覚えられる。理解が深まる。勉強に不可欠な「アウトプット」を “紙に書かずに” やる方法4選

「紙に書き出さない」アウトプット01

記憶を最も効率化できるインプットとアウトプットの黄金比は「3:7」。精神科医の樺沢紫苑氏によれば、脳科学研究でこう示されているそうです。

簡単に言えば、「インプットしたらその2倍以上アウトプットすると、より効率よく覚えられる」というわけなのですが、多忙なビジネスパーソンのなかには「そんなにアウトプットできてない!」という方が多いのではないでしょうか?

勉強時間は限られているけれど、アウトプット中心の学習をしたい。
スキマ時間でもできるアウトプット法はないだろうか?

そんな方へ、ノート不要の「書き出さない」アウトプット法をご紹介します。

1. 声に出して説明する

京都大学法学部出身のお笑い芸人・宇治原史規氏は、エアー授業というアウトプット法をすすめています。教師になったつもりで、架空の生徒に対してひとりで授業を行なうというもの。やることは単純で、勉強して覚えたことを自分の言葉にして、声に出して説明するだけです。

理解したと思っていても、実際はよくわかっていなかったり、大切な情報が抜けていたりすることがありますよね。そんな “理解の欠如” に気づけるのがこのアウトプット法。説明できれば、理解できている。説明できなければ、理解が足りてない――このように、理解度を確認することができるのです。

エアー授業を続けることによって、「覚える」が「わかる」に変わり、使える知識になると宇治原氏は言います。

加えて、前出の樺沢氏によると、説明する際は自分の意見や気づきをひとつでも盛り込むと、より記憶に定着しやすくなるのだとか。つまり、勉強した内容をただ声に出すだけでなく、「どう思ったか」「何を感じたか」という自分の感想も取り入れながら話すとよいのです。

ぜひ、インプットしたことを声に出してアウトプットしてみましょう。思ったより言葉が出てこなければ、もう一度インプットをして再トライ。自分の考えも盛り込んで、質の高いアウトプットをしてみませんか?

「紙に書き出さない」アウトプット02

 

2. 思い出しながらテキストを読む

最も効率的なテキストの読み方とは、アウトプットしながら読み進めることだ――そう述べるのは、超難関と言われる司法書士試験に、知識ゼロから独学で、しかもたった5か月で合格したという松本雅典氏です。

テキストは一般的に「知識をインプットするためのもの」とされますが、松本氏は「アウトプット教材として」利用することをすすめています。テキストでインプットしてから過去問や演習問題でアウトプットするのではなく、テキストのみでインプットもアウトプットも済ませてしまおうというのです。

なぜテキストがアウトプット教材として優れているかというと、テキストには情報が体系的にまとめられているからだと松本氏。問題集を使うと断片的なアウトプットになってしまう一方、テキストを使えば前後の情報を頼りにアウトプットがしやすいと言います。結果、より覚えやすくなるというわけです。

方法はとてもシンプル。テキストの小見出しや、各項目に関する説明文の前半部分を読んだあとで、後半に続く重要ポイントを頭のなかで思い出す——これだけです。

たとえば「○○のルールとは」という小見出しがあったとしたら、すぐ先を読まず、「○○のルールってなんだっけ……そうだ、△△と××と□□だ!」という感じで、頭のなかで思い出します。そうしてから先へ読み進めて、答えを見つけるのです。

松本氏によると、ほとんどのテキストには重要ポイントに下線が引いてあるので、その下線箇所を思い出そうとすればいいそうですよ。

どんなにいいテキストも、ただ読むだけではなかなか記憶に残りません。これまで、テキストをインプット目的で何度も読み返していたという人は、「重要ポイントを思い出す」というかたちでアウトプットしながら読み返してみてください。大切な情報をしっかり覚えましょう。

「紙に書き出さない」アウトプット03

3. 脳内で議論する

ある議題について、賛否両方の意見を自分の頭のなかで想像し、戦わせる——そんな学習方法のメリットを明らかにしたのは、米マーシー大学の助教ジュリア・ザヴァラ氏とコロンビア大学の研究教授ディアナ・クーン氏。両氏の行なったグループ実験で、「脳内議論」が学習者の理解度をより高いレベルへ引き上げることが明らかになりました。

