【図解】ビジネスに便利なフレームワーク18選

ビジネスに便利なフレームワーク1

ビジネスで困ったときに役立つのが、思考の枠組み「フレームワーク」です。フレームワークを用いることで、手早く、もれなく思考を整理したり、斬新なアイデアを生み出したりすることができますよ。

今回は、ビジネスに役立つフレームワークを18個紹介します。

ビジネスにおけるフレームワークとは

フレームワークとは、思考や発想が効率的にできるよう考案されたツールのこと。ビジネスに役立つフレームワークは数多く存在します。『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』(KADOKAWA、2016年)の著者である、日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャーの木部智之氏によれば、場面に応じて適切なフレームワークを使用することで、効率的に思考を深めることができるのだそう。

フレームワークを使うと、どの範囲で何を考えないといけないかの枠組みが決まります。思考する枠組みが決まるため考慮モレがなく、その枠以外のことを考えなくていいのでムダがありません。

(引用元:東洋経済ONLINE|思考のスピードが速い人は「型」で考えている

この記事で紹介するビジネス向けフレームワークを目的別に分類すると、以下のとおりです。たくさんありますが、もちろん全部を使いこなす必要はありません。自分に合ったフレームワークを1つでも活用できれば充分です。

目的達成に便利なフレームワーク

1. PDCA:目的達成
2. ECRS:業務改善
3. KPT:仕事の振り返り
4. マンダラート:アイデア発想・目的達成

アイデア発想・思考整理に便利なフレームワーク

5. 5W1H:アイデア発想・課題発見
6. SCAMPER:アイデア発想
7. ロジックツリー:問題解決・課題発見
8. ピラミッドストラクチャー:論理の分解

マーケティング戦略に便利なフレームワーク

9. 3C:自社のマーケティング環境の分析
10. ファイブフォース:業界における脅威の分析
11. VRIO:3C分析における自社の分析
12. バリューチェーン:自社製品について、各業務段階における付加価値の分析
13. 4C:自社製品の分析
14. SWOT:自社を取り巻くマーケティング環境の分析から事業の方向を決定
15. STP:自社製品の分析
16. AIDMA:消費者の購買行動の分析
17. AISAS:消費者の購買行動の分析
18. AARRR:消費者の購買行動の分析

ビジネスに便利なフレームワーク2

ビジネスに使えるフレームワーク1:PDCA

最初に紹介するビジネスに役立つフレームワークは、PDCAです。非常に有名なフレームワークですよね。

ご存知の通り、PDCAはPlan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(行動)という4つのステップで構成されています。4つのステップを順番にこなし、一連のサイクルを何度も繰り返すことによって、目標に近づくことができるのです。

具体的には、「1ヶ月間、毎日業務日誌をつける」などの計画を立て(Plan)、計画を実行します(Do)。そして、1ヶ月後に、計画の進捗や成果を確認し、よかった点や悪かった点を明らかにします(Check)。そして、よかった点をよりよくするため、悪かった点を改善するために行動します(Action)。

PDCAのよいところは、非常に有名なため、さまままな人によって改良が行われている点。ゼロから立ち上げたソフトバンクを一代で超大企業へと成長させた、あの孫正義社長も、PDCAを改良した「高速PDCA」を実践していたそうです。孫社長の右腕だった元ソフトバンク社長室長の三木雄信氏は、自身の著書『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA』(ダイヤモンド社、2017年)の中で、高速PDCAのやり方を以下のように説明しています。

  1. 大きな目標を立てる(週、月単位など)
  2. 小さな目標を立てる(1日単位)
  3. 目標達成に有効な方法を複数挙げる
  4. 期間を決めて、すべての方法を同時に試していく
  5. 毎日、目標と結果の差を検証する
  6. 方法を毎日改善する
  7. 最も優れた方法を明らかにする
  8. 最も優れた方法を磨き上げる

