「1ページ1分のメモ」で、苦手で腹が立つ “あの人” との関係がよくなるワケ

赤羽雄二さんインタビュー「苦手な人との関係をよくする方法」01

どんなに穏やかな人にだって、「苦手な人」や「腹が立つ人」がひとりもいないということはないでしょう。仕事でもプライベートでも、苦手な人と関わらざるを得ない場面がたくさんあります。

では、どうすれば苦手な人との関係性を良好なものにできるのでしょうか。かつて世界的コンサルティング企業、マッキンゼーで活躍し、ベストセラー『ゼロ秒思考』(ダイヤモンド社)の著者としても知られる赤羽雄二(あかば・ゆうじ)さんは、「1ページ1分のメモ」が効果的だと言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカット)

思考のスピードを上げる「A4メモ書き」とは?

会社や取引先、あるいはプライベートでも、どうにも馬が合わない「苦手な人」「腹が立つ人」が何人かいると思います。無視できればいいのですが、関わりをなくすことはなかなかできません。仕事の場合は特に、成果をきちんと挙げるためにも、なるべくその関係性を良好なものに変えることが得策となります。

そこでおすすめするのが、私が提唱しているA4メモ書きです。頭をクリアにして思考のスピードを上げるためのものですが、人間関係の改善にも役立ちます。その内容は以下のとおりです。

【思考のスピードを上げる「A4メモ書き」実践法】

  • A4用紙を用意し、横書きで書く
  • 気になることや疑問点、思いついたことなど、頭に浮かんだことをすべて書き出す
  • 1ページあたり1分ですばやく書く

思考のスピードを上げるためには、この作業を毎日10ページから20ページ繰り返すこと、そして、一度にまとめて書くのではなく、思いついたその瞬間に書くことを推奨しています。

赤羽雄二さんインタビュー「苦手な人との関係をよくする方法」02

「A4メモ書き」で、苦手な人が苦手ではなくなる!

では、この「A4メモ書き」をどのように使えば、苦手な人や腹が立つ人との関係性を良好なものに変えることができるのでしょうか。それは、相手の立場に立って、相手の視点から多面的にメモを書くということです。

もう少し具体的にお話しします。たとえば、素直に指示を聞いてくれない田中さんという部下が苦手で、ついつい腹が立ってしまうとします。そこで、「田中さんは、なぜ私の言うことを聞かないのか」「田中さんは、誰の言うことだったら聞くのか」「田中さんは、私の言うことを聞かないときには何を思っているのか」「田中さんは、どんなかたちで話をすれば話を聞いてくれるのか」「田中さんにはどういうトラウマがあるのか」「田中さんはどういうコミュニケーションを好むのか」「田中さんの前の上司はどういう人だったのか」といった具合に、相手の立場、視点で多面的に書いてみるのです。

気分の悪い状況なので、こうやって思いっきり書き出していくと20~30ページになります。個別に書くと簡単ではありませんが、上のように多面的に書くと意外に書けてしまうものです。しかも、1ページを1分で書く習慣にしていれば、20~30分でできるようになります(普段から急いでいれば、誰でも必ずできるようになります)。

そうすると、田中さんという、苦手で腹が立つ人のことをその人の立場で考えることができるようになり、いつの間にか腹が立たなくなります。苦手な人に対しては、苦手だから話をせず、誤解が誤解を生み、さらに嫌になり心を閉ざしてしまいます。それでは、相手のことを理解できるはずもありません。「A4メモ書き」によって、苦手な人の立場で考え、相手に少し寄り添った姿勢が自然にとれるようになります。あれほどダメだと思っていた関係が改善し始めます。

そもそも、「苦手だ」とか「腹が立つ」理由の多くは、「理解できない」からです。人間は、得体が知れなかったり、自分が理解できなかったりするものに対して苦手だと感じ、腹が立ちます。理解さえできればそういった感情は消えます。「A4メモ書き」が、苦手な人や腹が立つ人との関係性を良好なものに変えてくれるのは、これが理由です。

赤羽雄二さんインタビュー「苦手な人との関係をよくする方法」03

「A4メモ書き」がもたらすさらなる効果

また、この「A4メモ書き」というメソッドの効果は、思考のスピードを上げることや、苦手で腹が立つ人との関係性を良好なものに変えることにとどまりません。じつは、「心を澄ます」という効果ももっているのです。

電車のなかなど、多少のノイズがある環境にいるときに読書や勉強に集中できたという経験はありませんか? 「A4メモ書き」を集中して行なっていると同様の効果を感じます。集中力を高め、心を澄みきらせてくれるのです。私はこれを「アクティブ瞑想」と呼んでいます。

やっていることは、1ページ1分のペースでA4メモを何ページも書き出すことですから、普通の瞑想で言われる、「心を無にする」ということとは真逆のことのように思えるかもしれません。

でもじつは、そういう高速ペースでA4メモを書き続けていると、集中力が高まり、心が澄みきってくるのです。なぜそうなるかというと、書き出すという行為に集中することで心から雑念がなくなり、「心を無にする」ことができているからです。

そして、そんな澄みきった心をもつことができれば、日々を穏やかに過ごせることはもちろんのこと、必要な仕事にも集中できて、結果的に多くの成果を挙げられるようにもなるでしょう。

赤羽雄二さんインタビュー「苦手な人との関係をよくする方法」04

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【プロフィール】
赤羽雄二(あかば・ゆうじ)
ブレークスルーパートナーズ株式会社 マネージングディレクター。東大工学部卒業後、コマツにてダンプトラックの開発に携わる。スタンフォード大学大学院に留学後、マッキンゼー入社。ソウルオフィスをゼロから立ち上げるなど、14年間活躍。その後、ブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業し、ベンチャー経営支援、大企業の経営改革、幹部育成、新事業創出に取り組む。韓国、シンガポール、インド、ベトナムなどの企業を支援。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『変化できる人』など国内21冊、海外21冊。合計95万部超。内外での講演多数。東京大学、早稲田大学、電気通信大学、北陸先端科学技術大学院大学講師。
著書一覧講演一覧オンラインサロン

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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