脳科学が証明。さくさく暗記できる3つの「最強ノート術」

みなさんは暗記能力に自信はありますか? 肝心なところで重要な単語が思い出せなかったり、暗記ばかりに時間をとられて応用問題まで手が回らなかったりして、失敗した経験のある方は少なくないのではないでしょうか。また、本を読んでもなかなか記憶に残らない、とお悩みの方もいると思います。

学校の勉強や資格取得のための勉強。多くの勉強においては、「いかにたくさん覚えるか」「いかに忘れないか」が命と言っても過言ではありません。これまで暗記に失敗してきたみなさんが多くの知識を長期間記憶するためには、勉強方法に工夫が必要です。

今回は、効率よく暗記するための「最強のノート術」を3つご紹介します。

覚えておきたい「記憶の基本」

暗記の効率をアップさせたいなら、脳が記憶する仕組みに沿った方法で暗記に取り組みましょう。ノート術を紹介する前に、「記憶の基本」として、記憶の種類とメカニズムを簡単に解説します。

記憶の種類

記憶には陳述記憶非陳述記憶が存在します。言葉で表現できる記憶は陳述記憶、言葉で表現できない記憶は非陳述記憶となります。このうち、勉強にまつわる記憶は前者の陳述記憶です。(後者の非陳述記憶は手続き記憶とも呼ばれ、箸の使い方や自転車の乗り方、タイピングなどの技能やノウハウの記憶が該当します)

陳述記憶は、エピソード記憶意味記憶に分かれます。エピソード記憶に当てはまるのは、自分が体験した出来事や映画のようにストーリーのある内容情報と情報との間に前後のつながりがあるため覚えやすいのが特徴です。対照的に、単語や年号のような知識の記憶のことを指す意味記憶は、物語のようなつながりがないため忘れやすいことが特徴とされています。

こうした記憶の種類を踏まえると、情報をエピソード記憶にすることが、効率よく覚えるためのポイントです。

記憶のメカニズム

人が記憶する過程には3つの段階があります。

  1. 記銘(符号化):五感から入った情報は、まず脳の海馬という場所に一時保存されます。
  2. 保持(貯蔵):必要だと判断された情報は大脳皮質に貯蔵されます。
  3. 想起(検索):貯蔵された情報を海馬が取り出して思い出します。

それぞれの段階に不備があると「覚えられなかった」という状態になるのです。中でも、2番の保持の段階で「必要」と判断されるのは、生きていくために必要な知識のみ。そのため、多くの人は保持の段階で記憶に失敗してしまいます。

しかし、勉強によって得た情報のほとんどは、「生きていくために必要なものだ」とは言えませんよね。ですから、それらの情報を脳に「必要なものだ」と判断させなければなりません。そのために大切なのが、情報を脳に繰り返しインプットすることと、情報を使う回数を増やすこと。脳研究者で東京大学薬学部教授の池谷裕二氏によると、海馬は、何度も脳に送られた情報、そして使う回数の多い情報を「重要だ」とみなす性質があるのだそう。

つまり、効率よく暗記するためには、復習を繰り返して情報の入力・出力を強化することが欠かせないのです。

しかし、ただ闇雲に復習をしても時間と手間ばかりかかってしまいます。以下に紹介する3つのノート術を使って、効果的な復習を行いましょう。

関連記事:効率よく暗記できる人が押さえている4つの基本。たった10分の○○で記憶力が上がる!

ノート術1.『青ペン書き殴り勉強法』

青ペン書き殴り勉強法とは、その名の通り、覚えたいことをひたすらノートに青ペンでびっしりと書き殴るだけの勉強法です。筆者も試験の前には実践しています。考案したのは早稲田塾の創業者であり、日本アクティブラーニング協会理事長の相川秀希氏。

「ノートは綺麗に書くものだ」という気持ちが強い方にとっては、少し抵抗があるかもしれません。ですが、この勉強法の目的はノートを見返して復習することではなく、ただひたすら手を動かして書き続けること。これにより、情報を脳に繰り返しインプットできるのはもちろんのこと、書くというアウトプットも兼ねることができます。情報の入力・出力を徹底的に行うことができるのです。

また、青色には鎮静効果があり、心をリラックスさせると同時に集中力を高める効果があるため、暗記に有効。そのうえ、普段使っている黒とは違う色で書くことによって、情報が自然と目に飛び込んでくると同時に、記憶に残りやすくなります。

特にコツの要らないシンプルな勉強法ですが、ポイントを強いて挙げるならば、「スケルトンタイプのペンを使う」ことと「ルーズリーフやコピー用紙ではなくノートに書き込む」こと。スケルトンタイプのペンを使うとインクが減っていく様子がよくわかるので、「こんなに頑張った」という達成感と継続に繋がりますよ。同様に、紙がバラバラになるコピー用紙やルーズリーフよりも、ノートの方が「1冊使いきった」という達成感が生まれやすくなります。

