コンセプトワークとは? 3ステップで誰にでもできる!

コンセプトワークとは1

コンセプトワークとは、新しくデザインするプロダクトの「コンセプト(概念)」を言葉で明確に表現する作業のこと。設計図がなければ家が建てられないのと同様、新しい商品やWebサイトを企画するにあたり、コンセプトワークは必要不可欠なプロセスです。

今回は、コンセプトワークを大きく3つのステップに分けて詳しく解説していきます。自社で新たな企画・アイディアを求められているものの、どこから手をつけていいかわからない、少しでも価値の高いものをつくりたいと思っている方は、ぜひこの記事を読みながらコンセプトワークにチャレンジしてください。

コンセプトワークとは

コンセプトワークとは、製品の企画開発をするとき、ブランドを設立するとき、会社を立ち上げるときなど、とにかく「何か新しいものをつくろう」というときに行います。

たとえば、あなたはある喫茶店のスタッフで、秋の新メニューを開発することになったとしましょう。そのとき、いきなり試作品を作りはじめたりはしないはず。まずは、「どんな新メニューがいいかな」と考え、十分にイメージが固まってから開発に着手することでしょう。この、「どんなメニューがあればいいかな」と考える段階こそが、コンセプトワークなのです。

そもそも「コンセプト」とは、商品・サービスの大枠から細部まで、すべてを決定する「軸」となるもの。たとえば、「ほっこりと温まるようなメニューを作りたい」というコンセプトが決まっていれば、「身体を温めるためにはスパイスの効いた料理がいいんじゃないか」「目にも温かな、赤色のトマトスープを使ってはどうか」など、必然的にメニューの方向性が定まりますよね。

反対に、コンセプトのつくり込みが甘かったり曖昧だったりする商品・サービスは、市場価値の低い中途半端なものです。顧客にとって魅力的に映らず、他社の商品・サービスに埋もれてしまうため、市場で生き残ることは困難でしょう。 市場で成功し、長く顧客に愛される商品・サービスを生み出すために、十分な時間をかけてコンセプトワークに取り組むことが必要なのです。

コンセプトワークとは2

コンセプトワークの手順1:3C分析

では、コンセプトワークの具体的な手順を解説していきます。

まずは「3C分析」というフレームワークを用い、「どんなものをつくれば市場に受け入れられるか」を考えていきましょう。3Cとは、Customer、Competitor、Companyの頭文字。3つの要素を分析することで、コンセプトワークに必要な情報を抜け漏れなく集められるのです。

  • Customer(市場・顧客):市場ではどんなものが求められているのか?
  • Competitor(競合):どうすれば競合に勝てるのか?
  • Company(自社):自社の強みは何か?

「コンセプトを生み出す」というのは、「つくりたいものを好き勝手に思い描く」こととは違います。コンセプトワークの目的は「市場価値の高い商品・サービスをつくる」ことだからです。いくらこだわってコンセプトをつくっても、市場に受け入れられないものであったならば、ビジネスとしては失敗ですよね。そのため、コンセプトワークの最初のステップとして3C分析が肝心なのです。

以下、少し長くなりますが、3Cをひとつひとつ詳しく分析する方法をみていきましょう。

Customer(市場・顧客)の分析

市場分析は、すべての戦略を立てる上での大前提です。自分がどんな顧客をターゲットに戦うのかを定義しないと、顧客を奪い合う競合が誰なのかもわかりませんし、競合と自社を比較することもできません。

市場分析としてやるべきことは、「市場規模の把握」「市場ニーズの把握」の2つです。

市場規模の把握

市場規模を把握するには、財務省や経済産業省などが発表している資料をインターネット上でチェックしましょう。市場規模とは一般的に、一定の市場における1年間の売上総額です。それほど大きくない「ニッチ市場」の場合、矢野経済研究所などの民間調査会社や、各業界団体が発表している資料を探しましょう。

どうしても資料が見つからない場合、てがかりとなる情報をもとに概算するという方法があります。市場規模を概算する方法は以下の2つ。

  1. 特定一社の売上とシェアから概算
    ある企業における前年の売上が1,000億円・市場シェアが40%だったとします。1,000億×100/40=2,500億円が市場規模です。
  2. 市場上位企業の売上高から概算
    一社あたりのシェアがわからない場合、市場の上位を占めている企業の売上高から概算します。上位5社の売上高の総和が1兆円で、5社で市場の80%を占めているすると、1兆×100/80=1兆2,500億円が市場規模です。