それでは、「新人の営業担当者があまり契約を取れない」という状況を想定し、「高速PDCA」を使って問題を解決してみましょう。

  1. 大目標として「1ヶ月5件の契約を取る」を設定する
  2. 小目標として「1日に10人の見込み客と3分以上話をする」を設定する
  3. 小目標達成の方法として「相手の言葉をよく聞き、とにかく会話を続ける」「顧客を分析し、顧客に刺さるであろう自社のサービスを強調する」という2つを挙げる
  4. 2つの方法を1週間試す
  5. 1日の終わりに、それぞれの方法でどれだけ小目標を達成できたかチェックする
  6. それぞれの方法について、よかった点・悪かった点を洗い出し、行動を改善する
  7. 1ヶ月後に、どちらの方法で大目標を達成できたか判断する
  8. 以後、成果が上がった方法を用い、その方法についてさらなる改善を行う

このように高速PDCAを活用することで、ビジネスの目標達成に近づくことができます。PDCAはビジネスの基本。フレームワークを使ったことがないという人は、まずPDCAから始めてみましょう。

ビジネスに便利なフレームワーク3

ビジネスに使えるフレームワーク2:ECRS

ECRSとは、ビジネスにおける業務を改善するのに役立つフレームワークです。ECRSは、Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化)という各視点を指します。

E・C・R・Sという4つの視点で順番に業務を見直すことによって、業務の無駄を発見し、仕事の効率化を実現できますよ。やり方は以下のとおり。

1. Eliminate

4つのうち最も改善効果が高いステップです。現在行なっている業務の中で、やらなくても問題ないと考えられるものを排除します。

決定事項の報告しか行なわれない会議や、ほとんど商品を買ってくれない顧客への営業などが、Eliminateする業務の例として考えられますね。作業ひとつひとつについて「その作業は何のために行なっているのだろうか」「本当にこの作業を行なう必要があるのだろうか」と考えることで、多くの時間と手間を削減できるでしょう。

2. Combine

類似・重複している業務があれば、ひとつにまとめましょう。

たとえば、今まで複数人で行なっていた業務が、1人でも十分こなせる量であれば、1人に任せるほうが効率的ですよね。業務を複数人で分けると、業務の全体像を把握したうえで業務をひとりひとりに割り振ったうえ、業務の進捗状況を全員に逐次確認する手間が生じるからです。

業務をまとめれば、時間と手間を削減することができます。

3. Rearrange

作業の順序や場所、担当者などを変更することによって業務の適正化を計ります。

たとえば、「調べ物」「資料作成」「調べ物」という順番で、3つの業務を依頼されたとしましょう。3つのタスクを、頼まれた順に「調べ物→資料作成→調べ物」とこなすよりも、順番を変えて「2つの調べ物を同時並行→資料作成」としたほうが効率的です。また、部下に調べ物を頼みたいとき、レポート作成中の部下よりも、別件の調べ物を行なっているほかの部下に頼んだほうが、早く終わるかもしれませんよ。

作業の全体量を減らせないのであれば、別の箇所で工夫しましょう。

4. Simplify

作業にかかる時間や移動ルートを短くしたり、手順や仕様を簡略化したりします。

たとえば商品開発において、工程が複雑な制品よりも簡単な制品を作ることにすれば、商品を作るのにかかる時間は単純に少なくなるでしょう。ただし、簡素化することによって業務の意味が失われてしまっては本末転倒なので、やみくもに簡素化を行なうのは注意が必要です。

注意すべき点があるとはいえ、ECRSが業務改善に役立つフレームワークであるのは間違いありません。ビジネスで「仕事の量が多すぎて、人手が全然足りない!」と困っているのであれば、ぜひECRSというフレームワークを試してみてください。

ビジネスに便利なフレームワーク4

ビジネスに使えるフレームワーク3:KPT法

KPT法とは、こなした業務を振り返るのに便利なフレームワークです。ビジネス全体というより、個人の仕事の進め方を反省・分析するのに役立ちます。

KPTというアルファベットが意味するのは、反省するときに考えるべき視点。それぞれKeep(維持していくべきこと)、Problem(問題点)、Try(これからやっていきたいこと)を意味します。つまり、Keepで「うまくできたこと」を、Problemで「うまくできなかったこと」を、Tryで「次はどうするべきか」を考えるのです。

たとえばKPT法を用い、ミーティングにおける自分の行動について振り返ると、以下のようになります。

K:新しい企画を提案できた。ほかの人たちに納得してもらえるよう、論理的で分かりやすい説明を心がけた。
P:自分ばかり話してしまい、ほかの人が発言する時間がなくなってしまった。
T:自分が提案したあと、ほかの人が発言する時間を確保する必要がある。

