
仕事中、「あとであれをやらなきゃ」「そういえば映画の公開日いつだっけ」など、いまの作業とは無関係な「つぶやき」が浮かんできて集中が途切れることはありませんか?
いろいろなつぶやきで頭のなかがごちゃごちゃして、目の前のタスクが進まない——これは「マインドワンダリング」と呼ばれる心理現象です。
メールやSNS、グループウェア等で常にマルチタスクを求められる現代のビジネスパーソンにとって、マインドワンダリングは常に発生しやすい状況です。
作業療法士の菅原洋平氏によると、約16分に1回の頻度で誰にでも起こる脳の働きであり、完全に防ぐことはできません。*1,2 しかし、この雑念に脳の容量を奪われたままだと、集中力はどんどん低下してしまいます。
そこでおすすめしたいのが、頭に浮かんだつぶやきをすぐに書き出す「脳内キャッシュ解放メモ」です。
- 雑念をタスクに変える「脳内キャッシュ解放メモ」の書き方(3ステップ)
- 仕事中に「別のことを考えてしまう」のはなぜ? 脳内メモが効く理由
- 「脳内キャッシュ解放メモ」で得られる2つの効果(脱線防止・タスク消化)
- よくある質問(FAQ)
雑念をタスクに変える「脳内キャッシュ解放メモ」の書き方(3ステップ)
脳内キャッシュ解放メモとは、「作業中に浮かんだ雑念を紙の左側に書き出し、後から右側に処理予定として整理する」だけのシンプルな手法です。用意するのは「A4の用紙」と「ペン」だけ。筆者の実践例を交えて手順を解説します。
1. 紙を1枚用意し、中央に縦線を1本引く

2. 作業中、頭に「つぶやき」が浮かんだら、線の左側にどんどん書く
カテゴリ分けなどは気にせず、ひとつのつぶやきにつき1行で書き出します。

3. 作業が一段落したら、右側に「いつ何をやるか」を書き出す

筆者の場合、ポモドーロタイマーが鳴って休憩に入ったタイミングで整理(ステップ3)を行ないました。スマホですぐ調べられること(オレンジ)、次の作業時間に取り組むタスク(青)など色分けし、完了したものには斜線を引いて消していきます。
◇注意点
集中力を切らさないため、作業中はステップ2の「書き出す」ことだけに専念し、ステップ3の「整理」は必ず作業後(または休憩中)に行なうのがポイントです。
「手書きではなく、PCのテキストエディタやスマホアプリではダメなの?」と思う方もいるでしょう。結論から言うと、作業中のウィンドウを切り替える手間や、スマホを開いたことによるSNS等の「新たな脱線」を誘発するリスクがあるため、物理的な「紙とペン」を推奨します。タイピングの方が早いという方は、PCの画面端に常にシンプルなメモパッドを表示させておくなど、自分なりのルールで「数秒で書き出せる環境」を作ってみてください。
📘 もっと読みたい
仕事中に「別のことを考えてしまう」のはなぜ? 脳内メモが効く理由

精神科医の樺沢紫苑氏によると、頭のなかに雑念が浮かんでくるのは、「未完了課題として脳が緊張を維持しているから」です。*3
心理学には、完了した事柄よりも、達成できていない事柄や中断している事柄のほうが記憶に残りやすい「ツァイガルニク効果」という現象があります。
作業中に浮かぶ「あれやらなきゃ」「あれなんだっけ」というつぶやきは、まさに未完了のタスクです。これらが頭の中に放置されていると、ツァイガルニク効果によって無意識のうちに意識を引っ張られ、目の前のことに集中できません。
しかし、すべて書き出して「いつ何をやるか」を決めると、ただの「未処理の気がかり」が「処理予定のタスク」へと変わります。これによって、脳が「このタスクはいったん手放していい(対処済みである)」と錯覚し、ツァイガルニク効果を逆手にとって脳の緊張を解くことができます。その結果、再び目の前の作業に意識を向けやすくなるのです。
📘 もっと読みたい
「脳内キャッシュ解放メモ」で得られる2つの効果(脱線防止・タスク消化)
筆者がこのメモを試してとくに効果を感じたのは以下の点です。
「あとでやればいい」という安心感
これまでは「忘れないうちに対処しなきゃ」とスマホで調べ始め、そのまま脱線しがちでした。しかし「とりあえずメモして、あとで全部やる!」とルール化したことで、安心して目の前の作業に没頭できるようになりました。
「小さな雑用」が自然と片付く(マルチタスクの脳疲労も軽減)
書き出したメモがそのまま「そのうちやらなきゃリスト」になるため、手の空いたときに処理するだけで先延ばしにしていた雑用がサクサク片付きます。日常の気がかりが減り、集中力そのもののベースが上がったように感じました。
頭のなかのものを紙に書き出す手法として、「ブレインダンプ」を思い浮かべる方もいるかもしれません。どちらも「脳のワーキングメモリを解放する」という根本的な仕組みは同じです。
違いは「目的」と「タイミング」にあります。
- ブレインダンプ: 休日の朝などに時間をとり、頭のなかの悩みやアイデアを「すべて」出し切って思考を整理する、いわば脳の大掃除。
- 脳内キャッシュ解放メモ: 作業中に割り込んできた雑念だけを「数秒」で書き出し、いまの作業スピードを落とさないための応急処置。
macのPRAMクリアと再起動の違いみたいなものでしょうか。つまりこのメモは、「いま目の前の作業に集中し続けること」に特化した、お手軽なプチ・ブレインダンプと言えます。
📘 もっと読みたい
***
作業中に別のことを考えてしまうのは、脳科学的に見て当たり前の現象です。しかし、それらを紙に書き出すだけで、集中力はしっかりキープできます。「今日は集中できないな」と感じたら、ぜひ実践してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 仕事中に別のことを考えてしまうのはなぜですか?
脳科学で「マインドワンダリング」と呼ばれる、誰にでも約16分に1回起こる自然な現象です。未完了のタスクが頭に残っていることが主な原因です。
Q. 頭に浮かんだ雑念を消すにはどうすればいいですか?
思い浮かんだ「つぶやき」を、その場ですぐ紙に書き出してください。脳のワーキングメモリが解放され、再び目の前の作業に集中できるようになります。
Q. ブレインダンプとの違いは何ですか?
ブレインダンプが時間をかけて行なう「脳の大掃除」であるのに対し、脳内キャッシュ解放メモは作業中の集中を途切れさせないための「数秒の応急処置」です。
*1 日本の人事部|マインドワンダリング
*2 東洋経済オンライン|どんなに努力しても防ぐのは困難…16分に1回は「心ここにあらず」の状態になってしまう"脳の宿命"
*3 東洋経済オンライン|集中力が低い人は「3つの雑念」に邪魔されている
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。