実験では、学生たちをふたつのグループに分け、同じテーマに関する情報を渡しました。その後、一方のチームにはそのテーマに関する小論文を書くよう求め、他方のチームにはふたりの人間が議論するダイアログ形式の文章を書くよう求めました。その結果、議論を想像したほうのチームは、問題に対してより正確な事実を把握しており、高い理解力を示したのだとか。

この結果についてザヴァラ氏はこのように語っています。

“Envisioning opposing views leads to a more comprehensive examination of the issue.(中略) Moreover, it impacts how people understand knowledge — constructing opposing views leads them to regard knowledge less as fact and more as information that can be scrutinized in a framework of alternatives and evidence.”

(反対意見を想像することで、より広い視点で問題を検討できるようになります。さらに、知識の扱い方にも変化が起こります。つまり、反対意見を考えることで、知識を事実としてただ受け入れるのではなく、代替案や証拠によって改めて精査できる情報として見なすようになるのです)

(引用元:Association for Psychological Science|Imagining Dialogue Can Boost Critical Thinking ※カッコ内の和訳は筆者が補った)

つまり、得た知識をそのままアウトプットするのではなく、テーマに関するさまざまな意見を想像し、それらを頭のなかで戦わせることで、その情報を自分なりに活用できるようになるということ。

実験では「議論形式で文章を書いた」とありますが、大切なのは「議論を想像する」こと。勉強中に「どうしてこうなるのだろう?」と疑問が浮かんだり、論述が求められたりするようなときには、ぜひ頭のなかで議論を展開してみましょう。

「紙に書き出さない」アウトプット04

4. 学習前に意識づけを行なう

ここまでアウトプットの方法をお伝えしてきましたが、テクニックのほかにも取り入れたいことがあります。それは、学習する前の意識づけ。前出の樺沢氏は、著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』のなかで「学習前に質問する」ことをすすめています。

このときの質問というのは、教師や友人に尋ねる質問ではなく、自分への問いかけのこと。学習前に「この勉強から何を学びたいのか?」と自問し、目的を意識づけすることで、その後の勉強効率を大幅にアップできるそうですよ。脳が活性化して、必要な情報に自然と注意が向くようになるのだとか。

さらに、“知的生産研究家” の永田豊志氏は、「誰に・どのようにアウトプットするか?」を事前に考えておくことをすすめています。「学習したことはブログにアップしよう」「あの人にこんなふうに伝えてみよう」……などのようにアウトプットイメージを事前に描くことで、その後の学習における理解力や記憶力が向上すると言います。

学習前にはぜひ「何を学びたいのか?」「学んだことを、誰に・どう伝えるか?」といった質問を自分に問いかけて、学習の質を向上させましょう。

***
アウトプットをするにはノートもペンもいりません。「これならできそう!」というものから試してみてくださいね。

(参考)
樺沢紫苑(2018), 『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
PHPオンライン衆知|高学歴芸人ロザンの必勝勉強法・「エアー授業」とは!?
松本雅典(2013),『予備校講師が独学者のために書いた司法書士5ヶ月合格法』, すばる舎.
Zavala, Julia and Deanna Kuhn (2017), ”Solitary Discourse Is a Productive Activity”, Psychological Science, Vol.28, Issue.5, pp. 578-586.
Association for Psychological Science|Imagining Dialogue Can Boost Critical Thinking
PsyBlog|The Secret to Deeper Learning Most People Don’t Know
ITmediaエンタープライズ|アウトプットを意識すれば頭は良くなる

【ライタープロフィール】
平野ももこ
大学ではフランス文学を専攻し、物語のなかの人の心を中心に研究。出版社を経営していた祖母の影響もあり、純文学、心理学、ビジネス書など幅広く読む大の読書家である。現在は、メンタルケアやカウンセリングを勉強中。バレットジャーナルの実践を通じ、生活改善に成功し続けている。

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