考えたことは脳内に留めておくのではなく、紙に書いてみましょう。紙に2本の線を引いて、K・P・Tの3つにスペースを分割し、それぞれに書き込むと分かりやすいですよ。

ノートに直接書くのはもちろん、K・P・Tをそれぞれ付箋に書き込み、その付箋をノートに貼る、というやり方もあります。いわゆる「付箋ノート」ですね。

KPT法は、初めての人でも取り入れやすいフレームワーク。あらゆるビジネスパーソンにおすすめです。

ノートと付箋を用い、KPT法を実践した図。ノートの紙面をK・P・Tの3つに分割し、それぞれのスペースに付箋を貼った。

ビジネスに使えるフレームワーク4:マンダラート

マンダラートとは、目標達成のためのフレームワークです。ビジネスにかぎらず、あらゆる場面で利用することができます。メジャーリーグで大活躍している大谷翔平選手が高校生のときに作成していたことで有名ですね。

マンダラートの見た目は独特です。3×3の小マスに分割された大マスが、さらに3×3に9つ並び、計81個ものマスを用います。1つ1つのマスのなかには、目標達成のためにやるべきことを書き込んでいくのです。

マンダラートの作成方法は以下のとおり。

  1. メインとなる「大目標」を中央の小マスに記入する。
  2. 大目標を実現させるために必要な要素を8つ考え、周りの小マスに記入する。これが「中目標」となる。
  3. 8個の中目標を、8つの大マス中央の小マスに書き写す。
  4. 中目標を実現させるために必要な要素を8つ考え、周りのマスに記入する。これが「小目標」となり、最終的に64個の小目標が生まれる。

中目標が「抽象的なテーマ」だとすれば、小目標は「具体的な行動」です。たとえば、中目標が「人に感謝する」であれば、小目標は「何かしてもらったら、必ずありがとうと言う」となど。ほかの例としては、中目標として「英語を習得する」、小目標として「毎日20分、英単語を覚える時間を必ず確保する」など考えられます。

以下は、「100万円貯金する」を大目標として作成されたマンダラートです。ビジネスにも、個人的な目標にも使えるフレームワークですね。

「100万円貯金する」ことを目的に作成したマンダラート。計64個もの小目標で構成されている。

(画像引用元:Study Hacker|目標達成のために「マンダラート」を激しくすすめる理由。72の “やるべきこと” が一気にわかる。

ビジネスに使えるフレームワーク5:5W1H

ここからは、ビジネスに必要なアイデアを発想したり、論理を整理したりする際に便利なフレームワークを紹介します。まずは、5W1Hです。

5W1Hは、アイデア発想に使えるフレームワーク。英語の6つの疑問詞である、What(何)、Who(誰)、When(いつ)、Where(どこ)、Why(なぜ)、How(どのように)で構成されています。

5W1Hの長所は、シンプルでわかりやすいことです。『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』(すばる舎、2017年)の著者である渡邉光太郎氏は、5W1Hの利便性を次のように述べています。

5W1Hという、シンプルな問いのレベルに落とし込むことにより、思考が整理され、本質的な違いが比較しやすくなります。さらに、対極的なアイデアを考えやすくなり、発想や視野を広げることにつながります。単に“行動プラン”を作るときだけでなく、創造的なアイデア発想の場面でも役に立つのです。

(引用元:東洋経済ONLINE|仕事のできない人は「5W1H」の本質を知らない

たとえば、あなたは「定時で退社する」ことを心がけているにもかかわらず、ある日、定時を過ぎても業務が終わらなかったとします。5W1Hを使って原因を考えてみましょう。

What

何の業務をやっていた?

  • データの整理と入力
  • 取引先とのメールのやり取り
  • 新しい企画を考える

Why

どうして時間内に業務が終わらなかったのだろう?

  • ひとつひとつの仕事に予想よりも多くの時間がかかったから
  • 雑用を追加されたから

Who

誰が仕事を増やしたのか?

  • 自分(の仕事上の技術)
  • 上司(から振られる雑用)

When

働く時間を変えれば、時間内に業務を完了できただろうか?

