と思える。身近なロールモデルがいるかどうかが重要。
言語的説得(Verbal Persuasion)
周囲から「あなたなら大丈夫」「こうすればうまくいくよ」と励ましやアドバイスを受けることで、「やれそうだ」という気持ちが高まる。
生理的・感情的状態(Physiological and Affective States)
緊張や不安が強すぎると「無理だ」と思い込みやすいし、体調や気分がいいと「意外といけるかも」と思える。コンディション管理が影響する。

具体策1:小さな成功(small wins)を積み重ねる

最も王道な方法は、小さな成功を何度も体験することです。一度に大きな目標を掲げるのではなく、細かく砕いて達成しやすいステップを用意し、クリアするたびに「できた」という感覚を味わう仕組みを作ります。

■ 勉強
  • いきなり「TOEICで900点を目指す」より、まずは「1日5個ずつ単語を覚える」など小さなタスクを設定。
  • 達成したらカレンダーに◯をつける、SNSで報告するなどで「よし、自分にもやれた」という手応えを可視化。
■ 仕事・スキルアップ
  • 「プレゼンを大成功させる」ではなく、「まずは5分だけ朝礼でスピーチしてみる」など小規模な挑戦を積む。
  • 少しずつハードルを上げることで、回を重ねるごとに「もっとやれるかも!」と思えてくる。
この “small wins” を日々積み重ねると、自己効力感がじわじわ上がっていきます。大きすぎる目標で最初に挫折すると、逆に「やっぱり無理だ」と思い込む悪循環に陥るので注意が必要です。

具体策2:似た境遇の人の成功事例を活用

自分と同じ年代、同じ職種、同じレベルの人が成果を出している姿を見ると、「あの人にもできるなら、自分もきっとできる」と感じられるのが代理経験の効果です。身近にそういう人がいるなら一番ですが、SNSやYouTube、勉強コミュニティなどを活用してロールモデルを探すのも手です。

■ 勉強・資格コミュニティ
  • 例えば独学で宅建や簿記に合格した人の体験談を知る。
  • 自分のペースでも続ければ合格圏に届くイメージを得られる。
■ 職場内の先輩事例
  • 同じ部署で「数年前はまったく英語が苦手だったのに、海外出張をバリバリこなすようになった先輩がいる」など。
  • その人に話を聞くだけでも、「意外と普通のやり方でやってるんだ」とわかって自信が湧くかもしれない。
要は「遠い世界の天才」ではなく、「自分とそこまで変わらないように見える人」の成功ストーリーが参考になるということ。同じ土俵に立てると感じるだけで、自己効力感はガラッと変わります。

■ 具体策3:周囲からの応援を得る、ネガティブ要素を減らす

◇ 言語的説得(Verbal Persuasion)の活用

職場の同僚や家族、友達に「この目標を達成したいから、応援してほしい」と宣言するだけで、案外サポートが得やすくなります。周囲から「あなたならできそう」「こないだの取り組み、成果出てるじゃん」と言われれば、自己効力感は上がりやすいのです。

■ 勉強会やオンラインサロン
  • 同じ目標を持つ仲間同士で進捗を報告し合う。互いに「いい感じだね」と声をかけ合うだけでモチベーションが保たれる。
■ 上司・先輩に相談
  • ちょっと壁にぶつかった時、「こういう方法を試してみたら?」とアドバイスをもらうだけでも「まだいけるかも」と思える。

◇ 生理的・感情的状態の調整

やる気が出ないとき、理由は能力不足ではなく「疲労やストレスかもしれない」ことがあります。十分な睡眠や休憩を確保し、リラックスを心がけることで、不安や緊張が和らぎ「じつはそこまで難しくない」と思えるようになるはず。

■ コンディション管理
  • 夜更かしが続くとどうしてもネガティブ思考になりがち。
  • 軽い運動やストレッチ、深呼吸などを習慣化し、身体がリラックスしている状態を意識すると、精神的にも「やれそう」と感じやすくなる。

自己効力感の好循環・悪循環

自己効力感が高い → 行動する → 成果・成功体験 → さらなる効力感アップ という好循環に入ると、学習や仕事において飛躍しやすくなります。逆に、最初に失敗すると「やっぱり無理だった……」と効力感を失い、行動しなくなる悪循環に陥ってしまいがちです。

そこで、「小さく始めて、着実に成功を積む」「成功事例や応援を取り入れる」「ネガティブなセルフトークや疲労を減らす」といった工夫が大切になるわけです。少しずつ効力感を育てていくことで、大きな目標にも挑戦しやすくなるでしょう。

小さな成功が「やれるかも!」を生む

まとめのポイント
1. 自己効力感は “やる気” や “継続力” の源泉
➢ 行動する前に「自分はできそう」と思えるかどうかで結果が左右される。
2. バンデューラの4つの源泉を意識すると行動設計しやすい
➢ 成功体験、代理経験、言語的説得、生理的・感情的状態。これらをうまく組み合わせれば、自己効力感を高められる。
3. 小さな成功(small wins)と周囲の協力が鍵
➢ 大きな目標を掲げるより、まずは1日10分の勉強・1つのタスク完遂などで「できた」を積み重ねる。
➢ 似た人の成功例を参考にし、自分の可能性を明るく見る。

自己効力感は生まれつきの資質というより、日々の経験や環境の作り方で変わっていくものです。最初は「ほんの小さなゴール設定」「身近な成功事例のリサーチ」「ちょっとした応援の言葉をもらう」などから始めて、好循環を作ってみませんか。

たとえいまは自信がなくても、一歩ずつ積み重ねていくうちに、いつの間にか「自分って意外とやれるじゃん」と思える日が来るはずです。

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あえて「ハードルを下げる」ことが遠回りに見えて、じつは最短で成果を出すコツでもあります。ぜひ、自分に合ったやり方で“自己効力感”を高め、新しいステージへのチャレンジを楽しんでみてください。

【ライタープロフィール】
大西耕介

「人の行動」に潜む、意外な真実を独自の視点で解き明かすライター。身近な例から社会現象まで、独自の視点で考察し、意外な真実を提示する。趣味は、古い町並みを散策しながら、その土地の歴史や、人々の営みに思いを馳せること。

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