おやつや夜食は勉強のおともに欠かせません。小腹が空いたときや気分転換したいとき、お菓子をつまむ人は多いでしょう。
おやつには、勉強のパフォーマンスを高めてくれるものがあります。砂糖やブドウ糖などの糖質は脳のエネルギーになりますし、チョコレートの原料であるカカオには集中力アップの効果が期待できるでしょう。ガムは脳を刺激してくれます。
せっかくなら、勉強に適したおやつを選んでみては? 勉強中の間食としておやつを選ぶポイントと、具体的なおすすめおやつをご紹介します。
勉強中のおやつを選ぶポイント
勉強中のおやつは、以下の4点を意識して選びましょう。
ブドウ糖を補給できる
神経内科医の米山公啓氏によると、ブドウ糖は脳のエネルギーになる唯一の栄養素。不足すると脳の働きが悪くなり、勉強のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。なんだか頭が働かないと感じたときは、ブドウ糖を補給してみましょう。
また、ブドウ糖は神経伝達物質「アセチルコリン」の生成を促します。米山氏によると、アセチルコリンは脳の “潤滑油”。アセチルコリンが増えれば、記憶力や注意力の向上が期待できます。
血糖値が上がりにくい
ブドウ糖は脳のエネルギーとして欠かせないとはいえ、とりすぎてもいけません。
心療内科医の永田勝太郎氏によれば、食事で血糖値が急上昇すると、インスリンが大量に分泌されて血糖値が急降下するそう。血糖値が下がるというのは、血液中のブドウ糖が減るということですから、脳の働きが鈍り、眠気や疲労感に襲われてしまいます。
神経内科医の長谷川嘉哉氏によれば、血糖値が上がりやすい食べ物と上がりにくい食べ物があるそう。勉強の際は、脳に適度なエネルギーを補給でき、しかも血糖値を上げすぎないおやつを選ぶ必要があるのです。
「勉強に効く」成分が入っている
せっかくなら、勉強のパフォーマンス向上が期待できるおやつを選びたいもの。たとえば、チョコレートには集中力を高める「カカオポリフェノール」や、リラックス効果がある「テオブロミン」が含まれています。チョコレートを食べると集中できるように感じる理由は、このふたつの成分なのです。
そのほか、脳の健康維持に欠かせない「オメガ3脂肪酸」、眼精疲労に効く「アントシアニン」、生命活動に欠かせないアミノ酸「タウリン」など、さまざまな成分をおやつで摂取できます。
歯応えがある
歯応えも重要です。医学研究者の小野塚實氏によれば、よくかむことで脳が刺激され、集中力や判断力などをつかさどる「前頭前野」や、記憶力をつかさどる「海馬」などの部位が活性化するそう。ガムのように歯応えのあるものをかめば、学習効率を高められる可能性があるのです。
また、前出の長谷川氏によれば、かむことで「セロトニン」というホルモンが分泌され、精神のリラックスにもつながるのだとか。頭がうまく働かないときや気分が落ち着かないときは、ガムやグミなどかみ応えのあるおやつを食べることで、勉強のパフォーマンスが上がるかもしれません。
勉強中におすすめのおやつ5選
では、具体的にどんなおやつが勉強中に適しているのでしょう? 5つの例を紹介します。
バナナチップス
1つめのおすすめは、バナナチップスです。
管理栄養士の沼津りえ氏によると、バナナにはブドウ糖・果糖・ショ糖などさまざまな糖がバランスよく含まれているそう。それぞれの糖は、消化・吸収の速度が異なります。そのため、血糖値の上昇が緩やかなのです。
生のバナナだと、1本丸ごと食べきる必要がありますが、チップスなら食べたい量だけ食べられますし、もち運びや保存に便利。糖分補給用に常備したいおやつです。
ただし、メイプルシロップや砂糖などでコーティングされているバナナチップスでは、糖分過多の恐れがあります。原材料をパッケージで確認してから購入しましょう。
◆バナナチップスのメリット
- 糖分を補給できる
- 血糖値が急上昇しにくい
- 食べたいぶんだけ食べられる
- もち運び・保存に便利
ドライフルーツ
バナナチップス以外のドライフルーツも、勉強のおやつに適しています。
ドライフルーツには、ブドウ糖のほか、ビタミン・ミネラル・食物繊維などもたっぷり。管理栄養士の岡本夏子氏によると、ブルーベリーには眼精疲労に効くアントシアニンが、マンゴーには神経伝達を円滑にするビタミンB群が、イチジクには造血に欠かせない鉄分が豊富だそうです。
生の果物に比べ、ドライフルーツは日持ちするし、いつでも手軽に食べられます。多種多様な果物を同時に食べられるのも、ドライフルーツならではのメリットでしょう。