  • 出勤時間を早めれば、自分のパフォーマンスが上がり、仕事が早く終わったかもしれない

Where

働く場所を変えれば、時間内に業務を完了できただろうか?

  • 自分のデスクにいる時間が多いと、仕事を振られる可能性が高い

How

時間内に業務を終えるためには、どうすればよいのか?

  • 自分のパフォーマンスを高める
  • 仕事を振られないように立ち回る

上記のように、必ず6つの視点からの思考を強いられるため、普段は思いつかないことにも気づくことができます。5W1Hはビジネスに便利なフレームワークなのです。

ビジネスに便利なフレームワーク5

ビジネスに使えるフレームワーク6:SCAMPER

SCAMPER(スキャンパー)とは、ビジネスのみならず、さまざまな場面でアイデア発想のために利用できるフレームワークです。以下のS・C・A・M・P・E・Rに対応する7つの問いを使って発想を広げます。

  1. Substitute:代用できないか?
  2. Combine:ほかのものと組み合わせられないか?
  3. Adapt:応用できないか?
  4. Modify/Magnify:修正/拡大できないか?
  5. Put to other uses:転用できないか?
  6. Eliminate/minify:削除/削減できないか?
  7. Reverse/Rearrange:逆転/再編集できないか?

7つの質問で構成される「SCAMPER」は、質よりも量を重視しているので、多数のアイデアが必要とされる状況に最適です。ブレインストーミングのように、アイデアの実現可能性は問題にせず、とにかくアイデアを出すことが求められるときに使ってみてください。

たとえば、新しいカフェのコンセプトをなるべく多く出すよう依頼されたとします。SCAMPERを利用し、「カフェ」について上記の7つの視点から考えてみましょう。質問の回答をまとめたのが以下の表です。

Substitute 牛丼屋のように庶民的なカフェ
Combine 塾とカフェがひとつになった、常駐の講師が勉強を教えてくれるカフェ
Adapt 古民家カフェはすでにメジャーだ
小学校の教室風にデザインされた居酒屋がある
Modify 腰をかがめないと入れないくらい小さなカフェ
インテリアや食器が全て立方体のカフェ
Put to other uses 商談や勉強にカフェを使う人は多い
英会話のレッスンにカフェが使われることもある
Eliminate 食べ物を提供せず、持ち込み可のカフェ
椅子・テーブルのないカフェ
Reverse 客が自分で飲食物を作る

質はともかくとして、11個ものアイデアを出すことができました。これらのアイデアを同僚や上司に見せてアドバイスを受ければ、計画が具体的になっていくでしょう。ビジネスでたくさんのアイデアを求められたときには、SCAMPERというフレームワークを使ってみてください。

ビジネスに便利なフレームワーク6

ビジネスに使えるフレームワーク7:ロジックツリー

ロジックツリーはビジネスなどにおいて問題を分析したり、考えを発展させたりする際に用いるフレームワークです。論理(ロジック)を樹木(ツリー)の枝葉のように展開させていきます。

ロジックツリーを用い、「朝活のための1時間を捻出するにはどうしたらよいのか」について考えてみましょう。まず、「1時間を24時間のうちどこから持ってくるのか」を検討します。すると、「起きる時間を早める」ことでそもそもの活動時間を増やす方法と、活動時間の総量は変えずに「今までやっていた行動をやめ、浮いた時間を朝活にあてる」方法の2パターンが思い浮かびますね。

次に、「起きる時間を早める」にはどうしたらよいのかを考えましょう。すると、「早く寝る」および「寝る時間は変えないが、睡眠の質を上げる」という2つが思い浮かびます。続いて、「早く寝る」にはどうしたらよいのかを引き続き考え、どんどん枝葉を増やしていくのです。

図を作成しながら考えを発展させていくので、頭のなかだけで悩んでいるよりも解決策が思い浮かびやすいですよ。シンプルなので、ぜひ日常生活やビジネスで試してほしいフレームワークです。

ロジックツリーの例。枝葉を増やしながら目的を追求していく。

(画像引用元:Study Hacker|整理されていない思考はただの妄想である。論理力が "なくても" ロジカルに考えられる『ロジックツリー』の技法

ビジネスに使えるフレームワーク8:ピラミッドストラクチャー

ピラミッドストラクチャーとは、ビジネスなどにおいて論理展開を整理するのに使えるフレームワークです。ピラミッドストラクチャーでは、主張の根拠となる要素を散りばめた図を作成し、各要素を線でつなげていきます。できあがる図の印象は、ロジックツリーとほとんど同じです。