青ペンで何度も書き殴るだけで効率的に暗記ができるという、このノート術。暗記のためのノート術の中では、最も手軽でシンプルなもののひとつではないでしょうか。

ノート術2.『3ワードノート術』

勉強のために本を読んでも、内容が記憶に定着せず、すぐに忘れてしまう……。そんなお悩みの解消に有効なのが、メンタリストDaigo氏が推奨している3ワードノート術です。

このノート術の狙いは、3つのワードを頭の中で意味付けし、単語と他の概念とを関連づけること。単語単体のままでは覚えにくいところを、単語どうしつながりのある内容にすることで、記憶への定着をめざすのです。また、これは復習を前提としたノート術なので、復習を繰り返すことで内容をより記憶しやすくなるという効果もあります。

3ワードノート術に必要なものはノート、黒ペン、色ペン3色ほど。手順は以下の通りです。

  1. ノートの端を折る。
  2. 本のタイトルを書く。
  3. 覚えたい内容が書いてあるページ数を書く。
  4. 覚えたい内容の中から目に飛び込んできたキーワードを3つ書く。
  5. 復習時に、3つのキーワードを見て内容を頭の中で説明してみる。
    →思い出せた場合:人に説明できるレベルで思い出すことができたらページ数の上に〇を書く。
    →思い出せなかった場合:ページ数の上に×を書き、そのページを開いて確認する。これがあれば思い出せただろうという単語を3つのキーワードにマインドマップのように書き出す。1回の復習につき、書き出す単語は2~3個まで。
    →どうしても覚えられない場合:ノートの端の部分に内容の思い出せるような質問を書く。
  6. 1回目の復習は青、2回目は赤……。のように復習ごとにペンの色を変える。

例えば、「功利主義はジェレミー・ベンサムが体系化し、19世紀にイギリスで盛んになった、最大多数の最大幸福を行動の指針とする思想だ」という情報を記憶したい場合には、以下のようになります。


(画像は筆者にて作成)

やってみると分かると思いますが、3つのワードが何のことだったか思い出す際に、頭の中で自然と単語に意味付けをする作業が生まれます。この方法で復習を繰り返せば、より強く記憶に残りやすくなりますよ。また、あれもこれもと欲張らずに「3つの」ワードに絞って簡潔にまとめ上げることで、より単語を認識しやすくなるという効果も期待できます。ぜひ試してみてください。

ノート術3.『コーネル式ノート術』

講義で教わった内容をしっかり頭に入れたい方にお勧めなのが、アメリカの名門大学発コーネル式ノート術。アイビー・リーグのひとつでもあるコーネル大学の学生のために考えられたノート術です。アメリカでは「the best note-taking system」と呼ばれ、多くの有名大学や研究機関に普及しているそうです。

手順は以下の通り。
まず、下図のようにノートを右上、左上、下部の3つに分けて線を引きます。

(画像引用元:Gakken Sta:Ful|コーネルメソッドシリーズ

  1. Aのノートエリアには授業中に聞き取った内容を簡略化してメモを取っていきます。一言一句書きとるのではなく、授業の内容に集中して深く考えながらメモを取ることが重要です。分からなかった部分は「?」などを書いて空白を空けて置き、後で調べて書き込めるようにします。
  2. Bのキーワードエリアは、授業直後の復習として使用します。まだ授業の記憶が新しいうちに重要な単語や疑問点などを書き出していきましょう。ノート部分の不足点を補足するつもりで、必要であれば図解なども加えながら書き込んでください。
  3. Cはサマリーエリアです。ページの内容を2、3行の文章で過不足なくまとめてください。自分の言葉でアウトプットすることによって内容が定着しますし、後から見返した時にも一目でノートの内容を理解することができます。

コーネル式ノート術のメリットは、講義中、字を書く行為を最小限に抑えることができること。ノートに書くべき情報の取捨選択を考えながら授業を聞くようになり、ノートをとることに割く時間が短くなるため、深く考える余裕が生まれます。そのため、インプットした情報が重要なものだと脳に判断されやすくなるのです。また、毎回復習し、授業のサマリーを書きこむという形でアウトプットする習慣もつくため、情報をより記憶に定着させやすくなります。

筆者も実践したことがありますが、ただノートをとるよりも講義の内容が格段に頭に入りやすくなっただけでなく、授業ごとに復習をする習慣がついて、一石二鳥でした。

慣れるまでは少し手間取ってしまうかもしれませんが、何度か続けるうちにスムーズにノートを作成できるようになりますよ。

***
ただ膨大な時間をかけてがむしゃらに暗記するよりも、科学的に効果のある方法で効率よく暗記した方が、その分他の勉強にも時間を回せますよね。暗記に苦手意識を持っている方は、今日から新しいノート術を試してみてはいかがでしょうか。

なお、「勉強ノート術7選! 東大生・京大生おすすめ」ではほかのノート術も紹介しています。ぜひご参照ください。

【ライタープロフィール】
小川桜子

上智大学文学部英文学科卒業。都立国際高校出身。大学では英米文学を中心に学んだ。趣味は読書。

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