仕事が複雑化するいまの時代、キャリアアップにはパーソナルブランディング戦略が欠かせないかもしれません。パーソナルブランディングとは、自分の強みや専門性を明確にし、効果的に発信していく活動のことです。これにより、自分の価値が明確になり、他者との差別化が可能となるでしょう。
同じように仕事をしていても、キャリアが飛躍する人と停滞する人のあいだには、そうした戦略の違いがあるのではないでしょうか。
本記事では、キャリアアップを目指しながらも、パーソナルブランディング戦略を "まだ行なっていない" ビジネスパーソンに向けて、ちょっとしたコツを紹介します。
パーソナルブランディングの重要性
ハーバード・ビジネス・スクール・オンラインのマーケティングコーディネーターである Catherine Cote 氏は、パーソナルブランディングに以下のメリットがあると伝えています。*1
- 自分のスキルに合うプロジェクトや仕事のチャンスを引き寄せる
- 自分の強みを広めることができ、それらを求められるようになる
- 共通の関心ごとを持つ人々とつながることができる
つまり、ビジネスパーソンが自分の専門性や価値観を効果的に発信することで、業界内や職場内での認知度を高め、次のキャリアチャンスにつなげられるのです。
同じように仕事をしていても、「キャリアを飛躍させる人」と「させない人」がいる背景には、そうした戦略の違いが存在します。「キャリアを飛躍させる人」は、SNSやブログ、所属する業界のイベントなどを通じて、自分を効果的にアピールしているのが特徴的です。加えて、自分というブランドを、人々がどう見ているのかを常に意識し、戦略的に行動する傾向があります。
一方で、そうした活動をまったく行なわないまま日々の業務に追われていると、受動的な姿勢でキャリアを進めることになってしまうでしょう。この違いこそが、キャリアの成長速度に大きな差を生み出す要因となっているのです。
パーソナルブランディングのステップ
前項の内容をふまえて考えると、キャリアを飛躍させる人は、自分の強みを正確に把握し、とても上手に伝えているのではないでしょうか。それを、さらにわかりやすく、身近なイメージで表現している識者がいます。
『自分1人、1日でできるパーソナルブランディング』(同文舘出版,2018)を著したブランディングウェブ戦略研究家・株式会社ウェブエイト 代表取締役社長の草間淳哉氏は、パーソナルブランディングを「魅力的なあなたっぽさ創造活動」と定義しているそうです。
その草間氏が「パーソナルブランディングの8つのステップ」として挙げているのは、自分を知ること、自分にとってよいクライアント像を描き出すこと、ライバルの洗い出し、自分軸をつくり、ブログやSNSなどで発信・広げていくことなどです。*2
それらを参考にしながら、今回は思いきって以下3つの超基本的なステップに絞ってみました。
- 自己分析
- 誰に向けるか
- 何を発信するか
これなら、自己PRが苦手な人でも、忙しいビジネスパーソンでも、いますぐチャレンジできるのではないでしょうか。詳しく説明しましょう。
1. 自己分析
前出の Cote 氏は、ハーバード・ビジネス・スクール経営学上級講師の Jill Avery 氏と、同スクール エグゼクティブフェローの Rachel Greenwald 氏らの研究を参考に、パーソナルブランドの構築方法を紹介しています。
その一番最初に掲げられているのが、自分の価値観や目標などを特定するための6つの自問です。それらを参考に、最も重要だと感じた内容を3つの自問でまとめてみました。*1
- 私は何を大切にしているのか?(自分の価値観を明らかにする)
- 人々に私の何を知ってほしいか?(自分が強調したい特徴や能力を明確にする)
- 他者に対しどのような価値を提供できるか?(どうすれば自分の強みで人々に貢献できるのかを考える)
たとえば、その答えの例は、
- スピード力(あるいは丁寧さ)
- 情報収集力やデータ分析スキル(あるいは要約力と文章力)
- 一歩先をいく新しい発想(あるいは人々に寄り添った情報発信)
といった具合でしょうか。
もちろん、この答えは細かければ細かいほどより詳しい自己分析になるはず。たとえザックリしたものでも、自分の強みや価値観を改めて見つめ直す、いい機会にはなるはずです。
2. 誰に向けるか
次はターゲットの特定です。 自分のメッセージを届けたい相手が誰なのかを明確にすることで、より効果的なアプローチが可能になるのではないでしょうか。また、自分のメッセージが届く範囲を狭めると、その影響が濃くなる――つまり、影響力を高めることができるはずです。
ちなみに、先の草間氏によるパーソナルブランディングの8つのステップによれば、これまでの顧客を “よい・平均・悪い” に分類し、自分にとってよい顧客像を描き出すといいそうです。*2
3. 何を発信するか
そして、パーソナルブランディングでは、メッセージの一貫性も重要となるはずです。それが他者からの信頼を築き、ブランド価値を高めるからです。
ひとつの例を挙げましょう。電機メーカーのニデック株式会社(旧:日本電産株式会社)の創業者・永守重信氏は、猛烈な勉強家で知られているといいます。*3
その同社の企業理念のページには、企業の価値観として「情熱、熱意、執念」「知的ハードワーキング」「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」といった三大精神が挙げられています。*4
「知的ハードワーキング」とはつまり「猛烈な勉強」のこと*3。この一貫性は、個人が何を発信するか考える際にも参考になるはずです。
たとえば、論理的思考力を自分の強みとしてとらえているならば、何においても分析を行ない、論理的に結論を導き出すアプローチを、一貫して続けるのです。
そうすれば自ずと、論理的思考力に長けた人というパーソナルブランドイメージが広まってくれるはずです。
パーソナルとセルフブランディング
最後に、ブランディングに関わるふたつの言葉について触れておきましょう。
パーソナルブランディングのほかに、セルフブランディングという言葉があります。これらは、前者が組織に属する一個人に対するもの、後者が組織に属さない一個人に対するものと説明されることが少なくありません。
しかし、本記事ではいずれも個人が自分の価値や強み、独自性を明確にして、それらを他者に伝えるための手段としてとらえています。そのうえで、パーソナルブランディングという言葉で統一しました。
どんな言葉で表現、解釈するにしても、この実践があなたのキャリアアップに役立つことは間違いないはずです。
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確固たるブランドイメージを築くことができれば、いまのような激動の時代でも、キャリアを飛躍させていくことができるでしょう。今回紹介したのは、パーソナルブランディングのための非常に簡単なステップと、ちょっとしたコツですが、手始めには丁度いいはず。参考にしてみてください。
*1 Harvard Business School Online|PERSONAL BRANDING: WHAT IT IS & WHY IT MATTERS
*2 CBOラボ|パーソナルブランディングとは何か~その実践ステップを学ぶ~
*3 PHP研究所|「孫正義氏の伝説」に心を動かされたJR九州社長
*4 ニデック株式会社|企業理念
Shinya
大学では経済学を専攻。集中力があり、長時間、長期間にわたって勉強し続けることが得意。現在は、資格試験に向けて効率的な勉強法の情報を収集中。心理学にも関心があり、コミュニケーション力の向上を目指してさまざまなメソッドを学び、実践している。