しかしながら、ピラミッドストラクチャーとロジックツリーは以下のように異なります。つまり、論理の発展する方向が逆なのです。

ロジックツリー:ひとつの思考を分解する
ピラミッドストラクチャー:複数の根拠がひとつの主張を形成する

たとえば、「フレームワークは便利だ」という主張をもとに、ピラミッドストラクチャーを作成してみましょう。まず、「フレームワークは便利だ」といちばん上に書き、その根拠を1つ下の階層に書きます。「効率的に考えられる」と「種類が多い」という2つの根拠が思い浮かびました。続いて、上記の2つの根拠を支える根拠を書き込みます。説得力ある図が完成するまで繰り返しましょう。

ピラミッドストラクチャーの例。「フレームワークは便利だ」という主張をピラミッドの頂点に置き、その根拠を枝分かれさせていく。

このような論理構成の図を作ったことがないという人は多いのではないでしょうか? 論理を言葉で主張するだけではなく、わかりやすい図を提示すると、強い説得力が生まれますよ。資料の作成やプレゼンテーションなど、ビジネスでたいへん役に立つので、ぜひこのフレームワークを試してみてください。

ビジネスに使えるフレームワーク9:3C分析

ここからは、ビジネスにおけるマーケティング戦略に使えるフレームワークを紹介していきます。

まずは、マーケティング環境を分析できる3C分析。3Cとは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)のこと。それぞれの「C」には以下の要素が当てはまります。3C分析をうまく使えば、事業を進めるべき方向が明らかになりますよ。

Customer:市場の規模・成長性、顧客の特徴・ニーズ・行動パターン
Competitor:競合相手の規模・強み&弱み・製品の特徴・マーケティング戦略
Company:自社の規模・強み弱み・利益率・自社の現有リソース

例として、日本コカ・コーラのミネラルウォーター「い・ろ・は・す」が開発されたときの状況を分析してみましょう。今でこそミネラルウォーター分野の売上で最上位層にいる日本コカ・コーラですが、当時はミネラルウォーター分野に参入していませんでした。炭酸飲料分野などで多くの有名ブランドを抱えていた一方、ミネラルウォーター分野でのシェア確立・発展が急務とされていたそうです。

3C分析の例。「Company」「Customer」「Competitor」という3つの「C」に何が当てはまるのか考える。

上記のような図を作っておくと、社内でのプレゼンテーションなどに便利ですね。普段はテキストのみでビジネス上の資料を作っているという人は、3C分析というフレームワークを利用し、一段階レベルの高い資料作りに挑戦してみましょう。

ビジネスに使えるフレームワーク10:SWOT分析

SWOT分析とは、ビジネスにおいて、自社の外部環境&内部環境を「好ましい側面」と「好ましくない側面」から整理できるフレームワークです。 SWOTとは、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)という4つの分析視点のこと。「環境」と「側面」をそれぞれかけ合わせたものです。

Strengths:好ましい内部環境
Weaknesses:好ましくない内部環境
Opportunities:好ましい外部環境
Threats:好ましくない外部環境

SWOT分析を3C分析と組み合わせることによって、より多くの強み・弱みを分析することができます。たとえば、先ほどの「い・ろ・は・す」についての3C分析の結果をSWOT分析に当てはめると、次のようになります。

SWOT分析の例。自社の強みと弱みを分かりやすくまとめられる。

このようにSWOT分析を活用すれば、状況を整理するだけでなく、説得力のある図表を簡単に作ることもできてしまうのです。ビジネスに大活躍のフレームワークではないでしょうか。

ビジネスに使えるフレームワーク11:ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、ビジネスにおいて業界全体の収益性を決めるとされる「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」という5つの要因から、業界の状況を分析するフレームワークです。ファイブフォース分析の特徴は、ひとつひとつの企業ではなく業界全体を分析すること。5つの要因について問いを立てて、答えを出してみることで、業界にとっての脅威を把握できます。

売り手の交渉力

当該業界に対して原材料を提供する側が、強気な販売を行なう可能性を分析します。売り手の交渉力が強いと、仕入れ値が高止まりするため、当該業界における収益は少なくなります。

  • 売り手の数は市場に対して十分か?
  • 売り手は業界への参入を狙っているか?
  • 売り手が独占している技術はあるのか?

