仕事に生かす「アート思考」の基本と最初の一歩。まずは “自分軸” を見つけよう

町田裕治さん「アート思考の基本と最初の一歩」01

近年、ビジネスシーンで注目が集まっている「アート思考」という言葉をご存じでしょうか。比較的新しい考え方ですから、名前を聞いたことがある人も、その内容となると詳しく把握できていないかもしれません。

お話を聞いたのは、著書『仕事に生かすアート思考』(日経BP)を上梓した、株式会社BODAI代表取締役の町田裕治(まちだ・ゆうじ)さんそもそもアート思考とはどんなもので、なぜいま注目を浴びているのかについて解説してもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

アート思考とは、「自分軸」を中心に創造的なアイデアを生み出すこと

「アート思考」とは、自分が大事にしている『自分軸』を中心に創造的なアイデアを生み出すことと私は定義づけています。

ここでの「自分軸」とは、「好きなもの」「おもしろいと思うもの」、そして「過去に誰かから指示されることもなく自ら進んでやったこと」です。いわば、「自分の行動の指針」だとか「人生の目的・目標」となりえるものですね。それだけではなく、自分らしく生きていくためにも自分軸をしっかり認識しておくことが重要です。

そして、アート思考によってアイデアを生むには「論理性」「感性」の双方が必要となります。「アート」というと、感性だけを使うイメージをもつ人も多いと思いますが、そうではありません。感性だけではないところが、大きなポイントです。

要は、自分が本当にやりたいこと、おもしろいと思うことなど自分自身を意識するなかで、感性も論理性も兼ね備えたアイデアを出して進んでいこう!——ということです。

私は長くビジネスコンサルタントをしてきた経験から、より実践的でビジネスにも取り入れやすい、感性だけでなく論理性も同じレベルで重視したアート思考こそが大切だと考えています。

アート思考を「みそ」に例えてみましょう。みそは、大豆や米、麹、塩といった原材料の配分、あるいは熟成期間などの違いによって多種多様なものが生まれます。それぞれが「多種多様なみそ」です。アート思考も同じように各自の自分軸、そこに加味される論理性や感性などの違いによって、「人それぞれのアート思考」が生まれるのです。

また、こうして生まれたアート思考が活かせる場はさまざまです。みそが、みそ汁やもろきゅう、サバのみそ煮などいろいろな料理に使えるように、アート思考もビジネスコンセプトや新規事業の立案、業務改善会議など多様な場面で使えます

町田裕治さん「アート思考の基本と最初の一歩」02

 

アート思考が注目されているのは、「個の時代」が来ているから

最近、「個の時代」が来ているとよく言われます。これが、アート思考の注目度が高まっている要因です。

これもよく言われる話ですが、今後、決まりきったマニュアルがある仕事はAIが担っていくようになっていきます。これからのビジネスパーソンに求められるのは、AIにはできない、人間だからこそできるより人間らしい思考や発想です。ビジネスパーソンのみなさんも、これまでとはちょっと違うアイデア、新しい発想を求められる場面が増えているでしょうし、今後はそういう場面がさらに増えていくでしょう。

そんなときに、アート思考が力を発揮します。アート思考の根底にあるのは、人それぞれの自分軸、つまり個です。だからこそ、まわりに流されることなく、ほかとはちょっと違う自分だけの新しい発想を生むことにアート思考が寄与してくれると私は考えています。

では、その肝心な自分軸についてもう少し詳しく解説しましょう。先に、自分軸とは、「好きなもの」「おもしろいと思うもの」「過去に誰かから指示されることもなく自ら進んでやったこと」であり、「自分の行動の指針」だとか「人生の目的・目標」となりえるものだと述べました。

自分軸を意識することで、自分の思いと行動が一致し、その行動に対して自分を突き動かす情熱が湧いてくることがあります。そういう人なら、たとえ大きな壁にぶつかったとしても強いモチベーションをもって乗り越えていきますし、その結果として大きな成果を挙げる人をたくさん見てきました。

大事なことは、「自分の思い、自分軸はこれだ!」といってかたくなにならず、柔軟に取り組むこと。自分軸をそのままビジネスや社会に取り込むことは、正直難しい場合が多いでしょう。ビジネスにおいてはどうしても会社の軸となるものや方針、上司やクライアントとの業務と自分軸が合わないことがあります。そこでどうとらえるのか、どう対処していくのかと悩むことは多いでしょうが、自分の内面を無視することなく、常に意識しながら柔軟に考えることが大事です。視点を変えて同じ物事を見ると、まったく違った景色が広がるかもしれません。

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あなただけの「自分軸」の見つけ方

その自分軸を見つけるためには、これまでの自分の人生を振り返り、「好きなもの」「おもしろいと思うもの」「過去に誰かから指示されることもなく自ら進んでやったこと」をリストアップしてみてください。それらのなかから共通するものを抽出できたなら、それがあなたの自分軸です。以下は、私が著書を執筆するにあたって書き出した例です。

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私の場合は、やはり幼い頃から好きなことの中心にアートがあった気がします。そして、リストから共通するものを抽出した結果、「自分だけでなくさまざまな(世界中の)人の創造性を高めること」「静かな時間をもつこと」を私の現時点の自分軸としました。自分自身を振り返ると、さまざまな行動がこの軸のまわりにあることに気づきました。ただ、数年後に別の軸が足されたり、大きく変わったりするかもしれませんし、現時点の自分軸がより強烈な軸になっていることもあるはずです。

もちろん、なかにはひとつやふたつにまとめられない人もいるでしょう。でも、その「たくさんある状態」を大事にしてほしいと思います。その状態こそがその人の個性ですし、何か新しい発想を生むときには、多くの「好きなもの」があるからこそ多方面の観点から幅広い発想が生まれることもあるからです。

そして、自分軸をしっかりと認識できない人もあまり心配する必要はありません。自分ではさほど興味をもっていなかったことも、いざ始めてみたらハマってしまった経験は多くの人にあるでしょう。今後、たまたまやってみたことや任された仕事の魅力に思いがけず気づき、それが自分軸になることもあるのです。いずれも自分自身に目を向けていないとスルーしてしまうかもしれないので、意識することが大事です。

また、無理に早く決める必要はありません。現状で無理に自分軸を探そうとするのではなく、これからの人生のなかできちんと見つける意識さえもっていれば、いずれ必ずあなただけの自分軸が見つかると思います。

町田裕治さん「アート思考の基本と最初の一歩」05

【町田裕治さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「論理性と感性のあいだを行き来する」ビジネスにおけるアート思考の実践例
創造したいときに効果的なフレーズとは? アート思考につながる「発想のタネ」

【プロフィール】
町田裕治(まちだ・ゆうじ)
大阪府出身。株式会社BODAI代表取締役、大学院大学至善館准教授。京都大学法学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。ハイテク、通信業界、都市開発などを中心に新事業提案、業務改善などのコンサルティングを行ない、並行して面接や研修、業務評価の枠組み作成など人事的な業務に14年に渡り携わる。次席共同経営者を務めた後、リムネット、ユニゾン・キャピタルなどを経て、株式会社BODAIを起業。企業再生・組織変革コンサルティング、業務改善、新規事業・IoT/AI事業コンサルティングを行なうと同時に、画家としてニューヨークで個展を開くなどアーティストとしても活動。著書に『仕事に生かすアート思考』(日経BP)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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