市場ニーズの把握

市場ニーズを把握する最も手軽な方法は、インターネットのサーチエンジンにおける「検索ボリューム」を参考にすることです。Googleの「キーワードプランナー」およびYahoo!の「キーワードアドバイスツール」というツールを使うと、それぞれのサーチエンジンにおいて、どんなキーワードがどのくらいの頻度で検索されているのか調べることができます。

たとえば、「喫茶店 オムライス」というキーワードの検索回数が多ければ、「喫茶店でオムライスを食べたいと望んでいる人がたくさんいるのだろう」と推測できますよね。検索ボリュームを調べることによって、隠れたニーズを察知できるのです。

各ツールの使い方を簡単にご紹介します。

キーワードプランナー

  1. キーワードプランナー」のページを開く。
  2. 「キーワードプランナーに移動」をクリック。
  3. 「新しいGOOGLE広告のアカウント」をクリック。
  4. 画面の指示に従い、アカウントを取得。
  5. 「キーワードプランナー」を呼び出す。
  6. 「新しいキーワードを見つける」で自社のビジネスジャンルを入力すると、関連キーワードの検索ボリュームが表示される。

キーワードアドバイスツール

  1. Yahoo!プロモーション広告」のページを開く。
  2. 「広告のお申し込み」をクリック。
  3. 画面の指示に従い、Yahoo! JAPANビジネスIDを取得。
  4. 「キーワードアドバイスツール」を呼び出す。
  5. 任意のキーワードを入力して「拡張する」にチェックを入れると、関連キーワードの検索ボリュームが表示される。

市場ニーズを知るには、ほかにも以下のような方法があります。

  • 親しい顧客に新製品の感想を尋ねる。
  • キャンペーンを行い、新製品のモニターを募集する。
  • 調査会社を通じ、アンケート調査を行う。

Competitor(競合)の分析

同じ市場で競合している企業を洗い出し、競合企業のシェアや強み、特徴などを分析しましょう。

競合の特定

まずは、競合企業を特定します。「わざわざ特定するまでもないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、自社と類似の商品を提供しているわかりやすい「直接競合」だけでなく、他業種でも実質的な競合関係にある「間接競合」も存在するため、どの企業が競合なのかをしっかり見極める必要があるのです。

たとえば、喫茶店の場合、直接競合としては「スターバックス」や「ドトール」など、ほかのカフェが挙げられますね。しかし、喫茶店を「読書や作業をしながらくつろげるスペース」と考えた場合、レンタルオフィスやファミリーレストラン、図書館などが間接競合として浮上します。

また、「モーニングを提供する店」という視点だと、牛丼屋やファストフード店も間接競合になります。顧客のニーズをどう捉えるかによって、間接競合が変わるのです。

競合の分析

競合を特定したら、分析を始めていきます。まずは市場全体を眺め、それぞれの競合企業が占める地位を確認しましょう。

競合の構図をつかむには「コトラーの競争地位戦略」という理論が便利。コトラーの競争地位戦略では、競合企業が4種類に分類されます。

  • リーダー:業界トップの企業。規模や資金力、ブランド力など、ほとんどの面で他社に勝る。
  • チャレンジャー:リーダーの地位を狙う、業界2番手以下の企業。
  • ニッチャー:一部の顧客の特殊な需要に特化している企業。
  • フォロワー:リーダーやチャレンジャーの模倣をする下位企業。

市場の構図をつかんだら、競合企業を個別に分析していきます。それぞれ競合企業について、「対象ニーズ」「提供価値」「マーケティング戦略」「オペレーション戦略」「リソース」という5項目を洗い出してみましょう。以下は、あるカフェチェーンを分析してみた例です。

  1. 対象ニーズ :どのようなニーズに対応しているか?
    (例)作業にも使えるおしゃれなカフェスペース
  2. 提供価値 :どのような価値を提供しているか?
    (例)オーガニックな雰囲気の心安らぐ空間
  3. マーケティング戦略 :どのようなマーケティング戦略をとっているか?
    (例)「スターバックス」の模倣をしつつも、競合店がない郊外に出店
  4. オペレーション戦略 :どのようなオペレーション戦略をとっているか?
    (例)調理未経験のスタッフでも簡単に作れるメニュー
  5. リソース :オペレーションはどのようなリソースに支えられているのか?
    (例)加熱するだけで完成する、調理済みの冷凍メニュー

Company(自社)