買い手の交渉力

当該業界が生み出す商品・サービスにどれだけの売り値をつけられるかを分析します。買い手(取引相手・消費者)の交渉力が強いと、販売価格を低く設定せざるをえず、当該業界における収益は少なくなります。

  • 買い手の数は市場に対して十分か?
  • 商品の差別化は買い手にとってメリットか?

競争企業間の敵対関係

当該業界内の競争について分析します。業界内の競争が激しいと、自社が突出した利益を出すことが難しくなります。

  • ライバル企業は多いか?
  • ライバルの影響力は自社と同等か?
  • 成長率が鈍く、シェアの奪い合いになっていないか?

新規参入業者の脅威

当該業界への新規参入者による利益損失の可能性を分析します。新規参入が容易な状況であれば、自社に対する競合がどんどん増えるかもしれませんね。

  • 新規参入にかかるコストは高いか?
  • 既存企業は新規参入に対して反発するか?

代替品の脅威

代替品の存在により、当該業界の生む商品・サービスが買い手から選ばれなくなる可能性を分析します。たとえば、フィルムカメラにとっての代替品はスマートフォンです。スマートフォンの登場・普及によって、フィルムカメラはマイナーな存在になってしまいましたね。

  • 代替品のコストパフォーマンスは当該業界よりも高いか?

ファイブフォース分析の図解。自社は「企業間の敵対関係」にさらされると同時に、「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」に取り囲まれている。

あなたの業界において、それぞれの「脅威」に当てはまるものは何でしょうか? ファイブフォース分析というフレームワークを用い、あなたのビジネスにおける脅威を正しく認識し、今後の方針に反映させましょう。

ビジネスに使えるフレームワーク12:VRIO

VRIOは、ビジネスにおいて自社が持っている人材や設備などといった経営資源の競合優位性を分析できるフレームワークです。以下に挙げる4つの要素の分析を行ないます。

  • Value(経済価値)
  • Rarity(希少性)
  • Inimitability(模倣困難性)
  • Organization(組織)

VRIO分析は以下の4つの質問に答える形で行ないます。

V:経営資源をチャンスに利用でき、脅威に適応できるか?
R:どれくらい多くの競合が自社と同等の経営資源を持っているか?
I:同じ経営資源を他社が得るために多くのコストがかかるか?
O:今持っている経営資源をフル活用できる組織体制なのか?

質問と答えを、以下の図のようにまとめてみましょう。

VRIO分析の図解。自社の経営資源がV・R・I・Oをどれだけクリアしているかによって、自社の優位性が決まる。

かなりわかりやすいですよね。VRIO分析というフレームワークを使えば、あなたのビジネスの競合優位性が一目瞭然なのです。

ビジネスに使えるフレームワーク13:バリューチェーン

バリューチェーンは、ビジネスの各工程における価値を分析するためのフレームワークです。事業は原材料の調達からアフターサービスまで、いくつかのステップに分けられますよね。それら各ステップの価値(Value:バリュー)の連鎖(Chain:チェイン)こそが「事業」であることから、バリューチェーンという名前がつけられています。日本では「価値連鎖」と呼ばれることもあるそうです。

バリューチェーンのメリットは、自社製品やサービスの価値をわかりやすく分類できることです。バリューチェーン分析で判明した各ステップの価値に対し、先ほどのVRIO分析を用いることで、ひとつひとつのステップの価値を把握できますよ。

さっそくやってみましょう。購買物流・製造・出荷物流・販売/マーケティング・サービス・調達活動・技術開発・人事労務管理・全般管理という全てのステップを挙げ、自社の強みも書き出します。

