脳科学研究者の篠原菊紀氏によれば、「情報をアウトプットする」ことで「記憶のネットワーク化」が起こるのだそう。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」)勉強にしろ、仕事を覚えるにしろ、積極的にアウトプットをすることが学習効率を高めるコツなのです。
しかしどのようにアウトプットすればいいのでしょう? ここで「アウトプット」の定義を確認しておきます。脳科学に詳しい精神科医・樺沢紫苑氏いわく「アウトプットとは情報を『使う』こと」。その具体的方法のひとつが「書く」ことだそうです。(引用元:STUDY HACKER|記憶効率を上げる黄金比は「3:7」だ。勉強に脳科学を取り入れるべし。)
そこで、
- 仕事の知識や手順を早く覚えたい
- 読んだ本の内容を身につけたい
そんなあなたに向けて、「書く」ことによる3つのアウトプット法をご紹介します。
アウトプット法1. マインドマップ
読んだ本の内容をしっかり把握したい。情報を整理して理解を深めたい。そんなときに便利なのが「マインドマップ」です。
これは「脳の思考プロセスである放射思考を反映したノート法」のこと(引用元:マインドマップの学校|マインドマップとは?)。中央のキーワードから放射状に枝が伸ばされて情報がまとめられた紙面を、見たことがある人は多いかもしれませんね。
『マインドマップ読書術』著者で書評メールマガジンの発信も行なう松山真之介氏は、『マインドマップ図解術』の著者・中野禎二氏との対談のなかで、こう述べています。
(マインドマップ読書術について)元々はメルマガで書評を行っていて、文章でサマライズするという仕事なんですが、その前のプロセスに、「この本は何なの」「気付いたことは何なの」をメモする、途中のプロダクトとしてマインドマップは良いと思ったんです。
(引用元:中野禎二(2005), 『マインドマップ図解術』, 秀和システム. ※カッコ内は編集部にて補った)
また、『マインドマップ図解術』には「マインドマップの特徴」の一部として以下の点が挙げられています(以下カギカッコ内、同書より引用)。
- 「全体を一気に俯瞰できるので、漏れがなくなる」
- 「書くのが比較的簡単」
- 「物事を理解するときに図解する技術として使える」
本を読んで勉強している人には嬉しいメリットが並んでいますね。
では、読んだ本の内容を、実際にマインドマップに表してみるとどうなるのか、例として、アメリカの自己啓発書作家、デール・カーネギー氏による名著『道は開ける』の内容を、私がマインドマップにまとめてみたのが次の画像です。
『マインドマップ図解術』で紹介されている「マインドマップの書き方」とともに、ご紹介しましょう(以下枠内は同書よりまとめた)。
◆マインドマップの書き方
- 白い紙を横向きに置く
- 紙の中央にタイトルとなるキーワードを書く
- 中央から「枝」を伸ばし、中央の言葉やイメージに関連するメイントピックを書く
- メイントピックの下に、関連するサブトピックを書いていく
『道は開ける』は、私たちが抱える悩みの解決法を説いた書籍。そこで「悩み」をマインドマップの中央に据えたうえで、そこから「根本解決」「対症療法」「副作用」という3つの “枝” を伸ばし、本の内容を整理しました。なお、今回は省きましたが、「枝や単語に色」をつけたり、「イメージ(絵)」を描き添えたりしてもいいそうです。
実際に作成したところ、まさに「地図」のように本の内容が可視化され、全体像を把握しやすくなりました。物事を理解・整理したいとき、思考を深めたいときはマインドマップを書いてみることをおすすめします。
アウトプット法2. マトリクス図
次におすすめするのは「マトリクス図」。縦×横の2軸に沿って情報を分類した図のことです。
三菱総合研究所主席研究員・奥村隆一氏の著書『考えを整理する技術・伝える方法 5つの図でスッキリ解決!』によれば、マトリクス図は「抜け漏れをチェックしたり、物事を単純化して明快に示すのに適した」方法なのだそう。書き方は以下のとおりです。(以下カギカッコ内は同書より引用)
◆マトリクス図の書き方
- 「2つの軸を決め、各々の軸をいくつの要素に分けるか」を決める
- 「それぞれの囲みの中に対応する情報を埋め込んで」いく
覚えるべき事柄が複雑なときや、ちょっと難しい本を読んでいるときなどに、内容を明快に理解するのに役立ちそう……と考え、同じく『道は開ける』の内容をマトリクスに落とし込んだものが以下の図です。
本書で説かれている悩みの解決法を、「対症療法/根治療法」「思考/行動」という2つの軸に従って、私なりに分類してみました。
マトリクス図の形式でアウトプットしてみてまず感じたのは、情報がすっきりと整理されて、本の内容がより頭の中に入ってくるということ。本の内容を記録するだけでなく、一度この図で整理しておけば、復習にも役立つと思います。ぜひ、試してみてください。
アウトプット法3. フローチャート
物事の流れを把握したいときに役立つのが「フローチャート」。キーワードを書き出して線で囲み、矢印や記号で結びつけるというアウトプット法です。
資格スクールでの講師経験をもち、勉強法に詳しい碓井孝介氏によれば、このフローチャートは「話の展開をそのまま記憶するときに役立つ」方法とのこと。(引用元:碓井孝介(2018),『40代からの勉強法&記憶術』, PHP研究所.)
本の内容をちゃんと覚えておきたい。セミナーで聞いた話を忘れないでおきたい――など、フローチャートが役立つシーンは多岐にわたるでしょう。情報の「流れ」をつかみたい場面でぜひお試しください。書き方は次のとおりです。(以下カギカッコ内は同書より引用)
◆フローチャートの書き方
- 「文章中のキーワードをまずはピックアップ」する
- 「キーワードを軸にして話の展開を図や記号」にする
上の図は、同じく『道は開ける』の内容の一部をフローチャート化したもの。要素のひとまとまりを四角で囲んで見やすくしたうえで、悩みの解決手順を矢印で表現しています。
「⇔(逆に)」「:(つまり)」「∵(なぜならば)」など使用する記号を決めておくことによって、情報をシンプルにまとめることができましたよ。作業手順はもちろん、歴史など時系列が関わるもの、物事の因果関係などは、このフローチャート形式でアウトプットすると覚えやすいのではないでしょうか。
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効果的にアウトプットをして学習効率を高めたいなら、ご紹介した3つのアウトプット法「マインドマップ」「マトリクス」「フローチャート」をぜひお試しください。
(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」
STUDY HACKER|記憶効率を上げる黄金比は「3:7」だ。勉強に脳科学を取り入れるべし。
マインドマップの学校|マインドマップとは?
D.カーネギー著, 香山晶訳(1984),『道は開ける』, 創元社.
中野禎二(2005), 『マインドマップ図解術』, 秀和システム.
奥村隆一(2010), 『5つの図でスッキリ解決! 考えを整理する技術・伝える方法』, PHP研究所.
碓井孝介(2018),『40代からの勉強法&記憶術』, PHP研究所.
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。