自社についても「対象ニーズ」「提供価値」「マーケティング戦略」「オペレーション戦略」「リソース」の5項目を評価(あるいは計画)しましょう。

  1. 対象ニーズ :どのようなニーズに対応していくか?
    (例)おいしいコーヒーを飲みながらくつろぎたい
  2. 提供価値 :どのような価値を提供していくか?
    (例)豆と焙煎(ばいせん)方法にこだわったコーヒー
  3. マーケティング戦略 :どのようなマーケティング戦略をとっていくか?
    (例)昔ながらの雰囲気の喫茶店が好きな顧客向けのニッチ戦略
  4. オペレーション戦略 :どのようなオペレーション戦略をとっていくか?
    (例)アルバイトのスタッフでもおいしいコーヒーが簡単に淹れられる仕組み
  5. リソース :オペレーションのため、どのようなリソースを用意するか?
    (例)自家焙煎の専用機を導入

競合他社の分析結果と比較しつつ、「このポイントはうちが優れている」「こうすれば他社に太刀打ちできそう」と勝算が見えれば、コンセプトの方向性が固まってくるでしょう。

現段階で強みが見当たらなかったとしても、心配ありません。競合分析の結果から、他社がすくいきれていない顧客のニーズや他社の弱点が見つかれば、その弱点を突くような戦略を立てればいいのです。競合が「若者向けの今どき風なカフェ」ばかりだとすれば、「逆に、中高年層を対象にした昔ながらの雰囲気の店づくりをすれば、人気が出るのではないか?」と推論できます。

3C分析によって市場・競合・自社の現状がわかったら、土台づくりは完了です。いよいよ、コンセプトワークが本格的に始まります。

コンセプトワークとは3

コンセプトワークの手順2:商品・サービスの抽象化

コンセプトワークにおける2番目のステップは「抽象化」。抽象化とは、制作中の商品・サービスをさまざまな角度から見つめ直し、どの面をコンセプトとして活かすか考えることです。

たとえば、「喫茶店」の機能や特徴を抽象的に表すと、どうなりますか? 真っ先に思い浮かぶのは「コーヒーを飲む場所」でしょう。しかし、「くつろぐ場所」「読書をする場所」などもまた、喫茶店の側面ですね。以下の例のように、あなたが生み出そうとしている商品・サービスの抽象的な特徴を、できるだけ多く挙げてみましょう。

  • コーヒーを飲む場所
  • くつろぐ場所
  • 店員のサービスを受ける場所
  • 読書する場所
  • 作業する場所
  • 朝食をとる場所
  • ランチを食べる場所 etc...

上記のうち「くつろぐ場所」をコンセプトとして採用するとしましょう。「今どきのコーヒーチェーンは騒がしくて落ち着かないなあ」と感じている中高年層の需要に合致するかもしれません。あるいは、「読書する場所」に着目し、顧客が手に取れる本や雑誌を豊富に置く、なども考えられますね。

抽象化によって生まれた無数の切り口からどれを選ぶかは、3C分析によって立てた市場戦略に従い決めましょう。抽象化によって商品・サービスの方向性が決まったら、コンセプトワークの完了まであと少しです。

コンセプトワークとは4

コンセプトワークの手順3:形容詞+名詞で言語化

コンセプトワークの最後は、これまでの分析からわかったことを「形容詞+名詞」のかたちで言語化します。英国の電機メーカー・ダイソンの有名な例「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」のように、明確なコンセプトを打ち出しましょう。「形容詞」の部分で商品の魅力を伝え、「名詞」の部分に商品・サービスの名称を入れます。

喫茶店を例にし、コンセプトを決めていきましょう。

3C分析の結果:「昔ながらの雰囲気」で中高年層を狙う。
抽象化の結果:「読書する場所」を前面に押し出し、店内に本や雑誌を置く。

上記の要素をまとめた結果、「本と出会える、昔ながらの喫茶店」というコンセプトができ上がりました。これでコンセプトワークは完了です。

コンセプトワークを通じて生まれたコンセプトを常に意識しつつ、「どんな本を置こう?」「どうすればより“昔ながら”と感じてもらえるだろう?」など、商品・サービスの細かい部分を設計していくことになります。コンセプトワークの手順をきちんと踏めば、商品・サービスの方向性がブレてしまうことは少ないはずです。

***
コンセプトワークというプロセスは、新しい商品・サービスを考えるのに欠かせないものです。コンセプトは、製品や事業の命運を握る設計図。本稿で紹介したコンセプトワークの手順を参考に、市場で長く生き残れる良質なプロダクトをつくっていきましょう!

(参考)
Mission Driven Brand|3C分析とは|3C分析の例とマーケティングに活かす全手順【テンプレート有】
東洋経済オンライン|1強スタバが「コーヒー職人育成」を急ぐ理由
BRAVE ANSWER|市場規模の調べ方や算出方法は?市場規模とは?
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【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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