そしてVRIO分析と組み合わせ、それぞれの強みにどれだけの競合優位性があるかを判断しましょう。次のような図を作ってみました。

VRIO分析を用いてバリューチェーンを評価する。

バリューチェーンにVRIO分析を使ってみると、自社の特徴がよく把握できますね。2つのフレームワークをうまく使ってビジネスに役立ててみてください。

ビジネスに使えるフレームワーク14:4C分析

4C分析は、ビジネスにおいて自社商品やサービスの分析を行なうためのツールです。3C分析と名前は似ていますが、Cが意味するものが異なるので、使用に適した場面も異なります。4つのCに該当するのは以下のとおり。

  • Customer Value(顧客価値)
  • Cost(顧客にとっての経費)
  • Convenience(顧客利便性)
  • Communication(顧客とのコミュニケーション)

4C分析のメリットは、消費者の目線に立って製品やサービスの開発・改善を行なえることです。それぞれのCに当てはまる自社製品・サービスの特徴を書き出してみることによって、自社製品がどのような顧客に対して、どのようなメリットを与えられるのかを整理し、確認することができます。

たとえば、新しいチョコレートを開発する場面を想定してみましょう。まずはテーマを決め、4つのCについて考えてみます。

テーマ:頑張った自分へのご褒美
Customer Value:ほかのチョコレートよりもおいしい
Cost:ほかのお菓子類よりも少し高価だが、日々の小遣いを少し節約すれば購入できる
Convenience:コンビニで買える
Communication:やや高級感のあるパッケージで、ぜい沢さを演出する

4つの「C」を意識することで、テーマが一貫した商品を考え出すことができましたね。ビジネスにおいて商品や企画のコンセプトを考えるとき、4C分析というフレームワークを使ってみてください。

ビジネスに便利なフレームワーク7

ビジネスに使えるフレームワーク15:STP分析

STP分析は、ビジネスのマーケティング戦略における基礎的フレームワークです。自社商品・サービスの、市場における優位な立ち位置を探し出すのに有効です。Segmentation、Targeting、Positioningという3つのステップで構成されています。

では、「ハンドクリーム」をテーマに、簡単なSTP分析をやってみましょう。

Segmentation

まずはじめに、顧客・市場を分類します。ユーザーのパターンやニーズを、思いつくかぎり挙げてみましょう。

  • 仕事や家事によるあかぎれを防ぐため、保湿効果の強いものを一年中使っている
  • 手を白くなめらかに保つため、美容効果の高いものを一年中使っている
  • 手がカサカサにならないよう、安くて普通のものをたまに使う
  • 手が乾燥しないよう、冬だけハンドクリームを使う
  • 乾燥は特に気にならないので、自分でハンドクリームは買わない
  • かわいいデザインのものを選んで友人などにプレゼントするのが好き
  • 香りのよいハンドクリームを使ってリラックスしたい
  • 保湿だけ求めているので、香りや華やかなデザインは不要

ほかにもたくさんありそうですね。顧客のニーズや特徴を想定し、顧客のタイプを細分化してみましょう。

Targeting

続いて、どのタイプの顧客をターゲットにしたら最も多くの利益が生まれるか考えます。

利益を上げるには、薄利多売よりも、ハンドクリームの単価を高くしたほうがよさそうですね。単価が高くても買い手が納得できるよう、保湿以外の要素も盛り込み、パッケージのデザインを高級感のあるものにしてはどうでしょうか。

これらの条件に当てはまりそうな顧客といえば……「手を白くなめらかに保つため、美容効果の高いものを一年中使っている」ような、美意識の高い女性・男性ではないでしょうか。綺麗なパッケージを写真に撮ってSNS上に掲載してくれるかもしれません。そうしたら、商品の認知が勝手に広がりますね。インスタグラムによるマーケティングが効果を発揮しそうです。

Positioning

最後に、商品の特徴がよく伝わるよう、自社の立ち位置や商品のアピール方法を明確にします。上記のハンドクリームの場合、以下のようなアピールポイントを作り出せそうですね。

  • 美白効果がある
  • 冬でも充分な保湿力を発揮する一方、夏でもベタつかない
  • 貴重な植物から採取した高級美容エキスを配合
  • 目を奪われるほどのアーティスティックなパッケージ
  • 人気タレントがプライベートで愛用している

「一年中ハンドクリームを欠かさない、美意識の高い人向け」という立ち位置を明確に打ち出した格好です。

Segmentation・Targeting・Positioningを通して、効果的なマーケティングを行えることが分かりましたね。ぜひSTP分析というフレームワークにチャレンジし、ビジネスでの成功を目指しましょう。