さらに、生の状態よりドライのほうが増える栄養素もあります。岡本氏によると、イチジクのドライフルーツが含む鉄分は、生の約5倍だそう。ドライフルーツは、おやつとしておいしいだけでなく、栄養の面でも優れているのです。
◆ドライフルーツのメリット
- ブドウ糖を補給できる
- 栄養が豊富
- もち運び・保存に便利
くるみ
3つめのおすすめは、くるみです。
医師の河埜玲子氏によると、くるみにはオメガ3脂肪酸が豊富だそう。オメガ3脂肪酸は、脳の機能維持や発達に欠かせないものの、体内で合成できないため、食事で摂取する必要があります。みなさんご存じの「DHA」は、オメガ3脂肪酸の一種です。
くるみを含むナッツ類には、ビタミンやミネラルなどの栄養成分も豊富です。少量でも満足感が得られ、糖分が控えめなので、勉強中のおやつとして優秀だと言えます。
◆くるみのメリット
- オメガ3脂肪酸が豊富
- 栄養が豊富
- 少量でも満足感を得られる
- 糖分が控えめ
ビターチョコレート
4つめのおすすめは、ビターチョコレートです。
チョコレートが含むカカオポリフェノールは、血流量を増やし、脳を活性化させます。株式会社明治などによる2014年の共同研究では、被験者にカカオ72%のチョコレートを4週間食べさせたところ、脳の血流量の増加や、脳の発育に欠かせないタンパク質「BDNF」値の上昇が確認されたそうです。
苦味成分のテオブロミンも、チョコレートならではの栄養素。“幸せホルモン” と呼ばれるセロトニンの分泌を増やし、気分をリラックスさせてくれます。
チョコレートにはいくつか種類があります。勉強中は、血糖値が急上昇しにくい「ビターチョコレート」や「ハイカカオチョコレート」がいいでしょう。
◆ビターチョコレートのメリット
- 脳が活性化する
- 脳を育てるタンパク質(BDNF)が増える
- リラックスできる
- 糖分が控えめ
ガム
5つめのおすすめは、ガムです。ガムのように歯応えのあるものをかむと、脳が刺激され、集中力や記憶力を高める効果が期待できます。
2009年の『日本健康医学会雑誌』に掲載された論文では、ガムは疲労感を軽減してくれることもわかりました。被験者を2グループに分けて計算問題を解かせたところ、ガムをかみながら解いたグル―プのほうが、作業後の身体疲労・精神疲労が低い傾向があったのです。
同論文は、疲労感が軽減した理由を、かむことのリラックス効果やミントの香りに求めました。ガムをかむ刺激やミントの風味は、眠気覚ましにも最適です。睡魔に負けそうなときや、気分をリフレッシュしたいときは、特にミントの強いガムを選ぶといいでしょう。
ガムが苦手なら、スルメのようにかみ応えがある食品でも、かむことによるメリットを得られます。スルメは、滋養強壮効果のあるタウリンやアルギニン、DHAなどを含んでいるので、栄養価も抜群です。
◆ガムのメリット
- 脳が活性化する
- 集中力や記憶力が高まる
- リラックスできる
- 疲労感が軽減する
勉強中に糖分が欲しくなったら、ご紹介した5種類のおやつを試してみてください。
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勉強中におやつを食べるなら、糖分が多いものはなるべく避け、パフォーマンスを高めてくれそうなものを選びましょう。勉強・作業中にお菓子が欠かせない方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
ITmedia ビジネスオンライン|ビジネスパーソンの味方、“ブドウ糖”をうまくとる方法
幻冬舎ゴールドオンライン|医師「放置しないでほしい」食後に眠い…は脳の危険信号だった
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カリフォルニア くるみ協会 公式サイト|合格来る実(くるみ)「ブレインフード」くるみで脳活!
みんなの健康チョコライフ|チョコレート摂取による健康効果に関する実証研究 最終報告
あいち産業科学技術総合センター|カカオ製品の生理効果
佐々木晶世・佐久間夕美子・叶谷由佳・佐藤千史(2009),「ガム咀嚼が作業効率と疲労に与える影響に関する研究」, 日本健康医学会雑誌, 18巻, 1号, pp.24-30.
ダイヤモンド・オンライン|スルメは「噛む脳トレ」、記憶力プラス精力もアップ
北海道松前町|するめは健康食品
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。