ビジネスに便利なフレームワーク7

ビジネスに使えるフレームワーク16:AIDMA

AIDMAとは、ビジネスにおいて顧客の購買における意思決定を分析するフレームワークです。顧客の購買プロセスである、Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→ Action(行動)を順番に分析するのです。

まず顧客は、テレビのCMやインターネットなどの広告を通して、商品やサービスを認知します(Attension)。続いて、顧客はそのサービスや商品が好きかどうか(Interest)、必要かどうかを判断し(Desire)、必要なものを記憶します(Memory)。最後に、購入の意思が固まったら、顧客は購買行動を取るのです(Action)。

顧客がAIDMAのどの段階にいるのかを理解することで、マーケティングにおいて適切なアプローチを取ることができます。たとえば、顧客が「ああ、今思い出した。その商品はなんとなくよさそうだったわ」と発言した場合、その商品はAttensionやInteretstをクリアしているけれども、Memoryまではたどり着いていないことになります。したがって、Desireの段階をクリアできるように、その商品が顧客にとって必要であると分かるようなマーケティングを展開するべきだ、とわかるのです。

AIDMAのメリットは、住宅や自動車など、顧客が商材を認知してから購入までの期間が長かったり、 購入の検討を繰り返し行なったりする商材について、効果的な分析ができることです。もしあなたがビジネスで困っているなら、AIDMAというフレームワークを使ってみてはいかがでしょうか。

ビジネスに便利なフレームワーク9

ビジネスに使えるフレームワーク17:AISAS

AISASは、AIDMAをインターネット上の購買活動に沿うように改善したものです。顧客の購買プロセスである、Attention(認知・注意)、Interest(興味・関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)から順に、それぞれのイニシャルを取って名づけられています。

まず顧客は、テレビのCMやインターネット上の広告を通して商品やサービスを認知します(Attension)。続いて、その商品に興味があれば(Interest)、顧客は検索エンジンやSNSなどでその商品を検索します(Search)。購入の意思が固まったら、顧客は購買行動を取り(Action)、買った商品に満足したらSNSで商品の情報を発信し、ほかのユーザーと共有するのです(Share)。商品がSNSで共有されると、新たな顧客のAttensionが生まれます。

AIDMAと同じく、顧客がAISASのどの段階にいるのかを理解することで、マーケティングにおいて適切なアプローチを取ることができます。たとえば、顧客が商品を買っているのにも関わらず、SNSで共有してくれない場合、その商品には共有しにくい要因があるのかもしれません。商品をSNSで共有したくなるようなアプローチをとれば、共有によって新たなAttensionが生まれ、商品の販売数が増えそうですね。

あなたがビジネスで扱っている商品・サービスをSNSで拡散してほしければ、AISASというフレームワークを意識してみてください。

ビジネスに便利なフレームワーク10

ビジネスに使えるフレームワーク18:AARRR

AARRRはビジネスにおいて、サービスの利用状況を5つの段階で整理し、どの段階でユーザーが離れているのかを発見するためのフレームワークです。AARRRの5段階とは、次の5ステップを指します。

  1. Acquisition(獲得)
    ユーザーがサービスに登録する。
  2. Activation(活性化)
    ユーザーが実際にサービスを使用しはじめる。
  3. Retension(継続)
    ユーザーがサービスを利用しつづける。
  4. Referral(紹介)
    ユーザーがサービスをほかの人に紹介する。
  5. Revenue(収益)
    収益が発生する。

このようにAARRRを用いることで、サービスがどうして収益につながらないのかを考えやすくなるため、商品・サービスの改善につなげられます。AARRRというフレームワークを用いれば、あなたのビジネスに何が足りないのか発見しやすくなるわけですね。

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ビジネスに使えるフレームワークには多くの種類があります。全てを理解して使いこなすのは大変ですが、仕事に役立つのは間違いありません。紹介した18のフレームワークのうち、気になったもの・やりやすそうなものを試してみてください。

(参考)
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【ライタープロフィール】
村瀬裕一
早稲田大学大学院先進理工学研究科所属。松本深志高校出身。日々、細胞の微小管について研究をしている。趣味はゲーム・カメラ・旅行など。

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